WEAVER河邉が選ぶ「2016年、紹介しきれなかったおすすめの本」

WEAVER河邉が選ぶ「2016年、紹介しきれなかったおすすめの本」

更新:2021.12.14

WEAVERのかわべです!  年末ですね! 今年は特に早く感じた1年でした。 今年はこのホンシェルジュのサイトにて、本を通じて皆さんと知り合えたことを嬉しく思っています。皆さんにとっても、良い本と出会えた1年だったらいいなと思います。 ここではテーマに沿って本を勧めている為、今年読んだけれど、まだ紹介できていなかった本もたくさんあります。 なので、今回はその中でもオススメの本を5冊紹介したいと思います。 年末年始は忙しいかと思いますが、どの本もとても面白いので、是非手に取ってみてください。

ブックカルテ リンク

君の膵臓を食べたい

著者
住野 よる
出版日
2015-06-17
住野よるの、デビュー作にて、異例の大ヒットをなし遂げた小説。本屋大賞でも2位を獲得した人気の本で、今年最も話題になった小説と言っても過言ではないだろう。

高校でもあまり目立つ存在ではない主人公は、ひょんなことからクラスの中でも目立つ存在である山内桜良の秘密を知ってしまう。それは、山内が膵臓の病気を患っているということだった。

山内は自分とは違う性格を持った主人公に興味を持つようになり、度々話しかけ、噛み合っているような噛み合っていないような会話が2人の間で続く。本のこと以外、他人に興味を持たないはずの主人公だが、徐々に山内のペースに乱されていく。

病気を患っているはずの山内は、それがまるで嘘であるかのように明るく振る舞う。そしてその裏に隠されている山内の本当の気持ちを意外な形で知った時、全く違うはずだった2人の心のシンクロに、読者は涙を流さずにはいられないだろう。

会話のリズム感が良く、読んでいてすぐに引き込まれる小説だ。

また、主人公の名前が作中に出てこず、名前を呼ばれる時は【秘密を知っているクラスメイト】というように、呼ぶ人の主人公に対する印象が名前になっているのも独特である。

『世界の中心で、愛をさけぶ』を高校生の頃に読んで衝撃を受けたが、それと同じように、今の学生が読むと、大人になってもずっと心に残る小説になるのかもしれない。

著者
吉田 修一
出版日
2015-05-08
吉田修一による、日本の新幹線が台湾で受注され開業されるまでの事実を元にした小説。

小説中には実際の新聞の記事も引用され、小説の人物が生き生きと描かれている。2000年から2007年までの8年がそれぞれ章になっており、台湾高速鉄道開通までの物語を時系列で読んでいける。

物語の中心となっているのは4人。まずは、多田春香と劉人豪の2人である。今回のプロジェクトのメンバーとして日本から台湾に赴任した春香は、学生時代にも一度台湾を訪れたことがあり、その時に偶然知り合った劉人豪のことが忘れられずにいた。2人は台湾で再会し、新たに関係を作り上げていく。

そして、台湾で生まれ、戦後日本に帰ってきて、建築会社にて働いていた葉山勝一郎。現在70歳を越え、妻と2人で暮らしているが、台湾に新幹線が走るというニュースを知り、台湾での生活や親友の台湾人のことを思い出す。

最後に、幼馴染と再会し、新幹線の整備士として働くようになった陳威志。彼らを中心として、それぞれの物語が同等の重みで描かれ、重なり合い小説に奥行きを出している。

その混ざり具合も、誰にも真似できないベテランのテクニックが感じられ、終始圧倒される。小説ってこういうことなんだなぁ、と思わせられる、素晴らしい作品だ。

今月、WEAVERは初めて台湾でライブをしたということもあり、個人的により親近感の湧く本である。

神様からの一言

著者
荻原 浩
出版日
2005-03-10
荻原浩によるサラリーマン小説。テレビドラマにもなっている。

佐倉涼平は業界大手の広告代理店を辞め、タマちゃん麺シリーズで有名な「珠川食品」に再就職する。しかし早速トラブルを起こし、総務課の「お客様相談室」に左遷される。そこはリストラ要員の強制収用所として、社内では恐れられている場所であることを後から知る。

お客様相談室には、怠け者で無茶苦茶なことを言うが、いざとなるとすごい能力を発揮する先輩の篠崎がいて、様々な仕事を教わる。クレーマーからの電話に対応する佐倉を中心に、ドタバタ劇が繰り広げられ、読んでいても終始次の展開に目が離せなくなる。

佐倉の恋人を始め、登場人物に皆癖があり、映像化したくなるのも頷ける。まっすぐな性格で器用なタイプではない佐倉には、理不尽な社会の試練がたくさん待ち受けているが、最後はスカッとさせてくれる小説だ。

言いたいことも言えないこんな世の中に、読みたくなるような一冊。

奇病連盟

著者
北 杜夫
出版日
北杜夫による小説。

ピョコリ氏こと山高武平は、37歳で独身のサラリーマン、万事につけ古風な母親と2人で暮らしている。

彼は歩き始める時にピョコリと伸び上がるような不思議な歩き方をしてしまう癖があった。普段もそうであるが、特に緊張している時などにその症状は著しい。

そんな彼は、「奇病連盟」と言う不思議な団体にスカウトされる。そこは変わった病気に興味のあるお金持ちの会長が、スカウトした人を集め道楽で会食を開いていた。

そんな場所への参加をきっかけに、かつての恋人と再会したり、一般的な価値観とずれている会長の娘になぜか気に入られたり、ピョコリ氏に不思議な転機が訪れる。

ユーモラスながらも、どことなく皮肉を感じる文章が読んでいて非常に楽しい。

とにかく笑って最後まで読める本なので、おかしなタイトルだが、気軽に手に取ってほしい。

トリツカレ男

著者
いしい しんじ
出版日
2006-03-28
いしいしんじによる心温まるラブストーリー。

ジュゼッペは何にでも取り憑かれてしまうトリツカレ男である。ある時はオペラに、ある時は三段跳びに、ある時は外国語に。一日中、取り憑かれてしまったものを繰り返している始末で、三段跳びは世界記録を越えるほどになるまで、ずっとやめられなくなってしまう。

そしてある時、ジュゼッペは外国からやってきた風船売りの少女、ペチカに恋をしてしまう。

取り憑かれていた時の外国語の能力を使って話しかけ、持てる限りのすべての力を使って、ペチカの悲しみを取り除こうとする。しかし、今のジュゼッペには、どうしても解決できないことがあった……。

最後までジュゼッペのまっすぐさを心配しながらも、応援したくなる小説だ。本自体も薄くて読みやすく、それこそ取り憑かれたように一日で読んでしまう人もいるかもしれない。

誰かに勧めたくなるような、心に優しい物語だ。

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