『ミギとダリ』はある目的のために、美形双子が1人の少年になりすまし、老夫婦の養子として過ごすシュールギャグサスペンスストーリー。 得体の知れない双子が魅せる不気味さとシュールな言動に、ハマる人が続出している作品です。本記事では『ミギとダリ』の見所やネタバレを紹介します。
『ミギとダリ』は、「ハルタ」で連載中の佐野菜見によるシュールギャグサスペンス漫画。
舞台は1990年頃、裕福な家庭が住む神戸市北区にあるニュータウン・オリゴン村。そこに住む老夫婦のもとへ、秘鳥(ひとり)という美しい少年が養子としてやってきます。素直で心優しい秘鳥に、夫婦はすぐに心を許しますが、彼にはある秘密がありました。それは、秘鳥は2人(双子)で演じているということ。一体、彼らの目的とは……?
作者は佐野菜見。クールでスタイリッシュな男子高校生、坂本の学園生活を描いた『坂本ですが?』が代表作です。
『坂本ですが?』を彷彿とさせるようなシュールさを残しつつも、『ミギとダリ』には得体の知れない双子が見せる不気味さが感じられます。夫婦の前では子供らしく振る舞い、思わず読者がツッコみたくなるような双子のシュール過ぎる連係プレーをしていたかと思いきや、次の瞬間には無表情に戻ってしまうミギとダリ。
これはギャグなのか?それとも、サスペンスなのか?と考えされられてしまう本作は、一度読んだら虜になってしまうでしょう。
最初から最後まで緊張感漂うサスペンスではなく、時々クスッとできる笑えるサスペンスものを読みたい方におすすめです。
1990年の2月、神戸市北区の裕福な家庭が住むニュータウン・オリゴン村に、1人の美しい少年がやってきます。少年の名は秘鳥。子どもがいない老夫婦のもとへ、養子として引き取られました。素直で大人しく賢そうな印象の秘鳥に、夫婦はすぐに心を掴まれます。
しかし秘鳥は、ある秘密を隠していました。それは、秘鳥が双子の兄弟・ミギとダリの2人ということ。彼らはある目的のために、そっくりな容姿を生かしてふたりでひとりを演じていたのです。
ミギとダリは、双子だということがバレないよう慎重かつ大胆に行動しながら、夫婦と楽しい家族の時間を過ごしていきます。果たして2人の秘密は隠しれるのでしょうか。そして、彼らの目的とは一体何なのでしょう。得体の知れない双子による、シュールで不気味なサスペンスストーリーが始まります。
ミギとダリ 1 (ハルタコミックス)
2018/5/15
オリゴン村に住む園山夫妻のもとに、養子として引き取られた13歳の美少年。本当は双子の兄弟ですが、ある目的のために1人の少年・秘鳥(ひとり)を演じています。髪を右分けにしているのが弟のミギ、左分けにしているのが兄のダリ。ダリは冷静沈着で勉強もほどほどにできるため、計画のブレーン役に、一方、ミギはカッとなりやすい性格で勉強が苦手なため、計画のおとり役になることが多いです。
秘鳥を引き取った裕福な60代の夫婦。夫婦の間に子どもが授からなかったため、施設から秘鳥を養子として迎え入れることにしました。秘鳥が双子だということは知らず、一緒に生活していてもまったく気づきません。夫婦仲は良く、互いを「パパ」「ママ」と呼び合っているほど。明るく気さくな性格だけど暴走しがちなママのことを、穏やかなパパがストッパー役として止めています。夫婦ともに、秘鳥のことを本当の子どものように愛し接しています。
ミギとダリの母親。7年前、オリゴン村のどこかの家の一室でひっそりと暮らしていましたが、何者かによって殺害されてしまいます。その後、双子が母親の遺体を、村のはずれにある丘の上に埋葬。彼女がどんな理由で、誰に殺されたのかはわかっていません。
家政婦をしている初老の女性で、オリゴン村を中心に複数の家庭で家事を担当しています。園山家のママとは仲が良く、「みっちゃん」「よっちゃん」と呼び合うほど。村の家庭事情に精通しており、かつおしゃべりなため、他人の家のことをたびたび漏らしてしまうことも……。また、ヘアピンでドアの鍵を開けることができるという特技も持っています。
秘鳥とは同級生で1番最初の友だち。ボーイスカウトで知り合います。飛行機や鳥といった空を飛ぶものが大好き。自分もいつか鳥のように飛んでみたいという強い願望を持っており、周囲からは「バード秋山」とバカにされています。
秘鳥の同級生で、出っ歯が特徴の少年。両親から過保護に育てられたため、かなりわがままな性格のお坊ちゃま。施設育ちの秘鳥をバカにしていましたが、ダリからの逆襲で大人しくなります。
秘鳥が通う、山星学園中学校1年5組の女性教師。年齢も若く、教師としての経験が浅いため、クラスの生徒たちから舐められてしまいます。しかし、園山ママが嘘をついた秘鳥を叱るためにお尻を叩く姿を見て、教師としてしっかりやろうと覚醒。
山星学園中学校に、突如現れた謎の美人女子生徒。正体は園山ママのウィッグと女子制服を着用したダリ。ミギが秘鳥として学園生活を送っている間、居場所確保のためにした女装姿でした。しかし、それを知らないミギから想いを寄せられてしまうことに。
ある目的のために、ふたりでひとりを演じているミギとダリ。不気味な雰囲気が漂う本作ですが、作中には双子が魅せるシュールなギャグシーンがいくつも盛り込まれています。
秘鳥が園山家に引き取られて、初めての食事シーン。ママが秘鳥を歓迎するためにご馳走を作りました。しかし、その量は家族3人でも多すぎる量。ダリもすでにお腹いっぱいです。それでも何とかママのために完食したいダリは、ミギとアイコンタクトを取り作戦に出ます。
ママにおかわりをお願いし、目を離した一瞬の隙を狙って2人は入れ替わったのです。そして、何事もなかったかのように、今度はミギが食事をします。なんという鮮やかな身のこなしと、シュール過ぎる双子の姿。幸いにも、夫妻は老眼ということもあり、まったく気づきませんでした。
この他にも双子は、見事な身のこなしと心理戦で園山夫妻と、オリゴン村の住民を欺いていきます。はっきり言って、普通の人が見れば「え、何やってるの?」とツッコみそうですが、ミギとダリは大真面目。真剣だけど笑ってしまう、その絶妙な笑いのバランスに、読めば読むほどハマります。
そもそもなぜミギとダリは双子としてではなく、1人の少年として園山夫妻の養子になったのでしょう。
彼らがふたりでひとりを演じている本当の目的。それは、母親・メトリーを殺した犯人探しと復讐だったのです。
ミギとダリは、母親と3人で、7年前オリゴン村のある家の一室で隠れるようにひっそりと生活していました。しかしある日突然、町の路上で頭から血を流して亡くなっているのを、ミギとダリが発見してしまいます。その後、母親の遺体は彼らの手によって、町の外れにある崖の上に埋葬されました。
そして、母親の事件から7年後。ミギとダリは再び、オリゴン村に戻ってきました。彼らは双子であることを隠し、秘鳥という1人の少年として、園山夫妻の養子として迎えられます。すべては未だ不明の犯人を探し出し、復讐するため……。ミギとダリは幼い頃の記憶を頼りに、母親を殺害した犯人を探し始めます。
ただし、ここで気になることが2つ浮上します。1つはなぜ、ミギとダリはふたりでひとりを演じているのかということ。そしてもう1つは、園山夫妻と復讐の関係性です。
現段階でミギとダリが2人で1人を演じる理由は、はっきりと描かれていません。考えられるのは、犯人が双子のことを知っているかもしれないという可能性と、2人で1人を演じることで、1人が表に出ている間、もう1人が自由に動き回れるという利点があること。母親の死の真相に近づく過程で、この理由については明かされていくでしょう。
園山夫妻と復讐の関係性についてですが、こちらはゼロに近いといえるでしょう。。夫妻は一度だけ、ミギとダリにサプライズプレゼントをしようとして、怪しまれることがありました。しかし、それは誤解だったことが分かっています。夫妻には怪しい部分は一切無く、純粋に秘鳥を愛しているだけでした。1つ復讐に関係しているとすれば、秘鳥に無償の愛を注ぐ夫妻の存在が、復讐にすべてを捧げるミギとダリの心の拠り所になっているということ。夫妻の存在が、復讐しか考えていない双子にどう影響を与えていくのか気になります。
本作最大の謎である、ミギとダリの母親・メトリーの死。これに関わっているとされるのが、一条家です。ここではまず、一条家の家族を紹介しましょう。
一条家の長男。成績優秀、容姿端麗、模範的な少年として、大人からも同級生からも信頼を集めています。山星学園中学校では特進クラスに在籍。秘鳥とはボーイスカウトで知り合います。様子のおかしい彼らを多重人格者と勘違いし、精神科医をしている父に診てもらおうと自宅へと招きます。ミギとダリの母親の死について、何かしら情報を持っている様子。
一条家の妻。オリゴン村の町内会長を務めており、住民からは絶大なる信頼を集めています。一見、裕福な家庭の心優しい母親に見えますが、実は潔癖症で、何か裏の顔を持っている様子。メトリーの死に関わっているようで、一条家では1番怪しいとされています。
瑛二の妹。ピアノを習っており、コンクールでは毎回優勝する程の実力者。部屋には大きなドールハウスと、本物のようにリアルな人形があります。自分が使っていない時は、人形をドールハウスの家具の隙間に隠すように詰め込むという異常さも持っています。
一条家の当主。精神科医をしており、自宅で診療したり、学会に参加したり、勉強に励んだりと多忙な日々を送っています。妻と同じく、オリゴン村の住民からは絶大なる信頼を得ており、理想の家族として憧れの的にもなっています。メトリーとは、家政婦と家主以上の関係を持っていたらしいのですが、今のところ詳細は明かされていません。
まさに理想の家庭として、オリゴン村の住民から圧倒的な信頼を得ている一条家。毎週水曜日に出入している家政婦の光山でさえも、「この家には秘密がない」と言われていますが、実はミギとダリの母親と深く関係していました。
彼らが幼い頃に住んでいた、ある家の一室。そこにはミジンコ柄の壁紙がありました。それを頼りに、犯人の手掛かりとなる家を探していたミギとダリ。光山とのやりとりの中で、その壁紙が一条家にあるということを知り、部屋を見つけ出します。
さらに調べていくと、一条家には怪しいものが他にも見つかりました。1つ目は、ミギとダリたちが住んでいた部屋の場所。キッチン脇の収納庫奥に、隠されるように作られていました。2つ目は、華怜が遊んでいる人形です。この人形が実在する人物にそっくり。しかも、該当する人物は昔オリゴン村に住んでいましたが、今はいない人物ばかり。3つ目は、一条家のすべての部屋が施錠されているということ。家政婦ですら、出入りが制限されています。
住んでいた部屋の場所から、メトリーは7年前、一条家の家政婦だったことが考えられます。しかも瑛二の父とは、家主と家政婦以上の関係を持っていた雰囲気。それが原因で、一条家の人間に殺されてしまったのではないでしょうか。
とにかく外部の人間には、一切、家の事情を見せようとしない一条家。今後、ミギとダリがどのように解明していくのか期待が膨らみます。
母親の墓から見つかったボタンが実は一条家のものだったことをきっかけに、窃盗の濡れ衣を着せられ、一条家に監禁されてしまったミギ。最大のピンチを迎えた2人でしたが、怜子による再教育を終え、何とか園山家へと帰ってきました。
ミギが監禁されている間に一条家を探っていたダリは、ある秘密に触れ、今後のターゲットを瑛二に絞って動き出します。
母親の死の真相を知るため、ダリは再びサリーになって登場。色仕掛けで瑛二に近づきますが、サリーに恋するミギの出現によって複雑な三角関係が始まってしまいます。
ダリは、この窮地をどう乗り切り、ミギとの恋に決着をつけるのでしょうか。そして瑛二と亡くなった母親との関係とは。急展開の5巻に目が離せません。
ミギとダリ 5 (ハルタコミックス)
2020/10/15
『ミギとダリ』の作者・佐野菜見といえば、『坂本ですが?』で知っているという方も多いでしょう。「このマンガがすごい!2014」でオトコ編2位を獲得している作品で、アニメ化もされています。未読の方は、こちらもおすすめ。
高校1年の学園が舞台。主人公のクールなメガネキャラ・坂本が、いじめの対象になりながらもスタイリッシュに危機回避していくさまが爽快で笑える作品です。
見所はもちろんその物語全体にいきわたるシュールなギャグ。最終的には人情物語となっているので、「誰も傷つかない笑い」の先駆けということもできるでしょう。
坂本ですが? 1 (ビームコミックス)
2013/1/15
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株式会社KADOKAWAが手掛けている、月刊漫画雑誌「ハルタ」をご存知ですか?新人作家を主に採用する、少しイレギュラーな漫画雑誌であるため、掲載される作品も様々です。今回は、そんなハルタのおすすめ漫画をランキング形式でご紹介いたします。
母親を殺した犯人を探し出し、復讐を果たすために、オリゴン村へ戻ってきたミギとダリ。1番怪しいとされる一条家に接触し、ピンチに遭いながらも、2人で力を合わせて乗り越えていきます。母親は一体、誰に殺されてしまったのか。ラストに待ち受けているものが何か気になります。