5分でわかる国債の仕組み!種類、買い入れ、メリットなどをわかりやすく解説

更新:2021.12.12

経済ニュースでたびたび耳にする「国債」という言葉。資産運用の際の安定した投資先として、購入を検討した方もいるのではないでしょうか。この記事では、基本的な仕組みや、投資をするうえでのメリットとデメリット、これまでの歴史などをわかりやすく解説していきます。

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国債とは。日銀の買い入れなど仕組みを簡単に解説!

国債は、資金調達のために発行される公債の一種です。公債とは、国や地方公共団体、政府関係機関が発行する債券のこと。そのうち国が発行するものが国債で、わかりやすくいえば「国がおこなう借金」です。

国債は目的に応じて、さまざまな種類のものが発行されています。それぞれ「償還年限(返済する期日)」と「利子」が設定されていて、購入者は償還年限を迎えると、額面の金額に利子を上乗せした金額を受け取ることが可能です。
 

一般的に、国家は企業よりも破綻するリスクが低いため、投資の一環として日本や海外の国債を購入する投資家もいます。

その一方で、国の財政が国債に頼り過ぎる状態は健全とは言い難く、取り扱いには一定の制限がかけられています。たとえば日本では、財政法の第4条に

国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない

とあり、国債を財源とすることは認められていません。ただこの条文にはただし書きがついていて、一定の条件を満たせば国債の発行ができるようになっています。また特例法を制定してさまざまな名目の国債が発行されています。

ほかにも財政法第5条では

すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借り入れについては、日本銀行からこれを借り入れてはならない

と定められていて、中央銀行である日銀が直接国債を引き受けることを禁じています。

中央銀行が国債を引き受けることで政府へ資金供与をしてしまうと、政府の財政節度が失われ、中央銀行通貨の増発に歯止めが掛からなくなるおそれもあり、悪性のインフレを引き起こす可能性があるからです。

しかし2020年現在、日銀は「異次元の金融緩和」の名のもとに大量の国債を保有しています。これが財政法に抵触しない理由は、日銀が直接国債を引き受けるのではなく、1度民間の金融機関が国債を購入し、それを日銀が買い取るという手順をとっているから。ただ日銀が大量に国債を保有すること自体を、金融バランスを損なうものとして批判する声もあるようです。

国債の種類を解説!利付、割引、個人向けなど

目的や利子の支払いの有無、購入者の立場などさまざまな種類がある国債。主なものの特徴を紹介していきましょう。


まずは「普通国債」と呼ばれる、利払いや償還財源が主に税財源でまかなわれているものからです。

・建設国債

財政法第4条には、ただし書きで「公共事業費・出資金及び貸付金の財源」について、国会の議決を経た範囲内で公債の発行を認めています。建設国債は、これにもとづいて公共事業をおこなう際に不足した財源を補うために発行されるものです。

・赤字国債

建設国債を発行しても財源が不足する際に発行される国債です。その根拠として「特例法」を制定することから、「特例公債」と呼ばれることもあります。

・復興債

東日本大震災の復興費用に充てるため、国会の議決を経た範囲内で発行されている国債です。


利子の有無や、購入者の立場からは次のように分類されます。

・利付国債

半年ごと、1年に2回利子の支払いがおこなわれる国債です。満期になると、額面に記載されている金額を受け取ることができます。

・割引国債

利子の支払いがない国債です。そのかわり満期時に受け取る金額は、発行金額より高くなるように設定されています。

・個人向け国債

その名のとおり、個人投資家しか購入できない国債です。機関投資家が購入するものとは異なり、満期まで保有せずに途中解約することも認められています。

国債購入のメリットとデメリット

最初に触れたように、国債は投資商品でもあります。ここでは日本の個人向け国債を例に、どのようなメリットとデメリットがあるのか解説していきます。

●国債購入のメリット

・信頼性が高い

一般的に、国家は企業よりも破綻するリスクが低いです。特に日本国債は元本割れする危険性が少なく、ほかの投資商品より安全な投資先だと考えられています。

・銀行に預金するよりも金利が高い

2020年現在、日本国債の利回りは最低でも年率0.05%が保障されています。これは金融機関の金利よりも高いため、銀行に預けるよりも有利な資産運用となります。

・1万円から購入が可能

個人向け国債は、最低1万円から1万円単位で購入できるため、気軽に購入することができます。


●国債購入のデメリット

・ほかの投資商品に比べて利回りが低い

ほぼ元本が保証されているかわりに、少額の購入ではほとんど利回りが期待できません。

・運用期間が決まっていて途中解約をすると利子が目減りしてしまう

個人向け国債は、3年、5年、10年と3種の償還期間が設定されています。この期間は原則として換金できないため、注意が必要です。購入後1年たてば途中解約ができますが、「中途換金調整額」という名目で利子が減額されてしまいます。

日本国債の歴史。戦後はインフレに

江戸時代の日本では、幕府や藩は御用商人などから「御用金」を徴収して財源に充てていました。これは元本返済や利払いが約束されるなど、国債と似通った性質をもっていましたが、しばしば踏み倒しが発生していたそうです。

1870年代、鉄道敷設の財源とするためにロンドンでポンド建ての国債が発行されました。これが、日本が発行した最初の国債です。このように外貨建てで発行したり、外国市場で発行された国債を「外債」と呼びます。

1904年から1905年にかけて、「日露戦争」が起こります。当時、日銀の副総裁だった高橋是清は、戦費調達のためにイギリスで外債を募集しました。これが成功し、日本はおよそ8億円相当の戦費を調達して戦争を戦い抜くことができたのです。ただし戦後は外債の償還が重い財政負担となり、日本経済に深刻な影響をおよぼすことになります。

1929年にアメリカから起こった「世界恐慌」が、1930年代になると日本に波及。「昭和恐慌」を引き起こします。これを打開するために、当時大蔵大臣だった高橋是清が「高橋財政」を推進。国債を日銀に引き受けさせ、日本は世界でもいち早く世界恐慌の影響を脱することに成功しました。

一方で景気が回復した後、高橋は財政政策を転換しようとしましたが、軍事費が削減されることを嫌った陸軍に暗殺されてしまいます。その結果、日銀の国債引き受けは恒常化。発行額も増え続け、太平洋戦争中に財政破綻に陥ることになるのです。
 

戦後の混乱期にも国債発行は続き、悪性インフレが進展。その反省から1947年に財政法が制定され、赤字国債の発行や日銀の国債引き受けが禁じられました。

1964年に東京オリンピックが開催。その後の不況対策のため、1965年に赤字国債の発行を1年限りで認める特例法が制定されました。戦後初めての赤字国債の発行となります。

1970年代は、オイルショックをきっかけに高度経済成長期が終わりを迎えます。事態を打開するため、大量の国債が発行されました。財政問題が叫ばれるようになり、行財政改革が目指されるようになります。

1980年代は、行財政改革や消費税の制定、「バブル景気」にともなう税収の増加などで、国債の発行残高は横ばい。新規国債が発行されなかった年度もありました。しかしバブル崩壊後の1990年代は、再び発行高が増加していきます。

2010年代になっても日本の債務は増え続け、2019年の債務残高は約900兆円に達しました。これはGDP比で200%を超えていて、太平洋戦争中の水準に匹敵します。ただ日本は国内の政情が安定していて、経常収支も黒字であることから、国債の価値が暴落する事態にはなっていません。

2020年、世界的な「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」の流行に対処するため、日銀が国債の購入額を無制限に変更。2020年度補正予算の財源に、新規国債の追加発行分を充てることが決定しました。

債券の基本的な知識をこの一冊で

著者
久保田 博幸
出版日

タイトルのとおり、債券市場の動向や金利の仕組み、債券の発行から償還までのプロセスなど、債券に関する基本知識を網羅的に解説している作品です。2016年に改版され、マイナス金利など最新の動向もおさえた内容になっています。

さまざまなテーマが紹介されていますが、図説も用いて丁寧に解説してくれているため、初心者でも理解しやすいでしょう。国債や投資に興味がある人だけでなく、金融システムの仕組みを勉強したい人にとっても役に立つ作品です。

国債を通じて歴史を読み解く

著者
["真壁 昭夫", "玉木 伸介", "平山 賢一"]
出版日

国債の起源から現在にいたるまでのさまざまな出来事を、年代と地域ごとに知ることができる作品です。経済的が歴史に与えた影響の大きさが伝わってくるでしょう。

作者は、1930年代の日本の財政政策を「閉鎖経済に国債を詰め込む」ものと表現しています。当時の国債をめぐる動向は、現在の日本の財政政策を分析するうえでも多くの示唆を与えてくれるはずです。

内容は専門的ですが、文章そのものはわかりやすいので、基本的な歴史の知識があれば読み解けます。

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