車が好きだから、将来は自動車業界で働きたいと考える方は、多いのではないでしょうか。自動車業界は、車の開発・製造・販売が産業の中心です。しかし、車の部品を作るメーカーや販売した後のアフターケアをおこなう会社など、就職先は思った以上に広範囲です。本記事では、日本の大手企業3社の特徴や社風について解説しながら、現状課題や今後の動向についても紹介しています。いまは日本国内に留まらず、世界中で自動車の販売台数が伸び悩んでいます。なにが理由で販売台数が下がっているのか、この先どのような努力が必要なのでしょうか。今後、自動車業界で働いてみたい方、開発に興味がある方など、ぜひチェックしてみてくださいね。
自動車業界は、自動車・バイク・バスやトラックなど、商業用を含めた完成車の開発・生産・販売をおこなっている業界です。自動車メーカー、部品メーカー、素材メーカー、タイヤメーカー、自動車販売会社が、この業界に含まれます。
自動車業界は、ブランドも取り扱う部品の数も非常に広範囲で、関連会社や子会社も多いのが特徴です。また、「最も日本経済に影響力がある産業」といわれています。日本の輸出額の15%以上を占める産業であることが理由のひとつです。
業界の発展は、戦後の1950年代より「トヨタ・クラウン」、「日産・ダットサン」といった乗車モデルの生産が開始され、徐々に国内の一般家庭にも自動車が普及していった理由が大きいといわれています。
高度経済成長期に自動車は大きく普及し、質の高い日本車は国内のみならず海外でも高いシェアを持つようになった歴史があります。
カーシェアリングとは、登録をおこなった会員間で特定の自動車を「共同使用」するサービスのことです。レンタカーよりも短い時間から車を借りることが可能であったり、短時間であればレンタカーよりも安く済むように設定されていることが多いのも特徴です。
車検やメンテナンスの費用(ガソリン代や保険料など)、駐車場代がかからないのも、このサービスのメリットのひとつでしょう。会員になれば24時間予約が可能な点も、個の時代に合わせた仕様といえます。マイカー代わりにもタクシー代わりにもなり、業界は移動手段としての普及を目指しています。
一章でも少し触れましたが、自動車業界は日本経済に大きな影響を与えている産業です。日本の自動車は性能もよいため、海外への輸出も盛んです。しかし、2017年をピークに世界でも自動車自体の販売数・生産数ともに減少傾向に。
2019年の世界の自動車販売台数は、前年比4.5%減の9135万台、生産台数は4.0%減の9178万台。これは世界最大の市場である中国の販売台数が減少したことが大きな要因とされています。日本にとって、自動車業界の最大の市場はアメリカと中国ともいわれており、中国での現状は日本経済にも影響を与えています。
この輸出量の減少に歯止めをかけられるかは、日本経済にとって無視できる問題ではありません。自動車業界への就職を考えている方こそ、こういった問題に取り組める能力・知識を磨いておく必要があります。
近年は、高齢者ドライバーによる不慮の事故も絶えません。スピードがとにかく速い・デザインがかっこいいという目的の前に、何より人々に安全・安心を届けるというのがこの業界の大きな役割です。
さらに、電気自動車の認知度もかなり高まりましたが、未だガソリン自動車の方が数は多いまま。(電気自動車は値段が高い・長距離運転では充電計画が必要などの理由)排気ガスによる環境問題をクリアしていくことも、人々の安全を守るための課題のひとつといえるでしょう。
参照元:高齢者の事故の状況について-「人口動態調査」 - 消費者庁
自動車業界を理解するには、大手3社をまず知る必要があります。本章では、トヨタ・ホンダ・日産の大手3社について特徴を解説していきます。
本社は愛知県豊田市。トヨタは、自動車販売台数世界3位の自動車メーカーで、日本国内のみならず、世界的にも販売台数は上位を維持しています。
業界でも「一人勝ち」と表現されることもある会社です。「挑戦の文化」が根付いており、新しいことに挑戦していきたいと考えている方におすすめの会社です。インターネット上では、自社について以下のようにも表現されています。
組織主義的なエリートが多い、「カイゼン」など効率を求める社風
本社は東京都港区。ホンダは「技術屋集団」とも呼ばれているという特徴があります。大手自動車メーカーのなかで、最も車への「こだわり」が強い社員を抱える会社です。インターネット上では、自社を以下のように表現されていることが多いです。
熱血・快活な体育会系出身者が多い、ロマンを求める社風
本社は神奈川県横浜市。「Nissan」「INFINITI」「Datsun」という、3つのブランドを有する世界有数の自動車メーカーです。日本のみならず海外でも展開していて、世界的にも知名度の高い企業です。
世界初、高速道路での同一車線内ハンズオフ運転が可能な「ナビ連動ルート走行」を実現したのは日産です。この技術が着火剤となり、自動運転技術が浸透した際には、市場でシェアを伸ばすと期待されている会社です。
スマートかつ外資系的なドライさ、国際系色が強い、専門職志向な社風
上記の大手3社以外にも、日本にはマツダ・SUBARU・スズキ・三菱自動車工業・いすゞ自動車などの自動車を扱う有名企業があります。
大手自動車メーカーで働くには、4年制大学を卒業するのが一般的です。なかでも総合職で働きたい場合は、その傾向が強くなります。自動車メーカーに就職した場合、働く部署は大きく分けて2つに分かれます。
商品企画、マーケティング、資材調達、プロジェクトマネジメント、総務、経理・財務、人事などが該当します。基本的には多くの方が事務系総合職に配属され、適性を見て各部署への配属が決まります。
研究開発、生産ライン設計、製造・品質管理、デザイン、情報システムなどが該当します。技術系に進みたい方は、理工系学部出身者が多いのも特徴です。
特定の資格がなくても自動車業界で働くことは可能です。しかし、どんな部署に配属されるにしても、自身が自動車免許を持っていないとなると不利になることも。この業界で働きたいのなら、普通自動車免許は取得しておくのが望ましいでしょう。
世界的に見て、自動車販売台数は減少傾向にあります。経済にも大きな影響を与える業界ですから、今後の動向や業界の課題は気になるところです。
日本の自動車販売台数の推移は、2019年時点で1990年代の3分の2ほどに落ち込んでいます。これは、国民の所得が減少しているにもかかわらず、車の価格が上昇していることで、新車の販売台数が頭打ちになっていると考えられています。
最近の自動車は、安全性能や環境性能が向上しており、高級車を中心に従来価格に比べて20~30万円ほど高い設定になっています。これが追い討ちをかけ、余計に国民にとって手が出しにくい商品になってしまっている現状があります。
そのため、機能面や安全面でも充実してきた軽自動車に人気が集まってきています。普通車に比べて、軽自動車は維持費も安くてすむのが魅力。今後は各社、軽自動車の開発や価格競争に力を入れていくと予想されています。
2章でも触れましたが、排気ガスによる地球温暖化の進行との関係も無視できない問題です。というのも、日本の二酸化炭素排出量で大きな割合を占めているのが、自家用車のためです。日本の部門別二酸化炭素排出量(2018年度)をみてみると、自動車を含む運輸部門が二酸化炭素排出量第3位となっています。
ガソリン自動車と異なり、電気自動車は環境に優しいといわれていますが、それをどう世界に普及していくか、民間に浸透させていくかは業界の大きな課題です。
- 著者
- 中西 孝樹
- 出版日
本書は、アフターコロナの自動車業界を予想した1冊です。
自動車業界に関わらず、アフターコロナの状況についてはネットなどで予想合戦がくり広げられています。しかし、そういった情報はエビデンスが取れていないものも多く、信用に欠けるという難点があります。
その点、本書は業界を代表するアナリストが書いたということもあり、真剣に業界の問題について知りたい方にはおすすめの1冊です。
- 著者
- 中西 孝樹
- 出版日
2030年の自動車業界について書かれた1冊です。2018年に発売され、2019年2月23日朝刊の日本経済新聞の書評「この1冊」で、「変革に直面するすべての人にとって大いに参考になる」本としても紹介されています。
本書によると、自動車業界はいま、100年ぶりともいえる大きな岐路に立たされていると言います。AIなどによる自動運転技術が発展し、遠い未来とも思われていた社会が目の前に迫ってきていますが、本当にそうだろうかという疑問から始まり、IT×自動車業界の今後について焦点を当てた解説しています。
自動車業界のリアルな将来像と、世界のなかで日本企業が勝ち残るためにすべきことが1冊で分かります。業界に興味がある方も、単純に日本の未来を作る要素のひとつとして気になる方にもおすすめの1冊です。
- 著者
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- 出版日
いま人気の軽自動車の情報を知ることができます。
どんな最新システムが搭載されているのか、どんな機能がついているのかなど、今まであまり軽自動車に注目してこなかった方は発見が多いでしょう。ホンダ・日産・三菱・ダイハツ・スズキと各社の軽自動車が取り上げられており、購入を検討している方の参考資料としても使えます。
豊富なカラー写真と詳細な試乗レビューは、読んでいるだけでワクワクします。内装についての言及もあるので、機能性についてもデザイン性についても知りたい方におすすめの1冊です。
自動車業界は非常に大きな市場を操っている産業です。その分、経済的な影響力も大きく、日本の経済を支える大きな柱にもなっています。
反して、人々の給与減少などの理由から、自動車を持つ方が現象しているのが自動車業界の現状です。今後は安全な車は当たり前であり、+αのサービスや機能がついた車、環境にもお財布にも優しい車が求められていくのかもしれません。またカーシェアリングを基本とする車作りも求められるでしょう。
開発や製造はもちろん、そういった環境面や経済面から自動車業界に関わることも可能です。「車が好き」「自動車業界で働きたい」と考えている方は、いろいろな道が用意されています。本記事の内容や、紹介している書籍を参考に、自動車業界への就職を切り開いてみてはいかがでしょうか。