経済学に対してどのような印象を持っていますか。経済に関するニュースは金融政策・財政政策・株価がほとんどで、日常生活と関連がないように見えるでしょう。そのため経済学は難しいと感じていると方は多いはず。 しかし、経済学は日常生活との接点がある分野です。中学社会で習った需要曲線と供給曲線を思い出しましょう。これらの経済理論から、経済の仕組みや世界の形の片鱗が見えてくるのが経済学なのです。 この記事では、経済学とは何を学ぶのか、進学先としておすすめの大学、就職先としてどのような業種があるのか、資格試験について取り上げます。 記事の最後に紹介しているおすすめの書籍もぜひ手に取ってみてくださいね。
経済学とは、経済の仕組みやさまざまな経済活動の仕組みを研究する学問です。経済活動とはたとえば消費行動や政府の景気政策などです。また経済活動がおこなわれる場所も研究の対象となります。
経済学を学ぶにあたって実務的な手続きなどは教えられません。ですが経済学を学ぶことにより、多くの分野に応用できる物事の見方や考え方を身につけることができます。その考え方は心理学、社会学、政治学、法学など幅広く応用することができます。
生活とは切り離せない経済活動を理解しておくことで、仕事をする上でも日常生活を送る上でも活かせる教養の力がつくのです。
学問としての経済学を学ぶにあたって必ず通るのが「マクロ経済学」と「ミクロ経済学」です。新聞やニュースなどでも目にしたことがあるでしょう。
マクロ経済学とは、簡単にいえば大きな経済のメカニズムを考える学問です。たとえば日本国民全体の所得水準や、財・サービスの物価水準、経済全体での人の失業率などある国や地域の経済の構造や要因を明らかにします。
マクロ経済学が現実の問題を直接解決する機会はあまりないと思われていますが、マクロ経済学の研究の蓄積は経済政策の判断をする際などに役立てられているのです。
一方、ミクロ経済学は社会をミクロな視点で分析する学問です。研究の対象は消費者や生活者であり、彼らがどのような消費行動や生産行動を取るのがよいのかを考えます。
大学の経済学部に進学すると経済学を学ぶことができます。経済学部以外では、経営学部や商学部など経営系の学部でも経済学の講義が開講されています。
大学の経済学部に入学すると、経済学入門の講義があります。入門の講義で経済学的思考を知ることができます。経済学的思考を学ぶことで、需要供給曲線を用いた価格の決まり方、需要供給曲線を用いて日常生活に起こっている問題を分析することができます。
買い物をするとき、多くの読者は品質が同じであればより値段の安い物を買うと思います。しかし、安い物を買うことは本当にいいことでしょうか?
物の値段が下がると売り上げが下がります。売り上げが落ちるとそこから支払われる従業員の賃金も下がります。賃金が下がると、消費意欲が下がり物価が下がり続けます。このような現象を「デフレスパイラル」といい、アベノミクス以前はデフレの状態に陥っていました。
このような現象に対する疑問を解決するために経済学は役立ちます。
経済学部が置かれている大学は全国にいくつもあります。基本的に経済学部は高い偏差値がないと入学が難しいことが多く、大学によっては入学試験の科目に数学が必須科目として入れられている場合もあります。
経済学はその性質上、数学の理論モデルを用いて分析・研究することが多く、データをグラフ化し、利益最大化のためにどうすればよいのかを数式で求めることも少なくありません。そのため経済学を専攻するなら数学の勉強は今後ますます欠かせないものとなっていくはずです。
そうした点も考慮しつつ、経済学を学ぶのにおすすめの大学をいくつかご紹介しましょう。
この他にも経済学部のある魅力的な大学は複数あります。自分が経済学部でどんなことを学びたいのか、どの程度の専門的知識を身に付けたいのかなど明確にしつつ、さまざまな大学の情報を見て検討するのがよいでしょう。
経済学の科目がある採用試験・資格試験はどのようなものがあるのでしょうか。
採用試験では公務員試験が挙げられます。公務員試験のなかで、国家公務員総合職・一般職・専門職、地方公務員では地方上級試験が挙げられます。これらの公務員試験において学部中級レベルの経済学の試験があります。
次に資格試験について紹介します。
資格試験では「税理士試験」や「公認会計士」の資格試験で経済学の試験があります。主にミクロ経済学とマクロ経済学が出題されます。
税理士試験については、国税庁のホームページによれば、経済学の試験で、ミクロ経済学やマクロ経済学だけでなく、経営学・経済原論・経済政策・経済学史・財政学・国際経済論・金融論・貿易論・会計学も含まれ、幅広く出題されます。
公認会計士・税理士の経済学の試験科目については経済学系学部に進学すると学ぶことができます。
教員免許を取得することを考えている場合、経済学系学部に進学したときに取得できる教員免許が気になると思います。経済学系学部の場合、ほとんどの大学が中学社会と高校の地歴・公民の免許が取得できます。
この他にも「簿記検定」や「中小企業診断士」の資格などは、経済学部にいるからには取得を目指したい資格ではあるでしょう。これらの資格は就職の際にも役立ちます。
経済学系学部に進学すると、就職先の民間企業が気になると思います。商社や金融機関が挙げられますが、経済学系学部に所属してなかったとしても有利・不利はありません。
参考例として、神奈川大学の経済学部を卒業した生徒の進路・就職先を見てみましょう。
神奈川大学の経済学部は全学部のなかで最も卒業生の多い学部です。そのため進路も多岐にわたっており、国内外問わずあらゆる業種・業界で活躍しているようです。以下のデータは2015年度の就職内定状況です。
最も多いのが金融や保険の業種となっています。たとえば証券会社は経済に関する基礎知識に加え、現代の経済についても理解していなければ務まらない仕事です。経済学部でしっかりと基礎を学んだ上で、金融や保険の業界に内定をもらった学生が多いことの裏付けになりますね。
しかし金融や保険の業種だけに偏っておらず、製造やサービス、卸・小売など、経済学を学んだ学生はさまざまなフィールドで活躍することができるようです。
こちらは高校生活における日常学習の参考書です。高校の政治経済の教科書の理解を深めるために図表・資料や写真を多用したことで分かりやすい参考書となっています。
- 著者
- 松本 保美
- 出版日
この本は高校生向けの参考書ですが、大学生にとっても分かりやすく解説してありますので、経済学について基礎からきちんと学び直したい方はこちらの書籍から始めるのがおすすめです。
政治経済を学ぶにあたって躓きやすい点を丁寧に解説し、要点なども分かりやすく明示してあります。政治経済の教科書は文字が多いイメージで苦手だという方は多いと思いますが、そんな方にも理解しやすいよう写真や図表も多く掲載されています。
そのため学生だけでなく、社会人になってから経済学を学ぶ必要が出てきた方にもおすすめできる1冊でしょう。
この本を読んで理解できているか気になる人は、各単元の終わりにあるチェックテストを活用しましょう。各章末にある「テスト要点チェック」を参照してください。
この本の著者であるスティグリッツ教授は2001年にノーベル経済学賞を受賞しました。現在、金融市場、財政、貿易、経済発展・開発など多様な分野において研究成果を発表しています。
- 著者
- ["ジョセフ E.スティグリッツ", "カール E.ウォルシュ"]
- 出版日
- 2012-03-23
日本の経済系学部で経済学入門の講義が開講されている場合、講義のテキストのなかで、この本は最も指定されている1冊です。
経済学を専攻するとき、経済学的思考を身につけることが課題となります。経済学的な思考を理解するのに最適な内容になっています。各章にはコラムや例題があり、コラムや例題を読むことで経済学の専門用語を理解するのに役立ちます。
その他にもマクロ経済学や需要と供給のバランスなど、経済学に関する理論を深く学ぶことのできる1冊です。
マンキューの入門経済学は世界で一番読まれている本です。
第1部のイントロダクションでは、経済学的思考法と専門用語を学べるようになっています。第2部はミクロ経済学、第3部はマクロ経済学の3部で構成されています。
- 著者
- ["N・グレゴリー・マンキュー", "足立 英之", "石川 城太", "小川 英治", "地主 敏樹", "中馬 宏之", "柳川 隆"]
- 出版日
読者のなかには駅などで都道府県の最低賃金に関するポスターを見たことがある人がいると思います。最低賃金は労働者にとって必ずしも最低賃金はプラスになるとはいえません。その根拠がコラムのなかで示されています。
コラムにおいて家賃規制も取り上げられています。ニューヨークやサンフランシスコなどで家賃規制が実施されていますが、果たして家賃規制は妥当なのかどうか。気になる人は考えてみましょう。
コラムがアメリカ中心となっていますが、日本にも当てはまる箇所があれば考えましょう。経済学の方法で考える習慣をつけるのに役立つ1冊となっています。
この本では、行動経済学は研究と応用が進み、使う段階に来ています。
使う段階となった行動経済学において、この本では「ナッジ」がキーワードとなっています。
元々、ナッジとは軽く肘を叩くという意味の英単語ですが、行動経済学では自由な選択を確保しながらよりよい意思決定、よりよい行動を引き出すという意味で使われています。
- 著者
- 文雄, 大竹
- 出版日
経済学では合理的な個人を仮定しています。経済学における合理的な個人とはどんな選択をしても間違いをしない個人のことです。
大学で経済学を専攻しているとき、どんな状況でも選択を間違えない合理的な個人はいるのか疑問に思った人がいると思います。
読者の中に高校生がいたら、宿題をするのを先延ばしするという例を考えてみましょう。先延ばしは合理的な行為といえるでしょうか。このような疑問に対して、この行動経済学の本を読むと答えが見つかるかもしれません。
今回は学問としての経済学について解説しました。
学問としての経済学を専攻している方だけでなく、経済学に関する基礎知識は日常生活を送る上で教養として役立つものばかりです。たとえばマクロ経済学は大きな視点で経済を分析する学問ですが、ミクロ経済学はより身近な視点で個人の消費活動や生産者の生産活動を分析し、最適な活動について考える学問です。
日常的に使える知識もあれば、疑問がわいた時に使える知識もあり、そのほとんどが仕事に活かすことのできるものです。学んでおいて損はない学問といえるでしょう。
記事の最後には、経済学の入門書としてマンキュー教授とスティグリッツ教授の本を紹介しました。これらの本は経済学的思考を身につけるのに最適な本であること、経済学入門の講義で数多く指定されていることから紹介しました。
マンキュー教授やスティグリッツ教授の入門書を一通り読み終えたら、ミクロ経済学やマクロ経済学の本と読み進めていくのがよいでしょう。伝統的な経済学と学ぶとともに、現代経済学についても学ぶことで、経済の仕組みや今後の経済活動の流れなどを理解できるようになるかもしれません。経済学は奥深く、尽きることない探究心を活かせる学問でもあるのです。