経営学は、企業の経営管理を対象にした学問です。似ているイメージの学問に経済学がありますが、経済学が理論的なのに比べて、経営学は実践的 な学問です。経営学の本質は経営しながら身に付くという話もあるほどです。 この記事では、そもそも経営学とはどんな学問なのか、経済学との違い、経済学部のある大学などをご紹介しています。進学を考える際、商学部と迷う場合は少なくないと思いますが、実際は商学部でも経済学の講義は受講可能です。さらには経営学の知識を生かせる職業・資格についても述べています。記事の最後にご紹介してる書籍もあわせて、会社経営を考えている方は目を通してみてくださいね。
経営学とは、企業の経営管理を対象にした学問です。
経営学は幅広く、働いている従業員、設備、資金調達も含まれています。売り上げなど目標を達成するために資金をどういう配分で使えばいいのかの計画や、消費者のニーズをどのようにしてつかむかといった戦略も含まれています。
一方で、経済学は理論が中心です。
経済学の研究対象は、個人消費や企業分析を対象にしたミクロ経済学の分野と、国の経済成長や金融・財政政策などを分析対象としたマクロ経済学の分野です。
経営学は会社経営に関する計画を実践する学問ですが、経済学は理論的に分析するという違いが分かります。経済学についてさらに詳しく知りたい方は「5分でわかる経済学」の記事に目を通してみてくださいね。
経営学は、それ単体で成り立つものではありません。経営学では、経済学、心理学(マクロとミクロ)、社会学の3分野が学術的な基盤となっています。
たとえば、経済学は経済のメカニズムを解いていく学問ですが、解を導く参考資料には人や市場の合理性を前提とした経済活動の数値が用いられます。しかしそれだけでは、本質的な経営理論は成り立ちません。
そこで大切になってくるのが、心理学の知識です。人間は合理的で、そして非合理的な行動をする生き物。それは会社を経営する側にも当てはまります。認知心理学や行動心理学をベースに組織を作り上げることが重要となってくるのです。
経営学へのイメージの多くは、経営者となる方だけが学べばいい学問だということでしょう。もちろん経営をおこなうにあたって経営者は経営学を学び、会社の舵を取る必要があります。しかし、経営学は働くすべてのビジネスパーソンが学ぶべき学問だという考えが、徐々に浸透してきています。
その理由の1つ目は、会社のための意思決定、判断ができるようになるというものです。
社会で働く際、大なり小なり皆さまざまな意思決定を日々おこなっています。それは意識下でおこなわれることもありますし、無意識におこなっている場合もあります。自身の判断は直接的にも、間接的にも会社の経営に影響を与えます。
そんな時、会社のためになる判断とは何か。リスクに繋がる判断になっていないかなど、経営学を学ぶことで自身を持って判断をおこなうことができるようになるのです。
2つ目の理由は、部署間の理解が促進されることによる、スムーズなコミュニケーションの成立です。
ほとんどの方は、自分が所属している部署でおこなわれている業務や業務の進捗具合、業務の感覚などしか知ることができません。そのため、いざ部署間で協力してプロジェクトをおこなうことになった際、トラブルを避けて通ることが難しくなってしまいます。
経営学では組織構造や分業の仕組みなども学ぶため、部署間でのトラブルが発生しないよう仕組み化、ルール作りをおこなうことができます。他部署に対する理解が足りていない状態でも、スムーズなコミュニケーションを成立させられます。
経営学は、大学の経営学部で学ぶことができます。進学希望している大学に経営学部がない場合は、商学部、経済学部に経営学科があれば経営学の講義を受講することが可能です。
経営学は比較的新しい学問であるため、古くから設置している場合は商学部、最近新設されたのであれば経営学部と学部名が使い分けされています。
実は国立大学で経営学部があるのは2校しかありません。いずれも大学入学共通テストを利用する場合は数学が必須となりますので、受験に備えて数学の勉強はしておく必要があるでしょう。
国立大学に比べれば数は増えますが、それでも経営学部がある私立大学もそこまで多くはありません。
やはり私立大学でも、経営学部ではなく商学部として経営学の授業を開講している大学が多いようです。
商学とは、企業と消費者を結び付けるビジネスそのものを学ぶ学問です。経営学は企業の戦略や管理が分析対象であり、商学とは異なる部分があると思われますが、経営学部でもマーケティング戦略や流通論など企業と消費者を結びつける講義が開講されています。
大学卒業後に学び直したい場合は、ビジネススクールか大学院の経営学研究科に進学することで経営学を学ぶことができます。修了すると、MBA(経営学修士号)を取得することが可能です。
先述したように、経営学は働くすべてのビジネスパーソンが学ぶべき知識の詰まった学問です。経営学はいわば、経営者たちによる英知の結晶。それを学ばない手はありません。そのため最近では働きながら大学院に通い、MBAの資格を取得する方も珍しくありません。
たとえば、日本人でMBAを取得している以下の方々がいます。
誰もが知る企業で経営をおこなう方々です。彼らはハーバード大学やスタンフォード大学の大学院に通い、MBAを取得しています。
経営学の知識は、基本的にどんな業界・職業でも活かすことができます。この章では、特に経営学の知識が最大限に引き出されるような職業をご紹介しましょう。
経営コンサルタントには資格がありませんが、企業経営者にアドバイスができるようになるために、さまざまな経験・知識・分析力などが求められます。
経営学部では、起業について学ぶこともできます。大学で学んだ知識や経験を踏まえてベンチャー企業の立ち上げにチャレンジすることも可能です。
経営学に関する資格試験についてもご紹介しましょう。
企業に就職した場合、経理や財務を担当することがあります。経営学の研究対象には売り上げの管理や給料の支払いなど資金管理が含まれています。経理や財務を担当して資格を取得することを考えているなら簿記・税理士・公認会計士などがあげられます。
大学で経営学を学ぶ際、数学が出来ることは前提条件となっています。ですので、上記の試験を取得するにあたり、ゼロから勉強するよりは勉強や試験対策はしやすいでしょう。
- 著者
- 岩崎 夏海
- 出版日
- 2015-11-28
野球部のマネージャーを務めることになった主人公の女子高生・川島みなみが、本屋で「マネジメントの本がありますか」と訪ねた際、経営学者のドラッガーの世界で一番読まれている著書『マネジメント』を薦められたところから物語が始まる1冊です。本書は有村架純さん主演で映画化されたこともり、有名な書籍ですよね。
経営学では、目標を達成するための計画や戦略がメインになりがちですが、この本を読んでみると従業員の間のコミュニケーションややる気をアップさせる心理的な側面も重要であることがよく分かります。
論理的な思考、目標への逆算、数値によるデータの分析・落とし込みなど、マネジメントにおいての基礎から、組織を作り上げる際に必要な心理的なアプローチまでが詰まった1冊です。経営学に関する本を読むならまずおすすめです。
- 著者
- ["敬之, 伊丹", "忠男, 加護野"]
- 出版日
事業構造改革・コーポレートガバナンス・マネジメントなど企業のメカニズムと日本企業の事例を解説した本です。初学者にとって多くの日本企業の事例が載っているので分かりやすいと感じるでしょう。大学生・ビジネスマン・MBAなど経営学やビジネスに関わる人におすすめできます。
この本の各章の終わりには、演習問題が掲載されています。この演習問題は一問一答型・正誤問題・穴埋め問題であり、また演習問題の模範解答や解答例もありません。
そのため、演習問題で理解度をチェックしたい場合は、大学の教科書と合わせて読んだり、学生同士のゼミや大学の演習・研究会など何人か集まって、輪読で読み進めてから演習問題を素材にディスカッションすることがよいでしょう。
- 著者
- ["フリーク ヴァーミューレン", "Vermeulen,Freek", "隆一郎, 本木", "佳史, 山形"]
- 出版日
本書は、ロンドン・ビジネススクールの教授であるフリーク・ヴァーミューレンの著書で、普段からニュースで耳にする以下のような単語を学術研究を基に丁寧に解説しています。
これらの単語はビジネスシーンで自然と使っているものの、深く理解しているかといえば首と縦に振りづらい。この機会にきちんと理解して使いたい方にはぴったりの1冊でしょう。
長い間生き残っている企業や成功した企業は合理的であり、苦難を乗り越えて成功できたと思っている方は多いはずです。しかし、この本では、本当に合理的だから成功したのだろうかという疑問を投げかけています。さらには、成功している企業は偶然成功をつかみ取ったからだとまで言い切っています。
なぜ経営者は、成功した経験にとりつかれるという罠にはまるのか。なぜ会社を大きくすることにこだわるのか。そんな素朴な疑問に対してもヒントを与えてくれる1冊です。
今回は経営学という研究領域の解説と、関連する書籍を紹介しました。
経営学といえば、経営計画とマーケティング戦略が基礎にあるイメージです。しかし経営学には、売上目標達成のための戦略だけでなく資金調達や従業員との関係・組織のマネジメントも含まれており、実は研究領域が広い学問なのです。
記事の最後にご紹介している経営学に関連する書籍で『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』をご紹介しています。本書を通して、組織をマネジメント(管理・監督)するにあたって経営学の知見が役立つことが読み取れるでしょう。目標を定めて組織をまとめることになったとき、これらの経営学の書籍から得た知識がきっと役立つはずです。
基本的には独学でも学びを進められる学問ですが、複数ある理論を網羅的に効率よく学ぶなら大学の経営学部への進学を検討してみてください。社会人であれば、MBAの取得もおすすめできますよ。