夏物語【山中志歩】

更新:2021.5.10

最終回ですです。二年くらい?連載させていただきました。忙しすぎて書けない月もあったり、小説みたいなこと書いてみようぞ!と書かせてもらったり、知り合いの話をしたり、なんか色んなことをやらせていただきました。楽しかったです。

1993年生まれ、三重の山奥ですくすく育つ。高校で演劇部に入り、大阪芸術大学進学後も学内外の公演に多数出演。2016年より上京。青年団所属。現在までに、名だたる演出家の作品に出演し存在感を示している。本連載は個性派女優・山中志歩が、演劇愛・読書愛に溢れた内容でオススメの本を紹介するコラムです。 https://www.ginacm.com/shiho-yamanaka/
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ホンシェルジュが終わる。

いや、ホンシェルジュは終わらなくて、私の連載が終わる。

毎月ルーティーンのように、「どんな本にしようか」と頭の片隅で考えていた作業が終わる。

始まりがあれば終わりがあるって当たり前なんですけど、まあそういうことですね。いやはや、いやはや。

それはそうと、私は言語化するスピードがめちゃくちゃ遅いんです。遅すぎて、「何考えてるのか分からない!」とよく怒られます。申し訳ない!すみません!と思うものの、どうしていいかわからない。自分の気持ちにも鈍感で、検索履歴に「信頼 人間関係 コツ」「不安 気にしない方法」が溜まっていくのを見て、「あっ!今、私は人間関係に悩んでいるのか!」と気づく。めちゃくちゃコスパが悪いです。そんな私を見かねてか、マネージャーさんが「文章を書いてみたら?」と勧めてくださって始まったこの企画。相変わらず、言語化するスピードはめちゃくちゃ遅いですが、文章を書くのは好き勝手にやらせてもらっているのでとても楽しく、今後も書く仕事を続けていきたいと思っています。思っていますので!!なにかあったらお声をかけてくださると嬉しいです!!(笑)。まあ、誰にも必要とされていなくても、一人でコツコツ書いていくのはただなんで、月に何度かnoteに文章を書いて載せていくと思います。

あと来年、ずっとやりたかった舞台をやります。もうすぐ情報解禁をします。去年の夏から動きだしていまして。今、一緒に考えてくれる仲間たちと「こうしたらいいんじゃないか」「ああしたらどうなんだろう」と試行錯誤しながら、打ち合わせを重ねております。皆様に面白そうなお知らせが出来れば、幸いです。

今までは企画に乗っかる側だったけど、0から何かを生み出すことはそれなりの楽しさがありますね。私はめちゃくちゃ色んなことが下手だから、色んな方に助けていただきながら、ゆっくり進めています。どうせいつか死ぬし、死ぬときまでにいろいろ失敗して、いろいろ諦めたりしながら、時々楽しく、生きていけたらなって思います。というわけで、ホンシェルジュありがとうございました! 次回からはnoteで公開していきます!

著者
川上 未映子
出版日
2019-07-11

最近読んだ本の中で、一番考えさせられたのが、川上未映子さんの「夏物語」です。私は川上未映子さんの本が好きで、よく読んでいます。川上さんの文章は音だったり、質感だったりが体内に直接入ってくるような感覚になり、新しい体験をしているような気になります。

「夏物語」は前半と後半の二部構成になっていて、前半は川上さんが昔書いた、「乳と卵」を再構築した形になります。前半の主な登場人物は、小説家を目指して東京に来ている夏子、姉の巻子、その娘の緑子です。豊胸手術を受けるために大阪から上京してきた巻子と、娘の緑子、その二人を夏子が迎えに行くシーンから始まります。緑子は思春期で、母にどう接していいのか分からなくなり、巻子や叔母の夏子に「筆談」という形で、コミュニケーションをとるようになります。「乳と卵」のときは、娘緑子目線で物語が進んでいったのですが、「夏物語」では夏子目線で話が進んでいきます。

後半は、その八年後です。夏子は小説家として生活をしています。独身の40歳前の夏子は、自分に子どもが出来たら…と感じるようになります。彼女は、ある日精子バンクの存在を知り、精子提供(AID※非配偶者間人工授精)で子どもを産むことを考え出します。

親と子の関係性だったり、生きることや死ぬこと、これからの人生のこと色々と考えさせられました。

登場人物の中に、自身もAIDで生まれてきて、本当の父親が分からず、育ての父親に虐待されてきた善百合子というキャラクターが登場します。善百合子は、「反出生主義」なんですね。「反出生主義」というのは、簡単に言えば「子どもを持つことに対して否定的な意見を持つ哲学的立場」です。「私は生まれてこないほうがよかった」や「苦しみのあるこの世界に子どもを産まないほうがいい」という思想です。さまざまな理由から子どもを持たない人生を志向する「チャイルドフリー」という考え方も反出生主義の一つだといわれています。私もそこまで勉強したわけではないので、ウィキペディアやネットの情報を書かせていただきました。

私は善百合子というキャラクターにものすごく惹かれました。

善百合子の言葉を引用すると、“親はみんなおなじことを言うの。赤ちゃんは可愛いから。育ててみたかったから。女としての体を使いきりたかったから。好きな相手の遺伝子を残したかったから。あとは、淋しいからだとか、老後をみてほしいからとかなんていうのもあるね。ぜんぶ根っこはおなじだもの。ねえ、子どもを生む人はさ、みんなほんとに自分のことしか考えないの。生まれてくる子どものことを考えないの。子どものことを考えて、子どもを生んだ親なんて、この世界にひとりもいないんだよ。ねえ、すごいことだと思わない?それで、たいていの親は、自分の子どもにだけは苦しい思いをさせないように、どんな不幸からも逃れられるように願うわけでしょう。でも、自分の子どもがぜったいに苦しまずにすむ唯一の方法っていうのは、その子を存在させないことなんじゃないの。生まれないでいさせてあげることなんじゃないの。”“その生まれてみなければわからないっていう賭けは、いったい誰のための賭けなの?”

この言葉が正しい正しくないっていうのは置いておいて、私は至極真っ当な意見だなと感じたんです。なるほどな、と。勿論、お子さんがいて幸せな家庭もあります。だけど、この言葉も一理あると思いました。善百合子の考え方を強要するわけではないです。しかし、一つの出来事を色んな方向から見るってことは大事だと思っていて、「子どもを生む」ということに対して、こういう考え方もあると知ってもらえたら嬉しいです。「夏物語」は人生におけるさまざまな選択肢の集合体のような作品です。夏子が、色んな意見を受け入れる人物だから、一つの物事に対して、読み手も立ち止まって考えさせられます。

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