形而上学を学べる本おすすめ5選!アリストテレスやカント、現代形而上学など

更新:2021.11.23

アリストテレスが提唱した「形而上学」。物事の本質を考える哲学の分野ですが、抽象的な概念は難しく、理解したくても挫折してしまう人も多いかもしれません。この記事では、アリストテレスやカントが唱えた形而上学を解説しながら、理解に役立つおすすめの本を紹介していきます。

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形而上学とは。対義語の唯物論も含めてわかりやすく解説

 

形而上学とは、古代ギリシアの哲学者アリストテレスが提唱した概念のひとつ。目に見えない物事の本質について考える哲学の分野です。

古代ギリシアでは哲学者の間で、「真実」について盛んに議論が交わされていました。アリストテレスの師であるプラトンは非現実的なものに真実を見出していましたが、アリストテレスは真実は目には見えないけれども現実的なものであると定義。プラトンが説いた「イデア論」を継承しながらも、反対の思想であるエイドスとヒュレーの概念を提唱したのです。

ちなみにアリストテレス自身は、「存在すること」の根本や、物事の根本を考える学問を「第一哲学」と呼んでいました。後に彼が第一哲学としてまとめていた著作が編纂された際に、『形而上学』というタイトルで発表されています。

形而上学はその後も研究され、17世紀にはフランスの哲学者デカルトが合理主義的な形而上学を提唱。それまで神の存在ありきだった中世の哲学を根本から見直し、物事の本質は思索する人間の精神にあるとして形而上学を考え直しました。

また形而上学に対立する言葉として、「唯物論」というものがあります。唯物論は、精神や観念などの根底には必ず「物質」があるという考え。目に見えない物事の本質を考える形而上学と対の概念です。唯物論を唱えた代表的な人物には、ドイツの哲学者で経済学者のカール・マルクスがいます。

 

形而上を学ぶなら読んでおきたいアリストテレスのおすすめ本『形而上学』

 

アリストテレスの代表作である『形而上学』。「存在としての存在」を研究し、哲学の土台を作りあげたとされる偉大な思想で、西洋哲学の古典として知られています。

根本的な問題の探求をとおして、問題そのものへの態度や弁証法的思考方法など、今に伝わる研究手法の基本が記されています。

 

著者
アリストテレス
出版日
1959-12-05

 

アリストテレスの遺稿から、彼が「存在すること」の根本としてまとめていた「第一哲学」の主な文献を抜き出し、編纂されたもの。『形而上学』と名付けて発表されました。

四原因や、可能態と現実態など、有名な思想がまとめられた内容です。読み進めていくと、アリストテレス自身が粘り強く思考を続けてきたことを感じられるはず。物事を分類したうえで分析し、師であるプラトンの考えを一部継承しながらも、過去の考えに対して自分の見解を述べながら訂正していきます。

初心者はすべてを理解することは難しいとは思いますが、注釈や索引なども充実している親切な設計です。また巻末には翻訳者自身の解説が掲載されているので、先に目をとおしてから本文を読むのもおすすめです。

 

初心者でも読める形而上のおすすめ本『哲学がわかる 形而上学』

 

哲学の核といわれる形而上学について、「時間とは何か」「無とは何か」など抽象的な問いの意味を紐解き、まとめている作品です。

哲学としてこれらの問いに臨む際に、どんなことが問題になるのかを解説していきます。

 

著者
["スティーヴン・マンフォード", "秋葉 剛史", "北村 直彰"]
出版日

 

2017年に刊行された作品。作者のスティーヴン・マンフォードは、形而上学や心の哲学を専門に研究している人物です。

形而上学における大切なポイントを、わかりやすさを追求しながら一から解説しています。実在世界がもつ一般的な特徴に着目し、それらを説明するために候補理論を立てるなど、具体的な手法をもとに進めてくれるため、実践的なアプローチの仕方を知れるのが特徴です。

1章から10章まで、トピックごとに利点や問題点を挙げながら幅広い知識が記載され、情報量は多いですが、文章は明快で読みやすく初心者にもおすすめの一冊です。

 

現代形而上学をまとめたおすすめ本『ワードマップ現代形而上学』

 

分析哲学を用いながら、現代形而上学を解説していく入門書です。

世界には何がどのような状態であるのか、古典的難問から最前線の研究までを知ることで、形而上学の全体像を掴むことができるでしょう。

 

著者
["秋葉 剛史", "倉田 剛", "鈴木 生郎", "谷川 卓"]
出版日
2014-02-21

 

2014年に刊行された作品。章ごとに論点を分け、複数の作者が解説している共著になっています。

最低限知っておきたい基礎的な内容からはじまり、世界の根本的な部分には何が存在しているのかなどの代表的な問いや、人工物の存在論など古来から続く問い掛け、そしてそれに対する最新の論理が記されています。

極端な思想を述べるのではなく、賛否両論のあるものは双方の視点から議論していて、時代にあわせた哲学を学べるのがポイントです。

文章は教科書のようにわかりやすく、形而上学についてまったく知識のない人でも最後まで読むことができるでしょう。ページごとに注釈がついているほか、学びをさらに深めたい時に役立つ文献案内、コラムも充実しています。

 

カントの形而上学『道徳形而上学の基礎づけ』

 

18世紀に活躍した哲学者であるカントが、形而上学と倫理学についてまとめた作品です。

経験や感覚にもとづく知識を信じず、あらゆる場面で理性の正しい使い方を考えたカント。「正しい行為」を徹底的に追い求め、自らが組み立てた普遍的な法則に従う時こそ、人間は自由になれるとしています。

 

著者
["イマヌエル カント", "Kant,Immanuel", "元, 中山"]
出版日

 

1785年に発表された、ドイツの哲学者イマヌエル・カントの作品です。

抽象的で捉えどころのない概念を、多くの実例をあげながら考察しているのが特徴。哲学を自然学、倫理学、論理学に分け、さらに倫理学は「実践的な人間学」と「道徳形而上学」に区別しまとめています。読み進めていくと、いかにカントが合理的な考えをもっていたかが理解できるでしょう。

翻訳を担当した中山元は哲学者でもあり、およそ半分を占める彼の解説もわかりやすいもの。カントの道徳観の基盤となる内容なので、形而上学を学びたい人はもちろん、哲学を学ぶ人にも読んでもらいたい一冊です。

 

存在を追求する上級者向け形而上のおすすめ本『“それ”は在る』

 

「存在」について追及する形而上学を学ぶためには、「存在」自体に立ち返ることがもっとも簡単かもしれません。

なぜ生きているのか、真理とは何なのか……対話形式で解説していきます。

 

著者
ヘルメス・J・シャンブ
出版日

 

2013年に刊行されたヘルメス・J・シャンブの作品。作中に登場する「在る」という教え自体は伝統的なものでありオリジナルではないため、自身の師となる存在からの名義で発表したそうです。

「存在」を考えるうえで確かなことは、私が「在る」ということ。それ以外は、私が知覚しているものにすぎず、私がいなくなってしまえば「在る」ことを示すことはできません。

また思考は私が「する」ものではなく、「やってくる」もの。本当の意味での自由意志など存在しないんだとか。私と思考を同一化せず、それぞれがそういうものだと認識すると、観念を手放して事実だけを見ることができるのでしょう。

マインドフルネスにも通じる内容で、世界の見方が変わる一冊です。

 

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