飛行機が着陸するとき、何やらパドルのようなものをもって飛行機を搭乗口まで案内しているスタッフを見たことがあるでしょう。彼らは空港業務スタッフと呼ばれ、その役割はさまざまです。飛行機が空港にかえって来てから次のフライトまでの準備をするスタッフや、飛行機誘導スタッフなどがいます。彼らは各航空会社に就職し、実は欠かせない存在です。本記事では、安全・安定した飛行をするための縁の下の力持ち「空港業務スタッフ」の仕事について解説。空港業務スタッフに興味のある方、必見の内容です。
空港ではさまざまなスタッフが働いています。そのなかのひとつに、航空機の誘導や荷物の積み下ろしなどをおこなう空港業務スタッフがいます。マーシャラーやグランドハンドリングとも呼ばれ、主に航空機を安全に離着陸させるためのサポートをおこなっています。
空港の規模によっては、さまざまな業務に関われたり、逆に担当が割り振られたりします。基本的には普通自動車免許が必須で、そのほか関連資格に関しても有している方がほとんどです。
空港業務スタッフは、勤務する航空会社によってかなり変わってくるようですが、その年収はおよそ300万円~400万円といわれています。決して高くはないのですが、業務の特殊性が高く、社内規格や試験も取得することで実際にできる業務の幅が広がり、それに付随して徐々に収入が上がっていく用です。
大卒である必要はなく、高卒で勤めることもできるため、長い目で見て、収入面では考えていくとよいでしょう。年齢が上がるにつれて後輩やそのほかの人材育成、マネジメント業務を担うようになるため、600万円近くまで上昇する見込みのある会社もあります。
また地方空港勤務よりも、中核空港勤務のほうが給料が高めにセッティングされている会社もあります。飛行機の離着陸が多い分、業務が忙しいことが考えられます。
空港業務スタッフになるには、特別な資格はいりませんが、普通自動車免許がなければ仕事を任せてもらうのは難しいでしょう。そのほか、関連資格に関しては、各航空会社に入職後、その業務の役割に応じて必要な社内資格を取得していくのが一般的です。早ければ、高校卒業後から勤めることができます。
その働く部署にもよりますが、地上でお客様の接客をする機会も多いので、あれば優遇されるのが英会話能力だったり、接客経験があったりすると多少有利になります。
しかし、航空会社の接客レベルは、かなり高いものを要求されます。戦力となる接客レベルには、ホテル経験やレストラン経験などが望まれるでしょう。今後、空港業務スタッフを目指していてアルバイトをしようと考えているなら、レストランやホテルでの接客業務で探してみることをおすすめします。
飛行機内で(空)業務しているスタッフ以外の地上で勤務しているスタッフが空港業務スタッフと呼ばれており、その仕事内容も細かく分担されています。
飛行機が着陸して、搭乗口までの誘導をするスタッフです。スティックやパドルのようなものを大きく振って、飛行機を誘導している様子を目にすることがあるでしょう。これが「マーシャリング」と呼ばれる技術です。
マーシャラーと呼ばれる業務は、責任重大な業務のひとつです。航空会社所属の場合もあれば、マーシャリング専門の会社での所属となることもあります。荷物の積み下ろしなどの業務を経験し、社内の学科や実技試験に合格し、資格を取得したスタッフだけがおこなえる専門職です。パイロットの癖を瞬時に把握し、正確な誘導をすることがもとめられます。
グランドハンドリングは、グランドハンドリングと呼ばれる貨物や手荷物の荷下ろしと、次便へ向けた荷物の積み込みをおこないます。マーシャラーが誘導した飛行機が停止し、チョークマンと呼ばれるスタッフが車輪止めを付けたのち、6~8人くらいを1グループとしたスタッフ全員で作業に取り掛かります。
特に日本では、お客様の荷物の取り扱いが厳しく、場合にってはクレームの原因ともなりかねません。慎重にですが、素早く確実に業務をおこなう必要があります。チームワークがとても重要です。
飛行機の着陸が予定道理になることは多くなく、遅延していても次のフライトに間に合うように準備を進めていきます。
飛行機に乗るために利用するチェックインカウンターの受付係です。手荷物のなかに危険物が混入していないかどうかも確認するため責任重大です。経験や勘が必要な業務ですが、安全な飛行機の運航のためには、気が抜けない作業であるといえます。
最近では、自動チェックイン機でチェックインして搭乗するお客様も多いのですが、手荷物の預かりはまだ人の手でおこなうところがほとんどです。
カウンター業務を担うスタッフは英会話能力が必須とされている航空会社もあるので、日常会話程度の英語力は身につけておいた方がよいでしょう。
搭乗口での案内は、お客様を直接機内にご案内する最後の場所なので気が抜けません。荷物の搬入作業に手間取り、ご案内が遅れることもあります。お客様がなぜ待たされているかわかるように、都度ご案内する必要もあります。また、機内の混雑を避けるため、ご案内の順番も考えなくてはなりません。
なかには、小さなお子さんを連れたお客様や、体の不自由な方、妊婦さん、手助けが必要な方もいるでしょう。お客様の情報を管理し、スムーズな搭乗をサポートすることが仕事です。当然ですが、英語での搭乗案内もするので、英会話の能力は必須といえます。
飛行機内で働くキャビンアテンダントや、パイロットとは違い、お客様を飛行機内にご案内するまでが空港業務スタッフの勝負所です。先にも記述しましたが、その部門は多様にあり、全体としてのチームワークが重要な仕事です。
空港業務スタッフのやりがいは、飛行機が無事に飛び立った時の達成感です。飛行機の運航には、その日の天気の状態により、離着陸の予定時間は大幅にずれることも多々あります。そこにお客様という人的要因が加わり、遅延が生ずることもあるでしょう。
1機の飛行機が空港に到着し、その後新たに離陸するまでの時間を「ステイタイム」と呼び、平均60分前後、短いと30分程度といわれています。その時間内で、各業務スタッフがフル活動し、次の離陸時間「オンタイム」までに準備や安全確認を終了させます。無事に飛行機が飛び立った時の達成感はとても大きいのはいうまでもありませんよね。
空港業界も、最近ではかなり機械化が進んでいます。最近では自動チェックイン機や、搭乗口のチケット管理も改札仕様です。先に述べたマーシャラー業務も、海外ではレーザー光線などを使用した機械管理になっているところも増えてきています。
実は日本では安全面への懸念からまだ本格的な導入にはいたっていません。しかし今後、本格的に導入されれば、人の手での管理が今までより少ない業務で済むようになります。
ですが、空港で必要とされているのは必ずしも効率的な仕組みだけではありません。空の旅に向かうお客様が気持ちよく旅立てるのは、空港業務スタッフの笑顔やホスピタリティ精神にほかなりません。
機械化を進めるべき業務と、人の手でおこなうべき業務は分けて考えるのが一般的です。少なくとも航空業界はこれからも必要な業界ではあるので、将来性への心配はないのではないでしょうか。
- 著者
- 月刊 エアステージ 編集部
- 出版日
本書籍は、各航空会社や各地域空港の協力があり、著作にいたったムック本です。旅客機だけではなく、貨物機に携わる業務スタッフにもフォーカスされています。空港業務スタッフの説明も写真付きで細かく紹介されているので、空港業務スタッフとして働くことに興味があるなら、ぜひ一度目を通しておきたい書籍です。
約150社から収集したデータは圧巻です。航空関連の職業だけでなく、各航空会社の特徴も把握しておきたい方にもおすすめです。
- 著者
- ANAエアポートサービス株式会社
- 出版日
本書籍は、ANAのグランドハンドリング業務にフォーカスし、まとめた書籍です。グランドハンドリング業務は唯一、お客様と接する機会のない仕事です。天候に関わらず業務をこなし、オンタイムのフライトを実現する立役者たちの実態に迫った内容です。
実際にグランドハンドリングスタッフとして働いている方々へのインタビュー内容は、ぜひ目を通してみてください。特にグランドハンドリングスタッフに興味のある方にはおすすめの1冊となっています。
グランドハンドリングスタッフは、飛行機を至近距離で見ることができることで人気があり、その道を目指すスタッフも多いです。飛行機好きの方、必見の書籍ですよ。
- 著者
- 吉田力
- 出版日
本書籍は、空港業界の全体を航空会社ごとや空港、業界全体にかかわる情報が網羅されている1冊です。この業界で働いてみたいが将来性が気になる方など、業界全体の動向について知ることができます。
また顔認証などの最新システムについても解説しています。システム導入により効率化を進める航空業界は、今後どんな将来を描こうとしているのか。航空業界全体の流れを把握するのにもぴったりの1冊です。
航空業界といえば、キャビンアテンダントやパイロットが注目されがちですが、安全な離着陸を支えるサポートスタッフの存在は欠かせません。快適な空の飛びをしている陰には、これだけのスタッフたちの懸命な安全管理と、配慮、サポートがあるのです。
縁の下の力持ちでもある空港業務スタッフは、大きなやりがいのある仕事だといえます。空港業務スタッフに興味がある方は、ぜひ一度、紹介した書籍にも目を通してみてくださいね。