ミュージシャンとして、司会者として、役者として。音楽だけでなく、活動の幅を広げる可能性のある音楽タレントは、音楽好きの方なら一度は夢見た職業でしょう。音楽タレントは複数の収入源を持っているため、知名度や人気の具合によって収入はピンキリです。ただ一度人気になれば、ある程度安定した収入が得られることは間違いありません。 本記事では、そうした音楽タレントのなり方、仕事内容、必要な素質などを分かりやすくまとめました。記事の最後には、音楽タレントを目指すにあたっておすすめできる書籍をご紹介しています。ぜひ目を通してみてください。
「音楽タレント」とはどんな仕事でしょうか。やや曖昧な日本語の「タレント」からまず知っていきましょう。
「タレント」とは本来「才能」などと訳される英語ですが、日本では「テレビ・ラジオなどのマスメディアに出演することで有名になった人」という意味が当てられています。音楽家であってもタレントと呼ばれる人・呼ばれない人がいます。その差は「いわゆるタレント性」が強いかどうかで判断されると言ってもよいでしょう。
タレントには、音楽以外の能力が求められます。バラエティなどでのトーク力、ファッションリーダー的な存在感、ドラマや映画に出演できる演技力などです。コメディがこなせることで人気が出るパターンもあります。
最近のアイドルやKポップアーティストにとくに顕著な傾向として、ソロではなくグループで活動しているという点があります。この流行が今後も数年続くとすると、音楽タレントを目指す人はグループ活動を視野に入れておいたほうがチャンスが多いということになります。
グループ活動は集団行動です。連絡や報告をきちんとすること、人の話を聞いて返事をちゃんとすること、周囲の人の気持ちも考えて行動することといった心づかいが大切です。
音楽タレントを目指す人は自分の意見をはっきり持っていて、周囲とぶつかってしまいがちということも珍しくありません。それはそれで大切な個性ですが、自分を通すだけでは円滑な活動ができないこともあります。グループ活動を目指すならその点についてもぜひ頭に置いておいてください。
また、グループアーティストは全体の雰囲気になじみつつ個性を出す戦略などが求められます。自分の個性派どこにあるのか、差別化を図れそうならどんな点か、周囲の人の意見も聞きつつ考えてみるとよいでしょう。
では音楽タレントになるには何から始めればよいのでしょうか。実際に音楽タレントを目指す方に、夢を叶えるためのいくつかの方法をご紹介します。
1つ目は、ライブ活動から始めることです。地道なライブ活動が実を結んでデビューするケースです。バンド活動をしていた人がソロとして事務所に引き抜かれるというパターンもあります。
2021年4月時点では、人を集めてライブ活動をするのが現実的ではない状況です。しかし今後、可能性が広がったときには選択肢のひとつとして考えてみてください。
2つ目は、インターネット上の活動を始めることです。YouTubeやInstagram、TikTokなどの動画配信サービスから人気が出るパターンです。本人が意図していないような使われ方で発見されることもありますが、自分の配信アカウントを地道に育てていくのも重要なやり方です。
動画になった自分を客観的に観返すことで、「ここはもっとこうしたほうがよいかも」「こういう曲やスタイルは自分には合わないかも」といった反省点を見つけて改善していけるというメリットもあります。
3つ目は、オーディションを受けることです。グループ系アーティストの追加募集や、事務所所属のための第一歩としてチャレンジできるオーディション。すでに何回かオーディションを受けて、よい結果が出ていないという人もいるかもしれません。
しかし、今は誰もが知っている有名な音楽タレントのなかにも、数え切れないほどのオーディションを受けてようやくチャンスを掴んだという人がいます。オーディションはそれぞれ求めている人物・才能が異なるものです。諦めずに何度もオーディションを受け続けられるのも才能です。自分が輝ける場所を探してみましょう。
音楽タレントの仕事は、大きく2つにわけられます。1つが創作活動で、もう1つは演奏活動です。
主に作詞作曲をおこなうのが創作活動です。音楽を一から作るセンスと、頭の中にある音楽を実際に形にする技術が求められます。音楽はただ作ればよいというものではありません。世間では今どんな曲が流行っているのか、多くの人に長く愛される曲とはどんな音楽なのか、たえず音楽に関する勉強をし、分析する能力も求められます。
たとえば有名な話だと、西野カナさんがいます。彼女は曲を作る前、友人や知り合いに恋愛事情をリサーチし、そこで出てきた言葉やシチュエーションを作詞作曲に活かしています。恋愛に悩む女性のリアルな感情を曲にすることで、多くの人に共感される音楽を生み出すことができたのです。
参考:西野カナの凄みは「企画×キャッチコピー」にあり “恋愛ソングの女王”の徹底した作品づくり
演奏活動には、ライブでの演奏から歌を歌うことまでが含まれます。音楽タレントと聞いて多くの方が想像するのは、演奏活動を主におこなっている姿でしょう。
従来は、創作活動と演奏活動をおこなう人は別で考えられていました。創作活動をおこなう方が作った曲を演奏活動をおこなう方が受け取り、演奏を通して曲として完成させる流れになっていました。
けれど今では作詞作曲から歌唱、演奏までを一貫しておこなえる音楽タレントが増えています。自分が置かれている状況やライフイベントに合わせたリアルな気持ちが曲に反映されるため、共感を得やすい曲を作り、歌唱にも気持ちを込めることができます。自分とともに曲が成長していくのもメリットのひとつですね。
まずは音楽タレントの収入源をご紹介します。
音楽タレントの収入源は、主に7つに分けられます。
これは創作活動と演奏活動、どちらをメインにおこなっているかによって異なります。作詞作曲をおこなっている方は定期的な印税収入を得ることができますし、演奏活動をメインにおこなっている方は、メディアへの出演で収入を得ることができます。
どちらにせよ活動には複数の収入源が発生します。
公式なデータなどが発表されていないため具体的な収入額はいえませんが、収入はピンキリです。たとえば、今や10代、20代で知らない人はいないほどの人気アーティストとなったSEKAI NO OWARIは、音楽番組『バズリズム』で売れる前の貧乏エピソードを披露しています。インディーズデビューが決まるまで、月500円しか自由に使えるお金がなかった時もあったのだとか。
音楽タレントとして駆け出しの頃の収入は微々たるものですが、一度火がつき知名度が上がれば、収入の最低ラインが底上げされ安定した生活を送れるようになります。
参考:SEKAI NO OWARI、貧乏時代の経済状況を告白「ひと月で自由に使えるお金は500円でした」
最後に、一般的に音楽タレントに必要だと言われているものを考えてみましょう。
世代ごとに人気が出る人物像が異なることからわかるように、その時代時代に求められるスター性というものがあります。それも流行っているものの後追いではなく、時代のやや先を行っていて、流行を引っ張れるような存在感が必要です。逆にどんなにハイセンスな人でも、その時代の雰囲気とかけ離れていると人気が出ないということがあります。
努力だけではどうにもならない部分もありますが、今ではなく昔のスターを調べてみると客観的にどういう点が受けてヒットしたのか分析できるかもしれません。また、最新の流行やニュースなどもチェックして、世の中に対するアンテナをしっかり張っておきましょう。
大ヒットする音楽タレントによく見られるのが、いるだけでその場の雰囲気を変えてしまうカリスマ性です。天性のものを後からどうにかするのは難しいですが、「世の中にあって自分はどういう存在になりたいのか」ということを考えると自分らしい魅力を獲得できるかもしれません。それが自分の個性に合っていればなおさらよいでしょう。
総合的には、「自分ならではの売り」が大切、とまとめることができます。とくにグループ系アーティストが多い現代では、「アイドルにいそう」「いかにもバンドマンっぽい」という程度ではその他大勢の中に埋没してしまう恐れがあります。そこから頭ひとつ抜きん出るにはどうすればよいのか考えてみてください。
- 著者
- 矢沢 あい
- 出版日
- 2000-05-15
矢沢あいの漫画『NANA』は完結していないものの、その人気の高さから過去2回映画化された作品です。
物語の内容は、2つの若手バンドとその周囲の人物たちからなる群像劇。ミュージシャンになるというのはどういうことなのか、自分が思ってもいないような売りだし方をされて戸惑う若者、音楽を売るために我慢しなければならないことなどがリアルに描かれています。
音楽活動をしているけれどなかなか売れなくて苦労している方の目には羨ましい悩みに映るかもしれませんが、音楽を生業にしていくために必要なことを学ぶことができるでしょう。
- 著者
- 稲穂 健市
- 出版日
「知的財産権」という言葉になじみがなくても、「著作権」なら聞いたことがあるかもしれません。知的財産権とは著作権だけでなく、商標権、意匠権など、「作ったもの」にまつわる権利をまとめて呼ぶ言い方です。
音楽を商売にしていくときには、ぜひこれらの権利の取り扱いに注意してください。曲や歌詞の著作権は誰のものになるのか。印税はいつ、どういう契約でもらえるのか。アーティスト名は商標登録されるのか。されるなら、会社の商標になるのか。
自分に知識がないと何となく言いなりになってしまいがちですが、わからないがために不利な契約を結ばされてしまう若いアーティストは珍しくありません。活動をしていく上である程度、自ら勉強する姿勢は必要です。
それでももし「自分で契約書を読んでもわからないな」と思ったら、押印してしまう前に弁護士など法律の専門家にぜひ相談しましょう。
参考:無料相談窓口 - Arts and Law アーツ・アンド・ロー
- 著者
- ["スティーヴン ウィット", "関 美和"]
- 出版日
新曲が発表されるとYouTubeにMVがアップされ、楽曲もストリーミングサービスで聴くことができる。2021年4月現在では当たり前になっているこれらは、ここ数年で急速に整った環境です。それ以前は音楽はCDで買うしかなく、フル尺のMVを無料で見る機会はほぼないという時代がありました。
現代のほうが消費者には優しい環境ですが、一方で産業としての音楽は収入が減り、世界的に先細りの感が出てきています。これから音楽で生計を立てようと考えている人は、「今ネットやテレビで見られる活動」だけで職業としていくのは難しいと考えたほうがよいかもしれません。
そういったことを考えるために商業音楽の歴史を紐解くなら『誰が音楽をタダにした?』がおすすめです。
音楽タレントは、学校に行ったり資格を取ったりすればなれるわけではない職業です。時代を読む鋭さとセンスに加えて、人を惹きつける魅力も求められる難しい仕事ですが、憧れを抱いている方には挑戦しがいのある目標でもあります。
ノウハウが少ない世界でもありますので、迷ったときは信頼できる専門家に必ず相談し、不利な状況に追い込まれないように気をつけてください。
以前はオーディションやライブハウス、路上でのパフォーマンスとアナログな活動を通してでないと、音楽タレントとしての一歩を踏み出すことも難しいという時代でした。ですが今は、誰でもインターネットやSNSを通して自分が作った作品を発表できます。
さまざまなツールを利用し、自分の音楽活動をより多くの人に届ける一歩を、まず踏み出してみてはいかがでしょうか。