今ではニュースやドラマ、映画などでもその存在を知られている警察の特殊部隊・通称SAT。重大テロ事件やハイジャックなど政治や思想が絡んだ国を揺るがす事件の際に出動し、迅速に事態を制圧します。そんなSATに憧れを抱いている方は多いはず。 本記事ではそうしたSATの裏側や、SATになるための資格などについて詳しく解説します。SATはその任務の特性上、明かされていない部分が多い職業であるため、年収や勤務内容、訓練内容について軽く触れる程度にとどめています。 記事の最後にはおすすめの書籍を3冊紹介。どれもSATの仕事を理解するおすすめの内容となっているのでぜひ参考にしてみてくださいね。
最近やっとその存在が民間にも認識されるようになり、テレビドラマや映画でも見かけるようになったSAT。正式名称を「特殊部隊(特殊急襲部隊と呼ばれることも)」といい、SATは「Special Assault Team」の略です。
SATは重大テロ事件やハイジャックなど凶悪な重大犯罪に対抗するための組織です。警察内部にある組織ですが、一般的な警察官とは一線を画す特殊な存在であり、その存在は長い間、民間に対して明かされていませんでした。
その存在が明かされたのは1995年頃。この年は地下鉄サリン事件や全日空ハイジャック事件など、国を揺るがす特殊犯罪が多発したため、警察は約20年間隠していたSATの存在を明らかにしました。それから2000年代に入ると、SATの存在やSATの訓練風景がテレビなどでも紹介されるようになり、現在の認知獲得につながりました。
SATの主な任務は、重大テロ事件やハイジャック、銃器などの武器を使用した特殊な事件発生時に出動し、鎮圧をおこなうこと。特殊な事件のなかでも政治色や思想の強い事件を取り扱っているのがSATなのです。
危険度の高い事件を取り扱っているだけあって、SATの装備や訓練は他の警察官とは異なります。主な装備は自動小銃や特殊銃に規定されているライフルなどで、作戦用のヘリコプターを用意している場合もあります。
また訓練は非常に厳しく、射撃訓練など実践的な訓練を積み重ねて、有事の際に冷静な判断や対処がおこなえるように能力の強化を日々おこなっています。
SATは、警視庁、北海道、神奈川、千葉、愛知、大阪、福岡、沖縄の全国8都道府県に設置されています。警視庁には3隊、大阪府には2隊の計11隊編成です。
SATが全国で初めて編成されたのは1970年代と発表されています。誕生のきっかけは1977年に発生した日本赤軍による「ダッカ航空機ハイジャック事件」。
この事件を教訓に警視庁と大阪に特殊部隊を設置し、SATの前身となる特殊部隊「警視庁特科中隊SAP」が誕生したと言われています。
もうひとつの特殊部隊としてSITがあります。SITは「Special Investing Team」で、正式名称は特殊犯捜査係や特殊事件係など。所属している警察本部によって呼称が異なるようで、たとえば大阪府警ではMAAT、千葉県警ではARTと呼ばれています。
SATとSITの違いはいくつかあります。まずひとつが、所属先が異なることでしょう。SATが警備部に所属するのに対し、SITは刑事部に所属しています。この所属先の違いから、任務内容の違いも推察できますよね。
そしてSATとSITでは、まったく異なる任務が課されています。SATは重大事件の事態の鎮圧・被疑者の検挙をおこなうのに対し、SITの目的は人質の救出と犯人の逮捕となります。
そのためSATにとって制圧のために必要な銃器も、SITにとっては最後の手段となります。SITは通信機器や探知機などを駆使しながら犯人の情報を集め、交渉や説得をまずおこなう役割を担っているのです。自身の頭脳と交渉術が武器と言っても過言ではないでしょう。
混同されがちなSATとSITですが、その役割は明確に異なっているのです。
SATはテロ事件やハイジャックなど重大事件が発生した際に出動します。差し迫った事態のなかで事件解決や犯人の検挙とともに人質や被害者の安全も確保しなければなりません。
知能的にも体力的にも優秀な人のみがSATとして選ばれるため、SATへの道のりは三段階になっています。厳しく、狭き門なのです。
SATを目指したいと思った場合、まず警察官採用試験に合格しなければなりません。警察官採用試験は各都道府県で実施されています。採用試験は筆記試験と体力検査となっています。
採用試験合格後、警察学校での訓練を経て一人前の警察官になります。警察学校での訓練期間は、高卒は10ヵ月、大卒は6ヵ月です。一人前の警察官になると交番勤務から始まります。この点は、刑事と同じ過程です。
警察官として経験を積んだら機動隊員への登用試験と訓練を受けることができます。試験と訓練を経て機動隊員になることができます。
機動隊は各都道府県の警察本部にあります。機動隊として経験を積んだらSATの選抜試験合格を目指しましょう。
なお、SATについては全国の警察本部にあるわけではありません。警視庁警備部第一課、北海道警、千葉県警、神奈川県警、愛知県警、大阪府警、福岡県警、沖縄県警にあります。
将来的には必ずSATになりたいと考えている方は、これら全国8都道府県の県警での警察官採用試験での合格を目指すのがおすすめです。
SATは国を揺るがす重大事件に関わるため、勤務体系や年収などは基本的に公にされていません。また隊員の家族には守秘義務がありますので、正式な情報はオンラインでもオフラインでも知ることができないのが現状です。
ですので今回は警察官の平均年収からSATの大体の平均年収を推測します。警察官の場合、都道府県によって若干異なりますが、平均年収は598万円から789万円までの間になります。
また、SATは特殊な仕事であり、危険をともなうことから特別手当があります。日頃から厳しい訓練を受けなければならないため大変な仕事で体力勝負と感じますが、社会的意義の面でも、収入の面でもやりがいある仕事だといえるでしょう。
結論からいうと、SATへの転職は可能です。ですが警察官の多くが高卒や大卒で就職しているので、遅くとも25歳までには行動するのがおすすめです。
なぜなら先述した通り、SATになるには警察官採用試験に合格、その後、機動隊員となり、さらに経験を積んだ後に一部の優秀な隊員だけがSATになることができます。つまり、SATになるには数年かかるのです。重大事件にあたるため体力が必要ですから、若いうちに目指した方が可能性があがるといえるでしょう。
- 著者
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- 出版日
この本は警察に対する素朴な疑問に答えています。たとえば、警察署のパトカーに東京都以外○○道警・府警・県警と書かれているのに、東京都だけ警視庁なのか。その経緯などを写真入りで解説している1冊です。
読者のなかにはSATだけでなく警察組織が気になる方もいると思います。そうした疑問に対しても、警察官の階級と縦割り行政の組織を写真と図で分かりやすく解説しています。
他にも2021年に開催が延期となった東京オリンピックに向けて、テロ対策のための組織や訓練の様子も紹介されています。警察に関する雑学を知ることができるので、機動隊・SATだけでなく警察全体に興味のある人におすすめしたい本となっています。
- 著者
- 今野 敏
- 出版日
警察やSAT、その訓練内容やSAT隊員の想いなどを知ることのできる警察小説。
主人公は、新人警察官として機動隊で日々厳しい訓練を受けている青年・柿田。そんな彼に特殊部隊・SATへの入隊に声がかかったところから物語が動き出していきます。
この小説の特徴は、警察官を主人公に扱いながらも事件はまったく起きないところでしょう。主人公がSATの同期や上司、日々の訓練を通して、真の警察活動について考えていく真摯な姿から、今までの警察小説とはまた違った面白さ・奥深さを感じることができます。
決して民間にその活動のすべてを明かさないSAT。公の組織になったとはいえ、性質上すべてを明かすことのできない組織です。そんな組織で、まさに全身全霊をかけて民間の安全のため、国の治安維持のために全力を尽くすSAT隊員の誠実な姿勢に心揺さぶられることでしょう。
- 著者
- 伊藤 祐靖
- 出版日
2020年に発売され、自衛隊のカテゴリーでベストセラーを獲得している本書は、特殊部隊である海上自衛隊特別警備隊の創設者が書いたリアルなシミュレーションが描かれたドキュメントノベル。そのあまりのリアルさに、内容のすべてを受け入れるには難しい読者もいることでしょう。
本書は、北朝鮮による拉致被害者を奪還するために、その時日本はどう動くかをシミュレーションした小説です。このような奪還作戦が実行された時、日本の政治家は現場の司令官に全権を委ねることはできるのでしょうか。
多くの方が薄らと頭のなかで考えていたことに対する答え合わせを、ぜひこの小説で。
今回はSATについて紹介しました。SATはその仕事の特性上、詳細は明かされていません。また隊員だけでなく家族にも守秘義務があるため、SATのことはSATとなった隊員たちや関係者にしか分からないという現状があります。
しかし、有事の際にはすぐさま手動し現場に駆けつけ、事態の制圧のため動きます。国民にとって、国にとっていなくてはならない存在であり、そのやりがいは計り知れないものがあるでしょう。
SATの仕事に興味がある方は、記事の最後に紹介している書籍にもぜひ目を通してみてくださいね。人命に関わる任務を多数のため綺麗事だけでは生きていけない厳しい世界ではありますが、間違いなく誇れる仕事であることが分かるでしょう。