漫画『式の前日』俊英・穂積原作のあらすじ【収録6作品】を紹介!

更新:2021.2.22 作成:2021.2.21

各漫画賞を総ナメにし、華々しくデビューを飾った漫画家・穂積(ほづみ)。処女作『式の前日』は、ラストで必ず泣けるとSNS上でも話題となりました。この記事ではそんな『式の前日』収録作を中心に、あらすじやその魅力を紹介します。また2021年現在連載中の『僕のジョバンニ』のほか、穂積の作品もおすすめします。

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目次

ラストに注目!穂積原作『式の前日』を紹介!

『式の前日』は、原作者・穂積にとってのデビュー作にして話題作。「月刊flowers」で開催されているコミックオーディションにて銀の花賞を受賞した作品です。これがきっかけとなり、2010年「月刊flowers」の増刊号にあたる「凛花」に掲載。漫画家・穂積が誕生しました。

2012年にこれまでの短編をまとめ『式の前日』として単行本が刊行されます。その直後からSNSなどで話題となり、2013年の「このマンガがすごい!」にてオンナ編第2位を獲得しました。

収録作品は、全部で6編。表題作『式の前日』をはじめとし、『あずさ2号で再会』『モノクロ兄弟』『夢見るかかし<前編/後編>』『10月の箱庭』『それから』が収められています。

結婚式を前日に控えた男と女、ワケありの父と娘、初老の双子の兄弟、故郷を捨てた兄と故郷に残った妹、女子中学生と小説家といったふたりきりの世界で物語が進行していきます。どの作品もラストに感動の仕掛けがあり、読者はみなこの世界観に魅了されました。

この記事では、『式の前日』を軸にあらすじや魅力を紹介しながら、現在連載中の『僕のジョバンニ』まで取り上げます。

『式の前日』収録6作品すべて紹介!【あらすじ】

漫画『式の前日』には、6つの作品が収録されています。それぞれのあらすじを簡単に紹介します。

式の前日』のあらすじ

翌日に結婚式を控えた女性と男性が過ごす式の前日を描いた物語です。このふたりの関係とは?

『あずさ2号で再会』のあらすじ

ひとりでお留守番をしている7歳のあずさ。離れ離れになった父に会える、ある1日の物語。

 『モノクロ兄弟』のあらすじ

10年間疎遠になっていた初老の双子の兄弟。高校時代の同級生・由紀子の葬儀の帰り、久しぶりに食事をすることになります。それぞれ胸に秘めていた想いとは。

 『夢見るかかし』のあらすじ

前編・後編と分かれています。母に捨てられ、カンザスの田舎に住む親戚夫婦のもとへ引き取られた幼い兄妹。田舎を捨てた兄が、妹の結婚式のため久しぶりに帰郷する物語です。

 『10月の箱庭』のあらすじ

ある孤独な小説家のもとに、親戚だという女子中学生が転がり込んできます。その意外な正体は。

 『それから』のあらすじ

ある男性が拾った猫の視点から物語が進行。彼の家の留守電に、義理の兄から急なしらせが入ります。その知らせとは一体……。

著者
穂積
出版日
2012-09-10

【おすすめ収録作品その1】:『式の前日』【ネタバレ注意】

コミック表題作の『式の前日』は必ず読んでほしい作品です。翌日に結婚式を控えた花嫁と男性。ふたりきりで過ごす式の前日を描いた物語です。

ウエディングドレスの試着から夕食、布団を並べ、手を繋いで寝るふたりの関係性は明かされていません。最後の最後で明らかになった時、押し寄せる感動はひとしおです。たった数ページの物語から、これまでふたりの過ごした時間が一瞬にして想像でき、長編作品を読み終えたような充実感があります。

最後の収録作『それから』は、この『式の前日』の後日談。こちらも、結末を知った時、感動と幸福感でいっぱいになることでしょう。両作あわせておすすめします。

『式の前日』

【おすすめ収録作品その2】:『あずさ2号で再会』【ネタバレ注意】

コミック2作目の『あずさ2号で再会』。主人公のあずさは7歳です。そのあずさの気になるモノローグから物語は始まります。「わたしにはふつうのおとうさんとおかあさんがいます」と。

ひとりで留守番をしているあずさのもとに、父親がやってきます。どうやら離れて暮らしている様子。数年前、彼は「タバコ買ってくる」と言ったまま帰ってこなかったのです。そんなふたりが、久しぶりに過ごすある日を描いた物語。

これもまた思いもよらない結末が待っていて、最初のモノローグの意味を妙に納得してしまいます。ラストシーンのあずさの満足そうな表情が印象的です。

『式の前日』

【おすすめ収録作品その3】:『10月の箱庭』【ネタバレ注意】

コミック5作目の『10月の箱庭』は、死を覚悟した1匹のカラスのモノローグから始まります。

主人公の篠田和徳は孤独な小説家で、15年前に1本の小説を書いたきりでした。そんな彼のもとに親戚だという女子中学生が転がり込んできます。同じ頃、篠田はカラスの夢ばかり見るようになるのでした。そしてある日、この女子中学生が行方知れずになっている少女であることを知る篠田でしたが……。

最後の最後で伝えられる死にゆくカラスから孤独な小説家へ送られたメッセージは、あまりに意外であまりにストレートな言葉でした。この経験をもとに篠田は1本の小説を書きあげます。タイトルは『10月の箱庭』。それはひと時を共有した彼女へのはなむけでした。

孤独な小説家の再生物語は、ほかの作品とはまた異なる味わい深い作品です。

『式の前日』

『式の前日』が「このマンガがすごい!」第2位に選ばれたワケとは?

『式の前日』は2012年に刊行された直後、SNS上でその評判が話題となりました。その後、2013年「このマンガがすごい!」オンナ編にて第2位を獲得。ほかの漫画賞でも高い評価を受けています。なぜ『式の前日』がここまで高い評価を受けているのでしょうか。それは、原作者である穂積の実力そのものに起因しています。

実際に本作を読むとわかるように、その画力の高さ物語の構成力に驚かされます。物語の根底にあるのは常に「誰かが誰かを想う心」。そのしっかりしたメッセージを巧みな展開と構成で、読みごたえのある作品に仕上げています。

身近にあるなにげない物語をテーマに描くことで、読者の共感を誘いやすくなっていることも大きな理由のひとつでしょう。

また、よく「短編小説を書くのは長編小説を書くよりも難しい」などと言ったりしますね。短編にも関わらず、長編漫画を読んだようなダイナミックな感動を味わえることのできる、そんな作品だからこそ多くのファンから支持されているのはないでしょうか。

デビュー作『式の前日』でいきなりヒットを生んだ作者・穂積とは?

『式の前日』の原作者である穂積は神奈川県出身。2010年この『式の前日』で漫画家デビューを果たしました。きっかけは、「月刊flowers」のまんが投稿コーナー、コミックオーディションでの銀の花賞の受賞。

そのほかの短編を含んだ単行本『式の前日』が2012年に刊行されます。その単行本が2013年には「このマンガがすごい! オンナ編」で第2位を獲得。そのほか、本好きが投票で選ぶブクログ大賞マンガ部門の受賞や「このマンガを読め!」での第5位と、数々の賞を受賞しました。

その後も、ゴッホの伝記作品『さよならソルシエ』や死人の探し物を描いた『うせもの宿』を連載し、着実に人気作家として活躍しています。2021年現在も、チェロと出会ったことで運命に翻弄されるふたりの男性を描いた『僕のジョバンニ』が連載中です。

処女作『式の前日』だけでなく、どの作品も着眼点が面白く、ラストの驚きや感動といった仕掛けが見事です。

『式の前日』以外も読んでほしい!穂積の『さよならソルシエ』

『さよならソルシエ』は『式の前日』が刊行された後、2012年10月から「月刊flowers」にて連載が始まりました。舞台は19世紀のパリ。世界的画家となるフィンセント・ファン・ゴッホの弟にして画商のテオドルス・ファン・ゴッホを主人公に、画壇に新しい風を巻き起こしていくさまを描いた物語です。

この作品では、2014年「このマンガがすごい!」オンナ編で見事第1位を獲得しています。穂積がいかに多くのファンに支持されているのかを証明した結果となりました。

『さよならソルシエ』の面白さはスバリ、皆が知っている炎の画家・フィンセントではなく弟のテオドルスを主人公にしているところ。兄弟の深い絆、心の奥底にある大きな確執など情感あふれる人間ドラマが描かれています。

そして、謎の多いゴッホの死を作者独特の解釈で描いています。ここも非常に興味深い部分です。また、絵画を描く画力も圧巻です。

著者
穂積
出版日
2013-05-10

『式の前日』以外も読んでほしい!『うせもの宿』 

『うせもの宿』は、2014年から「月刊flowers」にて連載が始まりました。『さよならソルシエ』に続く連載作品です。

不思議な古宿「失せもの宿」が舞台。そこを訪れる失くし物を探す客と少女の姿をした女将を中心とする宿の従業員たちのドラマを描いたファンタジーです。前作の『さよならソルシエ』がパリを舞台とする一方、本作では日本が舞台で純和風。訪れる客に合わせて季節もその都度代わり、四季折々の美しい風景が描かれます。

少女のような女将はすべての記憶を失くし、元はお客だった従業員たちも探し物が見つからないまま宿に残っています。その宿に毎回お客を連れてくるマツウラは、女将さんと関係があるようです。

秘められた謎が徐々に明かされると、ひとつずつ増えてく感動の物語は、俊英・穂積の魅力が詰まった珠玉の作品。たとえ別れが待っていようとも、その想いはいつまでも心に残る。人と人の深い絆と愛を描いています。

著者
穂積
出版日

『式の前日』以外もおすすめ!穂積初の長編連載『僕のジョバンニ』

『僕のジョバンニ』は、2021年現在も「月刊flowers」に連載中の作品です。チェロを愛する少年とチェロに愛される少年。そんなふたりを描いた物語です。穂積初の長編連載となっています。

海辺の町に住む小学生の鉄雄は、チェロ好きだった祖父の影響でチェロを習っていました。そんな彼のもとにある日、不思議な少年が現れます。彼は海難事故に遭い、たった一人生き残った少年・郁未でした。死の淵にあった郁未が海で聞いた誰かの声。それは、鉄雄の弾くチェロの音色だったのです。

運命に導かれるように惹かれ合う少年たちでしたが、鉄雄が郁未に教えたチェロがふたりを引き離すことに。そんな少年たちの成長を描いています。

これまでの穂積作品のような大きな驚きや仕掛けといった物語とは違っています。愛や嫉妬、友情といった人間ドラマを丁寧に描いています。音楽でしかわかり合えない少年たちの未来には何が待っているのか。今後の展開が楽しみな作品です。

著者
穂積
出版日

まとめ

『式の前日』収録6作品から、最新作『僕のジョバンニ』まで穂積作品を紹介しました。ラストに涙し、また読み返したくような作品ばかりです。ぜひ何度でも、その感動を味わってみてください。