我々に、楽しいひとときを与えてくれる漫画たち。そんな漫画作品は、どのように生み出されているのでしょうか。マガジン編集部を舞台に瀬尾公冶が描く漫画『ヒットマン』の魅力を、この記事ではネタバレしていきます!漫画家や編集者の気になる舞台裏が描かれた、本作品の見どころをお楽しみください。
漫画『ヒットマン』は新人編集の剣埼と漫画家志望の翼がともに切磋琢磨しながら、日本一の漫画家を目指していくサクセスストーリーです。
我々が普段読んでいる漫画原稿は、どのような過程で作られていくのでしょうか?
漫画家は最初にネームを描き、ネームを元に担当編集者と打ち合わせを重ね、本原稿を作成していきます。ネームとは漫画家が本原稿を書く前に、コマ割や構図、セリフ、キャラクターの配置などを大まかに描くもののこと。漫画『ヒットマン』にも、ネームや担当編集者との打ち合わせシーンが多く登場します。
念願だった講談社の最終面接前に、偶然拾ったネームを読みふける剣埼龍之介。作品に惹き込まれる剣埼でしたが、同じく最終面接に来ていた小鳥遊翼にそのネームを没収されてしまいます。
肝心の最終面接で、「好きな漫画は何か」という面接官の質問に、売れない打ち切り漫画を答えてしまった剣埼は不採用を覚悟。しかし、奇跡的に内定をゲットしマガジン編集部に配属されます。
指導担当の先輩が有休中で、なかなか具体的な指導を受けることができない剣埼。ちょっとクサりつつも、やる気を出して持ち込み希望の電話を対応します。作品を持ち込んで来たのは、なんと最終面接の時に会った小鳥遊翼でした。
- 著者
- 瀬尾 公治
- 出版日
- 2018-10-17
漫画作品がヒットすると、アニメ化されることが多々ありますよね。マガジン編集部が舞台の漫画『ヒットマン』の作中でも、ヒット作が続々アニメ化されていきます。
アニメ制作スタッフと担当編集の打ち合わせや、アニメ化に関する作者側の要望、アフレコ現場などアニメ制作の裏側が豊富に描かれる本作。
そんなにリアルに制作現場を描いているなら、アニメでも見てみたい!と思いますよね。しかし漫画『ヒットマン』は、2020年11月現在まだアニメ化されていません。
これまで作者・瀬尾公冶の週刊少年マガジン連載作品である、漫画『涼風』、漫画『君のいる町』、漫画『風夏』は次々とアニメ化。漫画『風夏』の次作品にあたる漫画『ヒットマン』のアニメ化にも、今から期待が膨らみます。
- 著者
- 瀬尾 公治
- 出版日
- 2014-05-16
漫画『ヒットマン』の主人公・剣埼龍之介とは、どんな人物なのでしょうか?ここでは剣埼の魅力を紐解いていきます。
剣埼は無鉄砲なところがあり、感情をまっすぐにぶつけるタイプのため無礼な物言いをすることも。しかし受け持ちの漫画家たちとともに日々奮闘していくうちに、精神的にも成長していきます。
最終面接で不人気作品のタイトルを答えてしまった剣埼でしたが、剣埼が面接で熱く語った作品の1番好きなエピソードが実はミソ。それは、不人気作品が唯一アンケートで、ぶっちぎりの1位を獲得した回だったのです。
編集者であれば誰もが手にしたい、作品の真の面白さを見抜く力がズバ抜けて備わっている剣埼。やがて受け持ちの漫画家たちがヒット作を出し始め、タイトルの『ヒットマン』へとつながっていくことになります。
講談社の最終面接で、剣埼と運命的な出会いをするヒロイン・小鳥遊翼。読者モデルにスカウトされるなど、スタイル抜群で美人な女の子です。
父親も現役の人気漫画家ですが父とは確執があり、反発心を持っています。その反発心が、翼を突き動かす原動力になり、物語の見所の1つになっていきます。
面白い漫画を見抜く力に長けた剣埼が、最終面接前に拾った翼のネームを大絶賛。序盤から才能の片鱗を見せます。
作風はラブコメと、実録漫画が主。最初は画力がイマイチですが、プロ漫画家のアシスタントで修行を積みレベルが上がっていきます。剣埼と打ち合わせを重ね描き上げた作品が、週刊少年マガジン新人漫画賞を受賞。読みきり掲載を経て、連載を持つようになります。
1巻までに新人漫画賞を獲得するという急展開ですが、その過程は順風満帆ではなく、苦難の連続。それに負けない芯の強さを持った、魅力的な女性です。
ヒットメーカーの担当になり、ヒットマンとなっていく剣埼が担当する漫画家たち。ここでは、剣崎が担当する4人の漫画家について紹介します。
まずは剣崎が翼の次に担当することになる、島風奈佳。16歳でデビューした奈佳は月刊シリウスで人気を博し、週刊少年マガジンに移籍。主な作風はファンタジー系バトル漫画です。
瀬尾公冶の漫画『君のいる町』にも漫画家志望の人物として登場。本作では漫画家暦10年以上、ちょっとツンデレ気味のキャラです。主な作風はお色気系。
漫画家暦10年以上のライバル誌の売れっ子作家だったが、週刊少年マガジンに移籍。過去の経験から編集を信用しない性格で、編集部に波乱を巻き起こします。
フランス人で、日本の漫画が好きで漫画を描くように。ネットにアップした漫画が話題になり、出版社からのオファーが殺到。紆余曲折を経て、剣崎の下でデビューします。
- 著者
- 瀬尾 公治
- 出版日
数々の苦境を経て、世に出て行く漫画作品たち。漫画が作られていくまでに、乗り越えていかないければならないことがたくさんあります。漫画『ヒットマン』では、そんな裏側もリアルに描かれています。
たとえば、人気の指標となるアンケート制度。アンケートは読者のリアルな反応を知るための手段のひとつで、集計結果を編集が漫画家へ伝えます。漫画家たちは、アンケートの結果に一喜一憂。編集者たちはアンケートの結果を元に連載を終わらせる作品を決めたり、単行本の発行部数を決めたりします。
新連載がはじまる裏側で、打ち切りとなり無念の連載終了を余儀なくされる作品が……。そういったさまもリアルに描かれます。
翼のデビュー作である漫画『ラブレター』はいきなりアニメ化が決定します。新人漫画家の漫画がすぐにアニメ化されるのは現実味がないようですが、そこには裏がありました。実は島風奈佳の大人気作『KING'S KNIGHT』のアニメ化を出版社が許可する条件で、低予算アニメとして映像化が決まったのです。つまり嬉しいアニメ化決定のしらせも、実は人気作のバーターでした。
この他にも特に8巻では、声優のキャスティングについてなど知らなかったアニメ化の裏側事情が続々描かれます。アニメ化を経験している作者・瀬尾公治の実体験を想像しながら読むことができます。
- 著者
- 瀬尾 公治
- 出版日
作中で登場する、数々の名作たち。漫画『ヒットマン』を読み進めると、実際に読んでみたくなってしまう漫画作品が続々登場します。ここでは特に気になる作中の漫画作品をピックアップして紹介します。作風からまた、それぞれの漫画家のキャラクターが見えてきますね。
下駄箱に入ったラブレターからはじまる、ストーリーラブコメ。連載化の際に、ショート漫画に路線変更することになります。
常に人気上位に君臨する、騎士たちがくり広げる王道のファンタジーバトル漫画。おもちゃメーカーをはじめ、様々な企業から大きな期待を受けアニメ化されます。
ジャンヌ・ダルクが処刑された後、転生して人生をやり直すというファンタジー作品。時代を創る作品と称され、爆発的なヒットを予感させます。
漫画『ヒットマン』が読者を惹きつける理由とは?ここでは本作の2つの魅力を考察します!
たとえば剣埼の担当漫画家である天谷栞。天谷は漫画『君のいる町』で、主人公の友人役として登場しています。漫画『君のいる町』では漫画家を目指している描写もあり、前日譚としても楽しめます。
そのほか漫画『君のいる町』からは、天谷栞の友人でソフトボール選手の御島明日香など多数のキャラが登場。
- 著者
- 瀬尾 公治
- 出版日
続いて前作『風夏』の主人公・榛名 優。榛名は人気バンドBlue Wellsのメンバーとして登場。作中で翼がBlue Wellsの実録漫画を手がけることになり、剣埼や翼と関わるようになります。また碧井風夏をはじめ他メンバーたちも前作からゲスト出演します。
ほかにも過去作品のキャラたちが多数登場、過去作品とリンクする箇所が多く存在します。他作品を読んだことがある場合は作品同士のリンクが楽しめますので、ぜひ読んでおきたいところ。
週刊少年マガジン編集部が主な舞台の本作。実は、編集部の中に実在の人物がいます。それは仲田帝士と乙黒和彦。編集が担当した漫画家の累計発行部数を戦闘力と表現する本作で、とてつもない戦闘力を持つ編集が多い中、仲田と乙黒はリアリティを感じるキャラです。ちなみに2人とも瀬尾公治の担当なのだそう。
実話をもとにしたフィクションということで、どこまでが事実なのか想像しながら読むのも楽しみのうちですね。
過去作品とのリンクや、リアリティあふれるエピソードなど見どころ満載の漫画『ヒットマン』。そんな本作は、今後どのような展開をしていくのでしょうか?
この物語の根幹は、剣埼と翼が一緒に日本一の漫画家を目指すことです。単行本11巻までの間に、まだ翼は日本一の漫画家にはなっていません。また翼の連載作『ラブレター』は、ページ数の少ないショート漫画。今後『ラブレター』の連載が終了したのちも、翼とのコンビネーションは続いていくでしょう。新たなストーリー漫画の連載ネームを描き上げ、さらなるヒットメーカーとなっていく展開が待っていることが予想されます。
担当漫画家たちなど剣埼のまわりには、魅力的な女性が多数います。瀬尾公治の作風からも、様々な恋愛が発展していく展開にも期待が高まります。
最後に、実話も織り交ぜつつ本作を描いた作者・瀬尾公治について紹介します。
連載作品が次々とアニメ化している瀬尾公治は、漫画『HALF&HALF』で週刊少年マガジン新人漫画賞佳作を受賞しデビュー。
漫画『シュート』で知られる大島司の下でアシスタントを務めていたことがあり、漫画『CROSS OVER』までは2人で漫画を描いていたそう。
女性の描写に定評があり、主な作風はラブコメ。出身地である広島の方言を話すキャラが登場するのも、特徴のひとつ。自身の作品が作品の垣根を越えて登場する、クロスオーバー作品を描くことでも知られています。
『涼風』『君のいる町』『風夏』『ヒットマン』は、共通の世界観があり時間軸がつながる部分があります。そのため個々の作品を単独で楽しんだり、つながった時間軸を踏まえて楽しむなど多角的な面白さと深みのある漫画家です。
まとめ
「編集部の裏側を一度覗いてみたい!」と思ったことがある方は、少なくないのではないでしょうか。そんな願いを叶えるとともに、瀬尾公治作品のキャラたちが作品に彩りを添えていく漫画『ヒットマン』。多角的な楽しみ方ができる作品だからこそ、より作品に深みが出ます。瀬尾公治ワールドの虜になってみるのはいかがでしょう。