声楽家とはJ-POPなどと異なり、体そのものを楽器に見立てて楽曲を舞台で歌うことで、人々に感動を与える仕事です。声が主役であるため、常に体調管理や体力維持をしておく必要があります。また、歌う楽曲の作られた国の背景や文化にも精通していないと表現力に欠けるため、座学も必要となってきます。本記事では、実際に日本ではどんなコンクールが開かれているのか、世界で活躍する日本人はどんな人なのかといった内容も解説していきます。声楽家を目指す方のおすすめの進学先や、勉強に疲れたときにも読みやすい参考書籍もご紹介します。ぜひ、チェックしてみてくださいね。
テレビや雑誌など、メディアを通して名前を聞くことも多い声楽家という職業。耳にする機会は多いかもしれませんが、どのような職業のことを指すのか、いまいち把握できていない方もいるかもしれません。
声楽を職業とする人。ふつう、クラシック音楽の歌手をいう。
引用:コトバンク
コトバンクによると、上記のような活動をする方のことを声楽家と呼ぶようです。声楽とは「人が発する声」を中心に音楽を奏でることです。それを披露して、人々を楽しませたり感動させることで収入を得ている人のことをさします。
声楽には、主に合唱やクラシック、オペラ歌手などがそれに該当します。楽器に頼らない分、声量と表現力が必要です。
明確な定義はありませんが、歌手はさまざまな楽器や機械によって生まれた楽曲に合わせて歌うのがメインです。シンガーソングライターは、それらの音楽も歌詞も全て自分で制作し、歌う人のことを言います。
声楽家はあくまで人間の声が主役となる歌を奏でる職業をいい、時にはソロで(人の声だけで)楽曲を成立させるコンサートをおこなうこともあります。オペラでは、演劇の要素も入ってくるため、その点は歌手との大きな違いかもしれません。
歌劇団や合唱団に所属するのが、主な活動方法です。オペラ団体に入団する人もいます。コンクール入賞経験があるような技量と知名度のある声楽家は、ソロ(フリーランス)で活躍しているケースもあります。
海外を拠点として活動している日本人もいますが、海外で活躍している人はほんの一握りです。
どのような場所に所属しているか、どんな働き方をしているかで仕事の内容には違いがあります。ここでは、声楽家として多くの方が日々こなしている仕事内容をご紹介します。
声楽家にとって、健康維持を含めた自己管理も大切な仕事です。
公演やオーディションに向けて、個人で練習をおこないます。また、合唱などの練習で指摘を受けた箇所の修正をおこなうための練習を、個人でおこなうこともあります。
合唱の場合は、ほかの声楽家のメンバーや演奏者との合同練習もおこないます。
声楽家として、舞台に立って得る収入だけでは生活するのが難しいため、多くの声楽家が音楽スクールやボイストレーニングの講師などの仕事と掛け持ちしています。その契約も正社員ではなく、アルバイト扱いであることも珍しくありません。
なんといってもミスが許されないこと、今後の自分の評価にも繋がるのが本番です。そういったプレッシャーを跳ね除けて、舞台に立ちます。
実際にどのような方々がオペラの世界で活躍しているのでしょうか。有名な声楽家たちと、彼・彼女たちのプロの声楽家になるまでの道のりを簡単にご紹介します。
ヨーロッパを中心に活動するウィーン在住のソプラノ歌手です。3歳からピアノを始め、18歳で単身ウィーンに留学し声楽を学ぶ。22歳でスイスのベルン市立劇場において、モーツァルト『フィガロの結婚』のソリスト・デビューを飾っています。
参照:avex classics international
日本のソプラノ歌手です。幼い頃よりピアノを習い、国立音楽大学附属小学校ピアノ科に入学しています。国立音楽大学附属中学校、国立音楽大学附属高等学校卒業し、東京藝術大学音楽学部声楽科を経て、同大学院独唱専攻を修了しています。在学中に安宅賞受賞したこともあります。
参照:ジャパン・アーツ
日本のソプラノ歌手です。日本を代表するプリマドンナのひとりとしても有名ですね。2014年、びわ湖ホールにおけるコルンゴルト「死の都」のマリー/マリエッタ(一人二役)を皮切りに本格的にドイツ系のオペラへ進出し、活躍の幅を拡げている注目の声楽家のひとりです。
参照:藤原歌劇団
声楽家の収入だけで生活できる人は、ごくわずかです。大きな合唱団などに入れたとしても、初めのうちはほぼ稼げないことが多いようです。
世界で活躍する一流声楽家ともなれば、年収億超えも実現可能と言われています。そのような人は、ワンステージ100〜1000万円以上で、年に100公演以上おこなうようなペースで仕事をしています。
一般的なのは、音楽大学や芸術系の学部がある大学に通い、声楽家に必要な音楽の知識・技能を身につける方法でしょう。日本で有名な大学をいくつかご紹介します。
声楽家を目指すための音楽大学や大学院は入学難関大学であることや、高額な学費・留学費を必要とすることから、声楽家になるまでには1000万円以上の学費がかかるともいわれています。経済状況によっては、進学を断念せざるを得ない方もいます。
クラシックやオペラに造詣の深い国を視野に入れた語学の習得をしておくことをおすすめします。たとえば、ドイツ語・フランス語・イタリア語などが話せて歌えると世界を視野に入れた活動がしやすくなります。
ミュージカル部門や声楽愛好者部門など、幅が広いのが特徴です。高校生も参加することができます。
プロフェッショナル部門・アマチュア部門に分かれています。とくに「プロフェッショナル部門」は年齢制限の上限を設けていないため、何歳になっても参加が可能なとこが特徴です。10〜20代が参加できるのは「アマチュア部門」の一般枠のみとなっています。
日本各地の有能な音楽家を発掘・支援し、音楽文化の発展・向上に寄与する事を目的として開催されているコンクールです。コンクール当日に15歳以上であれば参加が可能です。入賞すると、ソロ・リサイタルへの推薦が副賞としてついてきます。
毎日の練習はもちろん、体調管理や体力作りといった日々の努力の積み重ねが重要な仕事です。ときには趣味や遊びを犠牲にしても、歌のためにトレーニングをしたり、食べたいものを諦めなければいけないこともあるでしょう。そういった努力が苦ではないくらい、声楽家の仕事への強い憧れと努力が必要となります。
現実的な問題ではありますが、音大や芸大に入って卒業する、留学する、個人練習用のピアノを購入するなど、声楽家になるためにかかる費用は決して安くありません。とくに高校生が自分で稼ぐには難しい額となるため、自動的に家族や周りの支援を受けられる人が目指せる職業となってしまうこともあります。
歌が好き・上手いというだけでは、活躍の難しい世界です。各国の歴史や文化、楽曲の時代背景なども日々学び、それを歌で表現するだけの座学面でも地道な努力を必要とします。
- 著者
- ["大内 孝夫", "武蔵野音楽大学(協力)"]
- 出版日
音大を出たはいいけど、その後の進路で悩んでいる方が多いのは音楽業界の課題です。そういった将来の不安を取り除き、音大を出たことをどうやって武器にし、活かしていくかを教えてくれる1冊です。
これまで知らなかった、音大を出たあとの意外な就職先を知ることができるでしょう。
- 著者
- 中野 京子
- 出版日
著者は、2017年にひらかれた「怖い絵展」を監修したことでも話題になった、オペラ・美術の専門家です。彼女らしい視点で、オペラや歴史背景の解説がされており、一つひとつの作品に興味をもって読むことができる1冊となっています。
カルメン、椿姫、ホフマン物語など、大人なら一度は観賞したい有名な作品を紹介しています。まずは実際にオペラを聴いてみるところから始めたいという方にもおすすめできる1冊です。
- 著者
- 浩子, 加藤
- 出版日
オペラを知ることで、ヨーロッパの歴史がわかる内容となっています。まさに、一石二鳥な学びが可能な1冊です。モーツァルトやジャンヌ・ダルクなど、オペラを知らない人でもわかる人物が登場するので、他の歴史物より比較的読み進めやすい構成になっています。
旬のオペラ評論家が瑞々しい筆致で描くオペラの世界を知ることで、オペラ観賞をより深く楽しめるようになるはずです。
声楽家になるまでの学費は、決して安くはありません。家庭の事情などで夢を諦めた人も数知れずといったシビアな世界でもあります。日常的な練習やトレーニングを欠かすことができず、ちょっとした風邪を引くことも収入や信用に関わる、というプレッシャーもある職業です。
しかし、スポットライトを浴びて舞台に立つことを一度経験すれば、これらの苦労も一瞬で吹き飛んでしまうのかもしれません。進学先で迷っている方は、今回ご紹介した大学にまず受かることを目標にしてみてください。
勉強に疲れたときは参考書籍を利用するなどして、海外の歴史や文化に触れ、モチベーション維持に役立ててみてくださいね!