2017年になりました。きっと2017という数字の並びに慣れないまま、また年末を迎えることになるでしょう(いい意味でのボヤキ)。皆様、本年もどうぞ、ゆるゆるだらだらな橋本の紹介ページにお付き合いください。よろしくお願い致します。
さて、今回は様々な男たちをテーマにセレクトしてみました。「漢」でなく「おとこ」たち。我が道をグイグイ進んで行くのでなく、時の流れに任せ揺蕩(たゆた)っていくように順応していく男たち。今の時代に合っているのではなかろうかといった人物たち。自分の性根にあっているからなのか、なんだかそんな情景に共感してしまうワタクシです。
ゆるーく、時にズシンと。
皆様も揺さぶられてみてください。
では、どうぞ。
- 著者
- ウィリアム サローヤン
- 出版日
- 2016-03-27
僕の名はアラム、九歳。世界は想像しうるあらゆるたぐいの壮麗さに満ちていた。
アルメニア移民の子として生まれたサローヤンが、故郷の町を舞台に描いた代表作。
海の向こうの話だと思って、少し手の出しづらいイメージがあると思われますが、そんなことは全くなく。サラッと読める超短編集なのです。ちょっと不思議な少年アラム、しかしもっと不思議な、いや変わり者ばかりの叔父たちとの牧歌的なゆるいストーリー。ゆるゆると綴られるその物語にきっとすぐに引き込まれると思います。オススメの一冊。
心に刺さった一節
“言葉なしで喋るのよ。人はいつも、言葉なしで喋ってるのよ”
- 著者
- 村上 春樹
- 出版日
- 2016-10-07
短編小説6本。それぞれ短編というよりは中編くらいのボリュームと内容。
妻を亡くした舞台俳優、家福《ドライブ・イン・カー》。おれの彼女とつきおうて見る気はないか?と唐突に言い出す木樽《イエスタデイ》。
魅力的な女性たちとの親密な、知的な触れ合いを求める渡会《独立器官》。性行するたびに聞かせてくれた、彼女の不思議な話に引き込まれていく羽原《シェエラザード》。妻の不倫を目の当たりにし、家を出て会社を辞め、バーを始めた木野《木野》。深夜1時、妻は先週の水曜日に自殺しました、と彼女の夫からの電話を受ける僕《女のいない男たち》。
久しぶりに本を読んで涙が出た。読んでいるときに、イヤホンからちょうどハナレグミが流れていたから、かもしれませんが。何か心の中の奥底にあったものを引っ張り出され、掻き乱されるように。それぞれ日常から始まり、気がつくと非日常に自然に振れている。不思議な短編小説。
心に刺さった一節
“何の説明もつかない裸の一個の人間として世界にぽんと放り出されたら、この私はいったいなにものになるだろうと”
“正しからざることをしないでいるだけでは足りないことも、この世界にはあるのです”
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2016-11-28
伊坂節炸裂。この5つの文字だけで分かる人には分かる。10代の頃、活字苦手人間だった僕を読書の道に誘ってくれて作家、伊坂幸太郎。
相変わらずの時系列の運び方と、小説ならではの楽しみを加えた珠玉の一冊。いくつかの雑誌に書いた短編をまとめた本書。ひとつにまとめることは念頭になかったと筆者。そこを並べ直し改めて手を加えてゆるやかに繋げていったためか、いつもとは少しずれているような不思議な作品。
ふわっと鼻の奥に香る感じ。そう感じるのは僕だけか。
それを確認してみてくだされ。
伊坂幸太郎ファンもそうでない方も、この歪さに必ずや引き込まれるのではないでしょうか。
心に刺さった一節
“縁もゆかりもない、顔も知らぬ他の人とはいえ、確実に存在していたはずの、「誰か」の自我が今は完全に消え、その、「誰か」はどこにもいない。そういった事実が恐ろしくてならない”