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優れた戦略で競合に勝て!5分でわかる『ストーリーとしての競争戦略』

更新:2020.10.9 作成:2020.10.9

成功するビジネスに共通することは何なのか?それは「戦略」です。しかし、ただの戦略ではありません。 「誰かに話したくなるほど面白い戦略」でなければ競合に勝つことはできないのです。 本書では、一橋大学大学院で企業の競合戦略を研究している楠木建教授が、「そもそも戦略とは何か?」、戦略を決めるにあたってどんな思考が必要か、それらを参考事例を使って解説しています。 この記事では、本書で紹介されている優れた戦略を取り上げ、それがどのように組み立てられているかまでわかりやすく紹介します。

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『ストーリーとしての競争戦略』のあらすじ

企業には、お客様のニーズを満たす、雇用を生み出す、社会貢献をするなど、さまざまな役割があります。どれも大切なミッションですが、「利益を出す」という本質を忘れてしまってはビジネスは成り立ちません。

本書の著者である、一橋大学大学院で企業戦略を研究する楠木建教授は、ライバル企業との競争下においても利益を出すためには「戦略」が重要だと述べています。

その戦略とは、他社にはない自社だけの強みを基に、人に話したくなる「ストーリー」を打ち出すことです。では、その「ストーリー」とは一体どんなもので、どのようにつくるのか。この記事で一緒に見ていきましょう。

著者
楠木 建
出版日
2010-04-23

経営者や経営を学ぶ人にもおすすめ!

企業における戦略とは、その事業の目的を達成するための手立てのこと。事業の方向性を決め、商品やサービスをどのように発展させていくのか、顧客の満足度を上げるためにはどうしたらよいのかを考え、実行していきます。

しかし、戦略を決定するまでには非常に多くの時間や労力を要するため、特に中小企業においては戦略づくりを疎かにしてしまうケースもあります。そうなるとやみくもに動くことになり、かえって時間を無駄にしかねません。どのような企業であっても戦略はビジネスにおいて必要なのです。

本書はその中でも特に、他社に勝てるビジネスをしたいと考えている経営者や、業界トップを目指すプロジェクトリーダーに読んでいただきたい一冊です。また、戦略は優秀な企業とそうでない企業を判断する指標にもなるため、経営を学ぶ人や投資をする人にもおすすめです。

優れた戦略とは?

本書では、「優れた戦略」であるかどうかについて、下記3つの評価基準を挙げています。

1.戦略がストーリーになっているか

2.戦略全体に動きと流れがあるか

3.ストーリーは強くて太くて長いほど良い

まずは本書の結論でもある、「ストーリーになっているか」。ただこうなりたいという目標ではなく、企業として活動するための軸を持っている必要があります。この軸がないと、予想外のことが起こった際に行き当たりばったりになってしまい、一貫性がない事業活動になってしまいます。

次に、「戦略全体に動きと流れがあるか」。ストーリーを構成する要素が互いに作用し、着実に前進しながら企業が目標を達成する姿をイメージできるかが重要になります。ゴールに向かって進むイメージができない戦略は、どこかに矛盾があり、途中で意味をなさなくなる可能性があります。

ストーリーは強くて太くて長いほど良い~戦略の三要素〜

続いて、優れた戦略であるための「ストーリーは強くて太くて長いほど良い」について解説します。

1つ目はストーリーの「強さ」。この強さは「可能性の高さ」を表し、誰が見てもストーリーが実現できそうなものであればあるほど強く、逆に実現できそうにないもは弱いとされます。

2つ目はストーリーの「太さ」。これは、ストーリーを構成する要素と要素の「つながりの多さ」です。一つの要素を見るときに、他の要素と関連していることが好ましく、つながっている要素の数が多ければ多いほど、インパクトや活動の結果も大きくなります。

3つ目はストーリーの「長さ」。言い換えれば「時間軸における発展性の高さ」です。ストーリーが短いと得られるものが少なくなってしまいますが、長期的に続くストーリーを描くことができれば、それだけ他社との差を広げられることになります。

戦略ストーリーを組み立てる重要な要素

ストーリーを構成する中身にはさまざまな要素がありますが、ここでは特に重要な2つを紹介します。

「コンセプト」

コンセプトとは「誰に、何を売るか」を定義することであり、「戦略の始まりはコンセプトである」と著者は述べています。「どのように」よりも「誰に、何を」という視点で考えることが望ましく、さらに「なぜ」についての明確な答えを持っておくことも、より安定したストーリーをつくることにつながります。

コンセプトづくりにおいて、人間の本性を捉えることも大切なポイントです。「自社の製品やサービスを必要とするのはどんな人か」、「どのように活用して、なぜ満足するのか」といった、提供される側の立場で価値を探る必要があります。

明確なコンセプトを持つ企業の例として、本書では「ブックオフ」を挙げています。ブックオフのコンセプトは「捨てない人のライフサイクルを豊かにする」であり、これはリユースのインフラを整えることでもあります。そしてこのコンセプトを基にブックオフでは、「自宅への中古本引き取り」や「送料無料で本を送る」などの事業活動をおこなっています。

「クリティカル・コア」

クリティカル・コアとは「一貫性と持続的な競争優位の基盤」であり、目標を達成するためのキラーパスともいえます。このクリティカル・コアには条件があります。戦略の三要素でもすでに紹介した「他のさまざまな構成要素と多くのつながりを持っていること」と、「ライバル企業にとっては、一見非合理に見えること(つまり独自性があること)」の2つです。

クリティカル・コアの事例として「スターバックス」を紹介します。業界内では「フランチャイズは低コスト・低リスク・地元密着、高いモチベーションという点で合理的」という通説があり、ライバル企業は直営方式を非合理と捉えていました。ところが、スターバックスが採用した直営方式の「オペレーション形態」は、「店舗の雰囲気」、「立地」、「スタッフ」、「メニュー」といった他のストーリー要素を支えるものとして、戦略に一貫性を与える基盤になっているのです。

戦略ストーリーを組み立てる上での原理原則

本書では、ストーリーをつくる際に意識すべきことをいくつか紹介していますが、ここではその中から抜粋してお伝えします。

エンディングから逆算する

どういう状態に到達していたいかというゴールを最初に設定します。

他社ではなく自社でしかその製品やサービスを提供できないといった「競争優位性」を実現するめには、戦略に一貫性が必要です。そのため、ゴールを起点にストーリーを作成していくのです。登場人物やストーリーの要素を動かすには、「何を」提供し、「誰が」「なぜ」喜び、最終的に「どうなるか」を考えます。

そうすることで、とりあえず目の前のことに無我夢中で取り組み、そこでの到達点をゴールとしてしまうといった事態を避け、短期間で圧倒的な成果を出しやすくします。

モノゴトの順番にこだわる

ストーリーを構成する要素に因果関係を持たせ、時間展開の中でストーリーを徐々に進めていきます。順番が大切な理由は、要素Aを達成することにより要素Bを実現できる、といった構造が多いからです。そのため、最初にストーリーの型を決め、時間の経過とともにどう変化するかをあらかじめ考えることが必要です。

一方で、ビジネスをおこなう上で不測の事態はつきものです。著者は、その時々に起こる偶然の出来事を受け止め、ストーリーに新しい要素を取り組んでいくプロセスこそが「戦略構築の本質」であるとも述べています。

情熱をこめる

「話す本人が面白がっていること」も優れたストーリーの条件として欠かせません。

「なぜおこなうか」ということをストーリーの関係者全員が理解していないと、当事者意識や実現させたいという感情が湧いてこず、モチベーションを維持することができません。ビジネスにおいて、ひとりの力で達成できることは限られており、たくさんの人と協力し合うことが必要不可欠です。多くの人を巻き込み、支え合いながらでなければ、大きな目標は達成できません。

話す本人が心の底から楽しいと思えるストーリーをつくり、そのストーリーを面白そうに話せば話すほど、共感してくれる人や助けてくれる人が増えやすくなります。そのため、思わず人に話したくなる話で人を魅了する必要があるのです。

『ストーリーとしての競争戦略』の関連オススメ本①

経営戦略についてもっと深掘りしたい人はこちら。

著者
平野 敦士カール
出版日

文章だけでは難しい内容をイラストを使いながら解説している、経営を学びはじめる人にも理解しやすい一冊です。アマゾン、トヨタといった実際の企業の戦略についても説明しています。

『ストーリーとしての競争戦略』の関連オススメ本②

同じ著者が書いたこちらの本。仕事で悩むすべての年代に向けて、仕事に対する「心構え」について述べています。仕事や人生のどんな相談に対しても「好きなようにしてください」というスタンスの回答なのですが、その解説がユニークで、ハマる人が続出中です。

著者
楠木 建
出版日

どのような企業で働けばいいのかと就職に悩んだり、転職を考えている人の手助けにもなり、楽しく最後まで読むことができる一冊です。

『ストーリーとしての競争戦略』の関連オススメ本③

『ストーリーとしての競争戦略』の事例にも取り上げられた企業のビジネス哲学を解説した一冊。

著者
ジョン・ムーア
出版日
2014-04-17

スターバックスの経営哲学、マーケティング、ブランディングなどを学ぶことができます。『ストーリーとしての競争戦略』で語られていない成功要因についても知りたい人は是非読んでみてください。

いかがでしたか。今回は企業研究をおこなう教授から学ぶ「大きな成功を収めるための戦略」についてお伝えしました。
優れた戦略とは、違いを見つけ、それをつなぎ合わせて面白いストーリーにすることだと本書では述べていました。しかしそれは一言では語り尽くせないものでもあります。ぜひ実際にストーリーをつくって、人に話し、体感していただけたらと思います。
著者は最後に、ストーリーとしての競争戦略において一番大切なことを伝えています。それは、「自分以外の誰かのため」という思いを忘れてはならないということです。即席ラーメンを世に広めた日清創業者の安藤百福が「人の役に立ちたい」という信念をもってビジネスをしていたように、成功する経営者には、切実に人の役に立とうとしているという共通点があるようです。
この記事を読んで、紹介した書籍を手に取っていただけたら嬉しいです。