英大学が発表、世界に「寛容さ」を与えた10冊の本

更新:2021.12.14

英バース・スパ大学が1年プロジェクトの一環として、多様性と平等を強く訴える10作品を選出。2016年11月16日、国際寛容デーに合わせて選ばれた「世界を良くした10冊の本」をご紹介。

1986年に創刊したイギリスの日刊紙。2016年3月に紙面での発行を廃刊した後、現在はオンライン新聞として日々ニュースを配信している。カルチャー、社会、政治など、ホンシェルジュ編集部のメンバーが毎回選りすぐりの記事をお届けします。 http://www.independent.co.uk/
泡の子

本や読書を通じて見える世界には、人々の考えや信念を形作る力がある

今、世界に何よりも必要なものがあるとすれば、それは寛容だ。

だからこそ、国際寛容デーの必要性と意義を今年はとりわけ強く感じる。そんななか、英バース・スパ大学は文学を通じてこの日を祝い、自由な思想と社会の前向きな変化を後押しした本を10冊選び、リストを発表した。

世界を網羅するそのリストは、世紀、ジャンル、スタイルの別を問わない。『Two Boys Kissing』といった最近のヤング・アダルト小説から、シルヴィア・プラスの『ベル・ジャー』やヴァージニア・ウルフの『オーランドー』などの古典まで、多様性と共感の大切さを訴える、人間性と真摯に向き合った作品が並ぶ。

リストは、バース・スパ大学図書館が提唱する「リーズ・アンド・ライツ[読書と権利]」運動に賛同する学生、研究者、作家、図書館員が協力して作成した。この運動は多様性と平等を擁護する文学を讃える1年プロジェクトで、世界各地に討論や変化のきっかけを与えた著者および作品にとりわけ注目した。

偏りのないよう、5つのカテゴリー――人種、ジェンダー、障がい、心の健康、セクシャリティ――に基づいて候補作を挙げ、続いてオンラインおよびツイッターで一般に投票を呼びかけ、個人的に最も感銘を受けた、あるいは不平等問題に対する社会の理解や行動に最も大きな影響を与えたと思う1冊を選んでもらった。

リストは以下のとおり。

1. 『Two Boys Kissing』デヴィッド・レヴィサン

Two Boys Kissing

2013年08月27日
デヴィッド・レヴィサン
Knopf Books for Young Readers

2. 『Nevada』Imogen Binnie

Nevada

2013年03月01日
Imogen Binnie
Topside Press

3. 『自閉症の僕が跳びはねる理由』東田直樹

4. 『わたしの生涯』ヘレン・ケラー

5. 『わたしはマララ』マララ・ユスフザイ

6. 『オーランドー』ヴァージニア・ウルフ

7. 『Elizabeth is Missing』Emma Healey

Elizabeth is Missing

2014年06月10日
Emma Healey
Harper

8. 『ベル・ジャー』シルヴィア・プラス

9. 『アウシュヴィッツは終わらない』プリーモ・レーヴィ

10.『アメリカ黒人女性とフェミニズム――ベル・フックスの「私は女ではないの?」』ベル・フックス

「本や読書を通じて見える、そして共有できる世界には、人々の考えや信念を形作る力があります。その力は永遠です」と、バース・スパ大で図書館および学習援助活動の長を務めるアリソン・ボードは言う。「物語を通じて、私たちは自らの価値体系を疑うことができる。そしてそこから、皆にとってより良い社会へとつながる会話を始められるのです」

「不平等が日常化している断片化された社会において、誰もが本という強力なツールにアクセスできる状態を守ることには大きな意味があります。リーズ・アンド・ライツ運動の目的は、図書館の大きな社会的価値をあらためて示すことにもあります。図書館は社会にとってかけがえのない存在です、だからこそ投資が不可欠なのです。人々がいつでも本にアクセスできる。そんな環境を維持することで得られる利益を広く知ってもらうために、私たちのプロジェクトがお役に立てることを願ってやみません」

Photo:(C)WENN / Zeta Image
Text:(C)The Independent / Zeta Image
Translation:Takatsugu Arai

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