5分でわかる電力自由化!仕組みやメリット・デメリットなどをわかりやすく解説

更新:2021.12.12

2016年、全面的な電力自由化がはじまり、消費者ひとりひとりが自由に電力会社を選ぶことができるようになりました。この記事では、変わったこと、電力供給の仕組み、メリット、デメリットなどをわかりやすく解説していきます。また理解を深めることができるおすすめの関連本も紹介するので、チェックしてみてください。

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電力自由化とは。何が変わったのか簡単に解説

電力の販売が自由におこなわれることを、「電力自由化」といいます。

もともと日本では、北海道・東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州・沖縄電力がそれぞれの地域で電力を供給する、自然独占体制がとられていました。

しかしバブル崩壊後、競争原理の導入によって効率化を図ろうとする機運が高まり、2000年から大規模な工場やデパート、オフィスビルなどで電力が自由化されます。2004年以降は、中小規模の工場やビルの電力も自由化。そして2016年4月1日に、一般家庭も含めて全面自由化されたのです。

電力自由化されたことで、それまで供給を独占していた十電力会社以外の事業者も、次々と小売電気事業者として参入。私たち消費者も、そのなかから自由に事業者を選び、契約ができるようになりました。

ただし当初は、新規事業者が自由に参入できるのは発電部門と小売部門だけ。送配電部門に関しては、安定供給のために従来の十電力会社が保守運用を担当することになっていました。その後、さまざまな事業者が公平に送配電網を利用できるように制度改革が進み、2020年4月1日から十電力会社の送配電部門が分社化する「送配電分離」がスタートしています。

事業者間での競争が進み、割引などさまざまなサービスが提供されるようになったほか、近年では太陽光など再生可能エネルギーで発電された電力プランなど、環境に優しい発電方法をアピールする事業者も登場しています。

電力自由化でなぜ安くなる?電力供給の仕組みをわかりやすく解説!

2016年当時、電力自由化によって電気料金が安くなると話題になりました。実際に、2017年に資源エネルギー庁が作成した「電力小売全面自由化の進捗状況」によると、新電力の料金単価は従来に比べて0.9円(約4%)安くなっているそうです。

その理由として、電力事業に競争原理が導入されたことで、各事業者が価格競争をしていることが挙げられます。また新規事業者は、従来の送配電網を利用することで設備投資のコストを抑えられていることも関係しているでしょう。

一概に「自由化」といっても、すべての事業者がそれぞれ送配電網を整備することは非効率です。そのため、送配電設備は、「十電力体制」時代に整備された既存のものをすべての事業者が利用することになっています。

既存の送配電網は、大量に電力が消費されても対応できるように、余裕をもって整備されています。「十電力体制」の頃は、この巨大な送配電設備を維持管理するためのコストも電気料金に含まれていました。

一方で新規参入した事業者は契約者を限定できるため、必要な規模に応じて送配電設備への投資を抑えることができ、その分電気料金を安く設定することができるのです。

電力自由化のメリット・デメリット

では電力自由化が消費者に与えるメリットとデメリットを見ていきましょう。

まず、あらためてメリットを整理します。

  • 従来よりも安く電気が利用できるようになった
  • 競争原理が持ち込まれ、さまざまなサービスを受けられるようになった
  • 自分が望む発電方法で作られた電気を購入できるようになった

一方で、電力自由化にともなうデメリットも発生しています。

従来は契約相手が限られていたため、引っ越し以外に契約を変更する必要はありませんでした。しかし自由化後はさまざまな事業者が参入し、期間を決めた契約も増えています。中途で解約すると違約金が発生してしまうこともあり、場合によっては利用者の負担が増える可能性もあるのです。

また、さまざまなサービスが提供されるようになったということは、消費者もサービス内容を把握しなければいけません。自分のライフスタイルにあったプランを見極める必要があるでしょう。

電力自由化Q&A!停電する?賃貸やマンションは?電力会社が倒産した場合は?

では電力自由化に関連する主な疑問点をQ&A方式で解説していきます。

Q.賃貸住宅に住んでいる場合も、自由に契約を変更できるのか?

A.マンションやアパートに住んでいて、管理会社を通じて一括契約をしている場合は、個人で契約を変更することが制限される場合もあります。契約名義が本人の場合は可能ですが、そうでない場合は不動産会社や管理会社に確認する必要があるでしょう。

Q.契約相手が倒産したら、電気が送電されなくなってしまうのか?

A.契約相手が倒産した場合も、電気が供給されなくなることはありません。仮に倒産した際は、その地域のほかの電力会社が代わりに送電をすることになっています。ただ電気料金は代わりとなった電力会社に支払う必要があるため、場合によっては割高になるかもしれません。

Q.契約する会社によって、電気の品質や停電のリスクに差は生じるのか?

A.送配電網は従来のシステムをそのまま利用しているため、電気の品質や停電の可能性はどの事業者と契約しても変わりません。

Q.自分で発電した電気を、他人に販売することはできるのか?

A.個人でも、小売電気事業者に申請することは可能です。事業者として登録されれば、自由に電気を販売することができます。ただし、無許可での電力販売は違法なので注意しましょう。

Q.契約をめぐって問題が生じた場合、どこに相談すればよいのか?

A.小売電気事業者は、消費者からの問い合わせに対応する義務が課せられています。そのため契約した事業者に問い合わせれば、適切な対応が受けられるはずです。万一事業者とトラブルが発生した場合は、電力・ガス取引監視等委員会の事務局も相談窓口を開設しています。

最新の制度改革にも対応したおすすめ本

著者
公益事業学会 政策研究会/編著
出版日

2020年の制度改革を念頭に2019年に改訂された作品です。「送配電分離」など最新の内容についても詳しく解説されていて、電力自由化の全体像はもちろん、個別の用語の理解も深められるよう構成されています。

やや専門的な内容ですが、巻末には基礎用語集も付いていて、初心者でも読み進めることができるでしょう。海外の電力自由化の事例も紹介されているので、この一冊で電力自由化に関する多くの事項を整理できます。

電力自由化が簡単にわかるおすすめ本

著者
江田 健二
出版日

より平易に、わかりやすく電力自由化について解説した作品です。タイトルのとおり1時間もあれば読める分量で、これまでの動きや、各国の電力自由化、今後の展望などが簡潔に記されています。

初学者でも読みやすい内容なので、電力自由化について興味が湧きはじめた人が最初に読むのにおすすめです。

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