とにかく私は疲れました!心のストレッチのすすめ【荒井沙織】

とにかく私は疲れました!心のストレッチのすすめ【荒井沙織】

更新:2021.11.28

テレビをつければコロナ、ネットニュースもほぼコロナ。 日々更新される情報に触れておくことは必要だけれど、あまりにも先の見えない、暗い情報ばかりを受け取っているうちに、心まで部屋の中に閉じ込めてしまってはいませんか?使わない筋肉が痩せていくように、動かしていないと心も硬くなってしまいそう。今回は、真面目に自粛生活を送っているあなたに、心のストレッチのすすめです!

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《とにかく私は疲れました!》

私の場合、フッと仕事が暇になる時期はこれまでにもままあったわけで、毎日規則的にオフィスへ通勤している人よりは、自分には自粛耐性があるだろうと、高を括っていた。ところが先週、ついにうっかり、自粛疲れがやってきたのだ。子育てしているわけでも、毎食家族の食事を作っているわけでもないのに、だ。

そういった類の疲れは無いはずなのだ。お恥ずかしくも正直なところ、このひと月、 “娘” という立ち位置に甘んじて、一度も包丁を握っていないくらいなのだから。

そんな環境もあって、人命のために尽力している人や、社会のために働き続けてくれている人がいる中で、私のような人間が《自粛生活に疲れてきた》なんて思うこと自体、なんだか良くない事なのかなという気持ちでいた。何か見るからに納得できるような、それでいて正当な理由が無いのに、疲れたなんて感じるのは申し訳ないことだと、この頃までそう思っていた。

それでもさすがに、連日不安なニュースを目にし、仕事が減り、行きたい場所に出かけることもできず、会いたい人たちと顔を合わせることもできないという生活がひと月あまり続くと、知らず知らずのうちに心が消耗していたことを自覚し始めた。できるだけ心持ちだけは穏やかにいたい、という想いがあったからか、漠然とした不安や発散し切れないモヤモヤを認めないようにしていた分、ここで気持ちがポッキリと折れてしまった。

「これはまずいぞ。」

というのが最初の心情だ。どうにも、気力を取り戻せる気がしないのだ。食欲もなく何もやる気が起きず、結果的には丸二日寝込んでみた。そんな自分を、思っていたより早く、三日目に再起動することができたのは、《とにかく私は疲れました!》という、自分の感情を認めて、気力が起きないのも仕方ないよね、と受け入れてあげたからだと思っている。

私だって疲れていいよね!と思うことに決めると、意識して休息するモードになった。そこでまずは、何もしない一日を作ってみた。そういえば、家の中で過ごしてこそいるけれど、意外と何もしない《休み》はなかったなぁと気づいたからだ。

何もしない、できれば深く考えることも禁止するくらい、思い切って自分をオフに切り替えてみる。出てきた感情は、どんなものでも自分の中で一旦肯定してみる。そうして時間を過ごしていると、しだいに身体の疲労がとれてきて、不思議と心も、そろそろ上向いてもいいかなという気分になってくる。

その1、伸ばす。

心も体も、柔軟性が失われると故障しやすくなるものだ。
ストレスを感じている時は、身体的にも緊張して硬くなってしまう。首や肩が凝ったり、姿勢が悪くなったり。自分で思っているよりも、心と体は直接的に影響し合っているのだろう。だから私は、気持ちを上向けたい時に、体をほぐすのだ。

姿勢が悪いと、心まで塞いでしまうような気がする。元気がないなと思ったら、まずは一度、背筋をピンと伸ばして深呼吸だ。それから肩甲骨の周辺、股関節やお尻の筋肉を伸ばすようにストレッチすると、あっという間に体が軽くなったように感じる。頭皮のマッサージをすれば、視界がすっきりと開けるかのようだ。滞っていた思考がスムーズに流れ始める感覚すらある。ストレッチやマッサージで血行を促すことで、塞いでいた心も少しずつほぐされていく。無理に元気になろうとするよりも、体から柔らかくしていくことが、結果的には心の復活への近道になるはずだ。

著者
峯岸 道子
出版日
著者
タカシ, 松尾
出版日

その2、読む。

入浴は、リラックスするのにもっとも効果的な方法の一つだ。私は昔から、熱めのお湯にゆっくり浸かるのが好きだ。これが、健康法としての正しい入浴法と違うのは分かっているが、どうしてもやめられない。とはいえ、今回は心のストレッチが目的なので、《好きなことを好きなようにすることが大正解なのだ!》と、はっきり言い切って書き進めることにする。

湯船に浸かっていると、いろんな思考が巡ってくる。考え事にはぴったりだが、時には「何も考えたくない。」という場合もある。そんな時に私は、本を読むのだ。ゆっくり湯船に浸かったり、足湯をしながら、時間をかけてじっくりと本を読み進める。これが驚くほど、読書に没頭できるのだ。あっという間に時間が過ぎている。浴室へは、水分補給用にとペットボトルに入れた水を持ち込んでいるので、いくらでも時間を過ごせてしまう。

浴室という環境で、半ば強制的に、意識を本の世界に埋める。心が疲れてしまった時は、別の思考で満たすことが、心の深呼吸とストレッチになると、私は思っている。それに、体の芯から温まるので、気づけば体もリフレッシュできている。一石二鳥なのだ。

入浴中の読書におすすめしたいのが、雑学・教養といったジャンルの本だ。小さめのセクションで区切られているようなものだとなお良い。1回の入浴時間で1項目ずつ読み切っていくことができる。私のような長風呂派だったら、いくつかの項目を読み進められる。

ただ湯船に浸かっているのは手持ち無沙汰で苦手だ、という人にこそ、ぜひ試していただきたい。自分の中で「2ページ読む」だとか「1項目読み終える」といった目安を決めると、無理なく習慣にできると思う。

著者
["デイヴィッド・S・キダー&ノア・D・オッペンハイム", "小林朋則"]
出版日
著者
瀧澤秀保
出版日

その3、刻む。

ザクザク、ザクザク・・・
野菜を刻む音は、なんて小気味好いのだろう。

冒頭で、このひと月の間は包丁に触れていない、と書いたが、料理をすること自体は好きなのだ。時折無性に、この音と手応えを感じたくなって、野菜を刻む。気に入っているのは、1cm角くらいの大きさに切ること。キャベツや玉ねぎ、人参、いんげん、じゃがいも。冷蔵庫の中にある野菜をなんでも、ひたすらに小さく切っていく。

できれば、食事のサイクルとは別の、急いで作ったりしなくて良い時間帯に始めるのがおすすめだ。あくまでこれは、自分の心を休めるための料理なのだ。時間に追われずに取り組む、この程良い単純作業が、無心の時間に誘導してくれる。読書に耽ることと同様に、ストレスから離れてリフレッシュするには、何か別の事物に没頭する時間を過ごすことが必要だ。

切った野菜は、スープにするのが良い。温かく栄養たっぷりのスープは、きっと心身の緊張を溶かしはじめるはずだから。

著者
飛田 和緒
出版日
著者
macaroni
出版日

ストレスを感じている自分をそのまま受け入れて、ほぐしてあげる。心身共に柔軟でいるためのストレッチ習慣を身につけて、どんな時でも健康な思考と血液を巡らせていたいものだ。

体調に異常無し、真面目に自粛生活を送っているよ、という一見元気なあなたこそ、こまめに心のストレッチを!いつかは来る自粛明け、できれば心も体もすっきりとした姿で迎えたい。

撮影: 荒井沙織

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