どこにでもあり、みんなが利用するコンビニ。業界として安定しているとも、一方で現場は大変だとも言われます。最近ではフランチャイズの制限が緩和されるニュースや、台風時には素早く営業時間短縮の判断がなされるなど、コンビニ業界にもさまざまな変化や革新が見られます。 この記事では、最近のコンビニ業界の動向を含め、就職先としてはどうなのか、どんな仕事を任せられるのかという疑問にお答えします。実は文芸作品のネタとして使われることが多いコンビニ。おすすめの書籍も一緒にどうぞ。
もはや社会インフラと呼べるまでに成長したコンビニ業界。普段の買い物だけでなく、ATM・公共料金の支払い・データプリントなど、なくなったら困る人が少なくないサービスを多数提供しています。
そんなコンビニ業界なら就職先として安定しているのでしょうか。現在とこれからについて考えてみましょう。
2020年現在、コンビニ業界は3社がトップを占めています。
この3社のあとにはミニストップ、スリーエフ、ポプラなどが続きますが、上位3社とは売上高に大きな差があります。
長らく日本のコンビニ業界は一部の大手コンビニとその他中小コンビニという勢力図がありました。中小のコンビニブランドが吸収合併や大手ブランドのフランチャイズ化によって、少しずつ減少しています。
この傾向は、2016年にファミリーマートとサークルKサンクスが経営統合したことにより、明確になりました。実際に町中で見られるコンビニも、大手3社のものが圧倒的多数になっています。このように寡占化が進んだことにより、大手はさまざまなサービスや独自ブランドの展開ができるようになっています。
24時間営業の推進、精力的な新規出店戦略などにより、コンビニ業界は緩やかながら成長を続けてきました。一方で、進んだ寡占化や店舗数の飽和といった問題も出現しはじめています。
特に最近では、24時間営業を廃止して時短営業にしたいコンビニオーナーと本部との間の訴訟問題があったり、大量出店の方針が批判を受けたりしています。実際にファミリーマートは24時間営業の義務を撤廃し、時短営業店舗の数を増やしています。
一見すると業界の勢いを落とすように見えるこれらの変化は、コンビニの実質的な経営者であるフランチャイズオーナーが負わなければならない負担が大きいことに起因しています。これらについてはあとで見ていきましょう。
上述したような傾向に加え、2020年は社会情勢の変化にも見舞われました。コンビニは比較的影響を受けていないという見方もある一方で、売上にはそれなりの影響が出ているという意見もあります。
まだ2020年の営業成績の見通しが出ていない現時点では、売上や成長率に関しては各社とも慎重に様子を見ている段階だといえそうです。
多少触れたとおり、コンビニに業界には最近になっていくつかの大きな変化が訪れました。これらの状況についてまとめてみましょう。
コンビニといえば24時間365日営業が当たり前という印象ですが、30年ほど前までは必ずしもそうではありませんでした。
24時間営業をおこなうと、必ずすべての時間帯にスタッフを配置しなければなりません。しかし早朝や深夜など、どうしてもアルバイトが集まりにくい時間帯があります。アルバイトが見つからなかった場合にどうするのかというと、フランチャイズ店舗ではオーナーが店頭に立ちます。
ここで、コンビニ業界でキーワードになるこの「フランチャイズ」について確認しておきましょう。
コンビニ業界におけるフランチャイズの仕組みは、簡単にいうと上記のようになっています。
しかし、「オーナー」とは言いつつも経営方針にはあまり裁量がないのが特徴です。
コンビニ本部が「ATMを入れ替えます」と言ったら入れ替えなければなりませんし、契約で24時間営業と決まっていた場合はいかなる場合でも24時間店を開けていなければならないのです。
このような仕組みは対等にも見えますが、状況が悪くなると圧倒的にオーナーの負担が強まります。オーナーが病気をしたり、高齢化で長時間働けなくなった場合に24時間営業ができなくなることもありえます。
これまでの契約であれば、24時間営業をできなくなった時点で違約金を取られたり、一方的に本部からフランチャイズ契約を破棄されたりしていたのですが、一部のオーナーからの問題提起によってこういったやり方に批判が集まりました。
先ほど紹介したようにファミリーマートで時短営業が始まっていますが、この動きはこれからどんどん大きくなっていくと予想されます。
消費税増税にともない、2020年6月までキャッシュレス決済での割引還元がおこなわれていました。このタイミングでキャッシュレス決済サービスが増えたり、コンビニ各社が独自の決済システムを提供したりしたことは記憶に新しいところです。
短期的にはキャッシュレス決済での割引還元が終了したことにより、売上高に直接的な影響が出ることが予想されています。
また、今後どの決済サービスが主流となっていくのか、コンビニ独自の決済サービスが主導権を握れるかどうかによって、勢力図が変わっていくことも想定されています。
コンビニのプライベートブランド(PB)商品は、品数も増え、食品だけでなく日用消耗品にまで範囲を広げています。PB商品がファンを獲得できれば、コンビニ自体の売上に貢献することは言うまでもありません。
また、最近ではローソンが無印良品の商品を取り扱いはじめるなど、各社の差別化路線が目立ってきました。寡占化により「どこに行ってもだいたい同じ」となりつつあるコンビニに、いかに独自色を入れていくかが注目されています。
これまで見てきたように、コンビニを直接切り盛りしているのは各地のフランチャイズオーナーです。それでは、コンビニの本社に就職した場合はいったいどうなるのでしょうか。
「PB商品の企画がしたい」「マーケティング部門がおもしろそう」そういったイメージでコンビニ業界を志望している人も少なくないのではないでしょうか。
しかし、まず覚えておきたいのは「本社部門で働けるのは、少なくとも入社後数年してから」ということです。では、それまでの間はどのような働き方になるのでしょうか。
コンビニ業界は、まず現場を経験することを重視します。そのため、新入社員はまず全国にある直営店に配属されます。ここでは多くの場合店長職を任され、ひとつの店舗を運営していくことを求められます。
店長は管理職相当ではありますが、実際に店頭に立つこともあります。
コンビニを経営するために必要な経験と知識をひと通り手に入れることになります。
店長職を経験したあとはいわゆるエリアマネージャー職に就きます。これは担当地域にあるフランチャイズ店舗を本社側の立場からサポートする役割です。
業務内容は多岐にわたります。また直営店店長・エリアマネージャーともども、多地域への転勤がともなう場合があります。
- 著者
- 村田 沙耶香
- 出版日
- 2018-09-04
タイトルの奇抜さがまず興味を惹く芥川賞受賞作品です。コンビニ人間とは何か、なぜコンビニなのか、ある種の群像劇の中からじわじわと描き出していく小説です。
作者が実際に19年間続けたコンビニアルバイトの経験がもとになっているため、コンビニで働いたことのない方でも、コンビニでの働き方などが見えてきます。
将来的にコンビニ業界に就職したいと考えている方にとって参考になるような内容ではないかもしれません。
しかし誰もが『コンビニ人間』の主人公のような結末を迎える可能性があると考えると、コンビニとそこで働く人間、コンビニの利用者との関係をあらためて考えたくなります。
- 著者
- 梅澤 聡
- 出版日
都市部育ちで、子どものころから24時間営業のコンビニが当たり前にあったという方におすすめなのが『コンビニチェーン進化史』です。
2020年10月現在、コンビニで提供されているさまざまなサービスは、コンビニが登場した当初からすべておこなわれていたわけではありません。
他の商店などと同じく営業時間に制限があったのを24時間営業にしたり、ATMを導入したりと、人々の生活に合わせ、コンビニには数々の革新がありました。しかし今後もそのような成長がコンビニ業界にはあり得るのでしょうか。
コンビニ業界がこれまでに辿ってきた道のりと、これからについて考えることができます。
- 著者
- 出版日
- 2014-01-27
「コンビニバイトあるある」をギャグテイストでまとめた漫画『ニーチェ先生』。ドラマ化もされたので見たことがあるという人もいるのではないでしょうか。
こちらも『コンビニ人間』同様、作者のアルバイト経験がもとになっています。どこにでもあるからこそ、「どこでも同じ」ように見えて日常とは切り離されているようなコンビニの不思議さが浮かび上がってくるような印象があります。
コンビニで働いたことのある方なら、お客さんとのやりとりに共感できたり、クスッと笑えたりと楽しく読むことができるはずです。
コンビニで働く人たちがどのようなことを考えているのか、利用者のために日々どんなことをしてくれているのかも分かります。当たり前に使っているコンビニですが、そこで働く人たちがいなければその便利さを享受できないことにも気付かされる1冊でしょう。
就職先候補としてコンビニ業界が気になっている方も、ニュースを追いかけている方にも分かりやすい業界まとめを紹介しました。あって当たり前のコンビニを、ちょっと違った角度から眺めてみてはいかがでしょうか。