テロ行為や男尊女卑などネガティブなイメージを抱きやすいイスラム教。しかし世界に目を向ければ18億人もの信者がいて、キリスト教に次いで第2位の多さです。イスラム教を理解することは、世界を知ることにも繋がるはず。この記事では、初心者でも読みやすいおすすめの入門書を紹介していきます。
世界で18億人もの信者がいるといわれているイスラム教徒。その数は年々増加していて、2070年にはキリスト教と並んで世界最大信者数の宗教になると推測されているのです。
本作では、そんなイスラム教徒の思想や暮らし、さらに過激派組織はなぜ生まれるのか、テロや戦争をなくすために必要なことは何かなどの世界情勢を解説していきます。
- 著者
- 内藤正典
- 出版日
- 2016-07-17
2016年に刊行された、現代イスラム地域研究を専門とする内藤正典の作品です。実際に中東各国を訪れて現地の人々と交流をした体験談も随所に挿入されているので、説得力があるでしょう。
日本人にとってはまだまだ馴染みの薄いイスラム教。厳しい戒律やテロリズムなど、なんとなく「怖い」と感じている方も多いのではないでしょうか。本作では、そもそもどういう信仰をしているのか、どんな慣習があるのかなど基本的なことを易しい文章で解説。彼らがとても真面目で優しく、弱者を大切にする人々だということを理解できるはずです。
また後半では、移民や難民問題についても言及。よき隣人として共生していくことを考えるきっかけになる一冊です。
イスラム教の聖典である『コーラン』を読み解いていくと、異教徒は抹殺すべき対象であり、「ジハード=聖戦」は倫理にのっとった行為である。つまりイスラム国などの過激派組織がテロ行為を起こすことは、宗教的な整合性がある……。
衝撃的な内容から偏見や誤解を招くと批判する声もありますが、イスラム教の原理を冷製に解説した作品です。
- 著者
- 飯山 陽
- 出版日
2018年に刊行された、イスラム思想研究者である飯山陽の作品です。
内容にはやや過激な部分もありますが、『コーラン』の内容をわかりやすく解説してくれています。死生観や女性の権利など、あくまで論理的にイスラム教の価値観を知ることができるでしょう。
またイスラム教の極端な教えが、SNSを介して不特定多数に影響を与えたなどの分析も興味深いところです。過激派組織のテロ行為が『コーラン』にもとづいた振る舞いであること、世界基準となっている西洋の慣習とはそもそも価値観の違いがあること、大半のイスラム教徒は「穏健派」であることなどを冷製に述べているのがポイントです。
ひとつの意見として、読む価値のある一冊。他のイスラム教に関する作品とあわせて読むのがおすすめです。
日本人から「怖い」と思われがちなことを悲しく思い、イラン人やイスラム教の面白おかしい珍エピソードを紹介した作品。
うまくいかなかったことはすべて「アッラーのお導き」で済ませてしまう、ナンの専門学校がある……など予想外の日常生活が、スパイスの効いたユーモアセンスを駆使して綴られています。
- 著者
- エマミ・シュン・サラミ
- 出版日
- 2012-04-17
2012年に刊行された、日本で暮らすイラン人芸人エマミ・シュン・サラミの作品です。作者は10歳までイランで育ち、その後来日。当事者でありながら客観的視点ももった意見を日本語で読める、貴重な一冊だといえるでしょう。
イスラム教を批判するわけでも礼賛するわけでもない姿勢が魅力的。そのうえで、イラン人がいかに陽気な人種なのかがわかるでしょう。
またイスラム教的価値観にもとづく男女格差や、テロが切り離せない存在になってしまった母国を憂慮する姿勢もうかがえます。ニュースを見ているだけでは知り得ないイスラム教に触れることができる、入門書として最適の一冊です。
イスラム教の基本である宗派の違いや、「ハラル」などの決まりごと、さらには国際情勢まで、さまざまなジャンルにまたがり、イスラム教について知っておきたいことを教えてくれる作品です。
詳しい図解で視覚とあわせて学べるのが嬉しいでしょう。
- 著者
- 池上 彰
- 出版日
- 2014-07-11
2014年に刊行された、フリージャーナリスト池上彰の作品。人気の「知らないと恥をかく世界の大問題」シリーズでイスラム世界を解説します。
シーア派とスンニ派の違い、アラブとユダヤの対立、アラブの春やパレスチナ問題、イスラム教の慣習など、知っておきたい情報が盛りだくさん。基礎知識だけでなく、私たち日本人がイスラム世界とどのように付き合っていくべきかも考えさせられる内容になっています。
複雑な世界情勢や相互関係を理解するのは至難の業ですが、図解があるのでイメージしやすいのもポイント。どんな視点でイスラム教を見ればよいのかがわかる、初心者にもおすすめの一冊です。
なぜイスラム教と欧米は対立してしまうのか、なぜ日本人のイスラム教信者は少ないのか……考えたことはあるでしょうか。
イスラム教を理解すれば世界がわかるとして、日本人のために執筆された解説本です。
- 著者
- 小室 直樹
- 出版日
- 2002-03-01
2002年に刊行された、社会学者である小室直樹の作品です。2001年に発生した「アメリカ同時多発テロ事件」をきっかけに執筆されたそうです。
他の宗教と比較しながら、社会学的視点からイスラム教を解説しているのがポイント。同じ聖地をもつキリスト教やユダヤ教のみならず、中国の思想にまで触れています。
各宗教の誕生の歴史にまで立ち返り、信者を獲得して発展した過程を知ることで、イスラム教が欧米と対立する根本的な問題を理解することができるでしょう。
イスラムの聖典『コーラン』は、唯一神アッラーから、最後の預言者であるムハンマドにくだされた啓示がまとめられたもの。その文章のみならず音韻にも意味があるとされ、完全翻訳であったとしてもアラビア語以外のものは不完全であり、すべては伝わらないといわれています。
とはいえ原書で読むのは一般的な日本人にとっては困難なこと。本書では、イスラムの基盤を示した『コーラン』を漫画で読むことができるものです。知識の入り口になってくれるでしょう。
- 著者
- Team バンミカス
- 出版日
- 2014-12-05
2014年に刊行された作品。世界の名著や聖典などを漫画にした「まんがで読破」シリーズです。
イスラム教を理解するためには、彼らの生きる基盤が示された『コーラン』を知るのは欠かせないこと。ともすればテロ行為や男尊女卑思想のもととも思われがちですが、実際にはどんな教義が書かれていて、信者たちは何を感じ考えているのかがわかります。漫画で補足しながらも内容は忠実に『コーラン』を抜粋しているものです。
また注目すべきは、『コーラン』はもともと『聖書』と同じものだったという点。歴史とともに解釈が分かれ争いに発展してしまったのはなぜなのでしょうか。
さらに本作に書かれている聖戦と現在起きているテロ行為は別物であり、本来豊かな思想をもっているはずの『コーラン』がなぜ悲劇を生み出しているのか、深く考えるきっかけになるでしょう。