5分でわかるエルサレム!3宗教の聖地となった経緯や意味をわかりやすく解説

更新:2020.12.26

世界最古の都市のひとつエルサレム。ユダヤ教・キリスト教・イスラム教という3つの宗教の聖地として知られています。この記事では、聖地となった経緯と、この土地が抱える複雑な事情をわかりやすく解説。またおすすめの関連本も紹介していくので、ぜひご覧ください。

ブックカルテ リンク
  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

エルサレムはどんな場所?パレスチナ問題や治安などを簡単に解説

 

エルサレムは、紀元前30世紀頃に築かれたとされる世界最古の都市のひとつ。ユダヤ教・キリスト教・イスラム教という3つの宗教の聖地で、「オフェルの丘」と呼ばれる標高800メートルほどの小高い丘の上にあります。

現在はイスラエルの統治下で、アラブ人居住区の東エルサレムと、ユダヤ人居住区の西エルサレムに分かれています。イスラエルはエルサレムを自国の首都と宣言していますが、国際連合をはじめとする国際社会はこれを認めていません。

さらにパレスチナ自治政府が東エルサレムを自国の首都と主張していて、エルサレムの帰属は「パレスチナ問題」の焦点のひとつとなっています。

東エルサレムは、1948年に勃発した「第一次中東戦争」の際に、ヨルダンの支配下に置かれた地域のこと。1967年の「第三次中東戦争」にてイスラエルに占領・編入されました。3宗教の聖地である城壁に囲まれた「旧市街」も東エルサレムにあり、旧市街の近くには『聖書』などにも登場する「オリーブ山」があります。

旧市街を囲む城壁は、オスマン帝国のスレイマン1世によって築かれたものです。内部は東西南北に分けられ、北東地区はイスラム教徒、北西はキリスト教徒、南西はアルメニア正教徒、南東はユダヤ教徒の居住区となっています。1981年には「エルサレムの旧市街とその城壁群」として世界遺産にも登録されました。

一方の西エルサレムは、「新市街」とも呼ばれ、ヘブライ大学やイスラエル博物館、国会、各省庁などが建ち並ぶ近代的な都市です。

イスラエルはテロが頻発する危険地帯という印象があり、実際に日本の外務省が発表している危険情報でも、ガザ地区およびレバノン国境地帯は「レベル3:渡航中止勧告」、ヨルダン川西岸地区は「レベル2:不要不急の渡航は止めてください」となっています。

一方でエルサレム地区に関しては「レベル1:十分注意してください」となっていて、特に警備が厳重な西エルサレムでは安全に観光を楽しむことができるでしょう。

ただ旧市街のイスラム教徒居住区への入り口であるダマスカス門周辺では、ユダヤ教徒とイスラム教徒の衝突などが頻繁に起こるので注意が必要です。

 

エルサレムがユダヤ教の聖地になった理由と経緯を解説!「嘆きの壁」とは

 

ユダヤ教・キリスト教・イスラム教という3つの宗教の聖地となっているエルサレム。それぞれどのような経緯や歴史があるのか解説していきます。

まずユダヤ教徒にとってエルサレムは、紀元前1000年頃にヘブライ王国の第2代国王ダビデによって都に定められました。第3代国王であるソロモンの時代に全盛期を迎え、「エルサレム神殿」が築かれています。

紀元前930年頃にヘブライ王国が南北に分裂した後も、エルサレムはユダ王国の都として栄えました。しかし紀元前597年に新バビロニア王国にされ、紀元前586年にユダ王国が滅亡。この時にエルサレム神殿も破壊され、住民はバビロンへと連行されます。これが有名な「バビロン捕囚」です。

紀元539年、新バビロニア王国がアケメネス朝ペルシアのキュロス2世によって滅ぼされると、捕らえられていた人々は解放され、紀元前515年にはエルサレム神殿も再建されました。これを「第二神殿」といいます。

アレクサンドロス帝国、セレウコス朝シリア、ハスモン朝などが統治した後、紀元前37年にはローマの属国としてヘロデ朝が興り、エルサレム神殿を改築。これを「ヘロデ神殿」といいます。

しかし66年にローマ帝国に反発したユダヤ人が蜂起し、「ユダヤ戦争」が勃発すると、エルサレムはローマ帝国軍に攻略され、エルサレム神殿も破壊されてしまいました。神殿の跡にはローマ神話の主神であるユピテルを祀る神殿が築かれ、都市名もエルサレムから「アエリア・カピトリナ」に変更されます。

ユダヤ教の聖地である「嘆きの壁」は、この時に破壊されたヘロデ神殿の外壁の一部です。全長490メートル、高さ32メートルにおよぶ巨大な壁で、2トンから8トンの巨石が地上28段、地下17段にわたって積み上げられています。

地上7段目まではヘロデ大王時代のものとされ、8~11段目は7世紀にウマイヤ朝によって、12~25段目は1866年にイギリス人実業家のモーゼス・モンテフィオーレ卿によって、26~28段目は1967年にイスラム教の宗教指導者によって追加されました。

 

エルサレムがキリスト教の聖地になった理由と経緯を解説!

 

キリスト教徒にとってのエルサレムは、イエス・キリストが活動し、処刑され、復活を遂げた場所です。

最初の大きな転機となったのは313年、ローマ皇帝のコンスタンティヌス1世が、全帝国市民に対して信仰の自由を認める「ミラノ勅令」を発布したこと。キリスト教が迫害の対象ではなくなります。320年、コンスタンティヌス1世の母である聖ヘレナが巡礼をし、当時「アエリア・カピトリナ」と改名されていた都市名が再びエルサレムになり、キリスト教の聖地とみなされるようになりました。

325年、コンスタンティヌス1世によって、イエス・キリストが処刑されたとされるゴルゴタの丘に教会が建てられました。キリスト教徒の聖地である「聖墳墓教会」です。

638年にイスラム教に支配されますが、1099年に十字軍によってエルサレム王国が成立。十字軍の指導者だったゴドフロワ・ド・ブイヨンが初代国王に選出されます。ただイエス・キリストが命を落とした場所で王を名乗るのは恐れ多いとして「聖墓の守護者」と名乗りました。

その後エルサレムは、十字軍とイスラム勢力による争いの的となり、1187年にはアイユーブ朝の創始者サラディンに占領されます。1918年にオスマン帝国が「第一次世界大戦」に敗れるまで、イスラム教の支配下に置かれました。

現在の「聖墳墓教会」は、カトリック教会、アルメニア使徒教会、東方正教会、シリア正教会、コプト正教会による共同管理とされていますが、各宗派による争いを防止する目的から、エルサレムでもっとも古いイスラム教徒といわれるヌセイベ家など2つの一族が鍵を管理しています。

 

エルサレムがイスラム教の聖地になった理由と経緯を解説!

 

イスラム教にとってのエルサレムは、創始者のムハンマドが、メッカのカアバ神殿から神の御前まで旅をした途中に立ち寄った場所。この時ムハンマドは、大天使ガブリエルにともなわれ、エルサレム神殿の岩から天馬に乗って神の御前に向かったといわれています。

東ローマ帝国の支配下にあったエルサレムがウマイヤ朝に征服された後、ムハンマドが天馬に乗ったとされる聖なる岩を囲むように「岩のドーム」が建てられました。この岩はもともと、預言者アブラハムが神のために息子のイサクを捧げようとした台だとされています。

ヘブライ王国のソロモン王がエルサレム神殿を建てたのも、そもそもはこの岩のため。初期のキリスト教でも聖地とされていて、いわばエルサレムの核です。

「岩のドーム」は聖なる岩を囲む円陣を中心に、八角形の歩廊が二重に取り巻く構造になっていて、メッカのカアバ神殿と同様に、巡礼者が時計の針とは逆向きに巡回できるよう設計されました。ドームの直径は20.4メートル、高さは36メートルで、創建当時は木造でしたが1960年に修復された際に鉄骨になっています。

外壁は青を基調としたタイルで装飾されていますが、これは1561年にオスマン帝国のスレイマン1世が修復した時につけられたもの。タイルはトルコ製です。

現在はイスラム教が管理していますが、南西の壁の外側の一部はユダヤ教の管理下に置かれ、「嘆きの壁」として礼拝されています。

 

現地で暮らした作者が複雑な歴史を解説するおすすめ本

著者
笈川 博一
出版日

 

エルサレムが誰のものであるのかを議論する際、ユダヤ人は旧約聖書を紐解き、アラブ人はオスマン帝国の土地台帳を持ち出すといわれています。現在の「パレスチナ問題」に代表されるように、世界でも突出して複雑な事情を抱えているのです。

本書は、そんなエルサレムに25年以上暮らしこの地を「第2の故郷」と呼ぶ作者が、『旧約聖書』以前までさかのぼり、それぞれの宗教において聖地となった来歴を解説していくもの。まるで物語のような文章で丁寧に説明されているので、わかりやすいでしょう。

数千年のなかでもつれた糸をほどくことは簡単ではありませんが、パレスチナに関する現状を理解するうえで非常に役立つ一冊です。

 

郵便物からエルサレムとパレスチナの歴史を紐解くおすすめ本

著者
陽介, 内藤
出版日

 

本書は、切手などの郵便資料から国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱した作者が、エルサレムを象徴する「岩のドーム」にまつわる郵便資料からパレスチナの歴史を紐解く作品。ユニークな視点の分析で、混迷する中東問題に新たな光を当てています。

支配者が入れ替わる複雑な土地ですが、郵便物は「小さな外交官」といわれるほど時代や地域をあらわすもの。具体的なビジュアルも含めて、歴史的経緯を理解できるのが特徴です。歴史に詳しくない人でも、飽きずに読み進めることができるでしょう。

 

もっと見る もっと見る