2021年初頭、ビットコインの価格が急上昇しより一層世間から注目されるようになっています。ニュースなどでも取り上げられる機会も増えてきていますが、まだビットコインがどういったものかあまり理解できていない人もいるのではないでしょうか。今回ご紹介する『いまさら聞けないビットコインとブロックチェーン」は、ビットコインの全体像を知りたいと思う人にぴったりの一冊です。本記事ではビットコインとはそもそも何なのか、何が注目されているのかといった基本的なことから解説していきます!
『いまさら聞けないビットコインとブロックチェーン」は、ビットコインの取引所を運営するコインチェック株式会社の共同創業者兼COOの大塚雄介氏がまとめたまさにビットコインの入門書とも言える一冊です。
私もビットコインに関するニュースを見る機会が増えて気にはなるけどなんだかよくわからないし、危ないものじゃないの?と思っていました。そんな時に、たまたま手に取ったこの本を読むことでビットコインの全体像を整理して理解することができました。
- 著者
- 大塚 雄介
- 出版日
本書は5部構成でまとめられており、まず最初にそもそもビットコインとは何なのかを現金やクレジットカードなど身近なものと比較して説明してくれます。そして、そのビットコインはどのような仕組みになっているのか、ビットコインを語る上では外せないブロックチェーンの技術についてもとてもわかりやすく解説しています。
さらに、ビットコインの安全性についてや、今後どのような広がり方をしていくのか、さらにフィンテックによってどのような未来となるのかまで話は広がります。
この一冊を読むだけで、ビットコインの全体像を理解できること間違いなしです!
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それでは早速詳しい内容について解説していきます。まずはそもそもビットコインとは何か、ということから紹介します。
ビットコインを端的に説明すると、以下のように言えます。
ビットコインは、ブロックチェーンという新技術によって生まれた「仮想通貨」であり、電子データで表される「デジタル通貨」であり、高度な暗号セキュリティに守られた「暗号通貨」であり、特定の国に属さない「国際通貨」であり、分散型ネットワークに支えられた「民主的な通貨」でもあるという、きわめて複雑な特徴を持っています。
(『いまさら聞けないビットコインとブロックチェーン』p2より)
「ブロックチェーン」や「分散型ネットワーク」という聞き慣れない単語が出てきて、難しそうと思ってしまうかもしれません。しかし私たちの身近にある現金やクレジットカードとの違いを見ていくと、とてもわかりやすく理解することができますよ。
まずは一番身近にある現金とビットコインの違いを見ていきます。普段皆さんが使用している現金とはいったいどのようなものでしょうか。現金は、例えば「紙幣や硬貨という実体のあるアナログ通貨」や「日本円の場合は日本という国に属する通貨」、「国家(中央銀行)が一元管理する通貨」といった特徴をあげることができます。
これに対して、ビットコインには実体としてのコインがあるわけではなく、バーチャルなお金なので手で触ることはできません。ビットコインはスマホやパソコンにバーチャル上の「ウォレット」というお財布を用意すれば持つことができます。ビットコイン自体がスマホやパソコンの中にダウンロードされているわけでもなく、クラウド上に保存されているためスマホのデータを全て消去してもビットコインを失うことにはなりません。
また、ビットコインは特定の国に属する通貨ではなく、どの国にも属さない「国際通貨」であることも大きな特徴。世界中の国や中央銀行に当たる組織が発行しているわけではないので、世界中どこでも同じように使うことが可能です。ではビットコインは誰によって発行・管理されているのでしょうか。実はネットワークに参加している人たちが主体となってビットコインの取引を参加メンバーが承認しあうことで「取引の正しさ」を担保しているのです。誰かが一元的に管理するのではなく、メンバー相互の承認によって運用されているため、「民主的な通貨」とも言えますし「分散型通貨」ともいうことができます。
このように最も私たちに身近な現金と比較することで、ビットコインがどのようなものかイメージが掴めてきたのではないでしょうか。
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それではこのビットコインを私たちが手に入れるためにはどのようにすればよいのでしょうか?
大きく分けると、ビットコインの入手方法は次の3つがあります。
①外貨を買うのと同じように自分で買う
②(現金払いや銀行振込の代わりに)誰かからビットコインを送ってもらう
③新しくビットコインを掘り当てる
一つずつ見ていきましょう。
ビットコインは通貨とほぼ同じなわけなので、他の外貨と同じように自分で購入することができます。海外に行くときに日本円で米ドルやユーロに両替するように、日本円でビットコインを買うのです。
例えば2021年1月1日において「1BTC(BTCはビットコインの単位です)=3,034,048円」となっています。つまり3,034,048円で1BTCを購入することができますし、逆に1BTCを売ることで3,034,048円が手に入る計算です。
このようなビットコインの売買はビットコインを取り扱っている仮想通貨取引所を通じて行います。
2つ目は、誰かからビットコインを送ってもらうという方法です。
ビットコインはモノではないので、何かコインのようなモノを送ってもらうわけではなく、アプリを通してデータとして送ってもらいます。
ビットコインで送金するメリットは、特に離れた人同士で行われる時に大きくなります。例えば海外の人に銀行振込を利用してお金を送ろうとすると手数料がそれなりにかかってしまいます。しかし、ビットコインの場合は簡単なアプリの操作だけで24時間いつでも極めて安い送金手数料で送ることが可能です。今後、海外の人とお金のやり取りをする際にビットコインを送ったり受けとったりするケースが増えることが予想されます。
ビットコインを入手する最後の方法は「新しくビットコインを掘り当てる」です。掘り当てるとはどういうことでしょうか?
ビットコインを掘り当てることを「マイニング(採掘)」と呼びます。ビットコインは国家が管理する通貨と違い、参加メンバーがお互いに承認しあうことで運営されているのです。この承認作業のことを「マイニング」と呼んでいます。
簡単に説明すると、世界中で取引されているビットコインを承認する作業には膨大なマシンパワーが必要だということ。そのため、コストと時間をかけて承認をするレースが10分ごとに行われており、1位になった人には報酬としてビットコインを支払われる仕組みになっています。承認作業は膨大なマシンパワーを必要とするため、一個人が参加できるレベルではありません。現実的にはビットコインを手に入れるには購入するか、誰かから送ってもらうしかなさそうです。
冒頭でも紹介したように、ますます注目を集めているビットコインですが、現金ではなくビットコインがこれほど注目されるようになったビットコインのメリットとは一体何なのでしょうか?
著者の大塚氏によるとビットコインを使うメリットは大きく2つあります。
まず、1つ目はなんといっても投資対象としての魅力です。
ボラティリティ(変動幅の比率)が大きく、将来的な成長が見込めるビットコインに対して多くの人が魅力を感じて購入しています。短期的に見ればビットコインは価格が急激に上がったり急激に下がってりしていますが、長期的に見ればビットコイン市場そのものがまだまだ成長途中。そのため、将来的な値上がりを期待されているのです。
実際に2017年末、2021年初めは特に急激にビットコインが値上がりして、一気に資産を増やす人も出てきています。
そして2つ目のメリットは送金手段としての魅力です。
ビットコインは特に国をまたいでお金のやりとりをする際に、送金手数料を抑えることができるため気軽に送金可能です。もちろん何億や何十億という金額を送る場合は幾多の実績のある銀行送金を利用しつつ、数千、数万円程度の金額であれば、ビットコインで送金手数料を抑えてやりとりできるのは大きな魅力ではないでしょうか。
このような魅力から、ビットコインはますます注目を集めているのですね。
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ビットコインの概要を理解したところで、次はビットコインの仕組みや、ビットコインを支える技術についても理解していきましょう。
先ほどビットコインは投資対象としても魅力があるとお伝えしましたが、そもそもなぜこのようなバーチャルなお金に「通貨」としての価値がつくのでしょうか。
その理由を知るためには、お金の本質は何かを考えてみる必要があります。
例えば私たちに最も身近な日本円の一万円札は原価が20円ほどとなっています。原価がたった20円のものを、人々は1万円の価値のある紙幣とみなして日々使用しているのです。この一万円札が1万円として機能している理由は誰もが「1万円の価値のあるもの」と信じているからと言えます。
そしてその「信用」こそがお金の本質であり、その「信用」を支えているのが国に対する信頼です。国の将来に不安を感じる人が増えると、円やドルの価値は下がっていきます。昔は1万円で買えたものが、今は2万円必要となったりしているのはそのためになります。
では、ビットコインも同様に考えた場合、ビットコインの「信用」はどこから生まれているのでしょうか?それは大きく分けると3つあります。
1つ目は、「誰も偽造・改変できない(はずである)」という信用です。ビットコインはどこかの国や中央銀行が発行・管理するものではなく、「全員が過去の取引記録を相互承認する仕組み」を取り入れており、その仕組みによって誰もそれを偽造することはできないと信用が生まれているのです。
2つ目は、「特定の国や企業の思惑に左右されない」という信用です。ビットコインは特定の誰かによって恣意的に量をコントロールされたり、勝手に発行ペースを遅らせたりすることはできません。どこかの国や企業の思惑にコントロールされないため、安定的に流通量が増えていきます。
3つ目は、ビットコインの総量は「有限」であるということです。仮想通貨はデジタルデータのため、やろうと思えば無限に増やすことができるのではないかと考える人もいるでしょう。しかし、ビットコインはあらかじめ上限が設けられており、2100万枚発行された時点で打ち止めになるように決められています。計算上では2141年に全てのビットコインが掘り尽くされることになります。有限だからこそ希少性があり、価値が認められていると言えます。
このように日本円などと同じように「信用」をもとに取引されているビットコインはどのような技術で支えられているのでしょうか。
それは「ブロックチェーン」という技術です。ここからブロックチェーンについて簡単に紹介していきます。
まず、ビットコインの一つ一つの取引は「トランザクション」と呼ばれており、全てのトランザクションは「AさんからBさんへ◯◯BTC移動する」という形で記録されます。
ビットコインの取引は世界中で365日24時間行われていて、取引は全てオープンです。
http://blockchain.info
上記のサイトをみると、最新のトランザクションがリアルタイムで更新されています。
このトランザクションはお互いに承認しあって初めて成立するので、この段階では全ての取引は「未承認」の状態となっています。そこで、ビットコインでは未承認のトランザクションを約10分ごとにまとめて一つの「ブロック」として、それを一括して承認する仕組みを採用しているのです。
新しく承認されたブロックは、これまですでに承認されたブロックを一続きにした1ほんの「チェーン(鎖)」の最後尾に嵌め込まれ、取引が成立します。これがビットコインを支えるブロックチェーンという技術になります。
そして、ブロックチェーンはどこかのサーバーで一元管理されているのではなく、世界中に散らばった複数のコンピューターに全く同じ物が保存されています。中心に国がいて、国が管理運営する「クライアントサーバー方式」ではありません。ユーザー同士をネットワークで結んで直接データをやりとりする「ピア・ツー・ピア(P2P)方式」を採用しているためです。このP2P方式によってどこかで取引データを書き換えたりするような偽装を防ぐことができます。
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ここまでビットコインやブロックチェーンの概要を解説してきましたが、やはり気になるのはその安全性ですよね?世界中の人がビットコインの取引をしていますが、その安全性はどのように担保されているのかみていきましょう。
ビットコインはデジタル通貨で、電子データにすぎないということは、インターネット上で簡単にコピーされてしまうリスクがありそうです。もし誰でも簡単にコピーされてしまうなら、誰でも手に入れることができるため「有限性」がなくなり、価値も失われてしまいますよね。
そこで、ビットコインでは全ての取引をオープンにして、「AさんからBさんへ◯◯BTC移動した」という記録を、リアルタイムで世界中の人から見える仕組みを取っています。誰でも見れる状態にすることで不正操作やデータの改ざん、コピーされたりしてもすぐに誰かが気づくことが可能。参加メンバーが相互に承認しない限りその取引は実行されることはないため、不正を防ぐことができるのです。
また、ビットコインを支えるブロックチェーンでは、データはどこかのサーバーで一元管理されているのではなく、世界中に散らばった複数のコンピューターに全く同じ物が保存されています。中心に国がいて、国が管理運営する「クライアントサーバー方式」ではなく、個々のユーザー同士をネットワークで結んで直接データをやりとりする「ピア・ツー・ピア(P2P)方式」を採用しているのです。このため、複数のコンピューターに全く同じデータが保存されることになり、どこか一部を改ざんした場合、その人の鎖だけ他の人とは別のものとなるためすぐに不正がバレてしまいます。
このようにビットコインは簡単に不正や改ざんが起きない仕組みを採用しているのです。
ビットコインはどこかの国に属する通過ではありませんが、現在各国がビットコインに対する法整備を進めています。
日本では2016年5月25日に資金決済法が改正されました。日本は世界に先駆けて「仮想通貨とは何か」という定義を定めたため、世界でも注目を浴びました。
この法改正によって仮想通貨を取り扱う事業者には、大きく以下2つの義務が課されることになりました。
①マネーロンダリングを防ぐため、銀行と同じレベルで仮想通貨を取引する人の本人確認を徹底すること。
②仮に事業者が破綻しても利用者を守るため、顧客からの預かり資産と、事業の運営資金を別々に管理すること。
法整備が進むことによってビットコインなどの仮想通貨を扱う事業者も何をどこまですればよいのか基準が明確になりました。法的にグレーゾーンが広がっていた状態では手を出しにくかった大企業もプレイヤーとして参入することができるようになったのです。
仮想通貨が法的に認められ、上場企業もビットコインを扱えるようになると、会計上の取り扱いについてもルールの統一が必要となってきます。一般社団法人日本ブロックチェーン協会と日本会計士協会、金融庁などで話し合いが行われ、ルールが作られているようです。
ここではビットコインやブロックチェーンに関係するおすすめ本3冊をご紹介します!気になるものがあればぜひ手に取ってみてください。
まず最初にご紹介するのは、仮想通貨についてマンガでライトに学べる一冊。
マンガなのでストーリーに沿って楽しく仮想通貨の基本を理解できることはもちろん、イラストや図版をふんだんに使って解説されているため、スムーズに理解することができますよ。
- 著者
- SC研究所
- 出版日
また、この本では実際に仮想通貨を売買する方法や、買い時・売り時を見極めるチャートの見方といった実践的な内容も含まれているため、これから仮想通貨の取引をはじめてみたいという人にはぴったりとなっています。
2014年2月、世界最大のビットコイン取引所「マウントゴックス」は何者かによってハッキングされ、多額のビットコインが消失するという事件が発生しました。
この本はそのマウントゴックスの運営をしていたマルク・カルプレス氏によって書かれました。
- 著者
- マルク・カルプレス
- 出版日
マウントゴックス事件当時何が起きていたのか、さらにマルク・カルプレス氏には仮想通貨の今後がどのように見えているのか、仮想通貨の第一線で活躍していた著者による仮想通貨の解説本となっています。
この本は特にブロックチェーンという技術にフォーカスされた一冊です。
ブロックチェーンと聞くと、ビットコインなどの仮想通貨のための技術という印象を持っている人も多いかもしれません。しかし世界ではブロックチェーンの技術を活用した新しい事業や産業が生まれようとしています。
- 著者
- 坪井 大輔
- 出版日
ブロックチェーンとはどういった技術なのか、という詳細の解説はもちろん、著者の坪井氏がブロックチェーンを活用してどのような未来を描いているのかも知ることができます。新しい技術に興味がある人はぜひ手に取ってみてください。
最後に、ビットコインやブロックチェーンについて解説された動画もご紹介します。まずは動画で概要を理解したいという人にはおすすめの2つです。
まず1つ目はこちらの動画です。
「【仮想通貨①】ビットコインの歴史は壮大なサスペンスドラマ」では、通貨の歴史からビットコインの歴史まで、たった30分でビットコインのこれまでのストーリーを理解することできます。
2つ目は「【ブロックチェーン①】5G時代の最終兵器〜人類の未来を変える大発明〜」です。
この動画ではブロックチェーンという技術について詳しく解説されています。最近よく聞くAIや5Gだけでなく、ブロックチェーンがどれほど革新的な技術なのかをわかりやすく解説してくれているので、ブロックチェーンについてもっと理解したいと思った人はぜひこちらの動画も見てみることをおすすめします。
ますます盛り上がりを見せるビットコインやブロックチェーンについて、全体像を理解することはできたでしょうか?難しそう、危ないのではないか、といったイメージで語られることも多いビットコインですが、まずはその歴史や仕組みを知ることで自分もビットコインの取引をしてみたいと思う人も増えてくるのではないかと思います。ビットコインについてもう少し詳しく理解したい人は、ぜひ本書を手に取ってみてください!