クレーンと言っても種類は豊富。キャタピラ式のクローラクレーンやトラックの荷台部分がクレーンになっているトラッククレーンなどさまざまです。街中の建設現場、工事現場でクレーンを見かけたことがある方は多いでしょう。クレーン運転士になるには資格の取得が必須です。資格には複数ありますが、あわせて取得することで仕事の幅が広がり、年収のアップにも繋がります。 本記事では、数あるクレーンの種類についての紹介しながら、仕事内容、クレーン運転士として働くために必要な免許・資格、仕事のやりがい、給与事情についても触れていきます。また、記事を読んで本職種に興味をもった方に向けて、おすすめの本を紹介しています。
クレーンという単語からまず想起されるのはクレーン車だと思いますが、クレーンにはさまざまな種類が存在します。本章では工事現場などで利用される重機としてのクレーンの種類と、運転資格について解説します。
クレーンには大きく分けて移動式クレーンと、据え置くタイプの床上式のクレーンの2種類があります。
移動式クレーンの多くは、屋外の工事現場で見ることができます。車と一体型のタイプが多く、車に乗り混んで操作します。
地面に面している部分がキャタピラになっているクレーンのこと。接地面積が広く接地圧が小さいため、地盤が柔らかく支持力(地面を支える力)が弱い場所や舗装されていない路盤上の作業に適しています。
トラックにクレーンが付随したタイプのクレーンです。荷台を備えるタイプと荷台のないタイプに分かれ、荷台を持たないトラックにクレーン装置を組み付けたものを汎用クレーン、クレーンを荷台と運転席の間に組み付けるタイプをキャブバッククレーンと呼びます。
トラッククレーンよりひと回り大きく、タイヤが8輪以上あるクレーンです。タイヤが多いため不整地の走行に適しているほか、高速道路まで走ることができる走行性能の高さが特徴です。大型機種でありながら狭い現場に進入することもできます。
タイヤがそれぞれ独立して駆動する四輪駆動、四輪操舵システムを採用しており、悪路や狭路でも走行・作業ができます。また、比較的高速で自走できることから、トレーラーに積載しての移動する必要がなく、セッティングの手間も省けるのも大きな特徴です。
屋内の現場でよく見られるタイプのクレーンです。操作は有線タイプと無線タイプに分かれます。操作を担当する作業員の安全を考慮して無線式に切り替えている床上式クレーンが増えています。
建築物の天井のスパン(梁)を利用して据付けられているクレーンです。クレーン移動用の軌道(サドル)を走行するタイプ。
旋回できる機体から突き出した斜めのジブ(腕)や水平の片持ばりを持つクレーンです。張り出したジブの先端部分にワイヤーを通して荷物を釣り上げます。機体固定タイプが多いですが、走行台車に乗った走行型もあります。
地上に敷設した2本の走行レール上に門形の本体を設置するタイプのクレーンです。
クレーンを操縦・操作するための資格は、以下の4種類があります。吊り上げるものや重量によって必要な資格が異なるため、複数所持している方も多いです。
積荷の重さが5トン以上ある天井クレーンの操作や各種移動式クレーンの運転に加え、操作マストまたはブームを持っていて、原動機を別置してワイヤーで操作するでレックも運転可能です。
※デリックとは本体とは別に設置された原動機付のウインチ(巻上機)からケーブルを介して、本体ブームの上げ下げや旋回をおこなうことで稼動する機械装置のこと。
受験資格はなく、本人確認証明書類を提示できれば誰でも受験することが可能です。試験科目は、学科と実技に分かれています。その年の試験詳細については、安全衛生技術試験協会の公式HPにてご確認ください。
参照:クレーン・デリック運転士
デリックを除くすべてのクレーンを運転することができる資格です。こちらの試験も受験資格はなく、本人確認証明書類を提示できれば誰でも受験することができます。
デリックと操作装置により、無線で遠隔操作できる無線操作式クレーンを除いたクレーンを運転することができる資格です。資格取得には以下の2つの方法があります。
上記の資格同様、受験資格はなく誰でも受験が可能です。
さまざまな移動式クレーンを運転することができる免許です。主に運転できるのは、トラッククレーン、ラフテレーンクレーン、クローラクレーン、フローチングクレーンなどのつり上げ荷重が5トン以上のクレーン。建設や港湾の現場で広く用いられています。
試験は学科と実技に分けられており、学科試験合格者もしくは学科試験免除者のみが実技試験を受けることができます。学科科目の免除対象者の詳細は、安全衛生技術試験協会のHPにてご確認ください。
クレーン運転士の仕事を簡単に説明すると、メインの業務は荷物を吊り下げ操作です。クレーン操作を実際におこなえば理解できることですが、荷物を吊り下げ操作には言葉で表す以上の困難さが含まれています。
本章では仕事詳細に加え、大変さの先にある仕事の魅力・やりがいについても言及します。
クレーン運転士の仕事は、低いところから高いところ、または高いところから低いところへ荷物を移動させることです。ただしクレーン運転士には危険を察知し、事故を未然に防ぐ能力なども求められます。
何トンもの重さの鉄材を操作ミスで落してしまえば大事故につながります。また、高所は風の影響を受けやすいため、吊り上げるタイミングなども計算しなければなりません。
一度置いた荷物を別の場所に移動させるとなれば、数人の手が必要となるため、最初に材料を置く場所も正確である必要があります。安全性や効率性をつねに考え、作業をしなければならない仕事なのです。
安全性の面からクレーン運転士には卓越した操作技術が求められると先述しましたが、その操作自体が仕事のやりがいにもなります。まるで自分の手足のように重機を自由自在にコントロールできるようになれば、作業効率があがり、作業が計画通りに進みます。
目標地点にきっちり荷物を移動し、作業が滞りなく進んでいく。それはクレーン運転士の重要な役目です。
クレーンは技術の向上を楽しめるのもひとつの魅力です。そのため、関連する複数の資格が取得しやすいのもポイントです。経験を重ね、さまざまなクレーンの資格を取得し、仕事の幅が広がっていくことで自身の成長を実感することができます。
クレーン運転士に限らず、現場仕事をおこなう作業員の年収は、経験値や取得している資格の種類、そして役職により大きく変動します。クレーン運転手はそもそも資格取得していることが基本ですから、収入アップを目指すなら関連資格の取得や現場での経験値をあげることが欠かせないでしょう。
クレーン運転士の平均月収を年代別に見ると以下の通りです。
工場や作業現場の規模によって変わってきますが、平均的に見ると30万円台〜50万円未満であることが多いです。
クレーン運転士の全体的な平均年収は、400〜500万円程度。日本の一般的な会社員の平均年収が400万円強とされているので、平均的かやや高めの給与といえるでしょう。
より専門性の高い重要な免許や資格を取得することで手当の対象になったり、昇格が早まる可能性の高い職種です。免許・資格の取得にチャレンジすることで昇給アップも狙えます。
特に、移動式クレーン運転士は活躍の幅の広い資格のため、さまざまな現場で重宝されます。具体的には、以下のような場所で活躍することが可能です。
道路建設や高層ビルの建設現場では、移動式クレーンでの資材運搬は必ずおこなわなければなりません。また多くの作業現場で移動式クレーンが主流の動力となっているため、長期間にわたって活躍することを考えたら移動式クレーンの資格は取得しておくとメリットが大きいでしょう。
- 著者
- こどもくらぶ
- 出版日
本書では、工事現場でよく目にする重機を図解で解説しています。クレーン運転士としての仕事ややりがいについて詳しく知ることはもちろん大切ですが、まずはクレーン自体をより深く知って、興味を持つことが重要です。
クレーン車のほか、ブルドーザ、油圧ショベルなど、工事現場ではたらく車の仕組み、働き、作業が完成するまでを、写真を用いてわかりやすく説明してくれています。その他ロードローラーなど、さまざまな種類の工事現場で活躍する車を紹介しています。
- 著者
- 誠一, 山本
- 出版日
クレーン・デリック運転士の資格取得試験に必要なポイントをイラストと文章でわかりやすく紹介している1冊です。
知識の部分はインターネットでクレーンの知識を検索した際に出てくるサイトの内容と同じですが、本書には電動機や法令などすべての範囲が網羅されているので、これ1冊で試験対策はばっちりでしょう。
- 著者
- 仙台建設労務管理研究会
- 出版日
本書は建設現場は欠かせない玉掛け作業について詳しく学べる実践的解説書です。
使用条件によって思わぬ強度低下を起こすケースに焦点を当て、計画段階や作業中に適切な指導ができるよう、ワイヤーロープ・ベルトスリングなどの基礎知識をわかりやすく解説してくれています。
災害事例も多く掲載されており、作業所職員の管理能力向上と作業員の教育資料としても使える1冊です。
クレーンオペレーターが必要な場所は、高層施設の建設現場や河川の近くの堤防などを作る現場です。言ってしまえば、ならされた作業しやすい場所で仕事ができることはあまりありません。
そのため、卓越した操作技術に加えて、安全に作業するための知識なども必要になります。ひとつの仕事に対して常に責任が発生するので、なんとなくで目指そうと考えるには、多少荷が重すぎるかもしれません。
ですが覚悟を持って働くことができるのであれば、仕事自体にやりがいも多く誇りをもって働ける職種です。本記事で紹介した書籍なども参考にぜひクレーン運転士を目指してみてください。