連載開始から早くも人気沸騰で注目されている漫画『シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~』。従来の「なろう系」とは異なる趣を持った本作は、その独自性や斬新さで読む人の心を惹きつけています。転生なし、チートなし、主人公は変な格好……だけれどユニークな見どころがたっぷり!この記事ではそんな本作の魅力をご紹介します。
『シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜』(以下「シャングリラ・フロンティア」は、投稿サイト「小説家になろう」で公開された小説を原作とするコミカライズ作品。ファンからは「シャンフロ」の愛称で親しまれています。
作中で大人気のVRゲーム「シャングリラ・フロンティア」の世界で、主人公がプレイヤーとして冒険するというストーリー。設定の作りこまれた世界観や個性的なキャラクターには、他の「なろう系」とは一味違った魅力が詰まっており、読む人を夢中にさせる作品です。
原作は書籍化こそされていませんが、ファンが有志で作品のWikiを作るほどの人気があり、アンケート「アニメ化してほしいライトノベル・小説は?(2019年下半期)」では、『十二国記』や『Fate/strange Fake』と肩を並べて6位にランクインしています。
2020年7月より「週刊少年マガジン」で本作コミカライズの連載がスタート。第1話の掲載から早くも読者アンケートで1位を獲得し、10代、20代に新たな「マガジン」の読者層を開拓しました。漫画アプリ「マガポケ」では連載3回目にして閲覧数40万回に到達するなど、その人気は目を見張る勢いです。
この記事では、注目を集めている本作のあらすじや特徴、その魅力をご紹介します。
まずはあらすじをご紹介します。 舞台はVRゲームが一般に普及し、日常的に遊ばれるようになった少し未来の時代です。
膨大な数のタイトルがリリースされるなか、理不尽なシステムやバグでクリアが困難なゲーム、いわゆるクソゲーも世の中には溢れていました。
主人公・陽務楽郎(ひづとめ・らくろう)は、そんなクソゲーをクリアすることに情熱を注ぐ「クソゲーハンター」の高校2年生。夏休みを目前に、新たなクソゲーを求めてゲームショップを訪れた楽郎は、「たまにはクソゲー以外もやってみたら?」と「シャングリラ・フロンティア」を薦められます。
シャンフロはプレイヤー数3000万人を擁し、そのクオリティの高さから「神ゲー」と賞賛される大人気ゲーム。こうして楽郎はクソゲーの対極・神ゲーをプレイすることになるのです。
楽郎は今までクソゲーばかり遊んできたからこそ、操作性の良さやバグの無さなど、普通のゲームでは当たり前のことにも感動。一方で、クソゲーで培われたプレイングスキルで強敵や難関クエストにも果敢に挑み、シャンフロの世界にハマっていきます。
楽郎のクソゲーハンターならではの着眼点やプレイスタイルが面白くもあり、そんな彼が踏み込んでいく「ユニーク」な冒険の続きが気になり、ワクワクする作品です。
web小説の投稿サイト「小説家になろう」に投稿された作品を指す「なろう系」といえば、異世界転移・転生もののイメージが強いのではないでしょうか。
『転生したらスライムだった件』や『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』など、男性向け・女性向けを問わず多くの人気作がコミカライズ、アニメ化しています。
これらの作品では、現代の日本人だった主人公が異世界の人物に「転生」、あるいは異世界へ「転移」するパターンが多く見られます。
本作がこれらの他作品と違うのは、主人公が転生・転移するのではなく、あくまでプレイヤーとしてゲームの世界で活躍するところ。ファンタジーを楽しむ「なろう系」のなかでは「ありそうで無かった」世界観です。
- 著者
- ["硬梨菜", "不二 涼介"]
- 出版日
作中では楽郎が現実世界で休憩や情報収集をするシーンがあります。時には別のゲームを遊んでいることも。
シャンフロが徹底して「ゲームの世界」であるため、スキルやレベル数値が可視化されていることや、中世的な風景の世界に現代の価値観を持ち込むことにも違和感なく読み進められます。
そして、一方でゲームだからこそ不思議な点もあるのです。 普通は決まった内容しか話せないはずのNPC(ノンプレイヤーキャラクター。コンピューターが操作するキャラクターのこと)も、シャンフロではまるで生きている人間のように振る舞います。
楽郎はAIの優秀さに驚きますが、果たして彼らは本当にただのNPCなのでしょうか?このゲームの世界には、何か秘密が隠されていそうで気になります。
主人公・楽郎は、ゲームの世界では「サンラク」というプレイヤーネームを名乗っています。
主人公といえばカッコいいビジュアルを期待しますよね。しかし、シャンフロでのサンラクのアバターはハシビロコウに似た鳥の頭、そして装備はパンツ一丁というおかしな格好なので驚きます。
初期アバターにはきちんと服が用意されていたのですが、防御を重視しないサンラクはそれらを全て売ってしまいました。 さすがに半裸の状態で素顔をさらすのは抵抗があり、顔を隠せる唯一の装飾品が鳥の覆面だった……というわけです。
理由を聞くと「なるほど」とは思いますが、初めて見た時はギョッとしてしまうインパクトがあり、一度見たら忘れられないキャラクターになっています。
そして、ある理由からサンラクは胴体と足にアイテムを装備できなくなってしまうのです。つまり、原因を解決しない限り彼は半永久的に半裸のまま……。
サンラクが半裸&鳥頭の装備を卒業できる日はくるのでしょうか。かっこいい装備に切り替えたところも見てみたいですが、面白いのでこのままでいてほしいような気もします。いずれにしろ、彼の今後の動向が気になりますね。
ゲーム「シャングリラ・フロンティア」のメインストーリーは、旧人類が遺した世界を開拓していくことですが、他にもさまざまなサイドクエストが用意されています。
そのなかでも「ユニークシナリオ」、「ユニークモンスター」という要素については出現条件や攻略法がほとんど不明で、多くのプレイヤーがその謎を追っているのです。 世界に7体だけのユニークモンスターは未だ誰にも討伐されたことがなく、名前が判明しているのも4体だけといいます。
そんなユニークモンスターの1体「夜襲のリュカオーン」に、偶然にも遭遇したサンラク。彼はこれをきっかけに、今まで誰も到達したことのないシナリオの扉を開くことになるのです。
誰も知らないイベントに挑むという特別感たっぷりな展開。サンラクと一緒に読者もテンションが上がってしまうでしょう。
そして、彼が未知のシナリオを発見したことは、ひょんなことから多くのプレイヤーに知れ渡ります。情報を求めてサンラクに接触を図る者が殺到。プレイヤー同士の争いも勃発するのでハラハラさせられるでしょう。
そして第1話のラストページには、ユニークモンスターがシャンフロの世界の秘密に関わっていることをにおわせる謎の人物が描かれています。
サンラクの冒険は、やがて世界の核心へと辿り着くものになるのでしょうか。ゲームのシナリオが面白くなればなるほど作品の面白みも増す本作。読み進めるほど目が離せなくなっていきます。
ここまで紹介してきたように、本作には他の「なろう系」とは一線を画す独特な世界観や設定が溢れています。
本作には、「なろう系」の主人公によくあるチートな能力やステータスがありません。「主人公のチート無双にはもう飽きた」という人にはおすすめです。
また、作中にはシャンフロの他にも楽郎が愛するいろいろなクソゲーが登場するので、「クソゲーあるある」を楽しみたい人にもおすすめできます。
作中には「ユニーク」と名の付くモンスターやシナリオが登場しますが、もはや「シャングリラ・フロンティア」という作品自体がユニークな存在といえるでしょう。この先の冒険がどうなっていくのか、予測できないワクワク感があります。
ファンタジー世界の冒険という「なろう系」らしさのある物語を、独自の着眼点から描いているところが面白く、読者はその世界観に惹き込まれていくでしょう。
本作の原作者・硬梨菜(カタリナ)は、2017年5月から投稿サイト「小説家になろう」で本作の原作小説を執筆・発表しています。
読者を飽きさせない更新の頻繁さにも舌を巻きますが、なによりも驚かされるのは作品の足場を支える膨大で詳細な設定です。
小説本編だけでなく、あとがきや感想コメントへの返信などで世界観やキャラクターのさまざまな設定が明かされており、設定の情報だけをまとめたページも多く作られています。
この緻密な設定にもとづいて「シャングリラ・フロンティア」の世界が作られていると思うと、その壮大さに圧倒されてしまいそう。一体どれだけの設定が頭の中で作られているのか、その底知れなさが魅力的な作家です。
本作のコミカライズを担当するのは不二涼介。
2015年に『進撃の巨人』のスピンオフ作品『進撃の巨人 LOST GIRLS』のコミカライズを連載し、2017年にはbiki原作の漫画『ワールドエンドクルセイダーズ』、2019年にはアニメ『Fairy gone』のコミカライズを執筆し、活躍してきた漫画家です。
キャラクターの表情や動きに躍動感があり、アクションシーンは特に見応えがあります。 人間だけでなく、動物や怪物的なキャラクターも迫力があり、高い画力を感じさせる作家です。 その実力はもちろん「シャングリラ・フロンティア」でも発揮されています。
緻密な設定のもとに作り上げられたシャンフロの世界を漫画という媒体でどう表現していくのか、今後の展開からも目が離せません。
- 著者
- ["不二 涼介", "瀬古 浩司", "諫山 創"]
- 出版日
百聞は一見に如かず、ぜひ漫画を読んで「シャンフロ」の魅力を直に感じてください。