富永京子です。『ホンシェルジュ』ではゼミ企画やインタビューが続いて、久々の連載再開となりました。再開第一弾のテーマは「観光」です! この原稿は年末年始に公開されるかと思いますが、おそらくこの時期、どこかに旅行に向かっている方も多いでしょう。私自身、全く旅行は好きではなく、もっぱら出張で色々な地域を訪ね歩くくらいなのですが、それだけでも移動や異文化から学ぶことは多くあります。旅が好きな方もそうでない方も、自分が何気なくしている旅や移動について考えるヒントになればいいかと思います。
映画化もされた作品なので、皆さんご存知だと思います。「トゴ」(十日で五割)の金利を課す闇金融『カウカウファイナンス』を経営する丑嶋馨と、様々な経緯から負債を抱える人々の交流を克明に描く作品です。カウカウファイナンスの客は、いわゆる「ヤクザ」からエリートサラリーマンまで様々ですが、彼らの都市における生活はいずれもカウカウファイナンスを通じて、ありていな表現ですが「社会の闇」と隣合わせであることがよくわかります。
- 著者
- 真鍋 昌平
- 出版日
- 2004-07-30
観光というと旅行会社によるお仕着せのパックツアーや、有名観光地をめぐるタイプのマス・ツーリズムをイメージしがちですが、バックパックだけで旅に出る「バックパッキング」も観光の一つだといえるでしょう。バックパッキングは、例えば「京都」や「パリ」といった分かりやすい観光地ではなく、発展途上国を中心としたあまり誰も行かないような地域に行き、土着の文化に触れる冒険的な試みです。1970年代ごろに世界各地で発生した「カウンターカルチャー」のひとつとして、たくさんの若者を「バックパッカー」として世界中に送り出してきました。
- 著者
- ひぐち アサ
- 出版日
- 2001-06-20
『ヤサシイワタシ』では東南アジアを旅するバックパッカー・弥恵を紹介しましたが、大学生によるあてのない旅と言えば、この漫画の主人公・竹本くんを思い浮かべた人もいるのではないでしょうか? 『ハチミツとクローバー』は美大を舞台とした青春マンガの金字塔とでも言うべき作品です。
- 著者
- 羽海野 チカ
- 出版日
- 2002-08-19
東京からローカル線やバスを何回も乗り継いで行くような場所にある集落・祖ヶ沢。ひょんなことからこの地に訪れた東京在住の少年・相浦くんは、不思議な慣習に出会います。「厄落とし」のために宿の女主人から自分の身体を狙われ、村人たちの「トップシークレット」である出来事に巻き込まれる中で、相浦くんの「常識」「普通」は激しく揺らいでいきます。
- 著者
- 柏木 ハルコ
- 出版日
異性との交流がろくになく、鉄道やクラゲといったニッチな趣味に走る女性たち「尼~ず」の自立を描いた東村アキコの大ヒット作品といえば『海月姫』ですが、その番外編とも言うべき作品が『BARAKURA~薔薇のある暮らし~』です。海月姫の舞台となる「天水館」の持ち主である千恵子の母・知世子を中心とした主婦3名が主人公であり、「齢五十にして韓流スターにハマってしまった主婦たちが日本のお隣、韓国で韓ドラロケスポットを巡る」(序文)この漫画は、紛うことなき「聖地巡礼」漫画と言えるでしょう。もともとは、特定の信仰を持つ人々がその宗教における拠点や特別とされる場に赴く行為を指しますが、それが転じてドラマや漫画の舞台を訪れるタイプの観光を指すようになったと考えられます。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2012-09-13
今回はこの5冊でした。いくつかの紹介でも言及したとおり、漫画を読むということも一種の「旅」と言えるのかもしれません。年末年始、どこかに行かれる皆様も、漫画を読んで過ごす私のような人も、ぜひそれぞれの旅を楽しんでくださいね。
マンガ社会学
立命館大学産業社会学部准教授富永京子先生による連載。社会学のさまざまなテーマからマンガを見てみると、どのような読み方ができるのか。知っているマンガも、新しいもののように見えてきます。インタビューも。