競輪を観戦したことがない方でも、競輪選手について知っている方は多いでしょう。中野浩一選手や神山雄一郎選手など、日本競輪には素晴らしい戦績を持つ選手が多く存在します。最上級のS級S班のレベルともなると、年収は1億を超えることも。並々ならぬ努力の上に、結果が成り立っているのです。 本記事では、そんな競輪選手という職業ついて解説しています。競輪選手になるための養成施設、資格試験、そもそも競輪のレースの仕組みなどもご紹介しています。また、記事の最後には競輪選手を目指す人におすすめしたい本の紹介もしていますので、興味のある方はこちらもぜひ参考にしてみてくださいね。
競輪選手は公営競技の競輪で自転車レースをおこない、着順を競う仕事です。初の競輪は1948年に開催され、日本最大のプロスポーツとして約70年ほどの歴史があります。長い間、競輪は男性のみのスポーツでしたが、2012年にはガールズケイリンも登場し、今や男女ともに楽しめるスポーツとなりました。
レースに勝つには、スピードやスタミナといった本質的な個人能力の他に、レース戦略も重要です。
競輪選手の自転車のスピードは最高で時速70キロ以上となり、その分風圧は強くかかります。風圧を避けるポジショニングを察知し、仕掛けるタイミングなどレースの展開を読む力を総動員させることで、レースを優位に進められます。
ただ肉体のみが試されているわけではなく、レース勘を身につけることで勝てる競輪選手へと成長できます。
自転車に乗り込み、競輪場をひたすら走り実践的に鍛える練習法です。
時間の許す限り、何時間でも練習し続けることが大切です。トップ選手のなかには、新人の頃は1日8時間、200キロの乗り込み練習を続けていた選手もいるくらい効果的な練習方法と言われています。
自転車をより早く漕ぐためには、太ももの後ろにあるハムストリングス(大腿二頭筋)を意識して鍛えることが重要です。ハムストリングスは、競輪競技においてアクセスの役目を果たすため、第一線で活躍する選手たちは必ずと言っていいほどハムストリングスが発達しています。
前側の筋肉、大腿四頭筋と合わせると太腿の太さは男性なら60cm以上。全盛期には70cm以上にもなると言われており、太腿を鍛えることがどれだけ重要なことなのかが分かりますよね。
競輪選手の平均年収は1300万円です。平均年収推移は幅が広く、400万円~7200万円となっています。
新人で最初の稼ぎは400万程度と言われています。
収入の違いはS級とA級と呼ばれるランクづけがあり、新聞社主催の大きな大会には、S級の資格が条件となっています。
競技は出場さえすれば9位までは賞金がでるのと(最下級は9万円、多くて500万)、入賞関係なく3万円程の手当と交通費、雨や風雪の休場手当、班や級の参加手当などいくつか手当が出るため、A級クラスでもサラリーマン程度の収入は見込めます。
男性の競輪選手の平均年収の一例をご紹介します。
※昇級、降級は半年ごとの成績に応じて決定されます。
高いランクほど選手が少なくなり、S級S班は9名しか存在しません。ランク型変えれば高いほど1度のレースで狙える報酬額に差が出ます。
S級S班の選手のみが出場するKEIRINグランプリでは優勝賞金が1億円を超え、一度のレースで大きな収入を掴めます。
女性の競輪選手の平均年収は600万円前後だと言われています。
KEIRINグランプリのような高額賞金のレースがないため、基本的には男性の競輪選手より平均年収が少なくなっているのが現状です。しかし、ガールズケイリンの人気が高まっているので、将来的に高額賞金のレースも立ち上げられ、今後は収入が引き上げられる可能性があります。
競輪のレースは主に6つにグレードが分けられています。最も高いグレードであるGPにもなると優勝賞金は億単位になることも。各グレードごとに出場可能な選手階級が定められているため、選手はひとつでも上の階級にあがれるよう日々のレースに手を抜きません。
6種類のレースのなかで最もグレードの高いレースです。GPのレースは「KEIRINグランプリ」しかなく、出場できるのはS級S班の階級に属する9名の選手のみです。
GPの次にグレードの高いレースで、年に6回ほど開催されています。
出場可能選手は、S級の階級に属する選手のみ。GIのレースで優勝することでGPへの出場権を獲得できるため、非常にハイレベルな試合を観ることができます。
GIIのグレードのレースは、各レースごとに出場できる選手が異なるのが特徴です。
優勝賞金も300万円台〜約1900万円ほどと金額の幅が広いため、どのレースに出場するかは選手によって違うでしょう。
GIIIのレースに出場できるのはS級選手のみ。試合は各競輪場が開設日などを記念して、原則年に1度の開催となっています。レースは1回の開催で4日制が一般的。近年では3日制のレースも少しずつ増えてきています。
S級選手、A級1班選手、A級2班の選手が出場するレースです。基本的にはS級、A級の選手は同じレースに出場せず、同階級ごとにレースをおこなうことになっています。たとえば1日に11レースが開催される場合は、S級戦が5レース、A級戦が6レースなどのレース配分です。
FIIに出場する選手は、オールA級です。1年間で最も開催回数が多く、主に3日制でおこなわれます。各レースはA級のどの班に属しているのかでレース分けがおこなわれ、A級1班・2班の優勝賞金でも約35万円と小額です。A級3班の場合の優勝賞金は約13万円程度と、レースのなかで最も低い賞金額となっています。
競輪選手になるには、国家試験の「競輪選手資格検定」に合格する必要があります。その後、一般社団法人日本競輪選手会に所属することで、競輪選手としてデビューが可能となります。
資格検定は、誰でも受験可能です。しかし、実際には「日本競輪学校」で学んだ者でなければ合格はかなり難しいです。そのため競輪選手を目指す方にとって、静岡県伊豆市にある日本競輪学校に入学して、1年間勉強することが実質的な前提条件となっています。
日本競輪学校への入学、学習が競輪選手になるための近道です。概要について解説します。
高卒以上の学歴がある17歳以上、年齢上限はありません。過去には48歳で競輪選手を志し、競輪学校の女子1期生に合格した高橋美代子選手もいます。体力や身体的な制限がありつつも、本気で目指す方であれば入学することは可能なのです。
技能試験と適性試験のどちらかで受験します。
技能試験の場合、1次試験は1000mと200mのタイムトライアルです。合格基準は、1000mのコースを1分10秒程度で走行すること。※女性は500メートルのタイムトライアルとなります。かなり鍛えないと合格基準のタイムを出すのは難しくなっています。
適性試験の場合、1次試験は垂直跳びと背筋力、柔軟性の測定、2次試験が台上走行試験装置を使った回転数や走行速度の測定をおこないます。2次試験のうち技能試験・適性試験に共通する内容として、身体検査と人物考査(口頭試問、適性検査、作文など)があります。
2020年度入学者の倍率は以下の通りです。
女子は受験者数が男子に比べて10分の1程度しかいないため、倍率は例年2倍程度です。しかし、男子の入学の壁は高く、現役の競輪選手でさえ2、3回不合格となっていることがあります。かなり実力が試される試験です。
日本競輪学校には厳格なルールがあり、日々の練習量も膨大です。まずは日本競輪学校の基本的な情報をご紹介しながら、授業内容、学校生活での注意すべき点などもご紹介していきます。
学費がかからない点に驚かれるかと思いますが、その代わりに寮での生活をおくるための生活費、施設利用料、衣服代を合わせて年間で約120万円ほどかかります。しかしこの金額を支払うための貸費制度があり、無利子の貸付が可能です。
多くの方は選手になってからの賞金で、日本競輪学校に通っていた時期の費用を少しずつ支払っているのです。
授業は、学科と実技があります。
学科では競輪選手に必要な法律の知識や競輪のルール、自転車に関する知識のほか、国語や社会といった一般科目も勉強します。一方実技では、学校内の施設やバンクでおこなわれ、筋力トレーニングや実際のトラックレーサーを使っての訓練などがあります。
競輪学校の指導は厳格であることで有名です。
競輪は公営ギャンブルで賭けの対象になるため、不正防止や体調管理、生活態度についても厳しく指導されます。なかには、競輪学校の生活を厳しすぎると感じて退学する方もいます。窮屈に感じるかもしれませんが、優秀な競輪選手になるためにと学校生活を乗り越えていく力が必要です。
国家資格である競輪選手資格検定は、年に1回実施されています。受験料は1回5000円と検定のなかでは比較的リーズナブルな金額です。
受験資格はかなりシンプルです。一応定められてはいますが、多くの方に該当する条件です。
年齢上限がないため、30歳や50歳でデビューを果たす方もいます。競輪への熱量が高く、1レースを走りきる体力をつけることができれば競輪選手を目指すことができるのです。
受験内容は男女により異なります。今回は男子選手を目指す場合の試験内容をご紹介しましょう。
合格率は約22%ほど。日本競輪学校の倍率に比べれば高いですが、合格は狭き門であることは間違いありません。1年間厳しい特訓をしたからと言ってすべての人が競輪選手になれるわけではないのです。実力主義の厳しい世界です。
参照:日本競輪選手養成所
- 著者
- 松垣 透
- 出版日
競輪選手になるために日本競輪学校への入学を目指し、過酷な練習を続ける2人の若者の姿を追った3年間を綴った本書。1人は記録に自信があるが学科試験に不安があり、もう1人の若者は記録に不安があるという状況から栄冠をつかむことができるのかを追いかけたノンフィクション小説です。
競輪学校のハードルの高さや、目指すために必要な努力や当時の想いなどが記されています。いざ日本競輪学校を目指そうと思った方は一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
- 著者
- 武田 豊樹
- 出版日
29歳でデビューし、トップ選手となった武田豊樹選手の幼少期の体験や、競輪選手を志すまで、そして競輪選手として活躍していく人生を追体験できます。
15億円を稼いだトップ選手の競輪に対する想いや本音は、これから競輪選手を目指す方にとって知りたい内容ばかりです。デビューは遅くとも競輪史に名を連ねることができた名選手の人生をのぞき見し、これから競輪選手になるための気持ちをセットしてみてはいかがでしょうか。
- 著者
- 中野 浩一
- 出版日
世界の中野と呼ばれる中野浩一選手が、競輪の世界や競輪学校のリアルから収入までを紹介しています。
競輪は公営ギャンブルですが、他の競技と比べても、かなりの公平さを誇っています。だからこそ、才能や体格を努力や練習量でカバーできる。やる気さえあればチャンスを掴めるスポーツだと語られています。
競輪選手としての活躍を夢見ている方は、一度レジェンドの言葉に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
競輪選手になるためには、競輪学校に通って「競輪選手資格検定」に合格する必要があります。厳しい校則のなかで学ばなければならず、ひたすら練習を繰り返す苦しい1年間を過ごすこととなるでしょう。しかし、試験に合格し、好成績を収めることができれば1億円以上の年収が見込めます。努力と成長次第で夢をつかめる面白い職業です。
当記事を読んで、より競輪選手に興味を持った人はここで紹介した本を参考にして、理解を深めてみてはいかがでしょうか。