フードスペシャリストは「公益社団法人日本フードスペシャリスト協会」が認定する民間資格です。数ある食に関する資格のなかでも、フードスペシャリストは短大や大学に通い、2〜4年の歳月をかけてしっかりと学んだ人でないと受験資格を得ることができません。そのため資格取得の難易度は、やや高めといえるでしょう。食に関する仕事のなかでも、より幅広い分野での活躍が見込める職業でもあります。 今回の記事では、食に関する資格の代表格である栄養士や管理栄養士との違い、詳しい仕事内容・年収について解説します。参考書籍も合わせてチェックしてみてくださいね。
食の専門家であるフードスペシャリスト。「日本フードスペシャリスト協会」のHPでは、具体的に以下のような活動をおこなう方々を、フードスペシャリストと定義付けています。
フードスペシャリストとは、食の本質が「おいしさ」「楽しさ」「おもてなし」にあることをしっかり学び、食に関する幅広い知識と技術を身につけた食の専門家です。フードスペシャリストは、食品の開発製造、流通、販売、外食などを担う食品産業をはじめ、食関係の広範な分野での活躍が期待されています。
(引用:日本フードスペシャリスト協会HP)
日本フードスペシャリスト協会HPにも「快適な食生活を提供する」と記載があります。
現代では、快適で安心な食事を得ることができるようになっている一方で、多くの食に関する問題を抱えています。個食・朝食抜き・野菜不足・過度のダイエット・太りすぎなど、現代の食には問題が山積なのです。
それらを解決する方法を模索・提案する立場としても、期待されているのがフードスペシャリスト資格保有者です。
彼らの仕事の目的には、食の「楽しさ」や「おもてなし」に関する内容も含まれています。たとえば、レストランのマネジメントに関わったり、食事をする「空間」にアプローチするような仕事を担当することも少なくありません。
実は、フードスペシャリストの資格取得者の多くが栄養士資格も取得しているという特徴があります。そのため就職先に関しては、栄養士と被ることも多いようです。
管理栄養士は、栄養士の資格よりさらに取得難易度の高い資格になっています。おこなえる業務内容は栄養士ともまた異なります。
では、それぞれの具体的な違いをみてみましょう。
都道府県知事の免許を受ける国家資格。健康維持に必要な栄養素供給源として食べ物を位置付けており、その知識を仕事に活かしている。
病床患者や高齢者に対して、一人ひとりに合わせた食事を作ることができる技術と知識を取得する国家資格。主に「栄養指導」「給食管理」「栄養管理」といった内容を含む業務をおこなうことができる。
栄養士や管理栄養士とは異なり、民間資格である。「おいしさ」「楽しさ」「おもてなし」に重きを置いた知識や技術を学ぶことで、より日常的な食事に関係する仕事をおこなうことができる身近な存在。より消費者に近い存在ともいえる。
国家資格も民間資格も双方で資格を活かせる方向は異なるため、どちらも所有していることで仕事の幅は広がります。すでに栄養士や管理栄養士の資格を持っている方は、+αのスキルとしてフードスペシャリストの資格に挑戦するのもおすすめです。
フードスペシャリストの民間資格を取得すると、幅広い業界で活躍することができます。フードスペシャリストの知識や経験を活かしてどんな働き方がしたいかで、就職先は変わるでしょう。
なかには、サントリー食品インターナショナル株式会社、アサヒグループホールディングス株式会社、明治ホールディングス株式会社など、大手企業から求人が出ているケースもあります。大手企業への就職を狙っている方は、チェックしてみる価値ありです。
日本フードスペシャリスト協会が公開している「平成30年度フードスペシャリスト資格取得者の就職状況に関するアンケート集計結果」では、就職先の業種のデータも集計されています。
就職先上位の業界はこの通りです。先述したようにフードスペシャリストの多くは栄養士や管理栄養士の資格も取得しているため、医療や福祉でも活躍する方が多いようです。
参考:平成30年度フードスペシャリスト資格取得者の就職状況に関するアンケート集計結果
就職先や業界によって、仕事内容は異なります。ここでは、フードスペシャリストが就職先で担当することの多い業務内容を一部ご紹介します。
語学が得意という方は、海外への買い付けや取引の担当になったりする可能性もあり、グローバルな活躍も期待できます。
フードスペシャリストの資格は、栄養士や管理栄養士、調理師など他の資格があってこそ活用できる資格です。そのため求人を見てみても、フードスペシャリストとしての求人の数はほとんど見られません。
多くの方はその他の国家資格を取得しており、スキルアップや就職時のアピール点としてフードスペシャリストの資格も取得しているようです。
フードスペシャリストのみでの平均年収は公のデータがありません。多くが栄養士や管理栄養士の資格を取得していることから、本記事では栄養士の平均年収を参考していきたいと思います。
「賃金構造基本統計調査の職種別賃金額」によれば、栄養士の平均月給は約22万円(平成25年度〜平成27年度)となっています。この金額に年間賞与が60万円前後支給されるので、平均年収は約330万円ほどとなります。
決して高収入とは言い難いですが、就職先や活躍している業界によっては高くなることもあり得るでしょう。
認定試験を受けるには、日本フードスペシャリスト協会が認定している139の学校で、特定の学科の単位を取得して卒業しなければなりません。短期間で取得できる資格ではなく、以下の必修科目を修めていることが前提です。
上記の科目で必要な最低単位数を取得してはじめて、受験資格が得られます。
認定資格には平成26年から3種類の資格区分が設けられています。
専門フードスペシャリストの資格を取得するには、まずフードスペシャリストの資格を取得しなくてはなりません。食に関する総合的な知識・技術を身に付けることが基本です。
試験は年に1回、毎年12月中旬頃におこなわれます。試験は筆記で、共通科目と専門科目あわせて8科目60問の問題が出題されます。試験時間は80分ですので、1問あたり1分ペースで解くことができれば、十分に見直しの時間も確保できるでしょう。
試験会場は全国にあるので、誰にとっても挑戦しやすい環境が整っています。
フードスペシャリスト認定資格は平成11年度に第1回目となる試験をおこなっています。それから令和3年現在までで計21回の試験がおこなわれており、累計9万1321名が試験に合格しています。
合格率は例年80%台となっており、試験は比較的易しいとして知られています。
フードスペシャリストの資格を取得すると、日本フードスペシャリスト協会の個人会員になることができます。会員費は年間2500円。一括3万円を支払うことで、永久的に資格を持続させることも可能です。個人会員になると、研修会への参加や会報が届くなどの特典もあります。
試験を受ける予定の方は、ぜひ日本フードスペシャリスト協会HPで詳細をチェックしてみてくださいね。
学生・社会人を問わず、フードスペシャリストを名乗るには、試験の受験資格を得て実際の認定しけんに合格する必要があります。一般的には、大学・短大への入学が必要ですが、社会人になってからでも入学は可能です。
仕事をしながら勉強できるよう配慮された「社会人入試制度」を取り入れている学校で学ぶことができるので、まずこの制度を取り入れている学校を探してみることから始めましょう。
これらの大学・短期大学部であれば、社会人入試制度も整っています。
参考:養成機関一覧
メニュー開発や商品開発をする場合、何十回も試食をしたり、リサーチで食べ歩くこともあります。作るだけでなく、食べることが好きでないと資格取得は難しいかもしれません。
フードスペシャリストとして活躍するには、食に関する幅広い知識が必要です。たとえば、海外の食事事情や文化からインスピレーションを受けたりすることも大切です。一定の範囲以上に、特定の得意分野(和食に特化している、野菜に詳しいなど)があることは、活動するうえで武器となります。
食に関する問題を解決するための新しいアイディアも必要とされるのが、フードスペシャリストの仕事です。日頃から、新たなレシピや食材へのアンテナを張っておき、仕事に活かせる習慣をつけておくとよいでしょう。
- 著者
- ["大塚亮", "高橋ミナ", "ナチュレライフ編集部"]
- 出版日
まさに現代の悩みや食の課題を解決するための1冊です。
「フードスペシャリスト資格保有者には、こういうことが求められているのか〜」と考えながら読んでみてください。資格取得を目指していなくても手に取りたくなる内容となっており、日常的に料理をする人へのお役立ち情報も満載。
実際に45種類ものレシピが載っているため、今は料理が苦手という方も作れそうなものからチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
- 著者
- 足立 香代子
- 出版日
「間食」は現代の食の問題のひとつとしてあげられます。過度な間食は、健康を害す恐れもありフードスペシャリストにとっては無視できない問題です。
健康寿命を伸ばしたい・痩せたい・集中力を上げたいといったさまざまな悩みに答えながら、効果的な間食のとり方について知ることができる1冊となっています。
知識について説くのもよいですが、この本を読んでまず自ら実践してみるのもよいかもしれないですね。
- 著者
- ["小田 真規子", "大野 正人"]
- 出版日
この記事を読んでいる人のなかにも、朝ごはん抜きで過ごしている方は多いのではないでしょうか。
本書には、5分以下で作れる朝ごはんレシピが豊富に掲載されているため、自身の生活にも取り入れやすいでしょう。見やすいカラー写真も豊富で、読みごたえもあります。
忙しい現代人の「朝食抜き問題」を解決するためにはどうしたらいいか。アイデアや知恵を授けてくれる1冊です。
現代は消費者の食に対する目も肥えてきており、安全志向・健康志向の高まりを見せています。一方で食に関する、個食や朝食抜きなどの問題はまだまだ多く、業界のなかでもさまざまな解決策を模索中です。逆に考えれば、解決しなくてはいけない課題が多い分フードスペシャリストの仕事はなくならず、活躍の場も増えていくことが予想されます。
食べることが好きな人や実際にフードスペシャリストを目指したいという方は、今回ご紹介した書籍を読んでみたり進学先を探してみることから始めてみてくださいね。