大人になった今でも、人と会話することに苦手意識を持っている、あるいは、うまくコミュニケーションを取ることができず、悩んでいる人はいませんか。パソコンやスマホが普及した現代は、メールやSNSでコミュニケーションを取る機会が増えています。そのため、実際に会って自分から話しかけるようなアナログな会話が苦手になった人も増えているのかもしれません。そんな現代においても、得意な会話の技術を活かし素晴らしい成果を生み出す人もいます。本記事では、『ダイアローグスマート』の内容から、会話への苦手意識をなくし、行動や意識を変化させるような創造的なコミュニケーションについて解説していきます。
同じ内容を伝えても、素晴らしい成果を出す人と失敗してしまう人とに分かれます。 理由はいくつか考えらるでしょう。たとえば才能の違いであったり、高いモチベーションを維持しているかどうかであったり。
しかし、著者の意見は違います。 『スマートダイアローグ』の著者ケリー・パターソンがおこなった「成果を出し続ける人と、そうでない人の違いは何か?」についての調査。この結果から 「優秀な人は、どんな状況でも正確なコミュニケーションができる」ということがわかったのです。
優秀な人材になるためには、「重要な局面でいかに考え、いかに話すべきか」という会話(=ダイアローグ)が重要となります。 ダイアローグには驚くべき力あり、身に付けることで素晴らしい結果が得られると著者は語ります。
「人見知りで初めて会う人と会話をするのが苦手」 「言いたいことをうまく言えずに黙ってしまう」
このように会話に対して悩みを持っている人は多く、ある調査では、日本人の約7割がコミュニケーションを苦手と感じているそうです。
コミュニケーションが苦手と感じている人は、本書で紹介されている原則やコツを意識し、できることから実践していきましょう。 しっかりとした会話ができるようになると、人間関係だけでなく、行動や環境まで変化します。
また、本書に出てくる具体例は、ビジネスシーンだけでなく、夫婦間の会話など日常にまつわる普遍性があります。どんな場面であれ、会話のコツを掴みたいと考えている人のためになる一冊です。
- 著者
- ケリー・パターソン ジョセフ・グレニ― ロン・マクミラン アル・スウィツラ―
- 出版日
- 2010-09-25
ダイアローグは「対話」と訳されます。このスキルにより、場面に応じて適切な対応で会話をまとめあげることができます。 さらに、場の雰囲気が良くなり、他の人の考えも自由に行き交うようになるという相乗効果もあるのです。
ダイアローグで大切なことは、会話をこれからの行動につなげたり、別の視点から改善策や新しい発想を見つけだすことです。お互いの発言が正しいか間違っているかの判断は重要ではありません。
本書では、ダイアローグを成功させるための原則として
・自分から始める
・自分自身を正しく理解する
・勝ち負けや二者択一に惑わされない
の3点を挙げています。この3原則について詳しく見ていきましょう。
何を話していいかわからないから自分から話しかけずにいると、気まずい雰囲気になってしまいます。 さらに、自分から会話を開始することには「会話の話題を自由にコントロールできる」という大きな利点もあるのです。
この時、相手の関心のあることについての会話を始めることで、相手も話しやすくなります。 たとえば、部下の趣味が音楽だった場合には、「どんなジャンルの音楽が好みなの?」「よく聞くアーティストはいる?」などと質問することで、相手も喜んで話を始めてくれるのです。
どんな人でも、自分に対して興味を持ってくれたり、言われて嬉しい言葉をかけることで喜んでくれます。
人間の持つ心理の1つに「返報性の原理」というものがあります。嬉しいことをしてもらった時、それに対してお返しをしなくてはならないと考えるというものです。
相手のことを知りたいと思ったとき、まず自分から自分自身のことを伝える必要があります。会話で、自分の情報を与えることで、相手に「この人は自分のことについて話してくれたから、こちらも自分のことについて教えてあげよう」と思わせることができるのです。この会話のために、自分自身を理解しておくことが必要なのです。
注意が必要なのは、自分のことばかり話し始めないことです。相手に嫌な思いを与えてしまったり、迷惑をかけてしまう恐れがあります。 初めて会う人や、まだ打ち解けてない人と話す際には、誰でも知っているような話題からスタートし、徐々に趣味や興味のあることに話題を変えていきましょう。
自分のことを理解するためには、自分自身に対して質問し、自己分析をするというやり方があります。 「人に言われて今まで1番嬉しかった言葉は?」「他人からどのような性格と言われることが多いか?」などの問いからは、自分が大切にしている価値観や客観的に見た自分の性格が見えてきます。
自分を知ることが、相手のことを知ることにつながるのです。
うまく会話をできない要因が、勝ち負けや優劣への意識にある場合もあります。
「どこに勤めているのか」「どの大学を出ているか」など、純粋な興味から話をすることはよいですが、そこに勝ち負けや優劣を持ち込んではいけません。 どんなことでも、相手と比べられることは聞いている側にとってよい気分ではないのです。相手によっては、偏見や差別をされたと感じてしまうかもしれません。
会話が上手な人は、勝ち負けや優劣へのこだわりがありません。 平等で公平を意識することによって、自分も相手も対等の立場になり、仲間意識も生まれやすくなるのです。勝ち負けに惑わされないと人間関係によい影響を与えてくれます。
また、二者択一で相手に選択を委ねる話し方は、ついどちらかで答えてしまうという人間の心理が働き、交渉での成功率を高めるというメリットがあります。
しかし、デメリットもあり、2つの選択肢を出してどちらかを答えてもらうように誘導する事は、その選択肢に含まれない中間の意見を排除してしまうことに繋がります。「3つめの選択肢」がよい意見であるかもしれないのに、その可能性を潰してしまうのです。白か黒ではなく、中間のグレーがあることを意識して会話しましょう。
ここまで3つの原則を見てきましたが、ダイアローグのコツはほかにもあります。著者は、ダイアローグをスムーズにおこなうために2つのルールを紹介しています。
そもそもダイアローグとは、目的があっておこなうものです。
たとえば営業であれば、相手に対してメリットになる提案をするといった目的があります。 目的を明確にしておくことで、お互いの関係性やどのような展開望ましいかが把握できます。これにより、話すことの準備や、受け入れることを想定することが可能になるのです。
人間関係がうまくいかない原因が、敬意を示していないことにある場合も多々あります。
自分より上にいる人や優れている人に敬意を示すことは大抵の人にとって容易なことです。しかし、ふとした時に相手の劣っているところを発見してしまうと、相手を軽視したり、自分より下に見てしまうことがあります。 このことが、常に相手に敬意を示すことの難しいポイントになるのです。 会話の相手に対して敬意がないと、そのことに相手が気づき、相手も自分に対して敬意を示さなくなります。
すぐに敬意を示すことができる相手であればよいのですが、初めて会う人にいきなり敬意を示すことはなかなかできないかもしれません。 そのような場合には、「好意・好感を示す」ことから始めてみましょう。
敵意を持っている人より、自分に好意を持ってくれる方が、安心して接することができます。 「その服おしゃれですね」や「笑顔が素敵ですね」など、目に見える部分から好感を持っていることを、会話の中で表現しましょう。
ここまでポイントを絞って説明してきましたが、本書ではより詳しい説明やほかの場面で使えるテクニックも満載です。気になっている方はぜひ手に取って読んでみてください。
- 著者
- 野口 敏
- 出版日
他の著者が考える「会話術」について知りたい人はこちらがおすすめ。
著者は、今までに5万人以上の話し方、コミュニケーションを指導してきた「話し方教室TALK&トーク」を主宰する野口敏氏です。
会話をするのが疲れる、面倒だと思ってしまう人に向け、実生活にすぐ生かせるノウハウや会話フレーズを紹介しています。 この一冊をマスターすれば、コミュニケーションで困ることはなくなるでしょう。
- 著者
- ["ケリー・パターソン", "ジョセフ・グレニー", "デヴィッド・マクスフィールド", "ロン・マクミラン", "アル・スウィツラー", "本多 佳苗", "千田 彰"]
- 出版日
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- 著者
- 鴨下 一郎
- 出版日
こちらは相手に安心感を与える人の共通点を紹介してくれる一冊になります。
著者は、ストレスに負けない体について研究をおこなう医学博士で、 「笑顔には魔法のような効果がある」「身の回りにいる50人を大切にしよう」など、安心感を持つためのヒントを、具体例も用いて紹介しています。
この本を読んで、あなたも人を安心させられる人になりませんか?
今回は成果を出し続ける人材になるための「会話術」についてお伝えしました。相手を理解し、相手に喜んでもらうことが、円滑なコミュニケーションおいて重要でした。本書ではこの他にも、「信用出来ない相手」や「個人的な問題で話しにくい」など、会話することが難しいケースにおいての実践的アドバイスがあるので、気になる人は読んでみてください。