海外の本格ミステリおすすめ6選!王道の謎解きが面白い名作

更新:2021.11.22

いつの時代も色あせない人気を誇る本格ミステリというジャンル。海外の作品では、探偵の鮮やかな推理や密室トリックなど、いまでは王道といわれるものの原点を楽しむことができます。この記事では海外の本格ミステリのなかから、読んでおきたいおすすめの名作を紹介していきます。

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本格ミステリの不朽の名作『Xの悲劇』

 

ニューヨーク市を走る満員電車内で、殺人事件が起こります。使われたのは毒針。被害者は多数の人物から恨まれていて、容疑者候補はいるものの逮捕にはいたりません。

にっちもさっちもいかなくなったブルーノ地方検事とサム警視は、元役者で探偵をしているドルリー・レーンに協力を依頼することにしました。そんななか、第2、第3の事件が発生。3人目の被害者は、左手の指をねじ曲げ、「X」の形を作っていて……。

著者
["エラリー・クイーン", "中村 有希"]
出版日

 

アメリカの作家エラリー・クイーンの作品。1932年に刊行され、続編の『Yの悲劇』とともに本格ミステリの不朽の名作といわれています。

主人公のレーンは、60代ながら探偵として見事に活躍。紳士でかっこよく、人間観察力や論理的な推理力に長けていて、変装して現場にくり出すユーモアももちあわせています。

また、謎解きの鮮やかさはミステリ好きも納得させられるもの。些細な証拠から推理を組み立て、ダイイングメッセージに隠された謎も含めて伏線をきれいに回収する様子は、読んでいて爽快感すら感じられるでしょう。

名探偵ポワロが謎に挑む本格ミステリ『葬儀を終えて』

 

富豪アバネシー家の当主であるリチャードが亡くなり、葬儀の後に親族を集めて遺産の分配がおこなわれることになりました。その場で、妹のコーラが驚きの発言をします。

「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」(『葬儀を終えて』より引用)

彼女は昔からおかしな発言をすることが多かったため、その場では皆聞き流しましたが、翌日にコーラが遺体となって発見。さらに、彼女とリチャードは1ヶ月前に顔をあわせ、何かを話していたこともわかりました。

遺言を管理していた代理人のエントウイッスルは、名探偵として知られるポワロに調査を依頼します。

著者
["アガサ・クリスティー", "加島 祥造"]
出版日

 

「ミステリーの女王」と呼ばれたイギリスの推理作家、アガサ・クリスティの作品。名探偵エルキュール・ポワロが難事件に挑む本格ミステリで、1953年に刊行されました。

遺産相続をめぐり殺人事件が起きる構成は、王道中の王道。しかしひとつ謎が解けてもすぐに次の謎が現われ、なかなか真相に辿りつくことができません。緻密に積み上げられたトリックとミスリードを誘うストーリーで、最後まで犯人を絞り込むことができないのです。

注目すべきは、遺産分配の場でコーラが放った言葉なのですが……不安と疑いが渦巻くアバネシー家の人間模様も楽しめるでしょう。

これぞ王道!ヴァン・ダインのおすすめ本格ミステリ『グリーン家殺人事件』

 

ニューヨークの真ん中に、取り残されたように建っている古い屋敷のグリーン家。仲の悪い5人の子どもが暮らしていました。

ある夜、5人のうち2人の娘が銃殺される事件が発生。ここから、一家の皆殺しを狙う連続殺人が巻き起こるのです。

有力な手掛かりがないまま、天才的な推理力を持った探偵ファイロ・ヴァンスが事件の解決に挑みます。

著者
ヴァン・ダイン
出版日

 

アメリカの作家ヴァン・ダインの代表作。素人探偵ファイロ・ヴァンスが活躍するシリーズの3作目で、1928年に刊行されました。屋敷内の殺人、全員を疑いたくなるようなクセのある関係者たち、そして推理力を売りにした探偵と、その後のミステリー界に大きな影響を与えた王道の本格ミステリです。

見どころは、ヴァンスが小さな証拠を集め、整理をしながら少しずつ真相に辿りつく過程でしょう。推理に必要な手がかりは読者にもきちんと提示されているので、謎解きの楽しさをあらためて実感させてくれます。

最後の殺人を食い止めるシーンは圧巻。殺人の動機などは、いまとなっては使い古されたものですが、原点である本作を読んでおいて損はないでしょう。

密室トリックの金字塔といわれるおすすめ本格ミステリ『黄色い部屋の謎』

 

物理学の権威であるスタンガーソン博士の邸宅で、令嬢マチルドの悲鳴が聞こえます。声が聞こえた「黄色い部屋」のドアを壊し中に入ると、マチルドが血まみれで倒れていました。しかし犯人の姿はありません。

密室状態の「黄色い部屋」から、犯人はどうやって消えたのでしょうか。18歳の新聞記者ルールタビーユ少年と、パリの名刑事フレデリックが事件解決に挑みます。

著者
ガストン ルルー
出版日

 

フランスの作家ガストン・ルルーの代表作。1907年に発表されました。密室トリックの金字塔といわれる本格ミステリです。

「黄色い部屋」が密室になった理由、犯人と思われる不審者が曲がり廊下で姿を消す人間消失などは、意外な発想に驚くはず。またルールタビーユ少年と、フレデリック刑事の推理合戦も楽しめるでしょう。完璧に見えていた密室トリックを論理的に打ち破っていく様子も見ごたえがあります。

古典の翻訳なので少し古いように感じる言い回しもありますが、ぐいぐいと読ませる文章なので、最後まで一気読みできる作品です。

江戸川乱歩も絶賛の本格ミステリ小説『赤毛のレドメイン家』

 

休暇を利用して静かな田舎町を訪れていた、ロンドン警視庁に勤める若手刑事マーク・ブレンドン。赤毛の女性と知り合い、恋に落ちてしまいます。

しかし、彼女の夫が失踪する事件が発生。力になりたいブレンドンは、捜査に協力するうちに事件に巻き込まれていくのです。

著者
["イーデン・フィルポッツ", "宇野 利泰"]
出版日

 

イギリスの作家イーデン・フィルポッツの作品。1922年に刊行されました。江戸川乱歩が絶賛したとして知られる本格ミステリです。

イタリアのコモ湖畔を舞台にした情景と、登場人物の心情の描写が絶妙。犯人を見つける面白さもありますが、注目したいのはなんといっても、恋に落ちてしまったブレンドンの盲目っぷりです。感情の激しさに翻弄されながらも、最後にやっと真犯人に辿りつきます。

ミステリとしても恋愛文学としても楽しめる一冊です。

ディクスン・カーの人気キャラバンコランが登場する、おすすめ本格ミステリ『四つの凶器』

 

依頼人から、高級娼婦ローズとの関係を清算したいという頼みを受けて、弁護士がパリにある別荘を訪れました。

しかし彼を待ち受けていたのは、すでに遺体となっていたローズと、彼女の部屋に残されていた4つの凶器。剃刀、ピストル、睡眠薬、短剣とひとりの女性を殺すには多すぎる凶器は何を意味するのでしょうか。

事件が起きた夜には、別荘に来訪者もあったようで……元パリの予審判事、アンリ・バンコランが捜査に乗り出します。

著者
["ジョン・ディクスン・カー", "和爾 桃子"]
出版日

 

アメリカの作家ジョン・ディクスン・カーの作品。1937年に発表されました。かつて「魔王」と恐れられたバンコランが、引退した老人の姿で登場。しかしその眼光は鋭く、鮮やかな推理っぷりはシリーズを知っているファンを喜ばせてくれるでしょう。

関係者たちにはそれぞれの思惑があり、自分の都合で嘘をつくため、単純なはずの事件がかなり複雑に。中盤で謎解きのヒントが明かされてからはスピード感も倍増し、謎を整理しながら読み進めることができるでしょう。カード賭博を用いて犯人をあぶり出すシーンも物語を盛り上げます。

二転三転するストーリーのラストにわかる犯人は、意外すぎる人物。最後までお楽しみください。

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