5分でわかる言語学!学問の起源や進学先の選び方、就職先など紹介!

更新:2021.1.16 作成:2020.6.24

言語学と語学、似ているようで異なることをご存じですか? 言語学は、「そもそも言語とは何か」「言語はどうやってできているのか」「どうして言語で意思疎通ができるのか」といった疑問について取り組んでいく学問です。言語学から派生した応用分野や理論など、言語学について学んでいくと領域がかなり広く、混乱することもあるかもしれません。本記事では言語学の研究手法などを簡単に解説し、言語学についてより知識を深められる書籍を紹介していきます。

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目次

言語学ってどんな学問?

地球上にはさまざまな生き物がいますが、言語を使ってコミュニケーションをおこなうのは人間だけだと言われています。この言語とはいったいどういうものなのかについて考えるのが言語学です。言語学は多岐にわたるアプローチを持ち、どの領域を専門とするかによって扱うものが変わってきます。

言語学の始まりは?

日本で言語学という名称ができたのは明治32年のことですが、言語学の歴史は、紀元前のギリシアから始まったと言われています。古代ギリシアの哲学者としても有名なプラトンらによる言語起源論や修辞学から始まった当初は、言葉は神様が造ったものであるというような神学的な考えがほとんどでした。

その後アリストテレスが文法の研究を始め、ギリシア文法、ラテン文法と研究が進んだものの、中世になっても言語研究はそこで停滞したままでした。

言語研究が新たに進み出したのは中世後期。そこから時が流れ19世紀に入ると、言語学は素晴らしい発達を遂げました。古代インドの雅語である「サンスクリット語(梵語)」の発見が大きな刺激となったのです。それまでギリシア語のみ研究されていましたが、サンスクリット語はギリシア語やラテン語と非常に類似していることから、同一の起源から枝分かれした言語ではないかという疑問が持ち上がります。

その後『比較文法』の著書で有名なフランツ・ボップが、サンスクリット語、ペルシア語、ギリシア語、ラテン語の変化の起源を科学的に立証。そこから現在にいたるまで多くの学者が言語研究を重ねてきたのが言語学なのです。

言語学を学ぶにあたりはずせないソシュール

研究者のなかでも有名なのはスイスの言語学者、フェルディナン・ド・ソシュールでしょう。近代言語学の父とも呼ばれている人物です。

彼の著書である『一般言語学講義』を読むと分かるように、彼の思想の要点である「恣意的な関係性」は、20世紀の文化人類学や哲学、数学、精神分析学などあらゆる学問において重要な役割を果たしています。言語学を学ぶにあたってソシュールはまずはずせない人物でしょう。

言語学にはどんな分野があるの?

言語学には想像しているより多くの分野があり、それぞれが言語の持つ特徴に着目して研究を進めます。理論は大きく8つの領域に分けられており、どれも身近に感じながら学習することができるでしょう。全てを解説することはできませんが、それぞれどんなことを研究するのか簡単にご紹介していきます。

音声学、音韻論、形態論、意味論、語用論、統語論、記号学、個別言語学など

「音声学」「音韻論」

言語の持つ多様な側面のうち、音を扱うのが「音声学」「音韻論」です。このうち音声学は人間の喉の構造などについても研究します。生物学・解剖学的なアプローチを取るため、厳密には言語学から少し外れていると考える人もいます。

発声器官を通して出てくる人間の声にはさまざまな音があります。これらについて研究するのが音韻論です。有名な例だと、「関係」「新橋」「うどん」という単語には全て「ん」の音が入っています。日本語母語話者はこれらを全て「ん」として認識しますが、音としては順に「kankei」「shimbashi」「udong」のほうが近いと言われています。日本語の「ん」には、「n」「m」「ng」の3種類があるというわけです。音韻論ではこのようなことを研究します。

「形態論」

「形態論」では単語がどのような構造で作られているのかを考えます。たとえば前の文章の「作られているのかを考えます」を、単語ごとに切ってみてください。

「作られ / て / いる / の / か / を / 考え / ます」のようになるでしょうか。ここで「作られ」を見てみると、「作る」という動詞が未然形に活用したものだということが分かります。これを語幹と活用形に分割すると「作 / られ」となります。このような最小単位のことを「形態素」といいます。

このように、形態論では言葉がどのような単位によって作られているのかを見ていきます。形態論の知見があると「ヤバい」「エモい」というような造語がどうやって作られていくのかを理論的に説明することができます。また、言葉を扱うAIを開発する際には形態素に関する知識が重要になってきます。

「統語論」

単語が集まって文章になる仕組みについては「統語論」で扱います。文法について研究すると考えると分かりやすいかもしれません。

世界中にはさまざまな言語がありますが、実は文法の規則というのはそこまで多様ではありません。「私はお昼ご飯を食べます」という日本語は「主語・目的語・動詞」の順に並んでいます。この並び順を、英語の頭文字を取って「SOV」ともいいます。

英語であれば「I eat lunch」でSVOの並び順になります。このほか、アラビア語などでは動詞が最初に来る「VSO」という文法構造になります。

世界中の言語の90%以上は、SOV・SVO・VSOの3つに分類することができます。こういう事実が分かってきたのも、統語論による文法の研究が進んできたからなのです。

「意味論」

1つの言葉にはどのような意味があるのか、その言語の話者に共有されている概念は何なのかということを考えるのが「意味論」です。「意味」というのが専門用語なので、少し分かりにくいかもしれません。

たとえば「猫」という単語について考えてみましょう。この単語を見て、まずイエネコ(家猫)を思い浮かべるのではないでしょうか。人によっては大型のネコ科動物のことを考えるかもしれません。しかしそういう人も、一般的に「猫」といった場合にライオンの話をしているとは思わないのではないでしょうか。

このように、言葉にはその言語を使う人たちの間で共有されている何らかの概念があります。これを言語学では「意味」と呼んでいます。さらに意味論的に「猫」という言葉を見ていくと、「猫のようだ」といった比喩表現なども研究対象に含まれていきます。

「語用論」

言語が実際に運用されるときについて考えるのが「語用論」です。たとえば「今日はずいぶん早く来たんだね!」と言われたら、褒められていると思いますか?それとも嫌がられていると思いますか? 

早めの行動が推奨されている小学校などであれば、褒められた可能性が高いでしょう。一方で、友達のホームパーティに呼ばれているときに1時間早く訪問したら、同じ表現でも迷惑に感じられている可能性が高まります。

「今日はずいぶん早く来たんだね!」という言い方に含まれるこれらの意図は、両方とも「早く来た」という内容とは無関係ではありません。しかし意味は真逆です。こういうことはどうして起こるのか? といったことに語用論は取り組みます。

個別の言語について深く考える個別言語学などもある

これらのほかに、特定の言語のみを対象として研究する「個別言語学」などもあります。個別言語学も上記のアプローチを用いて研究を進めるのですが、対象とする言語が1種類になります。「特にこの言語が好き」という人は個別言語学のアプローチを取ることがあるようです。

言語の変化や変異をみる分野

またこれら基礎分野の知見を生かして、歴史や地域を横断し研究する学問も大きく8つに分けられています。

歴史言語学、言語地理学、比較言語学、言語系統論、言語年代学、言語類型論、社会言語学、方言学など

言語の変化を研究する「歴史言語学」では、単語や文法などの移り変わりを見ていきます。その際には音韻論・形態論・統語論などの知識が必要です。

また、失われた古代の言語などを知るのには地理的な条件の影響を見る「言語地理学」が役立つこともあります。名前の通り地理学的なアプローチを取るので、近隣の諸言語からの影響などを見て仮説を組み立てていけるからです。このようにいくつかの言語を比較しながら研究を進める手法をまとめて「比較言語学」と呼ぶこともあります。

社会的な関係によって言語がどう変わるかを見るのが「社会言語学」です。「俺」「僕」「私」「あたし」「わし」といった一人称はどう使い分けられているのかなどの、関係性が言語に及ぼす影響を見ていきます。


言語学の応用分野

またもし2020年現在に沿った言語学をさらに深めていきたい場合は、8つの応用分野にも目を通しておきたいところです。

応用言語学、対照言語学、言語人類学、心理言語学、神経言語学、生物言語学、計算言語学、方言語学
 

一口に言語学といっても研究分野は多岐にわたることから、言語の奥深さが分かりますね。言語は社会活動に必要なものですから、あらゆるものと関わりがあるのです。

紹介したのは特に有名な分野ですが、これら以外にもさまざまなアプローチ方法があるのが言語学です。言語に興味のある人なら、自分なりの取り組み方が見つけられる学問だといえます。

言語学を学ぶには。進学先の選び方

先ほど書いたように言語学の研究分野は広く、すべてを網羅するよりも専門的に研究することをおすすめします。

進学先の選び方

言語学に特化した大学というのはないですが、主に文学部の文学科や英文科、中国文学科などで言語学を学ぶことができるようになっています。全国でかなり多くの大学がそのような授業を設けているので、より自分が理想とする研究環境が整っているかを確認してみてくださいね。

学部では学び足りないという人は大学院に進学し、言語学を専門的に研究することも多いようです。

言語学を学べる進学先

たとえば専門性でいえば東京外国語大学や、大阪外国語大学などがあります。研究対象言語の幅を広げたい場合は、大きめの外語大や総合大学を選ぶとよいでしょう。

また国文科の進学を検討してもよいかもしれません。同志社大学や上智大学、日本大学などには国文科を設置しており、言語を各論的に扱う講義スタイルになっています。

日本言語学会の公式ページで研究大会をおこなっている大学を調べてみるのもひとつの手です。言語学に縁があり、力を入れている大学が分かるでしょう。

参考:日本言語学会

社会人になってからも学べる学問

また社会人になってから大学院に入り直し言語学を学ぶ人もいらっしゃいますが、学費や時間の面で難しそうであれば、日本言語学会に入会することはいいかもしれません。言語については自発的に勉強する必要がありますが、学会誌『言語研究』を読むことができたり、毎年おこなわれる日本言語学会の研究大会があったりと、勉強面で刺激されることでしょう。

学生も年会費4000円で入会できるので、大学で言語学を学びながら学会に入会し、さらに言語研究を深めていくといいかもしれません。

言語学を学んだ後の進路。どんな就職先がある?

大学で言語学を学んだ後の進路はさまざまです。大学で教職に従事しながら言語学者として研究を続ける人もいますが、その進路に進む人はほんの一握りのようです。

最も多いのが一般企業への就職ですが、学校に就職し語学教諭として働いたり、言語学は外国語も研究することがあるため、その経験を活かして通訳や翻訳家となる人もいます。

言語学には決められた資格がないため、専門職として就職することは少ないと考えた方がよいでしょう。

ここから先は、言語学に興味のある学生や、社会人になってから言語学を学び直したいと考えている人におすすめの本をいくつかご紹介します。

言語学の基礎を知りたい人におすすめの入門書

著者
斎藤 純男
出版日

もともと語学が好きで、そのため言語学にも興味を持っている人もいるでしょう。まず広く浅く言語学について学びたいのであれば、斉藤純夫著の『言語学入門』がおすすめです。

専門的な説明よりも「だいたいどんな感じなのか」を掴むことを重視した構成となっています。そのため「もう少し知りたいのに」というわずらわしさや、「この話さっきも読んだな」という重複も感じられるかもしれません。

しかし、言語学を学びたいけれど専門的に研究したい分野が決まっていない人にはぴったりの内容です。この本を読んで自分の興味ある分野を探してみてくださいね。

社会言語学について知りたい方におすすめの1冊

著者
石黒 圭
出版日

社会言語学とは、言葉を生きたものとしてとらえ、出身地や職業、伝達相手など条件や環境が異なる場合によって使い分けられている言葉を研究する学問のことです。

そんな社会言語学について入門的に学べるのが『日本語は「空気」が決める~社会言語学入門~』です。身近な日本語の例を用いて解説しているので、言語学になじみのない人にも分かりやすい内容となっています。

方言がなぜ羨ましがられるのか、母親に対する呼び方が場面によって変わるのか。日常的に思っていた言語に関する疑問を言語学の観点から紐解いていきます。意外と身近な社会言語学の存在を知ることで、言語学を学び始まるきっかけになるかもしれません。

機械学習・AIの分野でも注目されている言語について知れる本

著者
["川添愛", "花松あゆみ"]
出版日

ここまで読んでも「それで、言語学ってどうやって実生活に役に立つんだろう……?」と疑問に思っている人もいるのではないでしょうか。そんな人におすすめなのは『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』です。

ロボットに全ての仕事をしてもらいたい怠け者のイタチたちを主人公に、「機械が言葉を理解するとはどういうことなのか」を解説していきます。

いわゆるAIについての物語なのですが、AIを作るためには言語学的基礎研究が欠かせないことや、AIが「言葉を理解する」ことは人間が言葉を理解するということとはいささか異なるのだということを知ることができます。

大学教科書にもなっている入門書なら

著者
["淳一, 佐久間", "健, 町田", "重広, 加藤"]
出版日

もう少し踏み込んで学びたい人には佐久間淳一ほか著の『言語学入門』がよいでしょう。

こちらは大学の教科書としても採用されていることの多い書籍です。基礎的な説明があるので初心者にも分かりやすい内容ではありますが、専門用語が頻出し、言語学への多少の理解がないと読むのは少し難しいかもしれません。学校のサブテキストとして利用するのがおすすめです。

各章の終わりには短い練習問題も着いていますので、学んだことを理解しているかどうか復習しながら進めていくことができます。


言語について研究する言語学について解説しました。言葉の意味に興味を持っている人、言語ってそもそも何なんだろう? どうして言葉でコミュニケーションが取れるんだろう? という疑問を抱いている人にはぴったりの学問です。

また言語学の詳細だけでなく、学びたい学生にとって気になる進路先などもあわせて紹介しました。ぜひ、書籍などから興味を広げていってください。