5分で分かる!学問としての服飾と、服飾を専攻する以外の道を解説

更新:2021.4.6

「大学でファッションを学びたいんだよね」と言ったら、「専門学校のほうがいいんじゃない?」と言われたあなた。「ファッションについての学問なんてないでしょ」と言われてしまったあなた。そんなあなたに向けて、「大学で学問としての服飾を学ぶ方法はあるのか」を解説します。 専門学校や短期大学では「服飾」が学科名称として使われており、広く知られていますが、学問としては「被服学」として発展してきた歴史があります。その他には「服飾史」や「ジェンダー論」など、実はさまざまな切り口が服飾にはあるんですね。服飾や被服学について関心を広げるために役立つ書籍もあわせてご紹介します。

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服飾を学問する方法はある?

「服飾 大学」「ファッション 大学」。このようなキーワードで検索すると、服飾系の大学や専門学校が見つかります。洋服の作り方やデザインの仕方を学びたい人向けの情報です。

しかし、「洋服を作りたいわけではないんだけど、大学でファッションに関することを学びたい」と思っている人もいるかもしれません。

本記事ではとくにこのような希望を持った人向けに、「大学でファッションって勉強できるの?」ということを解説します。ファッションと他分野の学問の接続点を考えてみましょう。

服飾史研究

歴史研究・文学研究などのジャンルでは、ファッションから時代や風俗を読み解くという方法が用いられています。これを「服飾史」と言います。たとえば、東京家政大学には「服飾史」の講義があり、古代から現代までの、主にヨーロッパ社会における服飾史を学ぶことができます。

すでにいくつか進学したい大学候補がある場合は、その大学の授業一覧やシラバスを探してみてください。該当する授業があるかもしれません。

授業としては服飾史がない場合でも、服飾史を学べないというわけではありません。史学や文学・美学・芸術学などの専攻分野で、卒論の題材として扱うことが可能です。

大学でどのくらい学ぶことができるかは、その分野について詳しい先生がどれくらいいるかによって変わってきます。先生を探すときに参考になるのは、大学図書館の蔵書です。インターネットから蔵書検索をしてみましょう。

ファッションについて詳しい先生がいる場合は、図書館にも服飾関連の蔵書がそれなりに揃っているはずです。図書館に蔵書があれば卒論やレポート作成の際にも利用できますから、より大学でファッションを扱える可能性が高まります。

参考:西洋服飾文化史 | 東京家政大学Campusmate

表象研究

「表象」とは、人間が知覚したものを、心の中でどう思い浮かべるか、どう関連付けて考えるかということに着目する概念です。服飾であれば、「赤い靴にはどのような意味があるのか」「ここぞと言うときに着るお守りのような服があるのはどうしてか」などということが当てはまるでしょう。

表象研究だけで1分野を形成している大学はあまりありません。哲学(なかでも現代思想)・人類学・カルチュラルスタディーズなどの研究者が扱っている例が多いようです。

大学の授業としては「表象文化論」「表象研究」などとして開講されている大学も多いので、志望先に同様の授業があるか探してみましょう。

ジェンダー論

服飾は、歴史的に見ると社会的地位や役割、経済力、ジェンダーなどを見た目で判別させるのに大きな役割を果たしてきました。そのため、ジェンダー論では服飾に着目した研究を多く見ることができます。

ジェンダー論も表象研究と同様に、いち研究分野というよりはさまざまな学問的アプローチから関心を寄せられているテーマです。現在、ジェンダーに限らず、マジョリティとマイノリティ、差別の問題などに積極的に取り組む大学も増えています。

そのため、多くの大学では何らかの形でジェンダー論に関する授業が開講されています。服飾をきっかけとして社会を見るということに関心のある人には興味の持てる切り口といえるでしょう。

参考:DSpace at Educational Foundation Bunka Gakuen: 男性とスカート考 2
「ジェンダーレス」な服飾における性差 : 全国紙三紙の掲載記事を対象として |TeaPotコンテンツ - お茶の水女子大学教育・研究成果コレクション “TeaPot”

もちろん服飾そのものを大学で学ぶこともできる

服飾そのものを学びたい場合

これまで、「洋服を作る」以外の切り口から大学で服飾を学ぶ方法について解説してきました。しかし、もちろん正面から洋服を大学で学ぶこともできます。服飾・ファッション系の専攻に進む方法です。
 

ただし、服飾系の大学では「理論」よりも「実践」を学ぶことが多いということを覚えておきましょう。このことは実際に服飾の授業を担当する教員のレポートでも問題意識として共有されています。

服飾造形は、生活文化と密着して発展してきた分野である。とくに我が国日本では顕著で、伝統的な和装も文明開化以降の西洋服も、記録や製図を遺さぬ女性がおもに担当するものであった。実践による家庭の継承に依るところが多く、学問的な体系化を成してこなかったともいえる。
(引用元:服飾造形における基礎要素について : 習得プロセスの体系化という課題 | 東京家政大学機関リポジトリ

そのため、体系だった学問的アプローチとして服飾を考えたい人は、服飾系大学以外にも目を向けてみるとよさそうです。ファッションと隣接している分野としてデザインがあります。

デザインは理論と実践を組み合わせた勉強が可能で、かつ大学でも学ぶことができます。具体例では、美大でテキスタイルデザインを専攻するなどがあります。

参考:アート・デザイン表現学科 ファッションテキスタイル表現領域 | 大学芸術学部 | 女子美術大学・女子美術大学短期大学部

ここからは、学問の中のファッションを具体的に見ていきましょう。出版されている本を見ると、どのようなアプローチが可能なのか分かります。

技術史から見るファッション

著者
["Alison Matthews David", "安部 恵子"]
出版日

ファッションは流行を切り開き、流行には最先端の技術がついて回りました。しかし、しばしばそれらの技術は人間にとって危険なものでもありました。

毒である水銀を使った帽子や、こだわりすぎた意匠が招く事故など、技術史の観点からファッションの流行を見直すのが『死を招くファッション』です。

ややグロテスクな表現もあるので注意が必要ですが、ファッションと歴史を考える切り口としてユニークです。着飾るために必要な服にも、化粧品にも、美しいものには毒がある。現代は大量生産・大量消費の時代ですが、こうした時代における被服の周辺で起こる危険とは、ということについても考えさせられます。

文学をファッションから読み解く

著者
["伊達 雅彦", "馬場 聡", "君塚 淳一", "濱田 雅子", "本多 俊和", "林 千恵子", "峯 真依子", "山本 伸", "西原 克政", "清水 菜穂", "川村 亜樹", "西垣内 磨留美", "中地 幸", "岩瀬 由佳", "余田 真也", "中垣 恒太郎", "西垣内 磨留美", "山本 伸", "馬場 聡"]
出版日

文学には、その物語が書かれたときには当然の常識だったものが織り込まれていることがしばしばあります。ファッションもその一部です。

『衣装が語るアメリカ文学』では、文学の中に描きこまれたファッションをあらためて読み解いていきます。「このファッションが描かれることで、当時の読者にはどのような意味やメッセージが伝わっていたのか」を考えることができます。

「時代の目撃者」、「民族を映す」、「『衣装』という表象」、「あざむく」という4つの章で構成されています。オムニバス形式なので最初から読むのではなく、気になる章から読んでいけますよ。

ファッションを哲学する

著者
鷲田 清一
出版日

哲学者の鷲田清一による『ちぐはぐな身体―ファッションって何?』は、10代向けに哲学の立場からファッションを読み解く本として書かれました。比較的平易な言葉づかいのため、若い読者にも読みやすい本です。

ファッションについて考えることは、「自分とは何か」について考えることだというのが本書を貫くテーマです。

服飾に関心のある人は、ファッションがコンプレックスを隠したり、強調したりするツールとして働くことがあるという体験を持っているのではないでしょうか。そういった分かりやすい糸口からファッションを哲学していきます。身体論・表象論の入門としてもおすすめです。

ランウェイと音楽の関係

著者
菊地 成孔
出版日

パリ・ミラノ・ニューヨーク・ロンドンなどの有名ファッションウィークを知っているでしょうか。各ブランドのコレクションを映像や写真で見たことのある人もいるかもしれません。

ファッションショーでは、なぜか常に音楽が流れます。若者向けのショーでは流行のポップスがかかることも少なくありませんが、上記のような有名なコレクションになるに従い、抽象度の高い音楽が採用されるようになります。

「なぜファッションショーには音楽が必要なのか?」という疑問に音楽家の菊地成孔氏が取り組んだ本書では、実際のショー現場での取材を交えてファッションショーで使われる音楽についての考察がおこなわれます。

アプローチとしては表象論とも関係があり、かつ美術史や産業史としての切り口も持っています。一言で「ファッション」と言っても、さまざまなアプローチが可能であることをあらためて実感できる本です。

大学で学ぶ、学問としてのファッション。どんな切り口があるの? という疑問に答える、服飾の学び方と参考書籍を紹介しました。柔軟に考えれば、好きなテーマを扱う方法はたくさんあります。服飾史から学びたいのか、表象の部分から服飾について学びたいのか。また今後、服飾を学ぶうえではジェンダー論は避けては通れないということも分かっていただけたかと思います。 
ぜひ知見を広めて、学問としての服飾の学び方を自分らしい切り口で探してみてください。

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