皆を受け入れる「努力」の基準、障がい者に優しい美術館とは?

更新:2016.12.27

下半身に障がいを抱えるロンドンのライターが、障がい者に優しい美術館(または美術館ツアー)の必要性を訴える。「車いすの自分から見えるのは、ほかの客の尻ばかり」

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作品展ツアーは月曜日の朝9時スタート

芸術のことはよく知らないけれど、自分の好みはよく知っている。ジャクソン・ポロックの作品は好きだ。ストーン・ローゼズのジョン・スクワイアが1980年代末から90年代初めに残した素敵なアルバム・ジャケットが実はポロックを真似たものだったと知って以来、ずっと気に入っています。

だから、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(王立美術院)が運動障がい者(僕のことですね)と視覚障がい者のために、ポロック(と他のアーティストたち)の作品展ツアーを開催していると知って、うん、これは申し込もう、と思ったわけです。

正直に言いますが、5年前、コンクリート・ミキサー車のタイヤの下で1時間ばかり居心地の悪い思いをして以来、僕はギャラリーに行っていません。

まず、車いすなどの乗り物を使うと、ほとんどお尻しか見られないんじゃないかと思うからです。車いすから見上げる角度と、作品展の人気が高いほど館内が混み合う――という現実を鑑みての判断です。

なので、そういうことが起きない時間にツアーを催してくれるのは名案です。でも、問題が一つあります。そのツアーの開始時刻は月曜の朝9時。これでは僕だけでなく、仕事を持つ人は誰も行けません。1日くらい休みを取れって? なるほど、ですが第一に、どうしてわざわざ? 第二に、たとえ僕がその気になったとしても、休むのは必ずしも現実的じゃありません。

さらに、この話を目の不自由な友人でライターのセリーナ・ミルズにしたところ、午前9時開始のツアーには別の問題もあることが判明しました。彼女の言うとおり、ピカデリーのそばに住めるくらいお金持ちの銀行員やヘッジファンド・マネージャーなら話は別ですが、一般人は朝9時に間に合うよう、ロイヤル・アカデミーまで公共の交通機関を使います。公共交通機関の利用は、障がい者にしてみれば、たとえそれが1日のうちベストな時間帯であったとしても、一つの挑戦です(ロンドン交通局はロイヤル・アカデミーよりもさらに始末が悪いのです)。そして、月曜朝のラッシュアワーはご存じのとおり、バスも地下鉄も仕事に向かうくたびれて機嫌の悪い人々でぎゅうぎゅう詰めですから、ベストな時間帯以外の何ものでもありません。

どんなイベントにも行く権利

もっとも、ロイヤル・アカデミーばかりをやり玉に挙げるのは意地悪かもしれません。たとえば、障がい者スポーツに携わる人たちに話を聞いたところ、彼らも僕が今書いているのと同じような問題にぶつかったことがあると言っていました。人が運動したいと思う常識的な時間に場所を提供してくれる施設は、なかなか見つからない。空いているのはたいてい、日曜の朝早くか金曜の夜10時だそうです。

僕は数年前、チャールトン・アスレティック戦のアウェー側で他人のお尻を山ほど見させられました。障がい者用観覧席はスタンドの中段にあって、サッカー・ファンには立ち上がる癖がありますし、係の人たちが僕らにも見えるようにと、彼らを着席させようとしてくれたのは、たったの1回だけ、それもおざなりに。おかげで、シェフィールド・ユナイテッドFCの貴重なゴールを見逃しました。

僕は事故の後も、幸い音楽のライブには通えていて、かなりの数を見ています。僕らが行ったロンドンの会場の大半は、皆を受け入れる努力を真剣にしてくれています。ほかのところも彼らの例に倣うべきです。障がいのある人たちにも、ほかの誰とも同じように、文化的なものでもスポーツでも、興味をそそられるどんなイベントにも行く権利があります。
僕らがそれを行使するのに、1時間かそこら、1日のうちの常識的な時間帯を割いてくれるだけで済むのなら、そうするべきなのです。

有意義な変化を起こすには、ジャクソンの、そしてローゼズの例に倣って、もっとしっかりして欲しいいくつかの組織にペンキをぶちまけるしかないのかもしれません。そうしても、芸術ということで理解してもらえますよね。

文・ジェームス・ムーア

Photo:(C)WENN / Zeta Image
Text:(C)The Independent / Zeta Image
Translation:Takatsugu Arai

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