実家に帰る移動中にオススメの本

更新:2021.12.5

今年も残りわずか、帰省する方々も多いと思います。地元には懐かしさがダシに使われたおいしいご飯、竹馬の友、自分にだけ違って見える道や公園(青くさい逢瀬とかね)が出迎えてくれる。今回はそこに着くまであなたの家のドアから実家のドアまでの移動中にオススメの本をご紹介します。

ブックカルテ リンク

例えば忙しかった日の帰路、わざと家の一つ前の駅で降りて歩いては冷蔵庫で出番を待っているであろうビール君の為にもっと喉を枯らす。例えば暖房をつけずに体が冷めきったのを見計らって作業がてら喫茶店にあたたかいコーヒー君を求めにいく。後者は何を隠そうこの原稿を書いてる今しがたのこと――。

昔からこんな無駄なギャップを意図的に作るのが好きだ。このちょい負荷からの全解放、身勝手なローリスクハイリターンな一人遊びを以前友人に話したところ「変態だね」と意図しない感想が返ってきたので「違うよ、本当は俺はド変態なんだ」と正したりしている。こんにちは、モノブライト・ギターの松下です。

今年も残りわずか、帰省する方々も多いと思います。地元には懐かしさがダシに使われたおいしいご飯、竹馬の友、自分にだけ違って見える道や公園(青くさい逢瀬とかね)が出迎えてくれる。今回はそこに着くまであなたの家のドアから実家のドアまでの移動中にオススメの本をご紹介します。どうせほんわか落ち着くあたたかい場所に帰るなら道中はスリリングでハラハラドキドキするラストを読み切るまで落ち着かない本がオススメ! そうすればドアを開けてあなたが放つ「ただいま」の後の「お帰りなさい」が今年はいつもと違って聞こえること間違いなし!

みなさまよいお年を!

スリル満点の展開と脱力するギャグ

著者
曽根 圭介
出版日
2010-10-23

主人公と友人夫妻がとある熱帯夜、極悪非道なヤクザに監禁される。2時間のうちにお金を用意しないともちろんひどい目に合わされる。夫が主人公と奥さんを人質に残して金策に走るが果たして結末は。と、よくありそうなストーリーではありますがスリル満点の展開と脱力するギャグや下品な言葉も飛び交う娯楽性に読みだすと止まりません。どんなに注意して読んでいても予想外のラストに震え上がると思います。表題作の他に収録されている二篇も予想外のラスト。

とにかく笑えるハードボイルド小説

著者
荻原 浩
出版日

笑えます。とにかく笑えるハードボイルド小説です。多分冒頭からみなさん騙されるでしょう。探偵の主人公がちょっと相手を小馬鹿にしてちんぷんかんぷんなフリをする会話の数々と悪意のある比喩の数々に僕は声をあげて笑ってしまった。気づけば主人公のキャラが愛しくなってきてしまいどんどん惹きこまれて行くのですが、ラスト近くにつれ笑いよりもハラハラドキドキが加速して行きます。僕は完全に翻弄されました。

強烈なバランス感覚とセンス

著者
高見 広春
出版日

全国の中学校の全クラスから無作為に選ばれた一つのクラスが最後の一人になるまで殺し合いをするという絶望的設定の長編小説です。終始物語の描写がパロディとホラーのギリギリで書かれていてそのバランス感覚というかセンスがやっぱりこの年で読み返しても強烈。僕の年代の男性は中高生の時に学校で一度は読んでいるのではないでしょうか。ツイッターも(なんなら携帯電話も)ない時代に中高生がこんな刺激を自然と望んで広めた現実もあり世間をかき回した問題作。今思うとドラマや映画(音楽も)が主流の中に並行してこんなダークサイドあった時代な気がします。文庫版のあとがきには裏話とパロディへの熱意が書かれていて読み直す方はそちらがオススメ。

変わらず楽しめる続編

著者
荻原 浩
出版日
2010-05-22

こちらはハードボイルド・エッグの続編です。ハードボイルドに憧れ己の美学とするもドジでおっちょこちょいの探偵の主人公、その矛盾とへらず口が相変わらず楽しいです。そして前作から続けて読むとそのへらず口も頭の回転が速くないと出て来ないはずと少し尊敬してしまうのがちょっと負けた気がして悔しい。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る