生物学は、科学や医療の現場でも役立てる知識を学べる学問です。生物学とひと口にいっても学習の幅は非常に広く、遺伝子レベルの内容から地球規模までさまざまです。生物学が関連した有名な出来事のひとつに、2012年ノーベル医学・生理学賞を受賞した「IPS細胞」があげられます。そこから興味を持ち、書籍を読んだ方は多いのではないでしょうか。生物学が社会の役に立つまでには、実験と研究が繰り返されています。本記事では、学問としての生物学から、就職に有利な業界や各企業の平均収入ランキングもご紹介。生物学に関心がある方であれば、参考書籍も楽しめるものが多いはず。ぜひチェックしてみてくださいね。
生物および生命現象を研究する学問。対象とする生物の種類によって動物学・植物学・微生物学などに分かれ、研究手段・目的によって分類学・生態学・発生学・生化学・遺伝学・分子生物学などに分かれる。
引用:goo国語辞書
上記にもあるように、生物学で取り扱う生き物の範囲は非常に幅広く、簡単にまとめると「生きているのもすべて」といい表すことができます。
生物学では、DNA(遺伝子)・ミクロ・マクロといった分子レベルの事象から、動物や人間について、そして地球規模の生態研究まで幅広く学びます。またそれらについて、実験・観察・研究することを目的としている大学や大学院がほとんどです。
実験のやり方を学ぶことから始まり、実験や研究に使用するサンプル集めなども学習の範囲です。動物・植物・微生物など、この世のありとあらゆる生命体が研究対象となり、もちろん私たち人間もそこに含まれます。
期待されているのは、「科学」や「医学」分野での活用です。世界的に有名な生物学の成果に『iPS細胞(人工多能性幹細胞)』があげられます。2006年8月京都大学の山中伸弥教授らは世界で初めてiPS細胞の作製に成功し、2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞しました。
iPS細胞は、2006年に誕生した新しい多能性幹細胞で、再生医療を実現するために重要な役割を果たすと期待されています。再生医療のほかにも病気の原因を解明し、新しい薬の開発などに活用できるともいわれています。
たとえば、神経が切断されてしまうような外傷を負った場合には、失われたネットワークをつなぐことができるように神経細胞を移植するなどのケースがそれにあたります。
研究職は高度な専門知識が必要になるため、将来そのような職業に就きたいと考える人の多くは、大学院まで進むことが多いです。たとえば、大手食品メーカー・大手薬品メーカーなどの研究職を目指すなら、4年制大学の卒業はマストでしょう。
生物学を扱う学部の数は比較的多く、理学部・農学部・工学部・医学部などに進学しても学ぶことが可能です。ちなみに、iPS細胞の作製に成功した山中伸弥教授も、神戸大学・医学部を卒業しています。
先程あげた学部のなかでも「社会に生物学の知識を役立てよう」と考えて研究しているのが、農学部・工学部・医学部です。それら応用研究で必要となる基礎を探究していくのが、理学部生物学科となっています。純粋に生物学を極めたいというひとであれば、この理学部生物学科がおすすめです。
市販のテキストなどで生物学を独学することは可能です。しかし、大手企業などに就職したり、研究職に就きたいと考えている方は、4年制大学や大学院への進学がベターです。
また、本格的な実験や研究をおこなうには、それなりの知識を持った先生と施設が必要です。
生物学は、バイオテクノロジー研究などを盛んにおこなっている業種で、就職が有利になるケースが多いのも特徴です。そのほか、中学・高校で「理科(生物)の先生」になる道を選ぶ方もいます。
これら各種研究所や、技術者として働いている方が多くいます。
ここでは、各業界で「大手」と呼ばれる企業の平均年収と合わせてご紹介していきます。
大学院に進学し研究職に就けば資格の有無は実際あまり関係ないかもしれません。しかし余裕があれば以下の資格も取得しておくと、就職時に有利です。
「バイオ技術者認定試験」は、日本バイオ技術教育学会が主催する認定試験制度です。平成6(1994)年にスタートした比較的新しい制度ではありますが、それでも日本で最も歴史の長いバイオ技術関連の資格試験です。
試験は、毎年1回、初級は7月、中級・上級は12月に開催されます。中級・上級に関しては、所定の科目の単位を修得することで、受験資格が得られます。
バイオ技術に関する知識の確認ができるだけでなく、資格取得後はバイオ技術関連の就職やキャリアアップへの活用も可能。バイオ技術者を目指すのであれば、資格取得を検討するとよいでしょう。
どちらの資格も国家資格です。卒業した学部や専攻に関わらず物理・化学・生物・地学のすべてを教えることができるようになります。
所定の科目の単位を修得することで、卒業と同時に資格が得られるのも特徴です。教育に興味があり、理科の楽しさ、魅力を教えたいと考える方にはおすすめの国家資格です。
最後に、生物学を学ぶのに向いている方の特徴を解説します。
生物学を学ぶためには、仮説を立てて検証し、考察を組み立てていく「論理的な思考力」は不可欠です。感覚的なセンスよりも、普段から論理的に物事を考えるタイプの方が向いている学問だといえます。
生物学は学ぶ範囲が広いからこそ、科学や医療の現場で役立つことがたくさんあります。iPS細胞のように、自分が研究したものを「世の中で役立たせたい!」と思っている人は、生物学を学ぶ価値があるでしょう。
生物学は実験授業が多い学部です。試行錯誤し、何度も何度もチャレンジすることが苦ではない方には向いているでしょう。単純に、小・中学校でも実験授業が大好きだった方は、生物学を学ぶのに向いている可能性があります。
- 著者
- []
- 出版日
「iPS細胞ってそもそも何?」「名前しか知らない」という、まったくの生物学初心者にもおすすめできる1冊です。
iPS細胞とは、どんな働きをする細胞なのかという話からはじまり、どんなことに活用できるのか、今はどこまで活用されているのか、どんな実験をしているのかなどを丁寧に解説しています。イラストつきで、理解が深まりやすい構成です。
アルツハイマーや怪我の治療など、意外と身近なところでiPS細胞が活躍してくれていることを知れる1冊です。
- 著者
- ["レイチェル・イグノトフスキー", "山室 真澄", "山室 真澄", "東辻 千枝子"]
- 出版日
生物学初心者や、中高生でも読むことができる1冊です。地球環境学の基本をやさしく解説しながら、世界各地の生態系を地域ごとに紹介。おしゃれなイラスト付きで、文章を読むのが苦手な方でも、イラストで生態系の全容をとらえられます。
独特な世界観のイラストが楽しく、絵を見ながら学びたい方におすすめです。生態系の仕組みと地球環境に踏み込んだ内容も掲載し、学びながら考えさせられる書籍でもあります。
- 著者
- 健一郎, 久保
- 出版日
これだけ医療が発達しても、未だ謎な部分も多い「脳」について、初心者にも分かりやすくまとめている1冊です。
本書では、アルツハイマーやうつ病との関係にも触れています。読後には、実際に生物学や医学を学ぶことで、その知識をどう役立てることができるかイメージがしやすくなります。
生物学は研究対象が幅広い分野ですので、脳を研究対象にする方もいるでしょう。脳の不思議を明らかにする過程は大変ですが、その分研究は尽きないと考えることも可能です。脳に興味のある方はぜひ本書にも目を通してみてくださいね。
生物学は、実験や研究からは逃れられない学問です。繰り返し試行錯誤することが苦手であったり、飽きやすい性格の方にはあまり向かないかもしれません。逆に、日頃から好奇心や物事への興味関心が強い方には向いている学問といえるでしょう。
生物学に関する書籍は、数多く出版されています。今回ご紹介した本以外にも、自分が面白いと思える図鑑やテキストなどから学習を始めてみてはいかがでしょうか。