老若男女を問わず、人の心を癒してくれる花。絵本の世界でもたくさん描かれています。この記事では、幼児でも楽しめるものから大人向けのものまで、花をテーマにしたおすすめ絵本を紹介していきます。
「きょうはがんばってゆきをぜんぶとかすぞ」
(『にじいろのはな』より引用)
昨日まで一面銀世界だった野原に昇った太陽は、一輪の花が咲いていることに気付きました。雪解けを待ちきれず、地上へ出てきていた虹色の花は、太陽と出会えた幸せを世界中にシェアしたいと言います。
水たまりで立ち往生しているアリに花びらを差し出して船にするなど、次々と困っている動物たちを助けるのですが、寒くなるにつれ、弱っていった花びらが風で飛んでしまい……。
- 著者
- ["マイケル グレイニエツ", "Grejniec,Michael", "あやこ, ほその"]
- 出版日
ポーランドの絵本作家マイケル・グレイニエツの作品。日本では2000年に刊行されました。マイケルは『お月さまってどんなあじ?』で「日本絵本賞翻訳絵本賞」を受賞しているベストセラー絵本作家です。
本作の特徴は、鮮やかな色使いと力強いタッチの絵。幸せを分け与えようとする虹色の花の強い想いがカラフルなイラストから伝わり、ページをめくるたびにその迫力に心を奪われます。
季節を経て次第に弱っていく虹色の花を見ると切なくなりますが、素敵な結末が待っているのでぜひ最後まで読んでみてください。
ある日、ひまわりの種を見つけたひよこのぴよちゃん。
種と話しているうちに仲良くなり、楽しみにしていた葉っぱを食べるのを止めて、成長を見守ることにしました。やがて種は、大きな花を咲かせるまでになるのですが……。
- 著者
- いりやま さとし
- 出版日
- 2004-03-30
いりやまさとしの代表作「ぴよちゃん」シリーズのひとつ。2004年に刊行されました。
花の季節を終えて枯れていってしまうひまわりの姿に、思わず感情移入してしまう読者も多いことでしょう。優しい色使い、柔らかいタッチの絵、そしてほろりとする切ないストーリーで、命を慈しむ心が美しく描かれています。
最後のシーンでは、命がこれからもずっと繋がっていくことを表現。花の一生を見ることで、命をまっとうして引き継いでいくことの尊さを知ることができる一冊です。
病気になったお母さんを助けるために、薬を探しに出掛けたカエルのけろ。
ふくろうのおじさんから、露草の花から落ちるしずくを集めると回復すると聞き、あちこち探しまわりますが、見つけることができません。諦めそうになったその時、空には満月が姿を現して……。
- 著者
- ["椿 宗介", "純, 高畠"]
- 出版日
椿宗介が文、高畠純が絵を担当した作品。1度は廃版になったものの、多数のリクエストによって2010年に復刊しました。
露草の花は昼にしか咲かないのに、お母さんを助けるしずくは夜に咲く露草からとれるそう。健気で思いやりのあるけろは、どうやって探すのでしょうか。月光のもとで色鮮やかに咲く露草の花を見つけた瞬間は、誰しもほっと胸を撫でおろすはずです。
最後はぶじにハッピーエンド。大人が読んでも、つい目に涙が浮かんでしまうような一冊になっています。
タンポポやナズナの花が咲きほこるなか、おばあちゃんと畑に向かった女の子。
畑にもたくさんの花が咲いています。おばあちゃんに名前を聞いていくと、それらはいつも食べている野菜の花でした。
- 著者
- 広野 多珂子
- 出版日
『魔女の宅急便』の挿絵でも知られる広野多珂子の作品です。2004年に刊行されました。普段は気にすることのない野菜の花を丁寧に描いた物語。広野は家庭菜園の経験から、その魅力に気づいたそうです。
作中では、女の子がおばあちゃんから花の名前と一緒に特徴や分類を聞き、学んでいきます。会話文のなかで自然と知識を身につけることができるので、野菜に興味を抱くきっかけにもなるはず。食育にも役立つでしょう。
お花が好きなトラリーヌ。毎朝、1輪の花を頭にかざっています。ある日散歩をしていると、見たことがない素敵なお花を見つけました。
次の日になってもその花を忘れられないトラリーヌは、おんなじ場所に行ってみますが見つかりません。さらに町中の花屋を探してみても、その花はないのです。
がっかりしながら自宅に戻ると……。
- 著者
- どい かや
- 出版日
絵本作家どいかやの作品。2001年に刊行されました。
表情豊かなトラリーヌがかわいらしい物語。フェルトと毛糸で描かれたイラストは見ていて飽きず、穏やかなストーリーにぴったりなふんわりと優しいもの。読んでいるだけで心がなごむでしょう。
トラリーヌが探していたお花は、あっと驚く意外なもの。予想外の思わぬ展開も楽しめる一冊です。
農園に御用聞きに現れた洋傘直しの男。洋傘だけでなく刃物研ぎもすると申し出て、花があふれる農園で仕事を始めました。
しかし剃刀を研いでもらったものの代金はいらないと断るため、園丁は困ってしまいます。そこで園丁は、代わりに自分が丹精込めて育てた花を見ていかないかと誘うのです。
洋傘直しは、園丁から花の説明を聞きながら農園を歩きます。白いチューリップが咲いていて、園丁が花が空に合図を送っているようだと言うと、洋傘直しにも立ちのぼる蒸気のようなものが見えてきて……。
- 著者
- ["宮沢 賢治", "田鶴子, 田原"]
- 出版日
宮沢賢治が描いた童話の世界に、田原田鶴子がイラストをつけた作品。2003年に刊行されました。春の日差しの明暗、空へ上昇していく水蒸気……美しい自然現象を物語にしていくその才能はやはり圧巻です。詩的な文章とあたたかい絵が、どこかファンタジックな内容にぴったりでしょう。
チューリップが招いた幻術にかかった2人。奇妙な景色を見て、酩酊したかように心地良い時間を過ごします。そして午睡から覚めたような感覚を味わいながら別れ、そこには何事もなかったかような春のうららかな景色が広がっていて……。大人も子どもも、深い余韻を感じられる一冊です。