生物学のおすすめ入門書5選!DNA、生物の進化、エピジェネティクスまで

更新:2021.12.14

なぜ、この生物はこんな姿をしているのだろうと考えたことはありませんか? たとえばキリンの首が長いのはなぜか……。先祖代々首が長かったのか、それとも進化の過程でそうせざるを得なかったのか。日常でふと疑問に思う生物の進化の不思議や遺伝子についてわかりやすく解説された入門書を紹介します。

ブックカルテ リンク

DNAは分子化石、分子進化学の入門書『分子からみた生物進化 DNAが明かす生物の歴史』

生物学では、生物の進化の直接的な証拠は化石こそが唯一であるとされてきました。

しかし、20世紀の半ば頃からDNAや遺伝子、タンパク質などの分子から生物進化を考える、「分子進化学」という分野の研究が始まり、進化史解明に大きな影響をもたらしています。

この本ではその「分子進化学」の基礎から最先端までを解説した入門書になっているのです。
 

著者
宮田 隆
出版日
2014-01-21

この本での見所は、ある二つの学説の間をついているという点でしょう。

一つめはダーウィンの「自然選択説」といい、厳しい自然環境が突然変異を選別し進化を促すという考え方です。もう一つは自然環境とは関係なく、ただの偶然で起こった中立的な進化であるとする「中立説」になります。

この二つの説をどのように繋ぐか、多くの例を紹介しながら著者が主張する説である「ソフトモデル」についての理論が展開されている1冊です。
 

進化学の全体をまとめた、ガイドブック的一冊『進化――生命のたどる道』

生物を知る上で大切な「進化」の全体像を、科学者たちの発見エピソードと共に紹介する、という主旨の本です。フルカラーなので眺めているだけでも楽しめる一冊になっています。

進化学という膨大な研究の内容を、出版時最新のリサーチを含めて紹介することで手際よくまとめてあり、豊富な図版も手伝ってかなり分かりやすく構成されているのも特徴です。
 

著者
カール・ジンマー
出版日
2012-05-30

分子レベルの生命科学の話から、伝統的な古生物学によってもたらされる知識もバランスよく含まれており、大きな進化という枠組みを全14章の中で見ることのできる、これぞ進化学のガイドブックともいえる一冊です。

生命の進化とはいったいどこまで解明されているのか、それを学びたいという人への一冊目として非常におすすめできる完成度です。

世紀の大発見、その裏側とは『二重らせん DNAの構造を発見した科学者の記録』

DNAの二重らせん構造はどのように発見されたのか、その舞台裏に迫るワトソン博士が綴ったドキュメント書籍になります。直接生物学について触れるのではなく、世紀の大発見にいたるまでの経緯が記されているというのがこの本の特徴です。

DNAが二重らせんの構造をしている、という発見は生物学上の意味合いなども含め、まさに科学界に大きな発展を促した主要な大事件のひとつであったと言えるでしょう。だからこそその過程を記録する意味があり、この本は執筆されました。
 

著者
ジェームス.D・ワトソン
出版日
2012-11-21

科学者たちが発見に至るまでの立ち回りを描く作品ですが、そこには研究者たちの生き様がしっかりとあらわれています。この発見をすればノーベル賞だと、たしかな確信をもって研究者が研究を続ける姿というのは、研究とはかけ離れた領域にいる人にとって興味深いのではないでしょうか。

軽妙で勢いのある文章で綴られる手記なので、理系の知識がないという人でも内容が頭に入りやすく、手軽に科学の世界に入り込める一冊です。

人が生まれ落ちた時から生じる最大の疑問、その答えとは?『生物と無生物のあいだ』

この本のテーマとなるのは「生命とは何か」です。つまり、生物とそれ以外の非生物を分けているものは一体何か、という問いかけです。サントリー学芸賞を受賞したこの本は、生命科学の最大の問いに、分子生物学はどう答えるのかを紹介した一冊になっています。

特にこの本では多くの科学者たちの思考が紹介されており、それが大きな見所の一つとなっているのです。
 

著者
福岡 伸一
出版日
2007-05-18

本の全体的な構成としては、著者自身の研究の変遷、研究を行った場所、その場所で研究していた偉大な先達者たちの仕事を紹介するという手順を取って、遺伝などに関する学説の変遷とそのために行われた実験を説明していきます。

構成と文章の巧みさのおかげで、読んでいるうちに自然と遺伝と生命についての研究の歴史を知ることができるでしょう。詩的な文章が光る本なので、その手の表現が好きだという方にもおすすめできます。
 

進歩の著しい生命科学の分野の基礎を解説『エピジェネティクス』

タイトルにもなっているエピジェネティクスという単語、聞き覚えのない方も多いのではないでしょうか。エピジェネティクスとは、噛み砕いて説明すると、本来ならば遺伝子配列が変化して次の世代に受け継がれるはずが、配列に変化が起きていないのに遺伝子が変化し、特徴として目に見える形で現れることをいいます。

具体例を出しましょう。まったく同じ遺伝子を持つ一卵性双生児がいるとします。遺伝子情報が同じなのですからこの二人は、遺伝子学的にはまったく同一の存在であると考えられるのです。

しかし、実際は性格が違ったり、片方にだけ遺伝性の病気が発現したりします。それは一体なぜなのか、生まれ持ったはずの遺伝子が変化しているというのか、それについて考えるのがエピジェネティクスという学問なのです。

著者
仲野 徹
出版日
2014-05-21

この本では、エピジェネティクスについて、前半ではその概要や現象の背景にあるメカニズムを解説し、そのあとに具体的な生命現象などとの関わりを分かりやすく紹介しています。

エピジェネティクスを理解するためには膨大で広い範囲の学問知識が必要になってきますが、この本では初心者でもわかりやすくそれぞれの知識にたどり着けるように脚注を加えることにより用語や補足説明などを盛り込んであるというのも特徴です。学び始めるときにまず、読んでみるとよい一冊でしょう。

いかがでしたでしょうか。なじみのない方でも理解できる、楽しめる本が並んでいたと思います。科学、生物学、などと聞くとちょっと尻込みしてしまう方でも、正しく入門書を見つけることさえできれば新しい知識を分かりやすく得ることができるので、ぜひチャレンジしてみるのをおすすめします。

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