私たちの生活において、当たり前の存在であるアニメ作品。各アニメには熱狂的なファンがつき、グッズやイベントで動くお金の額も年々大きなものとなっています。それらの作品一つひとつの制作に関する決定権を持つのが、アニメ監督です。時には手がけた作品が世界中で大ヒットしたり、人々に大きな感動を与えたりと、やりがいのあるポジションといえるでしょう。 小さな頃は誰もがアニメを観て育ってきた背景もあり、アニメ監督に憧れる方も多いはず。今回は、アニメ監督の仕事内容や就職先として有名な企業、アニメ監督にはどうやったらなれるのかという疑問についても解説しています。アニメ作品そのものが好きという方も、必見の内容です。
一つのアニメが出来上がるまでには、決定しなくてはいけないことが実にたくさんあります。それら全ての項目において決定権を持つのがアニメ監督です。アニメを作るための総監督というと伝わりやすいかもしれませんね。
ストーリーをはじめ、台本(シナリオ)・キャラクター設定・声優・作画・音響関係・CGなど、決めなくてはいけないことは多岐にわたります。また、製作に関わるスタッフも適任を選出する必要があり、そこでもアニメ監督の判断と決定が必要となってきます。
おもな勤務先は、以下の通りです。
アニメ監督として活動する方のなかには、フリーランスで活動したり、個人事務所を立ち上げる人もいます。
できれば大手企業に就職したいという方も多いでしょう。日本を代表するアニメーション会社をご紹介します。
本社は、京都府宇治市。略して「京アニ」とも呼ばれています。主に、テレビや劇場用アニメーション作品の企画・制作をおこなっている会社で、他社作品の制作協力もおこなっています。
参照:京都アニメーション
本社は、東京都杉並区にあります。ここ最近で最もヒットした漫画作品『鬼滅の刃』を手がけたアニメーション制作会社として有名ですね。多くの若手アニメーターも在籍し、作画の美しさが有名な会社でもあります。
本社は、東京都練馬区あります。人気作品を多数手掛けた、実績のあるアニメーション制作会社です。作り込まれたシナリオやクオリティの高い作画に定評がある会社として人気があります。
参照:動画工房
作品ができるまでの流れと合わせて、アニメ監督の仕事内容をみていきましょう。
TV局や映画会社で、アニメーション作品を制作することが決まると、作品について会議が開かれます。原作があるものを劇場版化することもありますし、オリジナルで作り上げていくこともあります。自分のアイディアが含まれる企画を通すために、TV局や映画会社にプレゼンテーションすることもあります。
シリーズものの作品や人気作品の劇場版ともなると、関わるスタッフが100人を超えることも珍しくありません。とくに作品の要ともなる脚本担当・作画担当で人気を得ている人物をキャスティングする場合、スケジュールを確保するのが難しいこともあります。いい人材を集めるためにも、アニメ監督の手腕が問われます。
物語の流れを決めるシナリオは、主に脚本家やシナリオライターと呼ばれる人が担当します。絵コンテとは、簡単に言うとアニメの下書きのようなもの。これらの作業は各担当に丸投げという訳ではありません。アニメ監督は進行状況を把握しつつ、シナリオやキャラクター設定にも意見を出していきます。
絵コンテをもとに、キャラクターをどう動かしていくか、原画の仕上がりはどうかなどの点を、細かくチェックしていきます。企画からここまでの流れで、問題があったりつまづくような時は、各部署と会議を重ねていきます。
作品のシーンごとの時間配分や効果音も、試行錯誤を重ねて固めていきます。キャラクターに命を吹き込む声優のアフレコ現場にも立ち合い、より作品やキャラクターのイメージに合わせていくよう指示を出します。
アニメ監督は、作品が出来上がったら仕事が終わりではありません。作品がヒットするようテレビやラジオ・雑誌に出演し、宣伝活動をおこなうのも仕事のひとつです。作品の魅力や裏話などで、人々の注目を集めることも重要です。
アニメ監督の平均年収は、約650万円程度といわれています。
実は、アニメ業界全体の収入は決して高くなく、給料が安い業界といわれることも珍しくありません。アニメを制作するためにも予算が決められており、その範囲内で最高の作品を作るのも監督の役目です。金銭感覚も優れている方が、仕事の上で有利になります。
アニメ作品の関連商品が販売されたり、イベントなどが開催される場合は、アニメ監督もロイヤリティを結ぶことがあります。それによって、大きな収入を得られる可能性もあります。
持っていなくてはいけない資格はありませんが、アニメ制作の全工程に関する知識が必要となります。
実際の仕事現場では、映像や編集技術をはじめとした、美術や映像の知識やスキルが必要となってきます。また、作画経験や助監督・アシスタントでの演出経験を積んでからでないと、務めるのは難しい職業ともいわれています。
アニメ監督を目指すなら、持っておいて損はない資格を2つご紹介します。
「公益財団法人画像情報教育振興協会(CG-ARTS協会)」が実施する民間資格です。
デジタル映像やWebなど実際の制作現場で、表現のプロフェッショナルとして活躍できるクリエイターに必要な能力を評価する検定試験だと言われています。ベーシック・エキスパートにレベルがわかれて受験が可能です。
参考:CGクリエイター検定HP
「内閣府認定公益社団法人」 が主催する民間資格です。アパレル業界、デザイナーが取得するなど有名な資格ですよね。
色彩検定は、色に関する幅広い知識や技能を問う検定試験です。1〜3級・UC級に分かれており、どの級からでも受験が可能です。色に関する知識がまったくない状態から勉強して受験する人もおり、受験生のなかには学生も多い検定でもあります。
参考:色彩検定
作画担当から声優まで、さまざまな人に支持を出したり、円滑に作品作りを進める能力が必要です。また、現場で馴れ合いにならないよう、メリハリのある態度や姿勢も重要となります。
アニメ監督は、作品の総監督であるため、周りの意見に耳を方向ける姿勢が大切です。ときには、自分の意見を曲げなければいけないこともあるでしょう。よりよい作品作りのために、柔軟な思考が必要となります。
アニメ監督になってからはもちろん、学校を卒業してすぐに自分の作りたいアニメの製作に関われたり監督になれるということはほとんどありません。目の前の仕事を一つひとつ確実にこなしていく粘り強さを常に持っておく必要があります。
アニメ産業が盛んな日本では、国内外から愛されているアニメ作品を生み出している多くのアニメ監督がいます。
日本アニメの名作に携わり、今もなお作品を世に送り続けています。彼らがどんな作品を手掛けているのか、簡潔にご紹介します。
言わずとも知れたジブリ作品の生みの親である、宮崎駿監督。大学卒業後、東映アニメーション、シンエイ動画にて経験を積み、1985年にスタジオジブリを設立しています。
『天空の城ラピュタ』や『となりのトトロ』を制作し、徐々にジブリ作品が人気となり、その後に生み出された『魔女の宅急便』で大ヒット。約3〜4年のスパンで新作を世に送り続け、日本だけでなく国外でも愛されるアニメシリーズとなりました。
作品の特徴は、子供向けの作品であること。それに加え、作品作りでは脚本はなく、すべて絵コンテと同時進行で制作が進んでいくという特徴があります。なかなか真似できる手法ではありませんが、既存のアニメ制作とは違ったやり方もあるんだという一例です。
代表作として『君の名は。」、『天気の子』を持ち、アニメ業界では比較的若いくくりに入るアニメ監督です。最近の大ヒットにいたるまでにコンスタントに作品を制作・発表しており、根強いファンのいる監督としても知られています。
扱う作品は監督自身の趣向も絡み、SFや宇宙関係の要素が強く出ています。風景描写が緻密で美しく、新海ワールドと言われる一貫した世界観を持っています。既存のアニメのイメージにとらわれず、自身の好きな世界観を究極に突き詰めることがファン獲得に繋がることが分かる一例です。
最も知られている作品といえばやはり『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズでしょう。
有名作品を生み出す前、アニメーターとして数々の作品に携わっていた過去があります。『風の谷のナウシカ』、『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』などに参加した際、元々の画力の高さが評価され、重要な部分の原画をまかされていました。
しかしアニメーターとしての限界を感じ、宮崎駿監督作品に携わるなかでアニメ監督の仕事の進め方などを学び、それ以降は監督・演出がメインの仕事に切り替えて現在にいたります。宮崎駿、新海誠同様に、元々画力が高く、さらに作品に対する制作意欲が高く、さまざまな作品を生み出し続けています。
大学卒業後は東映アニメーションに就職し、現在は2011年に立ち上げたアニメーション映画制作会社スタジオ地図で活動しているアニメ監督です。有名な作品は『サマーウォーズ』、『バケモノの子』などがあります。
最初から演出業での仕事を目指していましたが、名だたる監督同様アニメーターのひとりとしてキャリアをスタートしています。アニメーターとしての評価は高いものの、早いうちに演出業に切り替えてしまったため、もっと学べばよかったという旨のコメントも残しています。
アニメ監督になるには、アニメーターとしての技術力が高くなければ難しいということが分かるエピソードですよね。
その他にも、日本を代表するアニメ監督は何人もいます。その多くが代表作を持っていること、その人ならではの作風と世界観を持っていることが特徴としてあげられます。大衆性を確保しながら自分が表現したい世界を追求するのはバランス感覚が難しいですが、その点を両立させることで、アニメ監督として生計を立てながら自身がのぞむ作品も作っていくことができるのです。
- 著者
- 内閣府認定 公益社団法人 色彩検定協会
- 出版日
色彩検定公式のテキスト。まずは3級から挑戦したい!という方向けです。
「色彩検定の入門書」ともいえるテキストであり、特に3級は、会社で資料作りの配色に活かしたい、日常のファッションコーディネートに活かしたいという目的で受験する方が多いレベルです。初めて検定に挑戦するという方、自分のスキルアップを目指したい方、どちらにもおすすめできます!
- 著者
- 舛本 和也
- 出版日
アニメ大国と言われる日本で、何本ものアニメ制作に参加してきた著者が書いた1冊がこちらです。
その経験を活かし、アニメを作る楽しさと厳しさ(大変さ)を本書の中で教えてくれています。作品の評論やビジネス書とはまた違った構成で、事例に基づきながらアニメ制作について語られているため、現場のリアルな知ることができるでしょう。
- 著者
- 篠原 信
- 出版日
アニメ監督を目指す上で欠かせない、リーダーシップの新しい方法を学べる本。自分の力を伸ばすことだけでなく、部下を育てることにもフォーカスしているのが、この本の特徴です。学校や職場で後輩を指導するときにも使えるテクニックが掲載されています。
リーダーシップを取れるようになれるだけでなく、自分のリーダーシップ力もついて、ついでに部下も育てることができてしまう一石二鳥の方法を知りたい方向けの1冊です!
日本のアニメ作品への海外からの評価は、日を追うごとに高くなっています。そのため、日本のアニメ監督も注目を浴びる職業となりました。ヒット作品を生み出すことができれば、その後の仕事にも繋がっていき、結果的に収入の増加にもつながっていきます。
たくさんの人をまとめ上げ、長い制作期間を経て世に出す作品を完成させるというのは、とてもやりがいのある仕事でしょう。
実際にアニメ監督になるには、現場での下積みも必要です。興味のある方は、ぜひ資格への挑戦や作画担当やアシスタントなど、現場での仕事を経験することも検討してみてください!