犯人と探偵の攻防や、徐々に明らかになる事件の真相など、読み始めたら止まらない魅力があるミステリー小説。普段あまり本を読まない子どもでも、読書の楽しさを知れる要素が詰まっています。この記事では、小学生から読めるおすすめの児童書ミステリーをご紹介。読みやすいだけでなく、意外と本格的な推理を楽しむことができるでしょう。
アメリカのペンシルバニア州に住むセオは、13歳の中学生。両親が弁護士で、法曹界の大人に囲まれて育ったこともあり、将来は法廷に立つのが夢です。
いま注目しているのは、ゴルフ場の近くで起こった殺人事件の裁判。被告人は推定無罪になると予想されていますが、セオは怪しいと思っていました。目撃者がいたことに気付き、証言を依頼するのですが、証言どころか目撃したことも知られたくないと拒まれてしまうのです。
- 著者
- ジョン グリシャム
- 出版日
- 2011-09-16
アメリカの作家で、法廷ミステリーの巨匠といわれるジョン・グリシャムが初めて手掛けた児童文学。日本では2010年から計6巻が刊行されています。
子どもたちに法律や司法の仕組みを伝えたいと執筆したそうで、法廷の手続きや裁判などの用語もわかりやすい言葉で説明されているのが魅力です。事件の推理自体はシンプルなものですが、正義とは何なのかを考えるよい機会になるでしょう。
またセオは、法律の知識をいかして学校でも友人たちからさまざまな相談を受けています。誠実に、そして丁寧に対応する様子はさながら本物の弁護士のようです。本作で起こる事件自体はまだ解決しないので、続編も手元に用意しておくことをおすすめします。
貧しい母子家庭で育った少年リンツが暮らす国では、怪盗ゴディバと名探偵ロイズの攻防が話題になっていました。ゴディバは大富豪の家を狙って盗みを働き、現場には必ず「GODIVA」と書かれたカードを残していくのです。
ある日、父親の遺品のなかから謎の地図を見つけたリンツは、その地図にゴディバ事件の鍵となる情報が書かれていることに気づきます。
情報の提供者に懸賞金を出すことを知ったリンツが、ロイズに手紙を出してみると……。
- 著者
- 乙 一
- 出版日
- 2016-07-15
2006年に刊行された乙一の児童向けミステリー。ひらがなが多用されているので、小学生から読むことができるでしょう。リンツやロイズ、ゴディバ、デメル、ヴィタメール、ドゥバイヨル……など登場人物や地名にチョコレートのブランド名が使われているのが特徴です。
謎の地図を手にしたリンツが、盗まれた財宝を探すミステリー仕立ての冒険小説になっています。宝探しの冒険と論理的な謎解きが両立しているので、最後までドキドキしながら読み進められるでしょう。
物語が進むごとに、登場人物たちのいくつもの人間性を知ることができ、意外な裏の顔や正体を知り翻弄されてしまいます。グロテスクな描写もあり、甘さのなかにほろ苦さもあるチョコレートのような作品。大人が読んでも楽しめるでしょう。
カッレくんは、ホームズやポワロのような探偵に憧れ、名探偵を目指している少年です。
夏休みのある日のこと、仲良しのロッタちゃんの親戚だというエイナルおじさんが町に現れました。しかし何やら不穏な行動をしています。気になったカッレくんは、おじさんのことを独自に捜査することにしました。
見事、おじさんを宝石窃盗団のひとりだと見破ったカッレ君。夜中に部屋に忍び込み、おじさんの指紋を採ろうとするのですが見つかってしまい……。
- 著者
- アストリッド・リンドグレーン
- 出版日
- 2005-02-16
『長くつ下のピッピ』や『やかまし村の子どもたち』で知られる、スウェーデンを代表する児童文学作家アストリッド・リンドグレーンの作品。日本では1965年に刊行されました。
子どもたちだけで自由に遊べる夏休み。北欧の夏の情景が心地よいです。同世代のグループと対決したり、城跡を探検したりと少年らしい姿を見ることができます。
一方で、指紋を採るだけでなく、じっと様子を観察し、合鍵をこっそり拾うなど探偵としても大活躍。事件は読者の想像を超えて大ごとになっていくので、探偵推理小説としても十分に楽しめるでしょう。勇敢で知恵に溢れるカッレくんの活躍に、きっと勇気づけられるはずです。
一学期の最終日。髪櫛町に住む小学6年生の山村風太は、下校途中に猫柳健之介という青年に声を掛けられます。
「未来を見たくないかい?」
猫柳は、未来を100円で売る「未来屋」だと名乗ります。当初は相手にしなかった風太でしたが、猫柳がひょんなことから風太の家に居候することになり、不思議な夏休みが始まるのです。
- 著者
- ["はやみね かおる", "武本 糸会"]
- 出版日
2003年に刊行された、はやみねかおるの作品。作者は児童向けのミステリーを得意としていて、代表作「名探偵夢水清志郎事件ノート」シリーズを手にしたことがある人も多いでしょう。
風太が住む髪櫛町は、神隠しや人魚の宝などの不思議な言い伝えが残る田舎町。現代っ子の風太はあり得ないと決めつけていますが、次々と謎を解決していく猫柳を見て、しだいに心を開いていきます。
ファンタジックな物語かと思いきや、しっかりとしたミステリー要素もある骨太な作品。ラストも余韻がある終わり方で、ほんのりと夏の哀愁を感じさせてくれる一冊です。
いつものように盗みを働いている最中に、雷に打たれるアクシデントで隣の家に落ちてしまった泥棒の「俺」。
そこにいたのは、双子の兄弟です。両親がそれぞれ駆け落ちをして2人きりで暮らしているそうで、なんと自分たちの父親代わりになって生活費を稼いで欲しいと頼んできました。
警察に突き出されては困るため、しぶしぶ了承。一緒に生活をすることになった3人の周りでは次々と事件が起こり……。
- 著者
- 宮部 みゆき
- 出版日
- 2005-10-14
1993年に刊行された宮部みゆきの作品。「ファンが選ぶ最も好きな宮部みゆき作品ランキング」で1位を獲得したほか、2012年にはテレビドラマ化もされました。児童向けの「青い鳥文庫」で発表されていますが、雑誌「小説現代」で連載されていたので、大人でも十分に楽しむことができます。
ステップファザーとは「継父」のこと。泥棒という悪人が、アクシデントで出会った子どもたちの父親代わりを務めることになるユーモアにあふれた作品です。
協力して事件に挑み、そのたびに距離が縮まっていく3人。いつ壊れてもおかしくない儚い関係だとわかっているからこそ、大切に読み進めたくなります。笑いあり涙ありの一冊です。
1学期の終業式を迎えた中学校で、1年2組の男子生徒が全員姿を消してしまう事件が起きました。彼らは廃工場に立てこもり、親や先生を相手に反旗を翻したのです。
しかし、同時に別の事件が発生。クラスメイトの柿沼直樹が、廃工場に向かう途中で誘拐されてしまいました。
少年たちは、廃工場で出会ったホームレスや、女子生徒の協力を得て、誘拐事件に立ち向かいます。
- 著者
- 宗田 理
- 出版日
- 2009-03-03
1985年に刊行された、宗田理の「ぼくら」シリーズ1作目。時代を経ても小学生を中心に高い人気を誇る、不朽の名作です。
思春期真っ只中の少年たちが、校則や体罰で抑圧する先生や、無理やり勉強を押しつける親に不信感を抱き、真剣に立ち向かう姿が何よりも魅力的。勇気や知恵を絞り、大人を翻弄する姿にワクワクが止まりません。「ぼくら」というタイトルからもわかるように、仲間を大切にする姿も印象深いでしょう。
誘拐事件を解決し、大人と戦いきった彼らが、警官が廃工場を取り囲むなか抜け穴を使ってこっそりと外に出るシーンも見どころです。達成感と同時に、大人たちの気づきも描かれるラストになっています。