サイエンティスト(科学者)とは、実は医療やシステム・食品など、分野は多彩ではありますが、主に自然科学を研究している方々を科学者と呼びます。そのなかでも物理や生物学など、さまざまな分野があり、理数系が得意な方が就く職業です。科学者の方々はあまり表に出てくることはないので、実生活であまり目にすることはないかと思います。就職先としては民間企業、公的機関、大学と3パターンがあり、それぞれ業務内容が少しずつ異なります。本記事では、そんな科学者の生活や実態などを調査してみました。年収事情、大学に勤めた場合の1日の働き方、仕事内容なども言及しています。科学者を目指してみたい方、必見の内容です。
科学者とは、一般に自然科学という分野について専門的に研究する方のことを指します。
科学者の役割は、専門知識、技術、経験を活かして社会または地球環境の持続に貢献することです。たとえば、地震などの天災、感染症の流行などが起こった場合、科学的知見が社会的判断の材料として必要となります。それがたとえ科学的不確実性が高い内容であっても、社会に伝えることが求められます。
科学者の就職先・転職先は、民間企業、公的機関、大学の主に3つに分けられます。
民間企業に勤める場合、製薬会社や化学メーカーが就職先としては一般的です。職種としては研究開発職として求人を出しているところがほとんどでしょう。大卒・大学院卒とは別に求人を出していることが多いので、就職を考える際は要確認が必要です。
大学での研究内容に比べて、民間企業の研究開発職での仕事は限定的かつ具体性があります。企業の利益を第一に考えて研究をおこなうため、学生時代の研究内容とギャップが生じることもあるでしょう。
公的機関に勤める場合、理化学研究所や産業技術研究所が一般的な就職先です。研究を進めることを第一に考えて仕事がおこなえる環境が多く、博士号まで取得した学生の就職先として人気です。
大学の研究室によっては、公的機関との繋がりのある教授もいます。そのため就職を考える場合は、大学院での研究室の選び方が重要になってくるといえるでしょう。教授が公的機関とどのような関係にあるかはリサーチしておきましょう。
大学へ就職する場合、肩書きは大学教員となります。教員になるには博士号が必要となるため、取得して間もない学生は非正規雇用研究員として研究をおこないます。
大学教員の席は、大学によってどのタイミングであくか異なります。所属している研究室の教授からの推薦も必要ですので、博士号取得を目指していること、その後は大学で教員として就職したいことを早めに伝えておくことが重要となるでしょう。
研究者のひとりとして自身の研究を進めながら、学生への指導もおこないます。後進の育成もおこないたい方におすすめできる就職先といえるでしょう。
科学者というと、何かものすごく頭のいい人たちで、とても難しいことを考えている方というイメージが一般的です。科学者は、まだ見ぬ結果や分野に対して日夜研究しているのが基本的な業務となっています。
その専門性の高さから年収が高いという認識が広まっていますが、実情は少し違います。
一般的に言われている科学者の年収は500万~600万ほど。科学者の主な就職先は「民間企業」「公的機関」「大学」がメインとなっていますが、勤め先によっても収入は異なります。
企業では、その企業規模が大きくなればなるほど収入が上がるようですが、公的機関や大学などの公務員扱いになると、年収は決して多いほうではありません。
新卒などを含む若手を「ポスドク・研究員」と呼び、彼らは年収300万ほどだとか。研究員の給料形態は、その研究費用から捻出されているという実情もあるので、当初は決して高くないのが実情です。
科学者は比較的、年齢とともに徐々に安定した昇級が望める職業でもあります。多ければ年収1000万越えも夢ではありません。
大学での研究をおこなっていた場合、正規雇用であれば、研究内容や成果により准教授や教授の道が開ける場合もあります。こうなるとより多くの年収も望めるでしょう。
大学での就職であれば、当初の収入は少ないかもしれませんが、社宅や寮があったり、福利厚生がしっかりしたりしています。実生活の支出が少なくて済むケースもあります。総合的にみて就職先を選んでもよいかもしれませんね。
一定の研究結果を出したり、論文が評価されメディアでの活躍ができるようになれば大きな副収入を得られることもあります。自分の好きな分野を仕事として大きな年収を得られるのであれば、こんなうれしい話はありませんよね。
結論から言うと、科学者になるのに必要な資格はありません。しかしながら、専門分野に関する知識を有しているのはもちろん、他者の論文を読解する能力も求められます。理数系に特筆していればよいわけではなく、分野に関係なく広く勉強し、知識を有していることがもとめられます。
また、多くの場合、専門課程のある大学に進学し、研究・論文を経て大学院に進学、博士号を取得することを求められるケースが多いようです。学生時代が長いのが科学者の特徴といえるかもしれません。
科学者になってからは、研究を生業とすることになりますが、研究もひとりではできません。チームワークを求められる職業でもありますので、他者との円滑なコミュニケーションを図れるようなスキルがもとめられます。
科学者の仕事内容は、当然ですが「研究」をすることです。ではその研究では一体どんなことをおこなうのでしょうか。
科学者の研究とは、毎日研究を続け、その結果を論文に書いて学会で発表することです。研究する分野は、まだ解明されていないことや存在すると仮定があるが、見つけられていないものを発見することなどが研究する内容となります。
多くの科学者は、自分が興味のある分野を専門としています。世の中には、数えきれないくらい多くの学会があり、科学者により自分が携わることのある学会に複数所属するのが常のようです。
この学会のなかで発表するのですから、間違ったことはいえません。学会に来る誰もがその分野の専門性を持っている方々ばかりなので、プレッシャーもかかります。
科学者は、毎日研究をしていますが、必ず毎日真新しい発見ができるわけではありません。実際にはそんなに一生懸命やっても成果が上がらないことのほうが多く、よい結果になることのほうが少ないようです。
科学者たちは、教科書に載っていない未知のことについて研究しているので当然なのですが、あまりにも結果が出ないと自分がやっていることが正しいのか間違っているのかわからなくなる時があります。それでも打ちひしがれることなく、研究を継続するための強い精神力が必要です。
その分、成果につながった時の喜びはひとしお。科学の発展のために常に新しい事へ挑戦するその姿勢が重要なのです。
筆者の知人に、いわゆる科学者がいます。彼は大学所属の科学者で、大学生や院生に講義や研究をしながら、自身の研究もおこなっています。彼は昨年、文部科学大臣に表彰されたこともある、優秀な科学者です。一例として、科学者としての彼の働き方をご紹介しましょう。
基本的には大学勤務となりますので、1日のほとんどを大学で過ごしているようです。朝は7時30には出勤し、夜帰宅するのは19時過ぎ。体力づくりのために、大学構内のトレーニングルームで筋トレをおこなっているようです。
一般の学生と変わらないくらいに出勤し、出勤後大学で講義をおこないます。研究室では、所属している学生に指導をします。そのかたわら、自身の研究論文の執筆や、実験データを精査します。この両立が大学所属の科学者の大変なところですよね。
最近では(2021年1月現在)コロナ禍の影響もあり、授業はオンライン、海外にデータ収集にもいけないので、もっぱら在宅でデータ研究や論文執筆をおこなっているようです。例年であれば年に3~4回は少なくとも海外に赴き、必要なデータを収集しに行きます。
それもアラスカやロシアなど、飛行機1本ではいけないような所まで。時差ボケも意にも留めず、研究に従事している様子は、さながら体力勝負といっても過言ではありません。
当然ですが、研究者間の会話は英語ですし、論文も英語で執筆することもあります。英語を当たり前のように使いこなすことも最低限の条件といえますね。
それでも日常生活では、やさしいパパさんの一面も垣間見えます。仕事と研究、そして子育てと、科学者はとても多くのスキルを並行して発揮する能力が必要なのではないでしょうか。
科学者とはいえ、研究の一環で海外にデータを取りに行ったり、論文執筆や研究のために長時間費やすことも稀ではありません。体力も必要となる職業でもありますので、日々の体力づくりのために筋トレも毎日してるようです。
私たちの生活にも、多くの科学者たちの生活が浸透し、便利なものが多く取り入れられているのですが、それらを実感する機会はあまりないような気がしますよね。
たとえば、最近ではごみの分別が以前より厳しく取り締まられています。これには理由があり、微生物を使って生ごみをたい肥やメタンガス水素ガス、アルコールなどに変えて燃料とすることができるのです。これには条件があり、微生物が分解できない、プラスチックや金属が混入しているとできません。
日本には資源があまりないので、こうしたリサイクルをすることで燃料を手に入れる方法が日夜研究されていますが、この有用性が一般的にきちんと浸透していないので、実現がなかなか進まないのが現状です。
日常生活のふとしたことにも、きちんと理由があり、そこに疑問を持つことが科学の第1歩です。身の回りのことに、なぜ、どうしてという疑問を持ってみませんか。
- 著者
- 佐藤勝彦
- 出版日
こちらの書籍は、実際に現在でも科学者として活躍している佐藤勝彦氏が著作しています。
科学の始まりは「なぜ」「どうして」と日常のふとした出来事や常識に疑問を持つことが始まりといわれています。子供のころ誰しもが口にしたことのある「不思議」や「疑問」。これらを研究・発見し科学の常識として持っていくのが科学者です。
実際に科学者でもある著者が、高校への進路の見出し方や、大学で学ぶ学問の選択など、科学者になるに向けての若い時代の過ごし方まで述べています。また、実際には大学や大学院で何を学ぶのか、研究はどのようにおこなうのかなど、経験談をもとにして執筆した本書は、科学者を志す人にはぜひ一度目を通してもらいたい書籍です。
- 著者
- 大野 正人
- 出版日
こちらの書籍は、今では誰もが一度は耳にしたことのある有名人や偉人たちの失敗談が漫画で面白おかしく描かれています。
今では歴史的に名を遺すような人物でも、数々の失敗を経て偉業にいたったという数種類のエピソードを掲載。失敗しても挫折しないで、辛抱強く挑戦し続けることに意味があると著者は述べています。
これを読めば、本当にひどい失敗・挫折ばかり……。私たちが普段している失敗なんか、とてもかわいいものに思えてくるほどひどい内容です。
どんな人のでも失敗や挫折はつきもの。それを教訓とし、いかに次につなげるかを考えさせられる書籍となっています。科学者を目指す心意気を知るための1冊として、現在進行形で失敗や挫折に悩んでいる人に読んでもらいたい書籍です。
- 著者
- 日本科学未来館
- 出版日
こちらの書籍は、子供向けの科学の不思議に向けた解説をしている書籍です。オールカラーでイラストがたくさんあるので、小さなお子さん1人でも読むことができます。
もちろん、私たち大人が読んでもとても面白い内容になっています。内容は10のジャンルに分けられています。
そのボリューム感にきっと大人でも満足することでしょう。
科学者の実態のなんとなくのイメージはできたでしょうか。高い専門性が求められる知識と、めげない継続心、よりよいものを見出すための向上心など、求められるものは多くありますが、そんななかでも、自分の研究成果が形となり、さらに世界中から脚光を浴びれば、こんなにやりがいのあるお仕事はないですよ。
科学者に興味のある方は、ぜひ一度紹介した書籍も手に取ってみてくださいね。