5分で分かる日本文学!文学研究の方法や日本文学科のある大学をご紹介!

更新:2021.12.1

ある日ふと手にとった小説に心奪われて、大学では日本文学を専攻したいと考えたことがある方は多いでしょう。しかし日本文学を学ぶと言っても、古いものは『源氏物語』から、近現代文学まで研究対象は多くあります。またそもそも日本文学の研究ってどうやるの? おすすめの大学は? といった疑問もあるでしょう。 漠然と計画しはじめた人向けに「日本文学研究って何をするの?」を解説していきます。そもそも文学研究とは、そして文学研究にはどんな方法があるのかなど、主に近代〜現代の文学研究について説明していきます。日本文学や、文学研究に興味のある方はぜひ参考にしてみてくださいね。

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文学研究ってどんなもの?

文学研究とは

「文学を研究する」と聞いて、どのようなイメージを持つでしょうか。一般的に文学・文学作品と呼ばれるものはいわゆる「芸術作品」の領域に入ります。その芸術的な価値について検討する学問だという印象を持つ人もいるでしょう。

また、村上春樹のファンを「ハルキスト」と呼ぶことがあるように、作家本人は文学作品と切り離せない存在です。存命・故人を問わず、作家そのものに魅力を感じて文学研究を志す人もいます。

一方で、文学を取り巻く環境を重視するべきだと考える人もいます。想定された読者はどのような人たちだったのか。作家が影響を受けた人や思想はあったのか。当時の政治的・経済的背景はどのように作品に投影されているのか。近代以降の文学作品は、出版社の商品であるという側面があります。そのためこのような視点もまた重要なのです。

日本文学研究は幅広い

言葉の通り、日本の文学を研究する「日本文学研究」。大学によっては「国文学」という名称になっていることもあるでしょう。対象を日本に絞っているだけで、いわゆる古典文学を研究する人もいれば、現代の存命作家作品を対象としている人もいます。

古典文学を対象とする場合には古文書を読む訓練なども必要になってきます。日本文学研究はそれほどに対象の広い学問分野ですが、本記事では主に近代以降に出版された日本文学を研究する場合について解説します。

日本文学研究の方法論には何がある?

3つの切り口がある

文学研究の切り口は、それぞれ「作品論」「作家論」「テクスト論」というように方法論としてまとめられます。大まかな文学研究の流行としては、まず作品論・作家論があり、それに対する批判的な立場としてテクスト論が興隆したと言われています。

テクスト論が重視されるようになった背景には、当時のアカデミズム全体に流行していた構造主義の影響が指摘されます。構造主義とは、簡単に説明すると「人間の思考や行動は社会の構造によって制限されており、そこから抜け出すことは難しい」という理論です。「目上の人にはお辞儀して挨拶するのは当たり前」「食事は3食きちんととるのが当たり前」といった、その「当たり前」を問い直すという姿勢です。

同様に最近の文学研究が大きく影響を受けている理論としては、社会的・経済的な進歩というのは本当にあり得るのかを問い直すポストモダニズムや、大衆文化やサブカルチャーに重点を置くカルチュラルスタディーズなどがあります。

文学研究を志す人は、文学をどう読むかという訓練を受けることになります。そのときに大切なのがこれらの方法論や考え方の枠組みです。

参考:文学理論混迷する「テクスト論」

大学で取り組める日本文学研究とは

日本文学研究の主要な方法論について簡単に解説しましたが、「専門用語が多すぎてイメージがより湧かなくなった……」という人もいるかもしれません。これから大学で日本文学について学んでみたいなと考えている人に向けて、大学4年間で取り組める日本文学研究について解説します。

研究する作家・本を決める

研究において方法論はもちろん大切ですが、まずは文学作品がなくては始まりません。日本文学の授業では、かなり早い段階から、特定の作品を読んでそれについて考えるという課題が出されるはずです。

「自分で作品を探してきてください。レポートはこのような点に注意して書くこと」という課題もあれば、「この作品を、ポストモダニズムの視点から論じること」というように、作品と方法論を両方指定される課題も出てくるでしょう。

このようなトレーニングを積むことにより、いまは特に研究したい作品や作家がない人でも、自分の関心について考える機会ができます。すでに研究対象が決まっているという人にとっては、「本当にこの研究対象でよいのか」ということを考える時間になるでしょう。

参考:作家研究

先行研究を探す

文学研究について自分なりに調べたことがある人のなかには、「研究と批評ってどう違うんだろう?」と疑問に思っている人もいるかもしれません。確かに、文芸批評・評論と呼ばれるもののなかには文学研究の成果を踏まえて書かれているものも少なくありません。

研究における根拠を探す際に非常に重要なのが「先行研究」です。その名の通り、同じもしくは似たような研究対象について、先輩の研究者たちが何と言っているのかを探すのです。全ての先行研究に目を通すのは難しいので、まずは自分が「参考になるな」と思った本や論文を使います。その研究が参考・引用している研究をまた探し、読んでいくという地道な作業を繰り返していきます。

自分が考えている仮説を組み立てるのに役に立つ先行研究をいかに探し出せるかが研究する側の腕の見せ所でもあります。レポートの課題を出されたとき、卒業論文提出間際などに先行研究を探すのは時間的にも非常に難しいので、普段から「面白そうだな」と思うものは軽くでよいので目を通しておくとよいでしょう。

自分のアプローチを決める

研究には仮説と結論が重要です。結論は必ずしも仮説通りでなくてよいのですが、「Aだと考えて、○○という手法で研究をおこなった。結論としてはA'だった」という組み立てが必要です。

このときの仮説・検証方法を決めるには、研究を進めるアプローチを決めなくてはなりません。研究対象の作品と先行研究が集まったなら、ではそれをどのような切り口で見ていくのかを考えるのです。

その際には最初に解説したさまざまな方法論が役に立ちます。大学4年間の文学研究なら、最終的には「どれが自分にとってしっくりくるか」でアプローチを決めて差し支えないでしょう。

ただし、一度決めたらまずは諦めずにある程度そのアプローチで取り組んでみることが大切です。「何となくうまくいかないな」という理由で切り口を変え続けていくと、いつまでも研究が完成しないかもしれません。

研究を成り立たせるために意識したいこと

研究が研究として成立するために重要なのは、「私はAだと思います」という主観を排除することです。レポートや論文を書く場合は「私はAだと思う」と主観的に考えていてよいのですが、研究として発表する際には「○○はAである。なぜなら××だからである」というように、根拠を持って書かなくてはなりません。

参考:書誌学的研究の地平<学問史>としての文学史

日本文学を学ぶのにおすすめの大学

日本文学が好きな方のほとんどは、文学部のある大学への進学を考えると思います。

しかし文学部では、日本文学だけでなく哲学や倫理学、教育学、社会学、心理学、宗教学、歴史学と人文科学の学問を幅広く学びます。文学作品としての素晴らしさ以外に、作家や作品が世間に与えた影響や時代性の研究もおこなうのが文学部の役割なのです。

今回は日本文学を研究したい方におすすめの進学先をいくつかご紹介します。

國學院大学文学部(東京、神奈川)

國學院大学の文学部は国史・国文・国法を専修する研究機関としてスタートした伝統ある学部です。なかでも「日本文学科」は古代から現在に至るまでの日本文学・言語・風俗習慣・儀礼の研究をおこない、研究成果をあげてきました。

また教師陣にも優秀な方がそろっており、東京大学に負けずと劣らない質の高い授業を受けることができます。2年次には日本文学、日本語学、伝承文学の3つに専攻がわかれ、より深く日本文学について学ぶことが可能です。

参考:國學院大学文学部

青山学院大学文学部日本文学科(東京)

青山学院大学文学部日本文学科では、文学、語学、教育の3分野全てを学ぶことができます。文学分野においては日本最古の歴史書である『古事記』から村上春樹など現代文学までを扱い、研究対象としています。

3、4年次から選択必修として「日本文学コース」と「日本語・日本語教育コース」のどちらかを選択することができます。現代の視点から日本文学を改めて考えたい、研究したいと考える方におすすめの進学先です。

参考:青山学院大学文学部日本文学科

東京大学文学部(東京)

言わずと知れた日本最高峰の大学・東京大学。東京大学の特徴は、1、2年は教養学部に所属し、3年次から専門分野の研究が始まることでしょう。そのためしっかりとして教養を土台に各自の研究を多角的に進めることができます。

また専修課程が多くあることも、もうひとつの特徴です。文学部には全部で27の専修課程があり、仏教学、史学、文学、心理学、社会学と幅広い上に、文学だけでいうと8つのジャンルの文学から研究対象を選ぶことができます。

参考:東京大学大学院人文社会系研究科・文学部

ここで紹介した以外にも、日本文学を学べる大学は国立・公立・私立それぞれに複数あります。ありすぎるため、まずは自分が研究したいのはどの年代の日本文学なのか、どのようなことを研究したいのかを絞り込むとよいでしょう。

日本文学研究の今をまとめた本

著者
日本近代文学会
出版日

『ハンドブック 日本近代文学研究の方法』は、日本近代文学会の学会誌『日本近代文学』に連載された「フォーラム 方法論の現在」をまとめた書籍です。近代〜現代の日本文学研究がどのような道筋を辿ってきたのか、そしてこれまでの問題点は何だったのかを概観できる内容です。

今までの論点を踏まえつつ、新しく自分の研究を進めていく若い世代に向けて書かれた書籍なので、これから文学研究を始める人にはよい参考書となるでしょう。『日本近代文学』のPDFは無料で読むことができますが、まとめて勉強したい人は書籍として持っておくのがおすすめです。

各トピックについて別々の研究者が原稿を寄せている形式の書籍です。執筆者によって文章の難易度が異なりますので、少々難しいと感じる人もいるかもしれません。

テクスト分析について学べる本

著者
松本和也
出版日

「テクスト論」「テクスト分析」というのは、日本文学研究に独特の用語とも言われます。フランスを中心とした構造主義の流行や、そのなかでもロラン・バルトの『物語の構造分析』に大きく影響を受け、「作家がどう書いたか」ではなく「本文に何が書かれているのか」を見ていく手法です。

日本の学校教育では「著者の主張をまとめなさい」といった、著者重視の国語教育がおこなわれています。そのため、テクスト論は最初取り組みにくく感じる人も少なくないでしょう。授業を受けただけではよく分からないということもありえます。実践的に解説された書籍を1冊持っておくと心強いでしょう。

楽しんで読むための研究手法を学ぶ

著者
小平 麻衣子
出版日

「本を読むのは嫌いじゃないんだけど、大学の授業を受けてみたら全然面白くなくて辛い……」という大学生もいるかもしれません。研究的手法になかなか慣れることができないという人は、「読み方」を教えてくれる書籍を手に取ってみましょう。

『小説は、わかってくればおもしろい:文学研究の基本15講』は、実際の作品を読みながらどのような視点・切り口があるのかを解説する書籍です。取り上げる作家は、太宰治・川端康成等をはじめ川上弘美など現代の作家も含まれています。

読み方だけでなく、それを研究にするにはどうしたらよいのかについてもページを割いて解説されています。レポートに躓いたときなどにも参考にできる本です。


日本文学研究って何をするの? という疑問について、主に近代〜現代の文学研究をもとに解説しました。先ほど触れたとおり、古典文学などの研究には別種の訓練が必要になることもありますが、手法を見ただけでも文学好きなら楽しそうと感じられたのではないでしょうか。「この本が好き」という気持ちを大学で研究にするにはどうしたらよいのか、その参考になれば幸いです。

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