「リース業」と言われて、具体的なイメージができる人は少ないでしょう。リース業とは、設備機器や自動車などの高額品を企業の代わりに購入し、長期間で貸出をおこなう事業のことです。リース業にはさまざまな商品があり、実は多くの企業がリースのサービスを利用しているのです。 本記事では、気づかぬところで実はお世話になっているかもしれないリース業界について解説します。キャリアのために役立つ書籍も紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね。
「リース」は英語の「lease」です。「lease」には機械や設備の貸出という意味があり、主に長期間で、リースするものも新品である場合のことを言います。
似た言葉に「レンタル」がありますが、レンタルは短期間で、貸出されているものも中古品である場合が多いです。
ユーザーはリース会社にものを借りて手数料を払います。そのため、リース会社はまず何よりも貸すものを用意しておく必要があります。
コピー機やパソコン、オフィス用家具などは、それらを製造している会社やその関連企業がリースをおこなっている場合もあります。そのような場合は自社の在庫からリース分をストックします。メーカーではないリース会社は、メーカーからリースする機材を事前に購入しておきます。
「機器を事前に購入して貸すだけでそんなに儲かるの?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。確かに手数料だけではそこまで大きな利益を望めない場合もあります。
しかし、リースに使って返却された機器は、中古品として販売することができるので、ここからも利益が出ています。中古パソコン市場などにはリース終了品が多く出回っていますので、ぜひ探してみてください。
少し文脈が異なる話としては、リース業界には金融サービス業としての側面もあります。たとえばA社が事業拡大のためにビルを1棟購入したがっているとします。しかしA社はすでに銀行から融資を多額に受けているため、ビル購入のためのローンを組むことができませんでした。
このようなときにリース会社の出番があります。リース会社がかわりにそのビルを購入し、リースとしてA社に貸すのです。このとき、購入金額+手数料分程度のリース料を払い終わったらビルの所有権がA社に移るという契約をします。
こうすると、実質的にリース会社に立て替えてもらった購入金額をあとから返済するという仕組みができます。ある程度規模の大きい取引をおこなうリース会社は、こういった「ファイナンス・リース」と呼ばれるサービスを多くおこなっています。
身近にあるものでリースに関係あるものを探してみましょう。
履歴書などを印刷するためにコンビニの複合コピー機を利用したことがあるでしょうか。実は、あのコピー機もリースなのです。各コンビニは年数を決めて、リース業者からコピー機を借ります。リースの代金には保守点検の費用も含まれていることが多く、不具合があったり、消耗品の交換が必要になったりした場合はリース業者が対応します。
コピー機のリースはコンビニだけでなく一般のオフィスでもおこなわれています。それだけでなく、高価な機器はリースになっていることが珍しくありません。
たとえば業務に使うパソコンやインターネット機器・プリンターなどです。これらのものは購入することもできるのですが、リースを選ぶと一定の期間で交換できたり、保守点検にかかる費用が一定だったりと、出費の予測がつきやすいなどのメリットがあります。
オフィス関係では、電子機器以外にもリースによって導入されているものがあります。代表的なものでは事務机・椅子・ロッカーなどです。オフィスの引っ越しや配置換えによって交換が必要になることがしばしばあるため、購入するよりも融通が利きやすいと選ばれることがあります。
店舗で商品を並べるための棚やカウンター、レジなどもリースになっていることが多いものです。
ここまで読んでくると、リースになりやすいものの傾向が見えてきたのではないでしょうか。購入金額が比較的高価で、耐用年数が事前にある程度予測でき、使用者の都合で稀に交換が必要になることがあるものがリースの対象になることが多いのです。
また、リースが選ばれる理由には税制上の問題もあります。一定金額以上のものを購入した場合、それは事業者の「資産」になります。資産になるというのは、簡単に説明すると「手持ちの財産が増えた」とみなされることです。放っておくと税金の課税対象になってしまいますので、減価償却という制度を使って毎年財産を減らす手続きをしなくてはなりません。
一方、リースはリース業者のサービスを利用することになるので、多くの場合そのまま経費として計上することができます。年間の総額が購入する場合と変わらなくても、帳簿上の扱いが異なるのです。
さて、もう少しリースが利用されている分野を見てみましょう。たとえば病院でもリースはたくさん導入されています。医療機器は高価で、かつ最新のものに定期的に交換する需要もあるためリースが好まれます。歯科医院の椅子や、内視鏡のカメラなど、一度はお世話になったものもリースされているかもしれません。
最近では乗り物もリースが増えています。航空機はこれまでは購入する会社が多かったのですが、LCCなどの小規模な航空会社が増えたことによりリースの需要が高まってきました。
自動車のリースは、もしかしたら目にしたことがあるかもしれません。「常に新車に乗りたいあなたに」「車好きのあなたに」と言った謳い文句で広告がされています。「ローンで買って10年乗る」というスタイルから、「好きなときに乗り換える」というスタイルに人気が集まりつつあります。
職業について調べている人が特に気になるのは、業界全体の動向ではないでしょうか。概観を見てみましょう。
ここ10年ほど、リース業界は縮小傾向にありました。主な理由はリースに対する税制が変更されてリースのメリットが減ったことと、リーマンショックの発生が重なったせいだと言われています。公益社団法人リース事業協会の統計に基づくグラフを見てみると、年によってはピーク時の3分の2程度に業界規模が落ち込んでいることが分かります。
参考:変貌遂げるリース業界 | 編集ページ | 東洋経済オンライン
リース統計 - 公益社団法人リース事業協会
企業によっては海外に活路を見いだしているところもあります。とくに経済成長が著しいアジア諸国では設備投資が進んでいますので、その需要に合わせてリース事業を展開しているのです。海外に力を入れている企業に入社した場合は、海外勤務や出張などが増えるかもしれません。
リース業界の主要企業3社をご紹介します。
ファイナンス・リースやオペレーティング・リースなど企業によって力を入れているリース商品が異なりますので、就活時の企業研究はしっかりおこなうことをおすすめします。
オリックス株式会社はリース業界ではトップの売上高を誇っています。売上高は約2兆5千億円。リースは主に法人向けにおこなっており、4つのリース業を展開しています。
参照:オリックス株式会社
三井住友ファイナンス&リース株式会社の売上高は約1億4千億円です。幅広いリース業をおこなっており、特に強いのが航空機リース事業です。他には医療機器や不動産のリースなど8つのリース業を展開しています。
東京センチュリー株式会社は、伊藤忠商事などを母体とする企業です。売上高は約9761億円。幅広い商品展開と、海外にも事業展開をしているところが強みです。
参照:東京センチュリー株式会社
- 著者
- ["東洋経済新報社", "東経="]
- 出版日
東洋経済ONLINEを運営している東洋経済新報社が、「東洋経済INNOVATIVE」でリース業界の特集をしています。制度変更後の業界動向についてよくまとまっている1冊なので、業界研究に活用できるでしょう。
今までのリースは企業向けにおこなわれていましたが、近年では法人だけでなく個人消費者向けにもそのサービスは展開されつつあります。
過去から現在までのリース業の変遷を3時間ほどで辿れる1冊となっています。あらためて業界への理解を深めたい方にとってもおすすめの内容ですよ。
- 著者
- TAC貸金業務取扱主任者講座
- 出版日
リース業界には、金融サービス業としての側面もあります。リースそのものは金融業ではありませんが、サービスを円滑に進めるために金融業の資格を取得している企業もあるのです。
金融関係の資格のうちリース業界で身近なもののひとつに「貸金業」があります。資格取得は修飾語でも問題ないでしょうが、関心のある人は早めに勉強をはじめておくとよいかもしれません。
- 著者
- 滝澤 ななみ
- 出版日
不動産取得にまつわるファイナンス・リースは、リース会社だけでなく不動産業からの参入も目立つようになってきています。不動産は出入りする金額が大きいだけに大変な商材ですが、それだけにやりがいもあるといえるかもしれません。
不動産に関わるなら、宅建業法の知識はぜひ持っておきたいところです。勉強がてら宅建士の資格を取っておくと、転職などの際にキャリアにとってプラスになるかもしれません。
あまり身近に感じることの少ないリース業界ですが、知ってみると意外と触れたことのある人も多かったのではないでしょうか。業界特有の課題もありますが、「必要なものを融通する」という意味ではなくてはならない業種でもあります。興味を持った人はぜひ関連書籍も読んで知識を深めてみてください。