【道徳】大人だからこそ読んでおきたいおすすめ本5選!教科書では学べなかったこと

更新:2021.11.26

小学校では2018年から、中学校では2019年から、道徳が正式に教科として扱われるようになり、評価の対象となりました。道徳教育自体が見直されているいま、大人だからこそ読んでおきたいおすすめ本を紹介していきます。

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道徳の基礎を学べるおすすめ本『大人の道徳: 西洋近代思想を問い直す』

 

デカルトやカントの人間観と道徳観、ホッブズやロック、ルソーの国家観と市民観を中心に、道徳の基礎と原理を紐解いていく作品です。

「道徳」とは、単に善悪をわきまえて行動することではなく、民主主義の考え方やルールに沿って生きる、「近代」の論理を学ぶことだと説かれています。

 

著者
古川 雄嗣
出版日

 

2018年に刊行された、教育学者の古川雄嗣の作品。2018年から小学校で、2019年からは中学校でも道徳の教科が評価の対象となることを受けて、そもそも教師や親などの大人が道徳というものについて説明できるのかという懸念から、執筆されました。

「なぜ学校に通わなければならないのか」という基本的な問いかけから、そもそも「人格」「自由」「民主主義」「国家」とは何なのかという発展的な問いまで、道徳の前提となる「近代」をベースに解説していきます。

子どもが倫理観を養うための勉強だと思いがちですが、道徳を突き詰めていくと、近代国家を形成するうえで欠かせない考えなのだということがわかるでしょう。それゆえに、学校で「道徳教育」をする必要があるのだということも理解できます。大人だからこそ読んでおきたい一冊です。

 

偉人たちの名言から日常に役立つ道徳を学ぶおすすめ本『大人のための道徳教科書』

 

まだ学校で教科としての道徳がなかった時代の人のために作られた、道徳の教科書です。

37の名言や名文を厳選し解説することで、大人が日々生きていくために必要なスキルを学び直すことができます。

 

著者
齋藤 孝
出版日

 

2019年に刊行された、教育学者として知られる齋藤孝の作品です。あえて中学校の「学習指導要領」に沿った構成にし、教材を選んだそう。1日に1教材、10分読めばわずか1ヶ月ですべてのエッセンスを学べるようになっています。

紹介されているのは、高橋是清や渋沢栄一、夏目漱石など著名人たちの言葉です。彼らが残した言葉をヒントに、たとえば仕事がつまらない、何がしたいのかわからない、なぜ生きるのかわからないなど、日々の悩みや疑問を解決していきます。

コンパクトにまとまっていてわかりやすいのが魅力的。気軽に道徳を学びたい大人におすすめです。

 

日本の道徳観念を考察するおすすめ本『不道徳お母さん講座: 私たちはなぜ母性と自己犠牲に感動するのか』

 

2018年に小学校で道徳が正式に教科として扱われることを受けて、日本の道徳教育に問題提起をした作品です。

自己犠牲に感動を強いていないか、男らしさや女らしさを強いていないか、「母性幻想」を押し付けていないか……そう疑問に思ったお母さんライターが、明治、大正、昭和の文献を丹念にリサーチし、歴史を紐解きながら日本人の道徳観念が形成された過程を明らかにしていきます。

 

著者
堀越英美
出版日

 

2018年に刊行された、堀越英美の作品。作者は出版社やIT系企業勤務を経て、ライターになった二児の母です。

かつては怖いイメージのあった学校の先生ですが、現代では手を出すことはおろか、声を荒げることもほとんどありません。その代わりに、「二分の一成人式」や「組み体操」を用いて、生徒たちにひとまとまりになることを強いるようになったと作者はいいます。

自己主張をよしとしなくなっていった過程と、日本の道徳観念を結び付けて考察しているのが特徴。道徳教育についてはもちろん、母性や母親らしさなどについても考えられる一冊です。

 

自己責任について考える本『生きづらい明治社会』

 

貧困に喘ぐ者は努力が足りない、病気になるのは精神力が足りない……明治時代は「通俗道徳」が叫ばれた時代でした。

貧困者にしわ寄せがいっていた当時の状況と現代を照らし合わせながら、日本の近代史を紐解いていきます。

 

著者
松沢 裕作
出版日

 

日本近代史を専門とする歴史学者、松沢裕作の作品。2018年に刊行されました。

近代化に向けて大きな1歩を踏み出した明治時代の日本。「良き時代」といわれることもありますが、作者は「不安」と「競争」をキーワードに当時の出来事をとりあげ、人々が実際にどのような暮らしをしていたのか解説していきます。

多くの人が直面していたのが、苦難を自己責任とみなす社会の怖さです。社会的弱者を生み出してしまった資本主義の一面を理解することができるでしょう。

 

道徳に縛られた現代社会を考えるおすすめ本『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』

 

21世紀の日本は、高度なインフラが整い、豊かで便利で、平和で安全な生活を人々が享受しています。

しかし同時に、ハイクオリティな社会に適合できない人々を嫌悪し、枠外へと追いやっているのも事実なのです。

 

著者
熊代 亨
出版日

 

2020年に刊行された、精神科医の熊代亨の作品です。メンタルヘルス、健康志向、清潔好き、子育てと少子化、コミュニケーションなどを軸に、昭和と令和の時代を比較しながら、現代ならではの生きづらさを解説していきます。

作者がいうには、現代の日本を「快適」と感じる人は社会に容認された存在とのこと。一方で、たとえば出産や子育てそのものがリスクになっていることや、喫煙者の肩身が狭くなっていることなど、適合できない場合は生きづらくなっていると指摘。道徳的で秩序のある社会は、一見「自由」に見えますが、個人を束縛しているのではないかと問題提起しています。

現代社会を俯瞰し、課題を洗い出す考えさせられる内容です。

 

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