ビル・ゲイツが、2015年頃から何度も感染症のパンデミック(世界的大流行)を警告したことをご存知でしょうか。 感染症を予測していたビル・ゲイツは、はたしてどのような本を読んで予見していたのでしょうか。この記事ではビル・ゲイツのブログ「ゲイツ・ノート」で紹介されている書籍の中から、感染症に関連したテーマに該当し、かつ日本語に翻訳されている書籍を紹介していきます。
ビル・ゲイツが、2015年頃から何度も感染症のパンデミック(世界的大流行)を警告したことをご存知でしょうか。
いまや新型コロナウイルスの感染拡大に関しても積極的に発言を行い、医療機関に対して資金を提供しているビル・ゲイツ。世界最大の慈善基金団体であるビル&メリンダ・ゲイツ財団を通じて、医療用品やワクチンの開発支援として少なくとも270億円を援助しているそうです。さらに、本人も新型コロナウイルスのワクチン工場を建設するために、個人資産の数千億円を投じていると報道されています。
この記事ではビル・ゲイツのブログ「ゲイツ・ノート」で紹介されている書籍の中から、感染症に関連した以下のテーマに該当し、かつ日本語に翻訳されている書籍を紹介していきます。
感染症を予測していたビル・ゲイツが、どのような本を読んで予見していたのか。追体験してみるのもおもしろいでしょう。(本記事でビル・ゲイツが述べたとしている内容については、おもにブログ「ゲイツ・ノート」の内容を参照しています。)
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
2012年02月02日
ビル・ゲイツはジャレド・ダイアモンドの大ファンであることを公言しており、感銘を受けた書籍として『銃・病原菌・鉄』を挙げています。
「高校や大学で受けた授業では、「なぜ地域によって文明が進歩したスピードが違うのか」という世界史における最大の疑問に答えている授業はなく、『銃・病原菌・鉄』はこの疑問に対して、非常に説得力のある回答をもたらしてくれた」とビル・ゲイツは述べています。
本書では、アメリカ大陸の先住民が征服された理由として「病原菌」を指摘。病原菌は家畜から人に感染し、人の移動により拡大していくと説明されています。医療が進んでいても新型コロナウイルスのような病原菌により、短期間のうちに多数の死者を出してしまう現状を表しているようです。
- 著者
- ["ジャレド・ダイアモンド", "小川 敏子", "川上 純子"]
- 出版日
『危機と人類』は、オーストラリア、チリ、ドイツ、日本などの国々が、内戦・諸外国の脅威・経済の低迷をどのように乗り越えたかを12の要因に基づいて解説した1冊。本書の中で解説されている「フィンランドとソ連が1、000マイルにも及ぶ国境をどのように共有したか」について、ビル・ゲイツは知見がなかったため、ジャレド・ダイアモンドの解説に興味を持ったと述べています。
本書の最後には「過去を振り返るより未来に目を向けることが重要で、深刻な問題に直面した場合でも、危機を乗り越える道を選択できる」とジャレド・ダイアモンドからの力強いメッセージが書かれています。
新型コロナウイルスにより個人と国家の危機にさらされている現代。今後、どのように対応していくか考えるうえでに、参考になる1冊ではないでしょうか。
- 著者
- ["トレーシー・キダー", "竹迫 仁子"]
- 出版日
本書は感染症を専門とするハーバード大学医学部教授ポール・ファーマーについてのノンフィクションです。ポール・ファーマーは世界で最も貧しい国の一つであるハイチの診療所を支援し、100万以上の人々に医療サービスを提供するなどの功績を残しました。
ビル・ゲイツはポール・ファーマーに会うためにハイチへ訪問しており、「これまで出会ったすばらしい人を10人挙げるとすれば、ポール・ファーマーは必ず入る」と明言するほど。またポール・ファーマーと同じ時間を過ごすだけで、多くのインスピレーションが湧いてくるとも述べています。
新型コロナウイルスの影響により、医療機関は深刻な状況に立たされています。今一度、医療とは何かを考えるために本書を手に取るのもよいでしょう。
- 著者
- ["アンガス・ディートン", "松本 裕"]
- 出版日
貧困からの大脱出をテーマとして、所得と健康の2つの観点から世界経済の推移と将来の展望が述べられた本書。
経済発展と寿命の関係性を直接の因果関係とはとらえず、都市の公衆衛生や健康・医療知識の向上を理由として挙げているなど、経済にとどまらずあらゆる分野からの視点が書かれています。
「イノベーションが人類の生活を向上させる鍵であると私は感じていたが、イノベーションは経済格差を生み出して、社会の不平等につながっているとアンガス・ディートンは指摘している」とビル・ゲイツは著者の視点に興味を持ったと述べていました。
また、最後の章では「援助と経済発展」という切り口から、途上国への援助が悪影響を与えていると告発しており、ビル・ゲイツもこの告発には驚いています。
「ディートン氏が援助の問題を指摘したことは正しい。しかし、援助に対する時間を指摘するよりも、援助の目的を明確にし、どのようなアプローチが効果的なのかを測定するシステムを開発したほうがよい」とビル・ゲイツはアンガス・ディートンに対して自らの意見を述べていました。
緊急事態宣言が発令されて、自粛により個人の消費が落ちて企業の倒産も増える現代。リーマンショック以上の経済状況に陥ることも予想されています。本書では、そういった困難な状況からの「大脱出」について著書の知見が書かれているため、今後の世界経済を見通すための参考になるかもしれません。
- 著者
- ["マシュー・ウォーカー", "Matthew Walker"]
- 出版日
「マイクロソフトの創業初期には、ソフトウェアを納品する際に徹夜をすることが当たり前で、最悪なときは二晩徹夜したこともある。しかし『睡眠こそが最強の解決策である』を読んで、身体に大きなダメージを与えていたことが理解できた。本書を読んだことで睡眠習慣を変えるきっかけになった」とビル・ゲイツは語っています。
本書には睡眠不足が体に与える悪影響と、よりよい睡眠を取るための環境作りについて書かれていました。睡眠は免疫システムを修復して感染症を防ぎ、病気に関するあらゆるリスクを下げられるとマシュー・ウォーカーは解説しています。
正しい睡眠により免疫力を高めて、今できる最善のウイルス対策を行いましょう。
- 著者
- エリザベス・コルバート
- 出版日
- 2015-03-21
ビル・ゲイツは「著者エリザベス・コルバートは環境問題について誇張な表現を使わず、淡々と事実を並べて記憶に残るエピソードでまとめている。決して派手さはないが、有益な読み物だ」と本書を高く評価しています。
地球上の生物はこれまで5回の大量絶滅を経験しており、6度目の大絶滅を人間が引き起こしているかもしれないという衝撃的な内容が書かれています。著者エリザベス・コルバートは、その原因や人類の課題について、専門家からのインタビューをもとにまとめています。
本書では、人類の活動そのものが環境に対して多くの悪影響を与えており、生物の減少だけでなく、最終的には人類自身を絶滅させてしまうことが指摘されていました。
新型コロナウイルスの影響によって、自宅での時間が増えてテレワークが普及するなど、これまで当たり前だと思っていた生活がまったく違うものに変化しています。『6度目の大絶滅』は、この状況だからこそ、私たち人類が地球に与えている影響を考えるきっかけをもたらしてくれるでしょう。
- 著者
- デイヴィッド・ブルックス
- 出版日
- 2017-01-24
「60歳という節目を迎えて、「人生における成功」と「人格形成」のバランスを考えるようになった。このきっかけを与えてくれたのは、デイヴィット・ブルックスの『あなたの人生の意味』を読んだことだ。マイクロソフトでの仕事は十分に満足していて、それは予想以上の成功を収めたことではなく、優秀なチームと働けたことからの満足感だ。「人生における成功」と「人格形成」のバランスを取るのは難しいが、本書はうまく導いてくれるだろう」…このように、ビル・ゲイツは述べています。
どのように生きれば人格者になれるのかというテーマを掲げ、それを10人の生き方から探っていく本書。人生の成功を収めることも重要ですが、もっと道徳的に生きてもよいのではないか?そう、自分自身に問いかけるきっかけになる一冊です。
コロナウイルスによって変化していく世界。本書を読めば、これからの人生をどのように生きるかを考えるよい機会を得られるのではないでしょうか。
今回は、「感染症」をテーマに、ビル・ゲイツおすすめの本を紹介しました。読んでみると、ビル・ゲイツが感染症のパンデミックを予見していた理由が少し理解できるかもしれません。またこれらの本は、この時代だからこそ手に取ってみてほしい作品でもあります。社会や人間、自分自身のあり方について、深く考えるきっかけになるでしょう。困難の多い現代を、よりよく生きるヒントになれば幸いです。