5分でわかるアラブ首長国連邦(UAE)の歴史!治安や政治、現代までの歴史を解説

更新:2021.11.23

中東屈指の金融都市ドバイを有するアラブ首長国連邦。UAEという略称で知られています。この記事では治安や政治、石油産業なども含めて、古代からの歴史をわかりやすく解説。おすすめの関連本も紹介するので、チェックしてみてください。

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アラブ首長国連邦(UAE)ってどんな国?人口、宗教、治安、連邦共和国の政治とは

 

中東のアラビア半島にある、連邦国家のアラブ首長国連邦。略称はUAEです。

アブダビ首長国、ドバイ首長国、シャールジャ首長国、アジュマーン首長国、ウンム・アル=カイワイン首長国、フジャイラ首長国、ラアス・アル=ハイマ首長国という7つの首長国で構成されています。首都はアブダビ首長国の首都でもあるアブダビ、最大の都市はドバイ首長国のドバイです。

「首長」とは、イスラム世界における君主の称号のひとつである「アミール」の訳語で、もともとは遠征軍の長や征服地の総督を指す言葉でした。宗教的な権威の意味合いが強い「カリフ」に比べてより世俗的な称号です。

アラビア半島の南東部に位置していて、オマーン湾とペルシア湾に面し、サウジアラビア、オマーンと国境を接しています。

国土面積は日本の約4分の1の8万3600平方キロメートル。人口は約960万人です。国土の大半は砂漠地帯で、年間を通じて雨はほぼ降りません。夏季の気温は50度以上になることも珍しくなく、雨は降りませんが海が近いことから、湿度は80%と高いです。

人口のうちUAEの国籍をもっている人は10%ほどしかいないそう。大半はイラン人やインド人、フィリピン人など、出稼ぎのためにやって来た外国籍の人々です。UAEでは家族を連れた出稼ぎは認めらておらず、失業した場合は強制送還されるなど、外国人に対して厳しい管理体制が敷かれています。

一方でUAEの国籍をもっている人に対しては、教育費無料、所得税免除、公務員への優先登用、低所得者への住宅交付や給付金など手厚い支援があるのが特徴です。

公用語はアラビア語で、国教はイスラム教。ただ規制は緩く、信教の自由が認められているので、ヒンドゥー教やキリスト教、仏教などを信仰することもできます。イスラム教の戒律は、ドバイでは酒類の販売や女性が肌を露出することなども認められていますが、シャールジャではいずれも禁止されているなど各首長国で異なります。

UAEの政治は、7つの首長で構成される連邦最高評議会を最高意思決定機関としていて、国家元首である大統領や、首相を兼任する副大統領はこの連邦最高評議会から選出されます。ただ実際は、大統領にはアブダビ首長、副大統領にはドバイ首長が就くことが慣例です。また内閣に相当する閣僚評議会は大統領が任命し、一院制の連邦国民評議会は各首長が任命します。

2005年、国民の国政への参政権が認められ、2006年に初めての議会選挙がおこなわれましたが、有権者は各首長が選出した2000人ほどにとどまりました。

連邦政府の予算はアブダビが8割、ドバイが1割、連邦政府自身の税収1割でまかなわれていて、他の首長国の負担はありません。外交・軍事・通貨などの制度は連邦政府が監督していますが、石油をはじめとする資源開発や経済政策、治安維持、社会福祉、インフラ開発、教育などは各首長国に権限があります。

治安はよく、世界経済フォーラムが発表した「旅行・観光競争力レポート」の安全部門では日本よりも上位にランクインしています。

アラブ首長国連邦(UAE)と石油産業

 

UAEのGDPは約4200億ドル。国民ひとり当たりに換算すると約4万3000ドルとなり、日本を上回っています。

主な産業は石油産業で、GDPのおよそ4割を占めるほど。原油確認埋蔵量は約980億バレル、天然ガスの確認埋蔵量は6兆億立方メートル、最大の輸出先は日本です。

これらの天然資源の多くはアブダビ首長国で産出しているもので、ドバイやシャルージャでわずか、他の首長国ではまったく産出していません。

ドバイでは石油産業ではなく、ビジネス環境や都市インフラの整備、外国企業への優遇措置などを通じて欧米やオイルマネーで潤う周辺諸国からの投資を引き寄せ経済成長し、中東随一の金融都市として発展を遂げています。

近年では観光開発にも注力していて、パーム・アイランドと呼ばれる人工島リゾートや完成当時は世界一高い建造物として話題となったブルジュ・ハリーファ、国際線旅客数で世界一を誇るドバイ国際空港などが相次いで建設されました。

その結果、2018年には海外からドバイへの宿泊をともなう来訪者数が約1600万人に達し、来訪者の多い世界都市ランキングで4位にランクインしています。

さらに食糧確保のために海水を淡水化して大規模な灌漑農業を実施するなど、農業にも積極的に投資をしていて、砂漠の国でありながら食料自給率は80%に達するなど、石油依存を低下させ経済を多角化させる取り組みが継続的に実施されているのです。

アラブ首長国連邦(UAE)の歴史をわかりやすく解説!アラビア半島の歴史、オマーン帝国とイギリスの支配

 

UAEがある地域で最古の人類の形跡は紀元前5500年頃にまでさかのぼります。紀元前2500年頃には、この地域にマガンという国ができ、メソポタミア文明とインダス文明間でおこなわれていた海上貿易の中継地として栄えました。

マガンが衰退した後、紀元前6世紀頃にはペルシア湾の対岸で興ったアケメネス朝ペルシアの支配下に、7世紀にはイスラム帝国、その後はオスマン帝国の支配下に入ります。

16世紀になると、ポルトガルの探検家ヴァスコ・ダ・ガマが喜望峰を越え、インドへの航路を発見。ペルシア湾にも来航し、海岸付近はポルトガルの支配下に置かれました。

その一方で、内陸部には17世紀から18世紀にかけてアラブ人が移住し、現在のUAEを構成する首長国の基礎となる国が形成されます。彼らは、ヨーロッパや事実上イギリスの保護国となっていたオマーン帝国を海上で襲撃し、地域一帯は「海賊海岸」と恐れられました。

19世紀の初頭、イギリスが海賊の討伐に乗り出し、1820年には休戦協定を締結。1835年には「永続的な航海上の休戦に関する条約」を締結してイギリスの支配下に入り、ペルシア湾沿岸部は「休戦海岸」と呼ばれるようになりました。

この時、オマーン帝国との間にも休戦協定を締結したことから、オマーン帝国は陸上における勢力拡大ができなくなり、東アフリカへと目を向けザンジバルなどの沿岸域に勢力を拡大。巨大な海上帝国を築いていきます。その一方で、休戦海岸の諸首長国は1892年までにすべてがイギリスの保護下に置かれました。

アラブ首長国連邦(UAE)の歴史をわかりやすく解説!UAEの結成から現代まで

 

20世紀なかば、二度の世界大戦が終わり覇権国の地位をアメリカに譲ったイギリスにとって、世界各地にイギリス軍を駐屯させることが経済的負担になっていました。ハロルド・ウィルソン首相は、1968年にスエズ以東からの撤退を宣言。湾岸諸国やアフリカの植民地の独立を認めます。

アブダビの首長だったザーイド・ビン=スルターン・アール=ナヒヤーンは、これをきっかけにカタールやバーレーンを含めた9つの首長国による首長国連邦の結成を目指しました。結果としてカタールとバーレーンは単独で独立する道を選び、1972年に現在の7首長国によるUAEの体制が確立します。

ザーイドはその後初代大統領に就任し、石油産業を投入してインフラを整備するなど国家の基盤を構築することに尽力。自身も世界有数の大富豪となります。

2004年に亡くなると、息子のハリーファ・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーンがUAEの第2代大統領となり、父同様アブダビの発展に尽力しました。2014年に脳卒中で倒れてからは、弟のムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーンが国政全般を司っています。

2019年にはローマ教皇初のアラビア半島訪問を実現し、「寛容と相互理解の推進による過激派防止」をテーマとする「人類博愛会議」を主催。2020年8月には長年対立関係にあったイスラエルとの国交正常化に電撃合意して世界を驚かせるなど、小国ながら確固たる存在感を発揮しつつあります。

アラビアの歴史が理解できるおすすめ本

著者
蔀 勇造
出版日

 

「アラビア」という文字が初めて登場するのは、紀元前9世紀の石碑にさかのぼります。本書は、アラビア古代史や東西の海上交流史を専門とする作者が、およそ3000年にわたるアラビアの興亡史をわかりやすくまとめたものです。

特に欠かすことのできないのは、「イスラム教の誕生」と「石油の発見」について。ページ数を割いて丁寧に解説されているので、しっかりと理解できるでしょう。

古代のアラビアについては残されている資料も少なく、明らかになっていないことも多々ありますが、本書では碑文などの資料を駆使しながら解説がされていて、アラビアやオリエントの知識がない人でも手に取りやすいよう工夫がされています。

UAEはもちろん、サウジアラビア、カタール、バーレーン、オマーン、イエメンなどの歴史と関係性を俯瞰で学ぶことができる一冊です。

アラブ首長国連邦(UAE)の暮らしを写真とともにまとめたおすすめ本

著者
美奈子 アルケトビ
出版日

 

本書の作者は、静岡県出身でアメリカ留学中にUAE出身の男性と結婚し、2004年からUAEで暮らしている人物。Twitterやブログで発信する砂漠での暮らしぶりをまとめています。

多数の写真に収められているのは、家族はもちろん、ガゼルやイヌ、ネコ、ラクダなど200匹もの動物たちと暮らす日々の営み。日本の生活とはかけ離れた過酷な環境下でありながら、なぜか不思議な魅力にあふれているのです。和やかな生活の風景に癒されると同時に、はっと考えさせられる場面も多々登場します。

UAEの美しい砂漠の風景を堪能できるとともに、ふと立ち止まり、自らの人生について考えたくなるような一冊です。

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