若竹七海のおすすめ小説5選!多彩な女流ミステリー作家

更新:2016.12.21 作成:2016.12.21

ハードボイルドにホラー、パニック小説に歴史ミステリーと様々な趣向でミステリーを描き続ける若竹七海。今回はそんな彼女のおすすめ小説を5点紹介いたします。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

ハードボイルドからホラーまで多彩さが特徴的な若竹七海

若竹七海は1991年にデビューしたミステリー作家です。

大学在学中は、創元推理文庫の折込冊子『紙魚(しみ)の手帳』において、木智みはる名義で書評コーナーを担当していました。大学卒業後、5年のOL生活を経て『ぼくのミステリな日常で』でデビュー。1993年から度々日本推理作家協会賞の短編部門の候補作となっていましたが、2013年5回目の候補でようやく受賞に至りました。

また、多くの推理作家が挑戦した「五十円玉二十枚の謎」は実際に若竹七海が大学生の時に体験した出来事です。若竹七海がアルバイトをしていた書店に、毎週土曜日になると50円玉20枚を千円札への両替だけして帰る男がいました。この話を若手ミステリー作家に話したところ、この謎をみんなで解こうということになり、解答の一般公募も行われて、ミステリー界隈では話題となりました。

若竹七海の特徴は多彩さです。
ハードボイルドのような硬派な作品を書くと思えば、コメディタッチのミステリーも書いたりします。本格的な推理小説も書けますし、ホラーや歴史ミステリーもお手の物です。様々なジャンルの小説を書きますが、人の心の奥にある悪意を描くことは一貫しています。
 

『ぼくのミステリな日常』ほんわかした日常系ミステリー

社内報を編集することとなった若竹七海は、学生時代の先輩に短編小説の執筆を依頼します。しかし、あえなく断られてしまいました。その代り、匿名の作家を紹介されます。一か月に1篇ずつの一年間で12編の短編が若竹七海の元に送られてくることになりました。

『ぼくのミステリな日常』は1991年に発表されたミステリー連作短編集です。本作は、殺人ではなく身近に転がる謎を解く「日常の謎」を中心としています。例えば、「草野球チームのブロックサインが相手チームに流れているのですが、その受け渡し方法がわからない」「毎年夏になると、朝顔の女が夢に現れます。夢に出てくる幽霊の正体は何でしょう」といったように、不思議な謎がテーマになっています。

著者
若竹 七海
出版日

一つ一つの短編は短いわりに奥深いですし、12編もあるのに趣向が被ったりもしません。短編自体ももちろん面白いですが、最後に全体を総括する物語が用意されています。短編での謎よりもさらに大きな謎を楽しむことができます。殺人といった残虐なものは苦手という方には特におすすめです。

本作の主人公は、著者と同名の若竹七海です。社内報を担当することになった普通のOLで、正体不明の作家から送られる短編を素直に受け取りながらも、その正体を探ろうと決意しました。送られてきた12短編を基に推理を組み立て、正体不明の作家に迫ります。
 

『スクランブル』 かつて少女だった女たちの推理合戦

親友の結婚披露宴で、女子校時代の文芸部の仲間が集まりました。昔話に花を咲かせているうちに、女子校内で起きた未解決の殺人事件のことを思い出します。シャワールームで少女の殺害死体が見つかった事件でした。15年経った今、文芸部だった面々は推理合戦をして真相に迫ります。

『スクランブル』は1997年に発表されたミステリー連作短編集です。本作は、推理そのものをたっぷりと楽しめる若竹七海の小説です。文芸部の面々は女子校時代の身の回りのちょっとした事件を、殺人事件に結びつけながら推理を提示していきます。たった一つの事件に対していくつもの推理が提示されては否定されていく様は読み応えがあります。
 

著者
若竹 七海
出版日

殺人事件の真相もさることながら、なぜ15年も事件が解明されなかったのかに焦点を当てているところも魅力的です。

本作の主役は、文芸部の面々の全員です。全員というとおかしな感じがしますが、短編ごとに役割が変化していきます。謎を提示した人は、次の話では探偵になるという形で、全員が名探偵なのです。
 

『ヴィラ・マグノリアの殺人』 ユーモアたっぷりのコージー・ミステリー

海に面した邸宅、ヴィラ・マグノリア。十棟が軒を連ねていましたが、そのうちの空き家の一棟で遺体が発見されました。密室状態だっただけでなく、被害者の顔や両手の指は潰されいるし、所持品も無いので身元がわかりません。刑事は早速捜査に乗り出しますが、ヴィラの住人は一癖も二癖もある人ばかりで、なかなか進展しません。そうこうしているうちに第二の事件が発生してしまいます。
 

著者
若竹 七海
出版日
2002-09-10

『ヴィラ・マグノリアの殺人』は1999年に発表された若竹七海のミステリーで、「葉崎市」シリーズ第1作目のコージー・ミステリーです。コージー・ミステリーとは、殺人を扱いながらも軽い雰囲気のミステリです。ハードボイルド作家や、リゾートホテルの経営者、老婦人、塾講師などバラエティ豊かな登場人物がたくさん出てきて、捜査をかき乱します。

ほのぼのとしていますが、事件やトリックは手を抜かずしっかりとしたミステリになっています。本作にはたくさんの登場人物がいますが、探偵は警察官の駒持警部です。クセの強い住人たちへの聞き込みは一筋縄ではいかずに苦労します。それでも真相に向けて、一つ一つ事実をかき集めていきます。
 

『クール・キャンデー』ライトなミステリーのはずなのに、最後の一行で一変

中学生の渚は夏休みと誕生日を前にして心を弾ませていました。しかし、ある事件が起こってしまいます。突然ストーカーに襲われて重体だった兄嫁が他界してしまいます。同じ時刻、ストーカーも変死を遂げます。そして、動機が十分な兄が警察に殺人犯として疑われてしまいました。渚は兄の無実を証明すべく奔走します。

『クール・キャンデー』は2000年に発表された、「葉崎市」シリーズの第3作目です。本作は、最後の一行を読むためにあると言っても過言ではありません。途中まではライトなミステリーで、中学生が主人公ということもあって爽やかな青春物語風です。若竹七海の今作はミステリーとしてしっかりとしたプロットですし、トリックも堅実なものです。
 

著者
若竹 七海
出版日

普通のミステリだったなと思って読み終えようとすると、最後の一行に衝撃を受けます。若竹七海はどの作品でも人間の心の奥底にある闇を表現しますが、本作はその闇がひときわ深いです。

主人公は中学生の渚です。普段は恋愛や友情に悩むようなごく普通の中学生なのですが、兄が殺人犯と疑われたことで、兄思いが爆発しました。兄の無実を信じて、夏休み返上でアリバイを証明しようとあちらこちらを走り回り、解決の糸口を探し回ります。
 

『さよならの手口』謎が盛りだくさんのハードボイルド

仕事はできるのに運の悪い女探偵・葉村晶は探偵を休業して、ミステリ専門の古本屋でバイトをしていました。古本を引き取ろうとしたとき、白骨死体を発見します。その時に負傷してしまい、入院してしまうという不運に見舞われます。

さらには、同じ病室の元女優から、家出した娘の安否の調査を依頼されるのですが、その調査は過去に他の探偵も行っていました。しかし、その探偵は行方不明になってしまっていました。

著者
若竹 七海
出版日
2014-11-07

『さよならの手口』は2014年に発表された、若竹七海の「葉村晶」シリーズ第4作目です。本作の魅力は矢継ぎ早にやってくる謎です。主人公の葉村晶はとにかく運が悪い探偵で、冒頭から死体を見つけて怪我をしてしまいますし、療養先でも依頼が舞い込んでしまいます。家出人の捜索というメインストーリーを進めていく中でも、次々と別の事件が舞い込み、謎のオンパレードとなります。

そして終盤になると様々な謎を、残さず一気に解決していきます。たくさんの謎を一冊で楽しめる若竹七海の良作です。

主役は、探偵の葉村晶で、ハードボイルド型の探偵で行動派です。鋭い観察眼から繰り出される明晰な推理力があるのですが、なんといっても運が悪い。捜査の過程で怪我をしたり、喧嘩沙汰に巻き込まれたりと踏んだり蹴ったり。しかし、持ち前のタフさで難なく乗り切り、真相を看破します。

以上、若竹七海のおすすめ小説5選でした。コミカルなミステリーもありますし、殺人のないミステリーもあります。多くの趣向でミステリーを書いているだけに、きっと好みにあった作品があると思います。ぜひ、若竹七海の小説を読んでみてください。