5分でわかる中央省庁!再編の目的、一覧とそれぞれの役割をわかりやすく解説

更新:2021.11.27

日本の行政の中枢を担っている中央省庁は、行政改革で大きくかたちを変えてきました。この記事では、これまでにおこなわれた再編の目的や、現在の中央省庁それぞれが担当している役割などをわかりやすく解説していきます。

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そもそも省庁とは

国の行政機関のこと。日本では内閣のもとで「府」「省」「庁」「委員会」と分かれ、それぞれの業務を担当する体制がとられています。たとえば外務省が外交を担当し、防衛省が自衛隊を管理するように、それぞれの省庁は国の行政に関わる仕事を分担しておこなっているのです。

ただ憲法上ではそれぞれの具体的な役割は規定されておらず、その時々の情勢に応じて、省庁の編成はしばしば変更されてきました。

近年では2001年に中央省庁の再編がおこなわれ、それまでの1府22省庁が1府12省庁(1府11省1庁)に大きく改編されています。2020年現在は、東日本大震災後に新設された復興庁を加え、日本の中央省庁は1府11省2庁です。

「国家行政組織法」の第3条には、次のように記されています。

府及び省は、内閣の統轄の下に行政事務をつかさどる機関として置かれるものとし、〔中略〕庁は、府又は省に、その外局として置かれるものとする。

府や省は内閣の指揮監督のもとで行政に従事し、庁は府や省の管轄する業務のなかでも、特に専門性の高い業務をおこなうために設置されています。各省の長は内閣に属する各国務大臣が務め、庁の長は長官が任命されることになっています。

中央省庁が再編された目的を簡単に解説

先述したように、2001年に中央省庁の再編がおこなわれました。それまでの1府22省庁が次のように1府12省庁になります。

  • 総務庁・郵政省・自治省→総務省
  • 科学技術庁・文部省→文部科学省
  • 厚生省・労働省→厚生労働省
  • 国土庁・北海道開発庁・運輸省・建設省→国土交通省
  • 経済企画庁・沖縄開発庁・総理府など→内閣府

このように、行政機構は統廃合によって大きく様変わりしていくものなのです。

この改革は、1998年に当時の橋本龍太郎内閣が制定した「中央省庁等改革基本法」にもとづいておこなわれました。同法の第1条に

この法律は〔中略〕内閣機能の強化、国の行政機関の再編成並びに国の行政組織並びに事務及び事業の減量、効率化等の改革(以下「中央省庁等改革」という。)について、〔中略〕これを推進することを目的とする。

とあるように、この改革は行政のスリム化や内閣の機能を強め、総理大臣の権限を強化することを目的としています。

また当時は縦割り行政の弊害や、省庁が既得権益と結びつき利益を代弁しているなどの批判が強まっていた時期でもありました。中央省庁の再編を通じて、これらの批判に応えようとしたことも目的だといえるでしょう。

中央省庁それぞれの役割をわかりやすく解説【内閣府】

では「政策情報資料センター」のHP内にある「省庁の役割」を参照しながら、現在の日本の中央省庁がそれぞれ担っている役割を紹介していきます。

内閣府の役割については、次のように記されています。

省庁の枠を超えた仕事を受け持ち、内閣をサポートしています。主な業務として、北方領土返還、男女共同参画社会の実現、沖縄の開発、経済財政白書の作成、世論調査や国民生活に関わる各種統計などがあります。

内閣府は複数の省庁にまたがる横断的な問題や、総理大臣が直接おこなう必要のある重要な政策に関する企画立案・調整をするために設置されました。

2001年の省庁再編で内閣府が設置されて以来、内閣府はさまざまな重要政策について企画立案をし、内閣の指導力強化に寄与してきました。このように内閣府は首相の権限強化に寄与したと評価される一方で、内閣府がほかの省庁に首相の意向を押し付けるようになっていると批判する声もあります。

中央省庁それぞれの役割をわかりやすく解説【復興庁】【総務省】【法務省】【外務省】【財務省】

復興庁
2011年9月、東日本大震災からの復興を進めるために新たに設置された行政機関です。当初は2021年までに廃止されることになっていましたが、設置期限を2031年まで延長する法案が2019年に可決されました。

総務省
2001年の中央省庁再編で新たに作られた行政機関です。自治省・総務庁・郵政省の業務を引き継ぎ、地方自治や行政の評価、公務員制度や選挙の管理といった、内政に関わるさまざまな業務を担当します。ほかにも郵政や情報通信事業など、国民の生活の基盤に関わる業務をおこなっています。

法務省

法に関連するさまざまな業務を担当する行政機関です。前身の司法省時代は裁判所も管轄下に置いていましたが、裁判に関する事務の所管は最高裁判所に移されたため、法務省は民法や刑法などの法制度の維持や整備、外国からの出入国管理、刑務所の運用などを担当しています。

外務省

明治改元直後の1869年から設置されていて、中央省庁のなかでも特に歴史がある機関のひとつ。外国との交渉(外交)を担当するほか、海外での情報収集や海外にいる日本人の保護、また身近なところではパスポートやビザの発給などを担当しています。

財務省

外務省と同じく、明治改元直後から設置されていた大蔵省が2001年の省庁再編で改変されたものです。各省庁の予算案を作成するほか、国債や通貨の発行、税関の管理など、お金と関わるさまざまな業務を担当しています。

中央省庁それぞれの役割をわかりやすく解説【文部科学省】【厚生労働省】【農林水産省】【経済産業省】

文部科学省

2001年の中央省庁再編で、文部省と科学技術庁が統合されて創設されました。それぞれの業務を引き継ぎ、教育の振興やスポーツ・文化の振興、科学技術の振興を図るための諸政策を推進しています。

厚生労働省

同じく2001年の中央省庁再編時、厚生省と労働省が統合されて創設されました。失業対策や医師や医薬品の安全管理、生活保護や社会保険、年金制度などの社会保障を担当しています。近年では少子高齢化社会の進展にともない、育児支援や高齢者支援にも力を入れるようになっています。

農林水産省

その名のとおり、農業や林業、水産、畜産業に関連した業務を担当する行政機関です。食の安定供や農山漁村の活性化、森林や水産資源の管理などを担当しています。

経済産業省

経済や産業に関わる広範な業務を担当しています。産業を支える基盤としてエネルギー政策を担当するほか、近年では「持続化給付金」の支給など、コロナ禍における中小企業や地域経済の維持も経産省の役割です。またアニメなどのサブカルチャーや食文化などの魅力を海外に発信する「クールジャパン」政策も経産省が管轄しています。

中央省庁それぞれの役割をわかりやすく解説【国土交通省】【環境省】【防衛省】【国家公安委員会】

国土交通省

道路や港湾などのインフラ整備、海上の安全確保等、国内の交通に関する業務を担当しています。ほかにもダムや鉄道などの保全や景観形成などの都市政策、さらには気象の観測など、国交省が担当する業務は多岐にわたります。

環境省

水俣病などの公害病が問題視されていた1971年、環境庁が創設されました。その後2001年の省庁再編で環境省に拡充され、今日に至ります。

環境省は地球温暖化や大気汚染などの環境問題に取り組むほか、廃棄物やリサイクル対策を進めたり、自然環境の整備や野生生物の保護などもおこなっています。

防衛省

1954年、自衛隊の発足にともない総理府の外局として防衛庁が設置されました。その後2001年には内閣府の外局となり、2007年に省に改編されました。

防衛力を整備・運用することが主な役割で、陸海空の自衛隊を管理しています。近年では大規模な災害が発生した際の、災害救助活動にも注目が集まっています。ほかにもアメリカをはじめとする各国との軍事交流やPKOなどへの協力も、防衛省が中心になって実施しています。

国家公安委員会(警察庁)

全国の警察をまとめている警察庁とあわせて、中央省庁のひとつに数えられている行政機関です。

戦前、日本の警察は「特別高等警察(特高)」の活動に示されるように、しばしば言論やデモ活動の弾圧をおこなってきました。その反省を踏まえ、戦後新たに警察の目付け役として設置されたのが国家公安委員会です。国務大臣である委員長と、5人の委員によって構成されています。警察官でない者が警察を管理することで、民主的な管理と政治的な中立を確保することが目的です。

日本の官僚制と中央省庁の変遷を明治時代から振り返る本

著者
清水 唯一朗
出版日
2013-04-24

ここまで中央省庁の役割を紹介してきましたが、今日の省庁の原型は明治維新後に築かれたものです。明治政府にとって、近代的な省庁を整備することは欧米列強と対等な国家になるために、必要不可欠なことでした。当初は旧幕臣や藩閥出身者が中心となって省庁が整備されましたが、しだいに高等教育を修めた「学歴エリート」たちが省庁の中枢を占めるようになっていきます。

本書は官僚が担ってきた役割と、彼らの活躍や苦悩を、実際の制度の変遷を追いながら解説したもの。日本の統治がどのように築かれ今日に続いているのかを理解することができるでしょう。

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