映像制作で必要な構想や設定から始まり、映像そのものを手がけることもあるドローイング・SFXイラストレーター。近年の映像制作では欠かせない存在ではありますが、一般的な方から見たらあまり身近な職業とはいえません。そもそもどんな職業なのか、どんな技術が必要なのか、気になる就職ルートなど、疑問に対してわかりやすくお答えします。記事の最後にはおすすめの書籍もご紹介しているので、SFXイラストレーターの仕事に興味・関心のある方は書籍にも目を通してみてくださいね。
SFXイラストレーターとはどのような仕事でしょうか。何となくCGを描く、3Dに携わるという印象があるかもしれません。映画やドラマなどの映像作品で必要になるSFXイラストレーションについて、まず知っていきましょう。
SFXとはspecial effectsを音の響きに合わせて省略した単語です。日本語で言うなら特殊撮影、つまり特撮のことです。特撮というと怪獣映画などでおこなわれるミニチュアを使った撮影が有名ですが、元々は「一般的な手法では撮影できないような映像を撮るための技術」という意味があります。
現代のSFXはミニチュア、特殊メイクといったモノの技術だけでなく、CGなどコンピュータを使って作る映像のことも含みます。そのため、ひとことでSFXイラストレーターと言ってもその仕事内容は多岐にわたります。
撮影のための絵コンテを描く人もいれば、CGアニメーションを作る人、セットやメイクのための下絵を描く人、作品の世界観を決めるためのイメージ画を描く人などもSFXイラストレータに含まれるわけです。現代の映像では、SFXはあらゆるところに使われています。そのためどのような仕事を受注するかによって必要とされるイラストの種類は変わります。
日本の映像制作ではVFXという言い方もよく使われます。こちらはvisual effectsの略で、撮影した映像、アニメーションなどに視覚効果を後から加える技術のことを指します。業界的には近接しているため、すべてをまとめてSFXと呼ぶこともあります。
昔であれば、実写化は不可能と言われていた作品というような謳い文句を耳にしたことがあるでしょうか。現代は実写とSFXを組み合わせる技術が発達しているため、想像上の生き物、宇宙空間、大規模な自然災害など、実写では不可能な映像を撮影することができるようになっています。
これらの映像の多くはCGによるアニメーションを活用しているので、裏では絵を描くイラストレーター、アニメーター人材が必要不可欠です。
続いては、SFXイラストレーターになる方法を考えてみましょう。どういう仕事をしたいかによっても進路の選び方は変わってきます。
専門学校や美大へ進学して、イラストやCG、アニメーションなどの技術を学ぶのがまず第1の方法です。特に専門学校は就職に力を入れているところが多く、関連する業界で何かしら仕事を見つけられる可能性が高いです。
一方、これらの学校は学費が高額になりがちで、かつ求人状況によっては望む仕事に就けないことも十分ありえます。進学したから大丈夫というわけではないことは、覚えておきましょう。SFXやCG、VFXが学べる学校一覧は下記のページなどが参考になります。
参考:ドローイング・SFXイラストレーターを目指せる学校一覧 - 30件|大学・専門学校のマイナビ進学
専門的な訓練を受けていなくても能力があれば就職するチャンスはあります。ただし最近の国内では正規雇用ではなくアルバイトであったり、雇用ではなくフリーランスとしての業務委託契約だったりと、安定した収入を得るのが難しくなっている現状もあります。
細々とした仕事しかできないと自分のスキルアップにつながらず、キャリアの見通しが立たないという問題もあります。
映画が好きな人なら、好きな作品のコンセプトアートを描いているイラストレーターや画家を複数人思い浮かべることができるかもしれません。そういった人たちの経歴を見てみると、もともとアーティストとして活躍していた人もいれば、商業的なイラストを描くイラストレーターだった人もいたり、またアニメーターから独立していたりと、さまざまなルートがあることが分かります。
この仕事からは入れなければ絶対になれないという類いの職業ではないので、よりチャンスがありそうな咆哮へ柔軟に舵を切ってみることも大切です。
どういう会社に入れば仕事ができるのか分からないという人は、まず関連する業界団体を調べてみましょう。日本であればVFX-JAPANというVFXとCGの業界団体があります。ここの会員になっている企業を一つひとつ見ていけば、どのような仕事がどういった待遇で求人に出ているのかが分かります。
現在は進学・就職で海外渡航する見通しが立ちにくい状況ですが、SFXイラストレーターとして活躍したいなら将来的に海外で仕事をすることも検討しておくとよいでしょう。日本と比べて予算が多い国もありますし、最新の技術に触れる機会も増えます。ただ、日本よりもさらに実力主義な業界構造であることも多いので、うまくいかなかったときにどうするのかもしっかり考えてから挑戦することをおすすめします。
- 著者
- 「特撮のDNA展」実行委員会
- 出版日
ゴジラを筆頭に、特撮に関心のある人なら一度は見たことがある怪獣もの・ヒーローもの。それらの歴史や技術の変遷を辿る展覧会『特撮のDNA』で展示された資料を集めたカタログです。
コンピュータでさまざまなことができるようになった現代でも、あえてミニチュアなどを使って撮影されることもある特撮。試行錯誤の歴史を知れば、その理由が理解できるのではないでしょうか。
- 著者
- ["Eran Dinur", "高木 了", "株式会社スタジオリズ"]
- 出版日
映像制作業界で働くプロ向けに執筆された本書は、実戦で使えるノウハウや技術が分かる教科書です。映像が好きで、習うより慣れろの精神を持っている人、またつたなくてもいいから自分の作品を撮ってみたい人におすすめです。
特定のソフトウェアの使い方ではなく、なぜそうするのか、どうやったらできるのかを解説する本なので、自分で手を動かして考えることは必須です。
- 著者
- []
- 出版日
初心者にも分かりやすいという評判のCG入門教科書です。技術だけでなく、CGとは何かというイントロダクション、制作したものに関する権利(知的財産権)の扱いにもページを割いているので、ひとりで映像制作をはじめようとしている人にもおすすめです。
映像コンテンツのなかでは当たり前のように使われている割に、意外と身近ではないSFX技術。
なかでもイラストレーターは、対象物を観察して特徴を掴み、絵を描くために必須の能力が問われる職業です。技術やノウハウ、ソフトウェアの使い方を学ぶのももちろん大切ですが、描くこと、書きたいものを捕らえる練習もおろそかにしないようにしましょう。