歴史や事件をとり扱ったものや、感動の実話、社会問題にビジネス関係まで、さまざまなジャンルからおすすめの海外のノンフィクション本をセレクトしました。どれも世界的に高く評価されている名著ばかりで、1度は読んでおきたいところ。気になったものはぜひ実際にお手に取ってみてください。
第二次世界大戦中、強制収容所であるアウシュビッツとその支所に入り、生き延びた経験を綴った作品です。作者は、ユダヤ人の心理学者ヴィクトール・E・フランクル。想像を絶する地獄から解放された時、彼の家族はみな亡くなっていて、たったひとりの生還でした。
過酷な収容所の内情は、読んでいて決して楽しいものではありません。しかし本書は、そんななかでも人間性を失わず、希望をもち続けた人々を描いていて、戦争の悲惨さだけではなく、人間がどう生きるべきなのかを考えさせられます。
国境も世代も超えて読み継がれている、不朽の名作です。
- 著者
- ヴィクトール・E・フランクル
- 出版日
- 2002-11-06
作者のフランクルは、強制収容所内で体験したことを小さな紙に速記記号を用いて書き残していました。終戦後の1946年、その記録をもとに本書が出版されたのです。日本では1956年に翻訳され、大ヒットを記録しました。
強制収容所にまつわる体験記は数多く出版されていますが、なかでも本書が名著として読み継がれているのは、文学性の高さや哲学的な洞察の深さが理由だといえるでしょう。
フランクルは収容所内でも学者であり続け、横暴で人間性を失くしてしまった監督官や、極限状態に置かれた収容者たちを冷静に観察し、その心理を分析していたのです。精神を崩壊させていく者と、そうでない者を見つめ、人間の根幹や生きる意味を解き明かしていきます。
なお旧版には、ホロコーストの資料や衝撃的な写真が添えられています。旧版もそのまま版を重ねているので、刺激は強いですが写真付きで読みたい方はそちらをお手にとってみてください。
文明はなぜ世界各地で異なる形に発展していったのか、その理由を解き明かそうとする作品です。
作者のジャレド・ダイアモンドはアメリカの生物学者で、長年にわたりフィールドワークをおこなっている人物。ある時ニューギニアで、「白人がニューギニアを征服したが、なぜその逆は起こらなかったのか」と質問されたことから、本書を執筆したといいます。
その答えは、人種によって優劣があるわけではなく、地理的な条件が大きな差を作った、ということ。さらに他の地域を侵略する際に大きな影響を与えたのが、タイトルにもなっている「銃」「病原菌」「鉄」でした。
ピュリッツァー賞をはじめ、コスモス国際賞や朝日新聞「ゼロ年代の50冊」の第1位などを受賞した、読んでおくべき一冊です。
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
2012年02月02日
「銃」「病原菌」「鉄」という3つの要素を、なぜヨーロッパに住む人々がいち早く獲得することができたのか、人類の歴史を遡り、進化生物学や生物地理学、文化人類学、言語学などを駆使して解き明かしています。
そのほか、なぜ今日まで世界における欧米優位が続いているのかや、なぜ世界のほとんどで家畜となる動物が同じなのかなど、興味深い記述が盛りだくさんです。
あらゆる知見を積み重ねて、壮大な疑問を論理的に解き明かしていくさまは、まるでミステリのようでもあります。知的好奇心を満足させられる作品でしょう。
メジャーリーグベースボールチームのオークランド・アスレチックスは、資金不足で戦力が低下し、戦績も混迷を極めていました。
本書は、志なかばで現役を引退した元選手がゼネラルマネージャーとなり、データを駆使した新しい手法でチームを立て直した実話が綴られています。2011年には映画化もされ、話題になりました。
マネー・ボール〔完全版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
2013年04月10日
舞台となるのは、1990年代後半から2000年代にかけてのアメリカです。当時のメジャーリーグは、勝つために多額の資金を使って一流の選手を集める、という手法が一般的でした。そんななか、貧乏球団のゼネラルマネージャーとなった元選手のビリー・ビーンは、無名の選手と格安で契約しながらも4年連続でプレーオフに進出するという偉業を成し遂げるのです。
データの活用やトレードでの駆け引き、選手の才能を開花させる手腕など、そのドラマチックな展開には野球ファンならずとも惹き込まれます。
新しい概念を持ち込んで常識を覆していくという、ビジネス書としても読むことができるでしょう。
1992年。アラスカへ旅に出たひとりの青年の遺体が、捨てられたバスの車内で発見されるという事件が起こりました。
裕福な家庭で育ち、大学を首席で卒業した彼は、なぜアラスカを目指したのでしょうか。そしてなぜ、亡くなったのでしょう。その足跡をたどっていきます。
- 著者
- ジョン クラカワー
- 出版日
主人公の青年は、大学を卒業した後、ロースクールへ進学してほしいという両親の願いを聞くことなく、旅立ちました。身分証を捨てて名前を変え、私物を燃やし、財産は慈善団体に寄付します。
さまざまな人との出会いを重ねながら、やがてアラスカの荒野へ。捨てられたバスを発見し、そこを拠点に生活を始めるのです。
何もかも捨ててどこかへ行きたい、逃げ出したいという感情は、多くの人が1度は抱えたことがあるでしょう。しかし青年はそれを、実行しました。
彼の行動を若気の至りと非難することは簡単ですが、その軌跡と心の動きを追っていくうちに、何か見えてくるものがあるはずです。生き方について考えられる一冊でしょう。
2000年7月、元英国航空の客室乗務員で、当時は六本木でホステスとして働いていたルーシー・ブラックマンが行方不明となりました。7ヶ月後の2001年2月に、神奈川県三浦市の洞窟内でバラバラの遺体となって発見されます。
本書の作者は、被害者が失踪した当初から事件を追いかけていた在日英国人ジャーナリスト。10年越しの取材で、真相に迫ります。
- 著者
- リチャード・ロイド・パリー
- 出版日
- 2017-07-20
事件の被疑者となった男は、ブラックマンを含めた10人の女性に準強姦をはたらき、そのうちブラックマンとオーストラリア人女性が亡くなっています。
1審で、9人の女性に対する準強姦致死罪などで無期懲役が言い渡されましたが、ブラックマンについては証拠が乏しく合理的な疑いがあるという理由で無罪。続く2審では、ブラックマンの事件についてわいせつ目的誘拐罪・準強姦未遂罪・死体損壊罪・死体遺棄罪で一部有罪の無期懲役。そして最高裁で、ブラックマンに対する死体損壊罪と死体遺棄罪などで被告の有罪が確定しています。
作者はこの事件を、日本の警察の捜査手法や裁判制度、水商売の異質さ、六本木という土地柄、被疑者の出自などさまざまな視点から分析しています。圧倒的な取材量と、日本人には書けない客観的な視点が魅力。ノンフィクションですが、ストーリーテイリングを意識した物語形式で執筆され、惹き込まれるように読める作品です。
スペースシャトルチャレンジャーの爆発墜落事故やチェルノブイリ原発事故、殺虫剤工場での毒ガス漏出事故、高層ビル倒壊など、50あまりの実際に起こった事故をカテゴリ別に取りあげている作品です。
事故の概要だけでなく、誰が何をしたことが原因で起きたものなのか、未然に防ぐにはどうすればよかったのかなどを考察しています。
最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか (草思社文庫)
2017年08月02日
事故当事者の事情を考察し、事故発生のメカニズムを描き出していきます。人的要因とメカニカルエラーが組み合わさって大きな事故につながる様子に、多くの読者が恐怖を覚えるのではないでしょうか。
なかにはすんでのところで大事になるのを防ぐことができた事例もあり、実際に事故が起きてしまった場合と比較をすることもできます。
悲劇をくり返さないためにはどうすればよいのか、さまざまな角度から示唆を与えてくれる一冊でしょう。
被害者の血を飲むカニバリズム傾向を持った殺人者や、死姦する性的倒錯殺人者、30人以上を殺したシリアルキラー……。
作者は、FBI行動科学課の特別捜査官。異常性をもった猟奇殺人者たちと実際に面談し、彼らが事件を起こすにいたるまでの経緯を分析していきます。
- 著者
- ["ロバート・K. レスラー", "トム シャットマン"]
- 出版日
- 2000-12-01
作者のロバート・K・レスラーは、設立されたばかりのFBI行動科学課でプロファイリング技術を確立させた人物のひとりです。
プロファイリングとは、過去のデータベースから犯罪の性質や特徴を行動科学的に分析し、犯人がどのような人物なのかを推論していくこと。本作がベストセラーになったことで、この捜査方法が世界的に知られるようになりました。
また本作には、実際の事件にまつわる写真などの資料も掲載。現場を見ただけで犯人の性別や年代を絞ることができる手法を、実例をもって描いています。ノンフィクション本なので紹介されている事件が実際に起きたことだと考えると恐ろしいですが、犯罪者の素顔と凶悪犯罪のメカニズムに迫ることができる一冊です。
メキシコとアメリカの国境地帯で、麻薬取引と暴力に依存して生きる「ナルコ(麻薬密輸人)」たち。本書は、彼らに密着しながら、近年急速に拡大した「メキシコ麻薬戦争」の内実を暴いていくルポルタージュです。
密輸人たちのネットワークや、警察と癒着した組織、麻薬王の優雅な暮らしぶりに、10代の殺し屋……末端価格が300億ドルにもなるという麻薬を取り巻く、凄惨な実態が明らかになっていきます。
- 著者
- ヨアン グリロ
- 出版日
- 2014-03-07
そもそも麻薬がメキシコで栽培されるようになった歴史的背景、アメリカとメキシコのあまりにも格差のある関係、その一方でメキシコにおいても麻薬の密輸が一大産業になっていること、そしてメキシコ国内での一般人を巻き込んだカルテル間の抗争……両国の構造のゆがみが、麻薬戦争を加速させていることがわかります。
作者は麻薬密輸人や殺し屋、政治家などにも直接取材をしていて、実際に現場を見た人にしか描けない生々しさが光ります。
またカルテルの資金をそぐための合法化など、解決への道筋も提示していて、現代のアメリカとメキシコが抱える麻薬問題を理解するのに役立つ一冊です。
第二次世界大戦の最中、ナチスによるユダヤ人狩りから逃れるため、家族でオランダのアムステルダムに移住をしていたユダヤ系ドイツ人のアンネ・フランク。
本書は、彼女が隠れ家に身を置きながら、家族や同居人との生活を記した日記になっています。執筆期間は、密告によって捕らえられるまでのおよそ2年間。戦後の1947年に、隠れ家で暮らしていた8人中唯一生き残ったアンネの父親によって出版されました。
日記は、アンネが自分用に書いていたものと、公開することを前提に書いたものの2種類があるそう。本書はその2つを編集したものに新たに発見された日記を加えた増補新訂版です。
- 著者
- アンネ フランク
- 出版日
アンネが隠れ家で暮らしていたのは、13歳から15歳という多感な少女時代。将来はジャーナリストになることを夢みていたそうで、彼女ならではのみずみずしい感性で日々の様子が描かれています。その内容は、忍び寄るナチスの影に怯える様子だけでなく、思春期ならではの親への嫌悪感や、淡い恋心など、等身大の10代の姿を思い浮かべられるでしょう。
だからこそ、彼女のような罪のない子どもたちが命を奪われるという悲劇、そしてその残虐な行為がいまも世界のどこかでおこなわれているという事実に胸が痛くなります。
「アンネの日記」はユネスコ世界記録遺産にも登録されています。1度は読んでおくべき作品でしょう。
物流のあり方を一変させた、20世紀最大の発明ともいわれている「コンテナ」。発明したのは、トラック運送業者に勤めるマルコム・マクリーンという人物でした。トラックから荷箱だけを切り離して船に乗せるというアイディアを実現させます。
コンテナができたからこそグローバル化が実現したといっても過言ではない、「箱」を中心に語られるビジネスノンフィクションです。
- 著者
- マルク・レビンソン
- 出版日
- 2007-01-18
荷物を積み下ろしする人員や時間の削減、盗難・紛失におけるリスクの減少、渋滞の回避……いまとなっては当たり前に使われているコンテナですが、いかに画期的で世界を変える発明だったのかが本書を読むとよくわかります。
マルコム・マクリーンは、沿岸航路で規格化された「箱」を使用することを思いついたものの、実現させるにはさまざまな規制や、既得権益を守ろうとする人々の抵抗と闘わなければなりませんでした。
またコンテナは、四方を海に囲まれた島国である日本を輸出大国に変えたものでもあります。箱も船もトラックも既存の技術ではありますが、それを組み合わせることによってひとつのシステムとなり、世界経済を変えていきました。物流の歴史がわかる一冊です。