5分でわかる測量士!国家資格の種類から年収まで。測量士の仕事をすべて解説!

更新:2021.12.4

裏方の主役、それが測量士です。ビルや商業施設、インフラ設備などを設計するわけでもなく、直接重機や工具を使って建築物をつくり上げるわけでもありません。しかし建築物の安全性を担保するためには測量業務が不可欠。その建築物の良し悪しの評価は測量士次第というわけです。そんな縁の下の力持ち的な測量の仕事とは。測量仕事の資格の種類や年収事情なども気になるところですよね。 本記事では仕事内容や資格、給与事情などの解説に加え、測量士を目指す人のためになる本も紹介します。

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測量士の仕事とは。どんなやりがいがある?

測量士は裏方の仕事であることを冒頭でお伝えしましたが、実際どのような仕事をしているのでしょうか。また、どういった時にやりがいを感じるのでしょうか。

測量士の仕事内容

測量とは、土地や建物、自然物に人工物、生活を営む上で欠かせない環境の土台部分を、計測機器で測る仕事です。

主な業務は事務作業、外での作業に分けられます。

◾️事務作業

 

  • 作業計画・測量計画の立案
  • 観測データを元にした図面作成
  • 製図機器で描画
  • 必要な書類作成
  • 依頼人への交付

測量士はまず測量をおこなう前に、作業計画書の立案・作成をおこなわなければなりません。測量は依頼があっておこないますから、依頼人からの依頼内容によって測量計画を練ります。

測量したデータを製図し、必要な書類などを整えるのも、測量士の仕事のひとつです。

◾️外での作業

 

測量計画を元に、「土木測量」「地図測量」「地籍測量」「水準測量」など適切な方法を用いて測量をおこないます。

主におこなうことが多いのは、建設工事と建物の安全性を確認するために測量計画を策定し、計測作業をおこなう「土木測量」です。測量データは、住宅やビルなどの建設工事から、道路や橋、鉄道、ダムなどのインフラ整備工事まで、あらゆる工事の基礎として利用されます。

測量の方法は多くありますが、そのなかでも広く用いられるのは水準測量という測量法。三脚に取りつけた水準器(レベルとも呼びます)を水平にして、前方に立てたポールの目盛りを読み取り、その2地点間の高低差を計測する方法です。

主にトンネルや道路、河川などの土木工事に使われ、地盤沈下量調査のほか地震予知、噴火予知などの観測に利用されます。

測量士の仕事のやりがい

◾️社会貢献度が高い

ひとつ目は人の安全を守るという社会貢献度の高さです。

測量士は実際に建物を立てるわけではなく、目に見えるものを残すといった仕事ではありません。そのためたとえ規模の大きい建築物の工事に携わったとしても、完成した時に達成感が得られるかと言うと、残念ながらそうでないと思います。

しかしそれを利用する人の安全は「自分たちの仕事によって守られる」と思えれば、縁の下の力持ちとして重要な仕事に携っていることを実感できるでしょう。

◾️最新技術を扱える

もうひとつはメカニックなどの技術職にも多い、技術や精度の高さを追求できるという点です。最新技術を搭載した測量機器を操作し、いかに誤差を最小限にとどめて精度の高いデータを集めるかというところにワクワクする人が多いようです。

測量士の年収は?給与事情

専門的な測量技術を持ち、社会的に重要な仕事のひとつである測量士。測量士の資格は国家資格であり、建物を建てるのに欠かせない職業であるため、仕事は安定していると考えられています。それでは年収は給与事情はどうでしょうか。

測量士の平均年収は?

厚生労働省が公開している「賃金構造基本統計調査の職種別賃金額」によれば、測量技術者の平均月給は下記の通りです。

 

  • 平成27年度:約29万円
  • 平成26年度:約29万円
  • 平成25年度:約29万円

 

月給を1年間で計算すると、約350万円となります。この額にボーナスなどの特別給与額が加算され、平均年収は420万~480万円ほどとなります。

これは平均的なサラリーマンとほぼ変わらないか、少し高いくらいの水準です。

業種によって年収の平均値が変わる

また業種によっても給与は異なり、土木会社の場合は約430万円、建築会社は約380万円、開発業者は約410万円、官公庁は440万円ほどが平均値と言われています。

年齢別で見ていくと最大年収を迎えるのは50代で約5448万円。働き盛りの30代の場合は40406万円ほどのようです。

測量士になるには?資格取得の2つの方法

国や自治体による公共測量は「測量士」の資格が必要です。測量士の資格には「測量士」と「測量士補」の2種類があります。この章で2つの資格の違いと取得方法、資格試験のご合格率について解説していきます。

測量士資格の種類

測量士および測量士補は、建築・建設・土木工事や地図製作などの基本測量や公共測量従事するために必要な資格です。2つの資格の違いは、測量士のみ測量計画を作成を行なえるという点。測量士補は測量士の作成した測量計画の指示に従って測量業務をおこなうことになります。

測量士および測量士補の資格取得方法

測量士および測量士補の資格を取る方法は、以下の通りぞれぞれ2つの方法があります。

1.測量士試験に合格する

国家試験を受けて資格を得る方法です。受験資格はなく、誰でも受験可能です。

2.学校に通って資格を取得する

文部科学大臣の認定を受けた大学、短大、高専、専門学校で測量を学び、卒業後に測量業者のもとで経験を積むことで資格が取得できます。詳しい条件は以下の通りです。
 

<測量士の場合>

 

  1. 文部科学大臣の認定大学で測量に関する科目を修め卒業し、1年以上の実務経験
  2. 文部科学大臣の認定短期大学、高等専門学校で測量に関する科目を修め卒業、3年以上の実務経験
  3. 国土交通大臣の登録を受けた測量に関する専門の養成施設で1年以上、必要な専門知識および技能を修得、2年以上の実務経験
  4. 測量士補で、国土交通大臣の登録を受けた測量に関する専門の養成施設で必要な専門知識および技能を修得

 

<測量士補の場合>

 

  1. 文部科学大臣の認定学校で測量に関する科目を修め卒業
  2. 国土交通大臣の登録を受けた測量に関する専門の養成施設で1年以上、必要な専門知識および技能を修得

 

測量士資格試験の内容

実務ではない方法で資格取得を目指す場合は、測量士資格試験に合格する必要があります。試験は年に1回おこなわれ、誰でも受験が可能です。

測量士資格試験について

「測量士」の試験では、管理技術者として必要な測量技術および測量成果の管理・評価に関する知識を問う問題が出題されます。また、公共測量の計画の作製や実務に関する知識についても問われる内容になっています。

測量士資格試験の内容について

試験は全9科目で構成されています。

 

  • 測量に関する法規およびこれに関連する国際条約
  • 多角測量
  • 汎地球測位システム測量
  • 水準測量
  • 地形測量
  • 写真測量
  • 地図編集
  • 応用測量
  • 地理情報システム

 

試験は午前と午後に分けておこなわれ、択一式が28問と、必須問題1題、選択問題が2題の計31問が出題されます。

このうち、択一式が400点以上かつ択一式と記述式が合計910点以上の得点で合格となります。配点1400点のうち900点などでそこそこ合格の難易度は高いといえるでしょう。

測量士試験の合格率は?

合格率のデータを見ても、その難易度が伺えます。

令和元年度:14.8%
平成30年度:8.3%
平成29年度:11.7%
平成28年度:10.4%
平成27年度:11.5%

測量士の合格率は10%台と難関なため、比較的合格しやすい測量士補のほうが受験者数が多い傾向にあります。いきなり測量士資格を取得するのは難しいため、まずは測量士補として経験を積み、並行して勉強もしながら、測量士を目指したほうがよいでしょう。

参照:国土地理院

測量士補資格試験の内容

測量士補資格試験について

「測量士補」の試験では、主に技術面においては測量士試験の基礎的な知識を問われる問題が出題されます。また公共測量に従事する者として測量技術、関連法令、公共測量など実務に必要な知識についても問われるような問題が出題されます。

測量士補資格試験の内容について

試験科目数は8科目と少なく、また問題数に関しても択一式問題が28問のみ出題されることになっています。

 

  • 測量に関する法規
  • 多角測量
  • 汎地球測位システム測量
  • 水準測量
  • 地形測量
  • 写真測量
  • 地図編集
  • 応用測量

 

試験は午前のみで配点は700点。そのうち450点以上の得点が合格基準となっています。測量士試験と比べると試験にかかる時間も、問題数も少なくなっているのが分かります。

測量士補資格試験の合格率は?

測量士補資格試験の合格率は、20〜40%台を推移しています。測量士試験より合格率が高いとはいえ、一般的に見れば難易度の高い試験といえるでしょう。

令和元年度:35.8%
平成30年度:33.6%
平成29年度:47.3%
平成28年度:35.9%
平成27年度:28.0%

知識を問われる問題と、計算を問われる問題にわかれていますが、知識問題は過去問題の焼き直しが多いため、対策は比較的簡単です。

合格率が低く出ている理由は、計算問題です。主に測量の実務に従事する測量士補は、数字を正確に計算できる能力が求められます。計算問題は対策するのが困難なため、計算が苦手な人がふるいにかけられ、合格率が落ちているのです。

計算問題の対策がしっかりできているかどうかが、合格の鍵を握ると言っても過言ではありません。ここからは計算などに不安を感じている方に向けた書籍をご紹介します。

参照:国土地理院

数学や数式に抵抗がある人に

著者
["栗原哲彦", "佐藤安雄", "吉野はるか 作画", "ジーグレイプ 制作"]
出版日

文字や数字だけで書かれているような小難しい本が苦手な方が、躓きすぎることなく取り組むのに好適なマンガシリーズです。

距離測量、トラバース測量、平板測量、水準測量といった教育機関で講義される測量の基礎だけを取り上げた分かりやすい構成になっています。

「なぜその計算をするのか」「なぜその概念が必要なのか」などをストーリーに沿っで解説してくれるため、中学や高校の数学が苦手だった人にも理解しやすくなっています。

何かを学ぼうと難しい本を手にして挫折した経験がある人は、まずはこれを手に取ってみてください。

まずは測量士補からチャレンジ

著者
中山 祐介
出版日

本章でお伝えした通り「測量士」の試験は非常に難関です。ですので、いきなり高い山に挑戦するよりは、「測量士補」の資格を得て、基礎知識を固め自信をつけて臨むほうが得策です。

本書は最も効率よく合格することを追求した学習書となっています。左ページに試験の重要テーマとなる必須知識、右ページに問題を掲載しています。

学んだばかりの内容を使って問題を解いていくため、知識の定着が早まり効率よく勉強ができます。この1冊に加えて、先にご紹介したマンガで測量の基礎を学ぶことで、しっかり理解しながら試験対策に取り組めるでしょう。

ビジュアルで理解をサポートしてくれる

著者
["包国 勝", "茶畑 洋介", "平田 健一", "小松 博英", "粟津 清蔵", "粟津 清蔵"]
出版日

本書は測量について基礎的知識を身につけるための入門書です。

土木のさまざまな分野を、身近な例を使いイラストや図で説明してくれています。はじめて測量を学ぶ人の理解をサポートしてくれます。さらに各章末には「章のまとめ」を設けており、学んだばかりの知識を即整理できるのも嬉しいです。

測量について論理的には理解できているけれど、頭の中でイメージするのが苦手という方はぜひ一読してみてください。初心者にも易しい内容になっていますので、これから測量について学びたいという方にもおすすめの1冊です。

「測量士」の試験に合格するのは非常に困難です。ただし、厚生労働省指定の大学や専門学校で知識をつけてから現場経験を積むことで資格を得る方法もありますし、「測量士補」の資格をとって測量業務に携わりながら測量士にチャレンジするというやり方もあります。自分に合った方法で測量士を目指せるのがこの仕事の特徴です。 
ここで紹介している本は、入門書として興味や知識を高めてくれる良書です。ぜひ一度手に取って測量の勉強に役立ててみてください。

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